エアコン室外機放火事件で逮捕

2019-11-13

エアコン室外機放火事件で逮捕

エアコン室外機放火事件での逮捕について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事件】

Aさんは痴情のもつれから大阪市中央区に住むVさんとトラブルになっていました。
AさんはVさんに報復したいと考え,Vさん宅のエアコンの室外機に火を放ちました。
これによって室外機は完全に焼損してしまいましたが,あとは外壁が焦げたのみでした。
Vさんが被害届を提出したことで捜査が開始され,Aさんは大阪府南警察署逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

【現住建造物等放火罪】

人が住居として利用している建造物や人が現在している建物などに放火する行為は現住建造物等放火罪に当たる可能性があります。
現住建造物等放火罪は刑法第108条に規定されています。

刑法第108条
放火して,現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物,汽車,電車,艦船又は鉱坑を焼損した者は,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

現住建造物等放火罪の法定刑は死刑または無期もしくは5年以上の懲役で,殺人罪(刑法第199条)と同じ重いものとなっています。

現住建造物等放火罪の客体は,現に人が住居に使用し,または現に人がいる建造物,汽車,電車,艦船,鉱坑です。
このうち建造物とは,家屋や家屋に類似する建築物で,屋根があって壁または柱により支持されて土地に定着し,少なくともその内部に人が出入りできるものをいいます。

次に,「現に人が住居として使用し」ているとは,犯人以外の人が寝起きし食事をとる(起臥寝食と表現されます)場所として日常使用していることを意味します。
現に人が住居として使用していることを,当該建造物等に現住性があるといいます。
この現住性の理解によれば,その建造物等が居住者の生活の本拠である必要はありません。
また,毎日住居として利用されていなくとも,断続的に住居として使用されていれば現住性が認められ得ることになります。

さらに,大きな建造物の一部に現住部分がある場合は,全体が現住建造物になります。
これに関して,過去の判例では宿直室のある学校校舎,楽屋に人が寝泊まりしている劇場,待合業を営む家の離れ座敷,社務所や守衛詰所に人が寝泊まりする神社社殿などに現住性が認められています。
現住性の判断は,起臥寝食の場所としてそのために必要な家財道具の重要部分が運び出されたかどうか等の客観的事情と,居住者が起臥寝食の場所として使用する可能性を残しているかという意味での居住の意思の有無を併せて考慮してなされます。

今回Aさんが放火したのは,Vさんの住宅(現住建造物)に取り付けてあるエアコンの室外機です。
放火した箇所が現住建造物等の一部であればそれを焼損すると現住建造物等放火罪が成立するのに対し,放火した箇所が現住建造物等の一部でない場合は現住建造物等に延焼させる意図があってもその時点では現住建造物等放火未遂にとどまります。
従来,建造物の一部であるかの判断基準は毀損しなければ取り外すことのできない状態にあるかどうかというものでしたが,現在では,従来の基準では建造物等の一部とされていた設備であっても適切な工具等の使用により毀損せずとも取り外しが可能であるものも多く用いられています。
このような物については建造物等の一部と認めてもよいことから,基準を緩和し,容易には取り外すことのできない状態にある物であれば,建造物等放火罪における建造物等の一部と認められる可能性が高いです。
エアコンの室外機は適切な工具を使えば建造物を壊さなくても取り外すことは可能ですが,一般人が容易に取り外せる物ではないため,建造物の一部といえそうです。

【現住放火事件の弁護活動】

現住建造物等放火罪はその法定刑の重さから被疑者となれば逮捕や勾留されることが考えられます。
逮捕や勾留は被疑者が逃亡したり犯罪の証拠等を隠滅する恐れがある場合になされるものです。
よって依頼を受けた弁護士は依頼者によのような恐れがないことを示すことで逮捕や勾留の阻止を図ることになるでしょう。

また,刑法第25条の規定により,法定刑の下限が5年以上の懲役である現住建造物等放火罪では情状酌量等により刑の減軽がされない限り執行猶予はつきません。
情状酌量の判断基準としては,初犯かどうか,十分に反省しているか,焼損が軽微で人身に被害が及んでいないか,被害者との示談が成立しているかなどがあります。
現住建造物放火罪の場合,裁判員裁判の対象事件ですから,裁判員にもそういった事情が伝わるよう,工夫した公判弁護活動が行われることが求められます。

情状酌量のための事情の1つには,被害者との示談締結の有無があります。
そのため,弁護士が依頼者と被害者との間に入り依頼者の利益のために示談交渉に臨むことが考えられます。
弁護士が間に入ることで,被疑者と直接やり取りするのははばかられるという被害者の方でも示談交渉の場に臨んでくれることが期待できます。

現住建造物等放火罪の疑いをかけられた場合をはじめ,刑事事件では対処スピードがとても重要です。
現住建造物等放火罪の被疑者となってしまった方,ご家族やご友人が現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されて困っている方,大阪府南警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。