脅迫事件で逮捕・弁護士の活動

2019-11-03

脅迫事件で逮捕・弁護士の活動

脅迫事件の逮捕と弁護士の活動について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例
Aは,自らの気に入らない政治的集会が神奈川県川崎市で開催されることを知り,「集会当日,参加者の身に何があっても知らない」「俺はやる気だ」などと,集会が開催される自治体の職員に対し,電話で申し向けた。
集会の開催者から相談を受け,捜査を開始した神奈川県中原警察署の警察官は,Aを脅迫罪の疑いで逮捕した。
逮捕を知ったAの家族は,脅迫事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~脅迫罪の成立について~

近年,インターネット等のコミュニケーションツールの発達もあり,安直な動機から脅迫行為に及び,逮捕されてしまうというようなケースが増えています。
本件では,政治的集会およびその開催者に害悪を加えると告知するという行為により,Aは脅迫罪(刑法222条1項)により逮捕されてしまっています。
同条項は,「生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」旨を定めています。
もっとも,本件では,実際には告知内容に該当するような行為は行われていません。
この点については,どのように考えられているのでしょうか。

まず,一般的に我々が想像する犯罪というと,窃盗罪のような財産犯が代表格として挙げられるかと思います。
財産犯は侵害犯に分類され,犯罪(既遂)の成立には財産に対する現実的な侵害が要求されます。

これに対し,本件脅迫罪のような犯罪は,危険犯,それも抽象的危険犯とされています。
危険犯とは,侵害犯とは異なり,刑法が保護の対象とするものに対する危険があることのみによって成立する犯罪です。
そして,その中でも抽象的危険犯とは,そのような危険が現実的なものでなくとも,一般的・類型的な危険さえ認められれば成立する犯罪です。
このような抽象的危険犯は何も特別な犯罪ではなく,現住建造物等放火罪など刑法典にも多く規定されている犯罪なのです。
また,脅迫罪には未遂規定がなく,既遂犯としてのみ処罰されることにも注意が必要でしょう。

本件では,人を畏怖させるに足りる害悪の告知があったそのことだけで,上記のような一般的・類型的な危険が認められるといえ,脅迫罪における「脅迫」という要件を満たすものと考えられます。 
本件のように,「脅迫」内容たる害悪の告知に該当するような行為を,実際には行っていなくても,脅迫罪の成立が認められるのです。

~脅迫事件における弁護活動~

本人が犯罪事実(被疑事実)を否認している場合(いわゆる否認事件)と,そうでない場合(いわゆる自白事件)で,弁護士による弁護活動の方針も変わってきます。
前者(否認事件)であれば,黙秘権の行使等も含め,捜査機関に相対するにあたって被疑者にとって何がベストな対応なのかを,分かりやすくそして時には被疑者を勇気づけるような活動を行うことが考えられます。
今般,誤認逮捕事案が広く報道されたように,逮捕されたからといって犯人であるとは限らないことは改めて言うまでもないことでしょう。
後者(自白事件)であれば,もちろん前科前歴の有無や事件の態様にもよりますが,早期の被害者との示談等を含め,起訴猶予(不起訴)を目指した弁護活動がまずは考えられるところです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,脅迫罪を含む暴力・粗暴事件も多数扱う刑事事件専門の法律事務所です。
上記のように,事件内容や逮捕されてしまった被疑者の言い分などによって,弁護士がなすべき弁護活動もおのずと変わってきます。
脅迫事件で逮捕されてしまった方のご家族は,365日24時間通話可能のフリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐお問い合わせください。