児童虐待と刑事罰

2019-11-18

児童虐待と刑事罰

児童虐待刑事罰について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

神戸市垂水区に住む女性Aさんは、旦那、Xちゃん(3歳)と二人暮らしでした。
ところが、Aさんは、ある日、同級生のBさんと偶然街で会ったことをきっかけに交際をはじめたところ、徐々にXちゃんに対する育児を放棄するようになりました。
そして、Aさんが自宅に戻ったところ、床の上でぐったりとしているXちゃんを見つけ、どうしていいかわからず110番通報しました。
Aさんは、駆け付けた兵庫県垂水警察署の警察官に「3日間、食事など与えていなかった。」「交際相手Bから自宅に帰ることを止められていた。」などと話しましたが、Vさんが死亡したとの連絡が入ったことを受けて保護責任者遺棄致死罪で逮捕されてしまいました。
逮捕の通知を受けたAさんの母親は驚き、刑事事件の実績、経験が豊富な弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 児童虐待とは ~

児童虐待による悲惨な事件が後を絶ちません。
児童虐待による痛ましい事件は頻繁に報道されています。

ところで、「児童虐待」の定義については、児童虐待の防止等に関する法律という法律(以下、児童虐待防止法)の2条に規定されています。
それによると、児童虐待とは保護者(略)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。以下同じ)について次に掲げる行為をいうとされています。
そして、「次に掲げる行為」とは、以下の行為です。

1号 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれがある暴行を加えること(身体的虐待)
2号 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること(性的虐待)
3号 児童の心身の発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること(ネグレクト)
4号 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(略)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと(心理的虐待)

以上からすると、Aさんの行為は3号の児童虐待に当たりそうです。

~ 児童虐待防止法で処罰されるの? ~

では、Aさんの行為が「児童虐待」に当たるからといって、Aさんが児童虐待防止法で処罰されるかといえばそうではありません。
同法には、児童虐待そのものを処罰する規定は設けられていないのです。
それは、以下でご紹介するように、「児童虐待」に当たる行為も刑法などのその他の法律に規定されている罪で処罰することが可能だからです。

~ 児童虐待と刑法(刑事罰) ~

では、児童虐待行為がどんな罪に当たり得るのか、前記各号につきそれぞれご紹介いたします。

1号については、暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)で処罰される可能性があります。
暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
なお、傷害させ、児童(人)を死亡させた場合は傷害致死罪(刑法205条)で処罰される可能性があります。
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役です。

2号については、強制わいせつ罪(刑法176条)、強制性交等罪(刑法177条)、監護者わいせつ罪(刑法179条1項)、監護者性交等罪(刑法179条2項)で処罰される可能性があります。
強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」、強制性交等罪は「5年以上の有期懲役」、監護者わいせつ罪は強制わいせつ罪と同様、監護者性交等罪は強制性交等罪と同様です。

3号については、保護責任者遺棄罪(刑法218条)で処罰される可能性があります。
法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。

児童(人)を傷害、死亡させた場合は保護責任者遺棄致傷罪保護責任者遺棄致死罪(刑法218条)で処罰される可能性があります。
前者の法定刑は「3月以上15年以下の懲役」、後者の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。

4号について、行き過ぎた暴言は暴行罪、それによって精神的な障害を患った場合などは傷害罪で処罰される可能性もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、児童虐待に関する刑事事件少年事件も取り扱う、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
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