傷害致死事件を起こし逮捕

2019-10-29

傷害致死事件を起こし逮捕

傷害致死事件とその逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
Aさん(25歳)は、東京都多摩市の居酒屋で酒を飲んでいた際、隣の席の客Vと些細な出来事でトラブルになり、居酒屋の玄関を出て殴る蹴るの喧嘩をしてしまいました。
AさんがVの顔面を拳で殴った際、Vがよろめいて転倒し、頭部を強打したことにより、Vは搬送先の病院で死亡しました。
Aさんは通報を受けて駆け付けた警視庁多摩中央警察署の警察官により、傷害罪の疑いで現行犯逮捕され、近く、被疑事実が傷害致死罪に切り替えられる見込みです。
(フィクションです)

~傷害致死罪とは?~

傷害致死罪は、身体を傷害し、よって人を死亡させる犯罪です。
法定刑は、3年以上(20年以下)の有期懲役となっており、非常に重い犯罪類型ということができます。
殺人罪と異なり、殺意が行為者にないことが傷害致死罪の特徴です。
今回のケースの場合は、Vを殴打した手段が素手の拳であったことから、殺意がないと判断されたものと思われます。
反対に、素手の拳ではなく、ナイフで被害者の胸を刺した、というような場合には、現行犯逮捕される時点で殺意があるものと判断され、殺人未遂罪で検挙される可能性が高いと思われます。
この場合は、被害者の死亡が確認された後、被疑事実が殺人罪の既遂に切り替えられると思われます。

なお、傷害致死事件は、傷害については故意の犯罪行為ですので、裁判員裁判法第2条1項2号により、裁判員裁判対象事件です。

裁判員裁判法
第2条 地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第3条の2の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
1 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
2 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

*裁判所法第26条2項2号は死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪が対象です。

~傷害致死罪で逮捕…その後は?~

逮捕後は、被疑者=Aさんは警察署に引致された後、弁解の録取、取調べを受けます。
留置の必要が認められるとき、警察は逮捕時から48時間以内にAさんの身柄を検察へ送致します。
身柄を受け取った検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、釈放するかを決めます。
勾留請求に対し、裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されます。
やむを得ない事由があると認められるときは、さらに最長10日間勾留が延長されます。
釈放されないまま捜査が進行する場合、検察官は、勾留の満期日までにAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決めます。

先ほど触れたように、傷害致死罪は裁判員裁判の対象となりますから、Aさんが傷害致死罪で起訴されると、「公判前整理手続」が行われます(裁判員裁判法第49条)。
公判前整理手続では、検察官の証明予定事実、検察官が立証に用いる証拠が開示され、争点が整理されます。
公判前整理手続が開始されてから、第1回公判期日が開かれるまで、数か月かかることがあります。

~Aさんの身柄解放活動~

傷害致死罪は非常に法定刑が重く、その罪責の重さから、逃亡のおそれがあると判断される可能性が高いということができます。
したがって、勾留後に釈放される可能性は低く、また、保釈される可能性も比較的低いということができます。
一方で、既に述べたとおり、傷害致死罪は裁判員裁判対象事件であり公判前整理手続きが行われますので、そのままでは長期間身体を拘束されたままになってしまいます。
また、勾留されたままでは、膨大な証拠資料について検討することもままなりません。
したがって、早期に身柄を解放されることがより重要となってきます。
信頼できるAさんの身元引受人を用意するなどし、可能な限り早期の身柄解放を実現できるよう活動しなければなりません。

~可能な限り有利な量刑による判決を目指す~

傷害致死事件における被害者及びその遺族の損害額は非常に大きく、数千万、億単位の損害が生じることも充分予想されます。
したがって、経済的な理由から、示談を成立させることは困難でしょう。
それでも、被害者の遺族に謝罪し、可能な限り損害を賠償することにより、真摯に反省していることを裁判所に訴えることはできます。
さらに、今後のAさんの生活を支援、監督する方を用意するなどし、よりAさんにとって有利な事情を積み重ねることが重要です。
弁護士のアドバイスを受けながら、事件解決に向けて行動していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が傷害致死事件を起こし逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。