職務質問中に警察官を突き飛ばしてしまった

2019-08-25

職務質問中に警察官を突き飛ばしてしまった

神奈川県相模原市在住のAさん(45歳)は、仕事終わりに瓶ビールを2本ほど飲んで帰宅していました。
Aさんはその帰宅途中に、神奈川県津久井警察署の警察官に呼び止められ、職務質問を受けました。
しかし、酒に酔っていたAさんは、職務質問に嫌気がさしてその場から逃げ出そうと、職務質問に応じるよう求める警察官を突き飛ばして家に帰ろうとしましたが、側にいた他の警察官に取り押さえられてしまいました。
そのため、Aさんは公務執行妨害罪で現行犯逮捕され、神奈川県津久井警察署に連行されてしまいました。
(フィクションです。)

今回のケースで問題となるのは、以下の法律の条文です。

刑法95条1項 公務執行妨害罪
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

~公務執行妨害罪の「公務員」~

公務執行妨害罪の客体となるのは公務員です。
「公務員」の定義は刑法7条1項に規定されていますが、簡単に言えば、「法令により公務に従事する職員」のことを指します。
今回の事件のような警察官だけでなく、国会議員なども「公務員」に含まれるとされています。

~公務執行妨害罪の「職務」の範囲~

公務執行妨害罪における「職務」とは何を指すかについては意見が二つに分かれています。
強制力のある権力的なもの以外(非権力的なもの)を「職務」とする意見もありますが、裁判所の判例は、権力的かどうかを問わず、「ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれる」とされています。
そのため、今回の事件のように、警察官が職務質問をすることは「職務」に当たります。
他にも、学校の教員が授業を行うことなども、「職務」の一部とされています。

~公務執行妨害罪の「暴行」・「脅迫」~

公務執行妨害罪における「暴行」は「有形力の不法な行使」を指し、「脅迫」は恐怖心を起こさせる目的で他人に害悪を告知する行為をいいます。

公務執行妨害罪の目的は、公務員の保護ではなく、公務の保護にあります。
したがって公務執行妨害罪における暴行や脅迫は、公務中の公務員に対するものでなければいけません。
そのため、休日中の公務員や出勤移動中の公務員に暴行や脅迫を加えた場合は、暴行罪(刑法208条)又は脅迫罪(同法222条)が適用されます。(暴行罪は2年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料、脅迫罪は2年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金)

今回の事件のような、職務質問を受けている最中に警察官を突き飛ばす行為は公務執行妨害罪における「暴行」にあたるでしょう。

~公務執行妨害罪の「職務」の適法性~

公務執行妨害罪の成立には、暴行・脅迫を受けた「職務」は適法である必要があります。
職務が適法であるかどうかは、3つの観点から判断されます。

①「職務」にあたるか(抽象的職務権限があるか)
②法律上の要件を満たすか(具体的職務権限があるか)
③法律上重要な手続き・方式を踏んでいるか

①警察官の職務質問は、警察官の「職務」に当たりますし、今回の事件では、②③職務質問について規定してある警察官職務執行法2条1項に違反しているとは判断できないので、適法であるという判断が下されるでしょう。

~公務執行妨害罪に対する弁護活動~

公務執行妨害罪の内容については、上記の通り、学者の間でも意見が割れ、判断が難しいことが多いです。
そこで、公務執行妨害罪に関してお困りの方は、そのような事件に詳しい刑事事件専門の弁護士に一度相談することをおすすめします。
本当に公務執行妨害罪にあたるかについての判断をする、その後の対応について伝えるなどの対応をさせていただきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、神奈川県公務執行妨害事件など、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。