親族による死体遺棄罪

2019-10-24

親族による死体遺棄罪

親族による死体遺棄罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

東京都荒川区在住のAさんは、寝たきりで介護が必要だった妻Vさんと2人暮らしをしていました。
そして、ある日、Aさんは寝室においてVさんがベットの上で息をしておらず、死んでいるのに気づきました。
Aさんは「警察などに届け出れば自分が殺人犯として扱われてしまう。」などと強く思い込み、怖くなってそのままVさんの遺体を放置していました。
ところが、その後、Aさんは警視庁南千住警察署死体遺棄罪で逮捕されてしまいました。
死体の異臭がひどく、近所の住民から警視庁南千住警察署あてに「遺体が放置されているのではないか」との通報が寄せられたところ、警視庁南千住警察署の警察官がAさん宅へガサ(捜索)に入り、本件が発覚したようです。
(フィクションです。)

~ 親族による死体遺棄罪 ~

死体遺棄罪は刑法190条に規定されています。

刑法190条
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以上の懲役に処する。

「遺棄」とは、通常は、社会通念上の埋葬とは認められない方法で死体などをその現在の場所から他の場所に移して放棄することをいいます。
したがって、殺人犯が、死体を単に現場に放置したまま立ち去ったとしても、一般には、殺人罪のほか死体遺棄罪は成立しません。
しかし、例外的に、その死体について葬祭の義務を負う者が、葬祭の意思なく死体を放置してその場所から立ち去った、あるいは放置し続けていた場合は、不作為による遺棄に当たり死体遺棄罪が成立することがあります。

~ 親族による遺体遺棄でその他疑われる犯罪 ~

今回のケースのような場合、死体への関与が疑われるわけですから、死体遺棄罪以外に殺人に関する罪に問われる可能性はあります。

= 殺人罪 =
刑法199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

なお、何かをした、という作為のみならず、何もしない、という不作為にも「殺す行為」に当たるとされることがあります(このような犯罪を不真正不作為犯といいます)。
特に、近年では、児童虐待、高齢者虐待でこの殺人罪(不真正不作為犯に問われているケース)が目立ってきています。 

= 自殺関与罪、同意殺人罪 =
刑法202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。

自殺は本来不可罰とされています。
しかし、自分の命をどうするのかは他人の手に委ねられるべきものではなく、自分自身で決めるものです。
また、命の断絶について他人の手に委ねることをよしとする世の中としてしまうと、他に生きる選択肢があるにもかかわらず、容易に死を選択してしまう世の中になってしまうとも限りません。
そこで、他人の命を絶つことはやはり違法とし、処罰することとしているのです。

「~自殺させ」までの部分が「自殺関与罪」に関する規定です。
「幇助して自殺させる」とは、既に自殺の決意のある者の自殺行為に援助を与え、自殺を遂行させることをいいます。
他方で、「教唆して自殺させる」とは、自殺の意思のない者に自殺を決意させて、自殺を遂行させることをいいます。
幇助行為は、例えば、自殺志願者に自殺器具を与えるなどの有形的(物質的)方法によるものであると、「君は死んだ方がいい」「死んだ方が楽になるよ」などとの言葉をかけるなどの無形的(精神的)方法によるものであるとを問わないとされています。
また、積極的手段(作為)であると消極的手段(不作為)によるものであるとを問わないとされています。

次に、「又は」以下の部分が「同意殺人罪」に関する規定です。
「嘱託を受け」とは、被害者から積極的に殺害を依頼されることで、承諾を得てとは、被害者から殺害されることについての同意を得ることをいいます。
「嘱託・承諾」があったといえるためには、①被害者自身が行ったものであること、②事理弁別能力のある被殺者の自由かつ真実の意思に出たものであること、③被殺者の殺害に着手する以前になされたものであること、が必要とされています。

仮に、これらの条件を満たさない場合は、殺人罪(刑法199条)に問われかねませんから注意が必要です。

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