兵庫県伊丹市の恐喝事件

2019-09-09

兵庫県伊丹市の恐喝事件

Aさんは自動車の運転中、兵庫県伊丹市のとある交差点で信号を待っていたところ、男性が赤色信号を見落として交差点に進入したため、Aさんの車と衝突事故を起こしました。
男性の一方的な過失によりAさんは治療費入院費など合計300万円の損害を被りました。
Aさんは男性に300万円を請求しましたが一向に払ってくれません。
そこでAさんは男性に対し、「早く300万円を支払ってくれ。支払わなければあんたの家族も同じ目に合うかもしれないな」と言いました。
その言葉に男性は畏怖しAさんに300万円を支払いました。
その後、Aさんは男性が300万円を支払った経緯について兵庫県伊丹警察署に相談していることを耳にしました。
不安になったAさんは刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです)

今回のAさんの事例で問題となるであろう犯罪は、以下の条文に規定されている恐喝罪です。

刑法第249条1項
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

恐喝罪の「恐喝」とは脅迫または暴行を用いて人から金銭などを交付させることをいいます。
刑法上の恐喝罪にあたるかは、条文に書かれた構成要件に該当するかが問題となります。

1、恐喝罪の成立要件

恐喝罪が成立するためには、①「恐喝行為」⇒②「相手方の畏怖」⇒③「畏怖に基づく交付行為」⇒④「財物の移転」⇒⑤財産的損害が発生すること、これらが因果関係によって貫かれていること、および故意が必要となります。

まず、①「恐喝行為」とは財物交付に向けて行われる脅迫または暴行であって、その反抗を抑圧するに至らない程度の行為をいいます。
脅迫とは人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいますから、「痛い目にあわすぞ」といった何らかの法益の侵害を内容とする告知が必要です。
この告知は本人以外の親族に対するものも含まれます。
本件でAさんは「支払わなければあんたの家族も同じ目に合うかもしれないな」と発言しています。
この発言は男性の家族に対する害悪の告知に当たり得るので、脅迫を行ったとして恐喝行為があったと認められてしまう可能性があります。

次に、②「相手方の畏怖」とは、これは相手が恐喝行為により畏怖=簡単に言えば怖がることが必要となるということです。
今回の場合男性はAさんの発言に畏怖していることから、仮にAさんの発言が恐喝行為にあたれば、男性が恐喝行為により畏怖したこととなってしまいます。

そして、③「畏怖に基づく交付行為」および④「財産的利益の移動」とは、相手方の畏怖と交付行為と財物の移転に因果関係が認められることを必要としています。
本件で男性は、300万円をAさんに交付していることから、300万円という財物が男性からAさんのもとに移転していることがわかります。
これが男性の畏怖から行われたものであれば因果関係が認められる可能性があります。

最後に、⑤「財産的損害の有無」ですが、本件では男性はAさんに対して事故で300万円の損害を与えていることから、300万円はもともとAさんに支払われるべきものであり、男性に財産的損害はないようにも思えます。
しかし、恐喝罪は窃盗罪等と同じく個別財産の罪であり、被害者を畏怖させその占有する財物を交付させた場合は財産的損害が発生したと言えます。
本件でも、300万円がAさんに交付されて財物の移転がある以上、恐喝行為があったと認められれば財産的損害も有るとされる可能性があります。

そして、犯罪が成立するには基本的に故意が必要とされますが、故意とは犯罪事実の認識・認容をいいます。
今回の場合であれば、Aさんは男性を恐喝することについて認識していれば、恐喝罪の故意があったと認められることになります。

以上のような成立要件に該当すれば恐喝罪が成立し得ます。
では、こうした成立要件に該当すれば、犯罪は成立してしまうのでしょうか。

2、違法性阻却事由

恐喝罪の成立要件に該当する場合でも、違法性が阻却される場合があります。
債務に対する恐喝罪に該当する場合でも、権利の行使という正当な目的があり、権利の範囲内であってその手段が社会的相当性の範囲内といえれば違法性が阻却されると考えられます。

本件でもAさんは事故で被った300万円を回収するという目的があり、その300万円を超えることなく男性に支払いを求めています。
そこでその手段が社会的相当性の範囲内と言えれば、違法性は阻却される可能性があります。
手段が社会的相当性の範囲内であるかどうかについては、その手段の態様や当時の状況等、様々な事情を考慮して判断されます。

恐喝罪の成立は、法律の条文に加え条文の解釈や事件の具体的な内容など、さまざまな要素から判断することになります。
その判断には専門的な知識が必要となりますので、専門家である弁護士の見解を聞くようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件恐喝事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスを行っています。
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