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債権回収と恐喝事件

2019-11-23

債権回収と恐喝事件

債権回収恐喝事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

京都府南丹市在住のAさんは、友人のBさんに20万円を貸していたが、約束していた返済期日になってもBさんがお金を返そうとせず、返済が遅れていることについてのBさんからの謝罪などもなかったことから、Bさんに対して怒りを募らせていた。
後日Aさんは、何としてもBさんに20万円を返済させようと考え、Bさんの自宅に行きBさんに強く返済を迫った。
しかし、BさんはAさんの返済要求に対し「もう少し待ってくれ」と言うばかりで具体的な返済計画なども話そうとしなかった。
Bさんの対応に激怒したAさんは、「いい加減にしろ。舐めたことを言っているとお前やお前の家族を殺すぞ。」とBさんに対して怒鳴りつけた。
Bさんは、Aさんが本気だと考えその場で20万円を返済したが、Aさんのことが怖くなり、京都府南丹警察署に通報。
Aさんは恐喝事件の被疑者として取調べを受けることになってしまった。
(上記の事例はフィクションです)

~権利行使と恐喝~

恐喝罪の「恐喝」とは、暴行又は脅迫を手段とし、その反抗を抑圧するに至らない程度に相手方を畏怖させ、財物の交付を要求することをいいます。
今回の事例の場合、AさんがBさんからお金を返してもらうために脅迫を手段とした場合、貸した金銭を返金するように言う行為は正当な行為といえるため、恐喝罪が成立するかが問題になります。

まず、恐喝罪は他人の財産を侵害する財産犯としての性質を有していることから、恐喝罪が成立するためには、被害者に財産上の損害が発生している必要があると考えられています。
上記の事例の場合、被害者であるBさんはAさんに借りていた20万円を返済したに過ぎないことから、Bさんには財産上の損害は何ら発生していないとも思えます。
もっとも、恐喝罪は個別財産に対する犯罪であることから、財産の交付行為があればその交付した財産そのものを損害として観念できると考えられています。
BさんはAさんに20万円を借金の返済として交付していることから、Bさんに20万円の損害が発生していると考えることができます。
そのため、被害者たるBさんに20万円の財産上の損害が生じているといえます。

また、刑法35条は「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」と規定しています。
AさんはBさんに対し20万円を貸しており、民法上AさんはBさんに対し貸金返還請求をなし得る立場にあることから、AさんがBさんから20万円の交付を受けた行為は、法令上正当な行為として、刑法35条より違法性が阻却され恐喝罪が成立しないとも思えます。
もっとも、仮にお金を貸していたとしても、過度な暴行や脅迫を行った上で借金を無理矢理にでも返済させるような行為については、法令上認められた正当な行為とはいえず、恐喝罪が成立することになるといえます。

では、どの程度までなら許され、どの程度からが恐喝となるかということですが、判例では「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内でありかつその方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り、何等問題も生じない」とされています。
上記の事例の場合、AさんはBさんに対し貸していた金の20万円分のみを返済させたにすぎず、Aさんの行為は権利の範囲内であるといえます。
もっとも、AさんはBさんに対してBさんやBさんの家族を殺すと怒鳴りつけ、これによりBさんはAさんは本気だと考えており、Aさんの要求に応じなければBさんやBさんの家族の生命身体に危害が加えられると畏怖したと言えます。
返金を要求した行為及びBさんを怒鳴りつけて脅迫した行為が、社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えており、恐喝罪が成立する可能性があります。

このように、恐喝事件については、その解決のために専門的な法的知識や経験が必要となります。
そのため、恐喝事件の加害者となってしまった場合には刑事事件に強い弁護士に相談し、恐喝事件の詳細な流れや見通しを聞いてみましょう。

恐喝事件などの刑事事件でお困りの方は、まずは弊所の弁護士まで、ご相談ください
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、弁護士による初回無料法律相談のご予約を24時間いつでも受け付けています(0120-631-881)。
まずはお気軽にお電話ください。

児童虐待と刑事罰

2019-11-18

児童虐待と刑事罰

児童虐待刑事罰について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

神戸市垂水区に住む女性Aさんは、旦那、Xちゃん(3歳)と二人暮らしでした。
ところが、Aさんは、ある日、同級生のBさんと偶然街で会ったことをきっかけに交際をはじめたところ、徐々にXちゃんに対する育児を放棄するようになりました。
そして、Aさんが自宅に戻ったところ、床の上でぐったりとしているXちゃんを見つけ、どうしていいかわからず110番通報しました。
Aさんは、駆け付けた兵庫県垂水警察署の警察官に「3日間、食事など与えていなかった。」「交際相手Bから自宅に帰ることを止められていた。」などと話しましたが、Vさんが死亡したとの連絡が入ったことを受けて保護責任者遺棄致死罪で逮捕されてしまいました。
逮捕の通知を受けたAさんの母親は驚き、刑事事件の実績、経験が豊富な弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 児童虐待とは ~

児童虐待による悲惨な事件が後を絶ちません。
児童虐待による痛ましい事件は頻繁に報道されています。

ところで、「児童虐待」の定義については、児童虐待の防止等に関する法律という法律(以下、児童虐待防止法)の2条に規定されています。
それによると、児童虐待とは保護者(略)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。以下同じ)について次に掲げる行為をいうとされています。
そして、「次に掲げる行為」とは、以下の行為です。

1号 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれがある暴行を加えること(身体的虐待)
2号 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること(性的虐待)
3号 児童の心身の発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること(ネグレクト)
4号 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(略)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと(心理的虐待)

以上からすると、Aさんの行為は3号の児童虐待に当たりそうです。

~ 児童虐待防止法で処罰されるの? ~

では、Aさんの行為が「児童虐待」に当たるからといって、Aさんが児童虐待防止法で処罰されるかといえばそうではありません。
同法には、児童虐待そのものを処罰する規定は設けられていないのです。
それは、以下でご紹介するように、「児童虐待」に当たる行為も刑法などのその他の法律に規定されている罪で処罰することが可能だからです。

~ 児童虐待と刑法(刑事罰) ~

では、児童虐待行為がどんな罪に当たり得るのか、前記各号につきそれぞれご紹介いたします。

1号については、暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)で処罰される可能性があります。
暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
なお、傷害させ、児童(人)を死亡させた場合は傷害致死罪(刑法205条)で処罰される可能性があります。
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役です。

2号については、強制わいせつ罪(刑法176条)、強制性交等罪(刑法177条)、監護者わいせつ罪(刑法179条1項)、監護者性交等罪(刑法179条2項)で処罰される可能性があります。
強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」、強制性交等罪は「5年以上の有期懲役」、監護者わいせつ罪は強制わいせつ罪と同様、監護者性交等罪は強制性交等罪と同様です。

3号については、保護責任者遺棄罪(刑法218条)で処罰される可能性があります。
法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。

児童(人)を傷害、死亡させた場合は保護責任者遺棄致傷罪保護責任者遺棄致死罪(刑法218条)で処罰される可能性があります。
前者の法定刑は「3月以上15年以下の懲役」、後者の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。

4号について、行き過ぎた暴言は暴行罪、それによって精神的な障害を患った場合などは傷害罪で処罰される可能性もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、児童虐待に関する刑事事件少年事件も取り扱う、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件でお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談、初回接見サービスのお申し込みを24時間受け付けております。

エアコン室外機放火事件で逮捕

2019-11-13

エアコン室外機放火事件で逮捕

エアコン室外機放火事件での逮捕について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事件】

Aさんは痴情のもつれから大阪市中央区に住むVさんとトラブルになっていました。
AさんはVさんに報復したいと考え,Vさん宅のエアコンの室外機に火を放ちました。
これによって室外機は完全に焼損してしまいましたが,あとは外壁が焦げたのみでした。
Vさんが被害届を提出したことで捜査が開始され,Aさんは大阪府南警察署逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

【現住建造物等放火罪】

人が住居として利用している建造物や人が現在している建物などに放火する行為は現住建造物等放火罪に当たる可能性があります。
現住建造物等放火罪は刑法第108条に規定されています。

刑法第108条
放火して,現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物,汽車,電車,艦船又は鉱坑を焼損した者は,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

現住建造物等放火罪の法定刑は死刑または無期もしくは5年以上の懲役で,殺人罪(刑法第199条)と同じ重いものとなっています。

現住建造物等放火罪の客体は,現に人が住居に使用し,または現に人がいる建造物,汽車,電車,艦船,鉱坑です。
このうち建造物とは,家屋や家屋に類似する建築物で,屋根があって壁または柱により支持されて土地に定着し,少なくともその内部に人が出入りできるものをいいます。

次に,「現に人が住居として使用し」ているとは,犯人以外の人が寝起きし食事をとる(起臥寝食と表現されます)場所として日常使用していることを意味します。
現に人が住居として使用していることを,当該建造物等に現住性があるといいます。
この現住性の理解によれば,その建造物等が居住者の生活の本拠である必要はありません。
また,毎日住居として利用されていなくとも,断続的に住居として使用されていれば現住性が認められ得ることになります。

さらに,大きな建造物の一部に現住部分がある場合は,全体が現住建造物になります。
これに関して,過去の判例では宿直室のある学校校舎,楽屋に人が寝泊まりしている劇場,待合業を営む家の離れ座敷,社務所や守衛詰所に人が寝泊まりする神社社殿などに現住性が認められています。
現住性の判断は,起臥寝食の場所としてそのために必要な家財道具の重要部分が運び出されたかどうか等の客観的事情と,居住者が起臥寝食の場所として使用する可能性を残しているかという意味での居住の意思の有無を併せて考慮してなされます。

今回Aさんが放火したのは,Vさんの住宅(現住建造物)に取り付けてあるエアコンの室外機です。
放火した箇所が現住建造物等の一部であればそれを焼損すると現住建造物等放火罪が成立するのに対し,放火した箇所が現住建造物等の一部でない場合は現住建造物等に延焼させる意図があってもその時点では現住建造物等放火未遂にとどまります。
従来,建造物の一部であるかの判断基準は毀損しなければ取り外すことのできない状態にあるかどうかというものでしたが,現在では,従来の基準では建造物等の一部とされていた設備であっても適切な工具等の使用により毀損せずとも取り外しが可能であるものも多く用いられています。
このような物については建造物等の一部と認めてもよいことから,基準を緩和し,容易には取り外すことのできない状態にある物であれば,建造物等放火罪における建造物等の一部と認められる可能性が高いです。
エアコンの室外機は適切な工具を使えば建造物を壊さなくても取り外すことは可能ですが,一般人が容易に取り外せる物ではないため,建造物の一部といえそうです。

【現住放火事件の弁護活動】

現住建造物等放火罪はその法定刑の重さから被疑者となれば逮捕や勾留されることが考えられます。
逮捕や勾留は被疑者が逃亡したり犯罪の証拠等を隠滅する恐れがある場合になされるものです。
よって依頼を受けた弁護士は依頼者によのような恐れがないことを示すことで逮捕や勾留の阻止を図ることになるでしょう。

また,刑法第25条の規定により,法定刑の下限が5年以上の懲役である現住建造物等放火罪では情状酌量等により刑の減軽がされない限り執行猶予はつきません。
情状酌量の判断基準としては,初犯かどうか,十分に反省しているか,焼損が軽微で人身に被害が及んでいないか,被害者との示談が成立しているかなどがあります。
現住建造物放火罪の場合,裁判員裁判の対象事件ですから,裁判員にもそういった事情が伝わるよう,工夫した公判弁護活動が行われることが求められます。

情状酌量のための事情の1つには,被害者との示談締結の有無があります。
そのため,弁護士が依頼者と被害者との間に入り依頼者の利益のために示談交渉に臨むことが考えられます。
弁護士が間に入ることで,被疑者と直接やり取りするのははばかられるという被害者の方でも示談交渉の場に臨んでくれることが期待できます。

現住建造物等放火罪の疑いをかけられた場合をはじめ,刑事事件では対処スピードがとても重要です。
現住建造物等放火罪の被疑者となってしまった方,ご家族やご友人が現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されて困っている方,大阪府南警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

脅迫事件で逮捕・弁護士の活動

2019-11-03

脅迫事件で逮捕・弁護士の活動

脅迫事件の逮捕と弁護士の活動について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例
Aは,自らの気に入らない政治的集会が神奈川県川崎市で開催されることを知り,「集会当日,参加者の身に何があっても知らない」「俺はやる気だ」などと,集会が開催される自治体の職員に対し,電話で申し向けた。
集会の開催者から相談を受け,捜査を開始した神奈川県中原警察署の警察官は,Aを脅迫罪の疑いで逮捕した。
逮捕を知ったAの家族は,脅迫事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~脅迫罪の成立について~

近年,インターネット等のコミュニケーションツールの発達もあり,安直な動機から脅迫行為に及び,逮捕されてしまうというようなケースが増えています。
本件では,政治的集会およびその開催者に害悪を加えると告知するという行為により,Aは脅迫罪(刑法222条1項)により逮捕されてしまっています。
同条項は,「生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」旨を定めています。
もっとも,本件では,実際には告知内容に該当するような行為は行われていません。
この点については,どのように考えられているのでしょうか。

まず,一般的に我々が想像する犯罪というと,窃盗罪のような財産犯が代表格として挙げられるかと思います。
財産犯は侵害犯に分類され,犯罪(既遂)の成立には財産に対する現実的な侵害が要求されます。

これに対し,本件脅迫罪のような犯罪は,危険犯,それも抽象的危険犯とされています。
危険犯とは,侵害犯とは異なり,刑法が保護の対象とするものに対する危険があることのみによって成立する犯罪です。
そして,その中でも抽象的危険犯とは,そのような危険が現実的なものでなくとも,一般的・類型的な危険さえ認められれば成立する犯罪です。
このような抽象的危険犯は何も特別な犯罪ではなく,現住建造物等放火罪など刑法典にも多く規定されている犯罪なのです。
また,脅迫罪には未遂規定がなく,既遂犯としてのみ処罰されることにも注意が必要でしょう。

本件では,人を畏怖させるに足りる害悪の告知があったそのことだけで,上記のような一般的・類型的な危険が認められるといえ,脅迫罪における「脅迫」という要件を満たすものと考えられます。 
本件のように,「脅迫」内容たる害悪の告知に該当するような行為を,実際には行っていなくても,脅迫罪の成立が認められるのです。

~脅迫事件における弁護活動~

本人が犯罪事実(被疑事実)を否認している場合(いわゆる否認事件)と,そうでない場合(いわゆる自白事件)で,弁護士による弁護活動の方針も変わってきます。
前者(否認事件)であれば,黙秘権の行使等も含め,捜査機関に相対するにあたって被疑者にとって何がベストな対応なのかを,分かりやすくそして時には被疑者を勇気づけるような活動を行うことが考えられます。
今般,誤認逮捕事案が広く報道されたように,逮捕されたからといって犯人であるとは限らないことは改めて言うまでもないことでしょう。
後者(自白事件)であれば,もちろん前科前歴の有無や事件の態様にもよりますが,早期の被害者との示談等を含め,起訴猶予(不起訴)を目指した弁護活動がまずは考えられるところです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,脅迫罪を含む暴力・粗暴事件も多数扱う刑事事件専門の法律事務所です。
上記のように,事件内容や逮捕されてしまった被疑者の言い分などによって,弁護士がなすべき弁護活動もおのずと変わってきます。
脅迫事件で逮捕されてしまった方のご家族は,365日24時間通話可能のフリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐお問い合わせください。

傷害致死事件を起こし逮捕

2019-10-29

傷害致死事件を起こし逮捕

傷害致死事件とその逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
Aさん(25歳)は、東京都多摩市の居酒屋で酒を飲んでいた際、隣の席の客Vと些細な出来事でトラブルになり、居酒屋の玄関を出て殴る蹴るの喧嘩をしてしまいました。
AさんがVの顔面を拳で殴った際、Vがよろめいて転倒し、頭部を強打したことにより、Vは搬送先の病院で死亡しました。
Aさんは通報を受けて駆け付けた警視庁多摩中央警察署の警察官により、傷害罪の疑いで現行犯逮捕され、近く、被疑事実が傷害致死罪に切り替えられる見込みです。
(フィクションです)

~傷害致死罪とは?~

傷害致死罪は、身体を傷害し、よって人を死亡させる犯罪です。
法定刑は、3年以上(20年以下)の有期懲役となっており、非常に重い犯罪類型ということができます。
殺人罪と異なり、殺意が行為者にないことが傷害致死罪の特徴です。
今回のケースの場合は、Vを殴打した手段が素手の拳であったことから、殺意がないと判断されたものと思われます。
反対に、素手の拳ではなく、ナイフで被害者の胸を刺した、というような場合には、現行犯逮捕される時点で殺意があるものと判断され、殺人未遂罪で検挙される可能性が高いと思われます。
この場合は、被害者の死亡が確認された後、被疑事実が殺人罪の既遂に切り替えられると思われます。

なお、傷害致死事件は、傷害については故意の犯罪行為ですので、裁判員裁判法第2条1項2号により、裁判員裁判対象事件です。

裁判員裁判法
第2条 地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第3条の2の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
1 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
2 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

*裁判所法第26条2項2号は死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪が対象です。

~傷害致死罪で逮捕…その後は?~

逮捕後は、被疑者=Aさんは警察署に引致された後、弁解の録取、取調べを受けます。
留置の必要が認められるとき、警察は逮捕時から48時間以内にAさんの身柄を検察へ送致します。
身柄を受け取った検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、釈放するかを決めます。
勾留請求に対し、裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されます。
やむを得ない事由があると認められるときは、さらに最長10日間勾留が延長されます。
釈放されないまま捜査が進行する場合、検察官は、勾留の満期日までにAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決めます。

先ほど触れたように、傷害致死罪は裁判員裁判の対象となりますから、Aさんが傷害致死罪で起訴されると、「公判前整理手続」が行われます(裁判員裁判法第49条)。
公判前整理手続では、検察官の証明予定事実、検察官が立証に用いる証拠が開示され、争点が整理されます。
公判前整理手続が開始されてから、第1回公判期日が開かれるまで、数か月かかることがあります。

~Aさんの身柄解放活動~

傷害致死罪は非常に法定刑が重く、その罪責の重さから、逃亡のおそれがあると判断される可能性が高いということができます。
したがって、勾留後に釈放される可能性は低く、また、保釈される可能性も比較的低いということができます。
一方で、既に述べたとおり、傷害致死罪は裁判員裁判対象事件であり公判前整理手続きが行われますので、そのままでは長期間身体を拘束されたままになってしまいます。
また、勾留されたままでは、膨大な証拠資料について検討することもままなりません。
したがって、早期に身柄を解放されることがより重要となってきます。
信頼できるAさんの身元引受人を用意するなどし、可能な限り早期の身柄解放を実現できるよう活動しなければなりません。

~可能な限り有利な量刑による判決を目指す~

傷害致死事件における被害者及びその遺族の損害額は非常に大きく、数千万、億単位の損害が生じることも充分予想されます。
したがって、経済的な理由から、示談を成立させることは困難でしょう。
それでも、被害者の遺族に謝罪し、可能な限り損害を賠償することにより、真摯に反省していることを裁判所に訴えることはできます。
さらに、今後のAさんの生活を支援、監督する方を用意するなどし、よりAさんにとって有利な事情を積み重ねることが重要です。
弁護士のアドバイスを受けながら、事件解決に向けて行動していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が傷害致死事件を起こし逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

親族による死体遺棄罪

2019-10-24

親族による死体遺棄罪

親族による死体遺棄罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

東京都荒川区在住のAさんは、寝たきりで介護が必要だった妻Vさんと2人暮らしをしていました。
そして、ある日、Aさんは寝室においてVさんがベットの上で息をしておらず、死んでいるのに気づきました。
Aさんは「警察などに届け出れば自分が殺人犯として扱われてしまう。」などと強く思い込み、怖くなってそのままVさんの遺体を放置していました。
ところが、その後、Aさんは警視庁南千住警察署死体遺棄罪で逮捕されてしまいました。
死体の異臭がひどく、近所の住民から警視庁南千住警察署あてに「遺体が放置されているのではないか」との通報が寄せられたところ、警視庁南千住警察署の警察官がAさん宅へガサ(捜索)に入り、本件が発覚したようです。
(フィクションです。)

~ 親族による死体遺棄罪 ~

死体遺棄罪は刑法190条に規定されています。

刑法190条
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以上の懲役に処する。

「遺棄」とは、通常は、社会通念上の埋葬とは認められない方法で死体などをその現在の場所から他の場所に移して放棄することをいいます。
したがって、殺人犯が、死体を単に現場に放置したまま立ち去ったとしても、一般には、殺人罪のほか死体遺棄罪は成立しません。
しかし、例外的に、その死体について葬祭の義務を負う者が、葬祭の意思なく死体を放置してその場所から立ち去った、あるいは放置し続けていた場合は、不作為による遺棄に当たり死体遺棄罪が成立することがあります。

~ 親族による遺体遺棄でその他疑われる犯罪 ~

今回のケースのような場合、死体への関与が疑われるわけですから、死体遺棄罪以外に殺人に関する罪に問われる可能性はあります。

= 殺人罪 =
刑法199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

なお、何かをした、という作為のみならず、何もしない、という不作為にも「殺す行為」に当たるとされることがあります(このような犯罪を不真正不作為犯といいます)。
特に、近年では、児童虐待、高齢者虐待でこの殺人罪(不真正不作為犯に問われているケース)が目立ってきています。 

= 自殺関与罪、同意殺人罪 =
刑法202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。

自殺は本来不可罰とされています。
しかし、自分の命をどうするのかは他人の手に委ねられるべきものではなく、自分自身で決めるものです。
また、命の断絶について他人の手に委ねることをよしとする世の中としてしまうと、他に生きる選択肢があるにもかかわらず、容易に死を選択してしまう世の中になってしまうとも限りません。
そこで、他人の命を絶つことはやはり違法とし、処罰することとしているのです。

「~自殺させ」までの部分が「自殺関与罪」に関する規定です。
「幇助して自殺させる」とは、既に自殺の決意のある者の自殺行為に援助を与え、自殺を遂行させることをいいます。
他方で、「教唆して自殺させる」とは、自殺の意思のない者に自殺を決意させて、自殺を遂行させることをいいます。
幇助行為は、例えば、自殺志願者に自殺器具を与えるなどの有形的(物質的)方法によるものであると、「君は死んだ方がいい」「死んだ方が楽になるよ」などとの言葉をかけるなどの無形的(精神的)方法によるものであるとを問わないとされています。
また、積極的手段(作為)であると消極的手段(不作為)によるものであるとを問わないとされています。

次に、「又は」以下の部分が「同意殺人罪」に関する規定です。
「嘱託を受け」とは、被害者から積極的に殺害を依頼されることで、承諾を得てとは、被害者から殺害されることについての同意を得ることをいいます。
「嘱託・承諾」があったといえるためには、①被害者自身が行ったものであること、②事理弁別能力のある被殺者の自由かつ真実の意思に出たものであること、③被殺者の殺害に着手する以前になされたものであること、が必要とされています。

仮に、これらの条件を満たさない場合は、殺人罪(刑法199条)に問われかねませんから注意が必要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。
24時間、無料法律相談、初回接見サービスの受け付けを行っております。

暴行罪と早期釈放

2019-10-19

暴行罪と早期釈放

暴行罪早期釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ 事例 ~
福岡県北九州市に住むAさんは、職場の同僚であるVさんの胸ぐらをつかんだ暴行罪の容疑で福岡県八幡西警察署に逮捕されてしまいました。
Aさんの妻は、Aさんの早期釈放を望んで、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです)

~ 暴行罪 ~

暴行罪とはどんな罪なのでしょうか?
暴行罪は刑法208条に規定されています。

刑法208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

= 暴行罪の「暴行」とは? =
暴行罪の「暴行」とは、人の身体に向けられた不法な有形力の行使をいうとされています。
もっとも典型なのが殴る、蹴る、突く、押す、投げ飛ばすなど直接人の身体に触れる行為が挙げられます。
もっとも、暴行罪の「暴行」は直接人の身体に触れる行為に限らず、

・着衣を強く引っ張る行為
・胸ぐらをつかむ行為
・人に向かって石やガラスコップを投げる行為、棒を振りかざす行為
・毛髪等を切断する行為
・室内で太鼓等を連打する行為
・耳元で拡声器を通じて大声で怒鳴りつける行為
・狭い室内で日本刀を振り回す行為

なども含まれます。
また、最近では、自動車のあおり運転が話題となっていますが、あおり運転行為も暴行罪の「暴行」に当たることがあります。

=「人を傷害するに至らなかったとき」=
次に、暴行罪傷害罪の違いについて解説いたします。

暴行罪は「人を傷害するに至らなかったとき」、つまり、人に何らかの怪我や障害を負わせなかった場合に問われる罪です。
怪我や障害を相手に負わせてしまった場合は、傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)に問われます。
つまり、傷害罪は

・暴行の故意(人に傷害を負わせるつもりがなかった場合)で結果的に傷害を負わせた場合
・傷害の故意(人に傷害を負わせるつもりがあった場合)で結果的に傷害を負わせた場合

の2種類のケースが考えられることに注意が必要です。

~ 勾留前に釈放されるかも?(早期釈放) ~

逮捕された場合でも、早期釈放を実現できる可能性があります。。
以下、逮捕から勾留まで段階別にご紹介いたします。

= 逮捕から送致まで =
逮捕後は、警察官による「弁解録取」という手続を受けます。その上で釈放か否かの判断がなされます。
この時点で、私選の弁護士が選任されており、弁護士から警察官に対する働きかけが行われれば、働きかけがない場合に比べ釈放される可能性は高まるといえるでしょう。
それでも釈放されない場合は、逮捕のときから48時間以内に事件と被疑者を検察官の元へ送致する手続きが取られます。
  
= 送致から勾留請求まで =
事件と被疑者が検察官の元へ送致される手続きが取られた場合、検察官の元でも、警察官と同様「弁解録取」という手続を受けます。
その上で、釈放か否かの判断がなされます。
この時点で、私選の弁護士が選任されており、弁護士から検察官に対する働きかけが行われれば、働きかけがない場合に比べ釈放される可能性は高まるといえるでしょう(逮捕後にご依頼いただく場合は、はやくてこの時点から働きかけを行うことが可能となるでしょう。)。
具体的には、検察官へ意見書や上申書を提出するなどします。
それでも釈放されない場合は、勾留請求という手続が取られたことになります。
  
= 勾留請求から勾留決定まで =  
勾留請求されると、今度は、裁判官による「勾留質問」の手続を受けます。
その上で、釈放か否かの判断がなされます。
この時点で、私選の弁護士が選任されており、弁護士から裁判官に対する働きかけが行われれば、働きかけがない場合に比べ釈放される可能性は高まるといえるでしょう。具体的な働きかけは検察官に対するのと同様です。
それでも釈放されない場合は、勾留決定が出たことになります。
ただし、勾留決定が出た場合でも、それに対する不服申し立てをして釈放を求めていくことは可能です。

早期釈放をお望みの場合は、はやめに弁護士への弁護活動のご依頼をご検討ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。

恐喝事件を起こし任意取調べ

2019-10-09

恐喝事件を起こし任意取調べ

恐喝事件任意取調べについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
横浜市戸塚区に住んでいるAさんは、知人Vが行っている不貞行為を知り、これを奇貨として、Vからお金を得ることを企図しました。
AさんはVをファミリーレストランに呼び出し、Vと相手女性がラブホテルに入っていく様子を撮影したビデオを示して「これが奥さんにバレたらどうなるだろうか。黙っておいてやるから50万円だせ。奥さんにバレて慰謝料を請求されたら、50万円では済まないぞ」などと申し向けました。
怖くなったVはAさんに50万円を渡しましたが、後日、Aさんから金を脅し取られたとして神奈川県戸塚警察署に相談しました。
その結果、Aさんは神奈川県戸塚警察署から恐喝事件の被疑者として話を聞きたいと呼び出しを受けました。
(フィクションです)

~恐喝罪について~

恐喝罪は、人を恐喝して、財物を交付させる犯罪です。
上記の方法により、財産上の利益を得、又は他人にこれを得させた場合も同様です。
起訴され、有罪判決が確定すると、10年以下の懲役に処せられます。

恐喝行為は、相手方に対して、その反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫又は暴行を加え、財物交付を要求することをいいます。
「恐喝」というと、害悪の告知、すなわち、脅迫によって財物を交付させるイメージが強いですが、暴行によって財物が交付された場合であっても、恐喝罪が成立することがあります。
反抗を抑圧する程度の脅迫、暴行がなされた場合は、強盗罪の成否が検討されます。

恐喝行為における脅迫は、脅迫罪、強要罪のように、相手方又はその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対するものに限られないので、被害者の妻に不倫の事実を暴露する、などと申し向ける行為も、恐喝に該当することになります。

ケースのAさんは、不倫をしているVに対し、Vの妻にこれを暴露するぞ、と脅迫しています。
これにより、Vが不倫の発覚する事態につき畏怖し、口止め料として50万円を交付したのですから、Aさんの行為が恐喝罪を構成するものと判断される可能性は高いでしょう。

なお、恐喝罪は未遂も処罰されます。
したがって、Aさんが不倫を暴露しない代わりに50万円を支払え、と申し向けた段階で恐喝罪は未遂として処罰されうる段階に達し、その後Vさんがお金を渡さなかったとしてもAさんは恐喝未遂で処罰されます。

~恐喝罪で呼び出し…Aさんは今後どうなる?~

現在、Aさんは在宅で捜査されています。
逮捕されなければ、警察の呼び出しに応じて出頭し、取調べを受けることになります。
Aさんとしては、逮捕される可能性がとても気にかかると思います。
逮捕されるリスクを高める行為として、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがあると判断されうる行動をとることが挙げられます。
具体的には、捜査機関が任意出頭を求めているのに、正当な理由なく出頭しない、Vさんと接触し、自身に不利な供述をしないよう働きかける、いきなり長期間自宅を留守にする、などといった行動が挙げられます。

逮捕・勾留されると、捜査段階だけで、最長23日間もの間身体拘束を受けることになります。
起訴されると、起訴後勾留として、さらに身体拘束が続くことになります。
勾留が長期化すると、Aさんの社会復帰に対し、深刻な悪影響を与えることになります。
弁護士と会うことはもちろんできますが、留置場の外で弁護士と話すことと、接見室でアクリル板越しに話すこととでは、大きな違いがあります。
自ら逮捕されるリスクを高める行動をとってしまわないように、まずは弁護士と相談し、どのように行動すればよいかアドバイスを受けましょう。

~弁護士に恐喝事件の示談交渉を依頼~

今回の場合、Vと示談を成立させることにより、様々なメリットを得ることができます。
具体的には、当事者間で事件が解決しているものとして、逃亡、罪証隠滅のおそれがないと判断される可能性が高まり、逮捕されるリスクが低減します。
さらに、検察官が最終的にAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決定するのですが、Vと示談が成立していることは、被害が回復したという犯罪後の情況として、Aさんにとって有利に考慮される可能性が期待できます。
不起訴処分を獲得できれば、裁判にかけられないので、前科がつくこともありません。
そうでなくとも、示談締結という事実によって刑罰が減刑される可能性が高まります。
示談を成立させることには、刑事手続上、大きなメリットがあるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、ケースのような事件もご相談いただけます。
恐喝事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

現住建造物等放火罪と殺人罪

2019-09-14

現住建造物等放火罪と殺人罪

京都府亀岡市在住のAさん(45歳)は、一緒に暮らす妻と息子を道連れに焼身自殺をしようと、深夜、自宅に火を放ち、自宅と離れを全焼させました。
その時、眠っていたAさんの妻と息子は火事になっていることに気付かず、一酸化炭素中毒によって死亡してしまいました。
しかし、Aさんは怪我を負ったものの無事であり、通報を受けた京都府亀岡警察署の警察官により、Aさんは現住建造物等放火罪殺人罪の疑いで逮捕されました。
(これはフィクションです)

~現住建造物等放火罪~

今回Aさんが逮捕された際の容疑の1つである現住建造物等放火罪は、刑法108条に規定されています。

刑法108条
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉄鉱を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

〇放火
「放火」(放火行為)とは、目的物の焼損を惹起させる行為のことをいいます。
目的物に点火する行為や、目的物を燃やすために媒介物に点火する行為などが「放火」にあたります。

また、消火義務があるにもかかわらず、消火をしなかった場合も「放火」にあたるとされています。

〇焼損
「焼損」の意味については、争いがありますが、裁判所の判例は昔から一貫して独立燃焼説を採用しています。
独立燃焼説とは、「火が媒介物を離れて目的物が独立に燃焼を継続しうる状態になったこと」をいいます。
新聞紙やガソリンなどの媒介物が無くても建物などが燃える状態が「焼損」にあたります。

〇現に人が住居に使用(現住性)
「現に人が住居に使用し」ている状態とは、犯人以外の者が起臥寝食の場所として日常使用している状態のことをいいます。
犯人以外の者には、家族や同居人も含まれます。(共犯である場合は除きます)

また、日常使用しているのならば、住居の中に、現に人がいる必要性はありません。
たまたま、外出していた時に放火をした場合でも、現住建造物等放火罪に該当します。

今回の事件で言えば、Aさんの自宅に火を放つ行為は「放火」にあたり、その結果自宅と離れは全焼しているため、「焼損」にあたるでしょう。
また、自宅は、Aさんの家族が起臥寝食の場所として日常使用されているため、「現に人が住居に使用し」ていたといえるでしょう。
そのため、Aさんには現住建造物等放火罪が成立する可能性は極めて高いです。

~殺人罪との関係~

放火し、これによって人を殺害した場合は、現住建造物等放火罪殺人罪の両方が成立します。
この時どのような処罰がされるのでしょうか。

刑法第54条1項
1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

1つの行為が数個の罪名に触れる場合を「観念的競合」といいます。
観念的競合になった罪は、「最も重い刑により処断」されます。
例えば、A罪が1月以上15年以下の懲役であり、B罪が3年以上10年以下の懲役である場合にA罪とB罪が観念的競合になる場合は、刑罰は3年以上15年以下の範囲で処断されることになります。

現住建造物等放火罪殺人罪は、同じ1つの行為によるものであるので、観念的競合となります。
現住建造物等放火罪の刑罰は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役であり、殺人罪も同様であるため、刑罰は現住建造物等放火罪殺人罪の刑罰と同じものになります。

放火事件では、様々な法律判断がされることになります。
そのため、1度弁護士に状況を整理してもらうことをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、京都府亀岡市放火事件など、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

兵庫県伊丹市の恐喝事件

2019-09-09

兵庫県伊丹市の恐喝事件

Aさんは自動車の運転中、兵庫県伊丹市のとある交差点で信号を待っていたところ、男性が赤色信号を見落として交差点に進入したため、Aさんの車と衝突事故を起こしました。
男性の一方的な過失によりAさんは治療費入院費など合計300万円の損害を被りました。
Aさんは男性に300万円を請求しましたが一向に払ってくれません。
そこでAさんは男性に対し、「早く300万円を支払ってくれ。支払わなければあんたの家族も同じ目に合うかもしれないな」と言いました。
その言葉に男性は畏怖しAさんに300万円を支払いました。
その後、Aさんは男性が300万円を支払った経緯について兵庫県伊丹警察署に相談していることを耳にしました。
不安になったAさんは刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです)

今回のAさんの事例で問題となるであろう犯罪は、以下の条文に規定されている恐喝罪です。

刑法第249条1項
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

恐喝罪の「恐喝」とは脅迫または暴行を用いて人から金銭などを交付させることをいいます。
刑法上の恐喝罪にあたるかは、条文に書かれた構成要件に該当するかが問題となります。

1、恐喝罪の成立要件

恐喝罪が成立するためには、①「恐喝行為」⇒②「相手方の畏怖」⇒③「畏怖に基づく交付行為」⇒④「財物の移転」⇒⑤財産的損害が発生すること、これらが因果関係によって貫かれていること、および故意が必要となります。

まず、①「恐喝行為」とは財物交付に向けて行われる脅迫または暴行であって、その反抗を抑圧するに至らない程度の行為をいいます。
脅迫とは人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいますから、「痛い目にあわすぞ」といった何らかの法益の侵害を内容とする告知が必要です。
この告知は本人以外の親族に対するものも含まれます。
本件でAさんは「支払わなければあんたの家族も同じ目に合うかもしれないな」と発言しています。
この発言は男性の家族に対する害悪の告知に当たり得るので、脅迫を行ったとして恐喝行為があったと認められてしまう可能性があります。

次に、②「相手方の畏怖」とは、これは相手が恐喝行為により畏怖=簡単に言えば怖がることが必要となるということです。
今回の場合男性はAさんの発言に畏怖していることから、仮にAさんの発言が恐喝行為にあたれば、男性が恐喝行為により畏怖したこととなってしまいます。

そして、③「畏怖に基づく交付行為」および④「財産的利益の移動」とは、相手方の畏怖と交付行為と財物の移転に因果関係が認められることを必要としています。
本件で男性は、300万円をAさんに交付していることから、300万円という財物が男性からAさんのもとに移転していることがわかります。
これが男性の畏怖から行われたものであれば因果関係が認められる可能性があります。

最後に、⑤「財産的損害の有無」ですが、本件では男性はAさんに対して事故で300万円の損害を与えていることから、300万円はもともとAさんに支払われるべきものであり、男性に財産的損害はないようにも思えます。
しかし、恐喝罪は窃盗罪等と同じく個別財産の罪であり、被害者を畏怖させその占有する財物を交付させた場合は財産的損害が発生したと言えます。
本件でも、300万円がAさんに交付されて財物の移転がある以上、恐喝行為があったと認められれば財産的損害も有るとされる可能性があります。

そして、犯罪が成立するには基本的に故意が必要とされますが、故意とは犯罪事実の認識・認容をいいます。
今回の場合であれば、Aさんは男性を恐喝することについて認識していれば、恐喝罪の故意があったと認められることになります。

以上のような成立要件に該当すれば恐喝罪が成立し得ます。
では、こうした成立要件に該当すれば、犯罪は成立してしまうのでしょうか。

2、違法性阻却事由

恐喝罪の成立要件に該当する場合でも、違法性が阻却される場合があります。
債務に対する恐喝罪に該当する場合でも、権利の行使という正当な目的があり、権利の範囲内であってその手段が社会的相当性の範囲内といえれば違法性が阻却されると考えられます。

本件でもAさんは事故で被った300万円を回収するという目的があり、その300万円を超えることなく男性に支払いを求めています。
そこでその手段が社会的相当性の範囲内と言えれば、違法性は阻却される可能性があります。
手段が社会的相当性の範囲内であるかどうかについては、その手段の態様や当時の状況等、様々な事情を考慮して判断されます。

恐喝罪の成立は、法律の条文に加え条文の解釈や事件の具体的な内容など、さまざまな要素から判断することになります。
その判断には専門的な知識が必要となりますので、専門家である弁護士の見解を聞くようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件恐喝事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスを行っています。
ご予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間お待ちしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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