現住建造物等放火罪と殺人罪

2019-09-14

現住建造物等放火罪と殺人罪

京都府亀岡市在住のAさん(45歳)は、一緒に暮らす妻と息子を道連れに焼身自殺をしようと、深夜、自宅に火を放ち、自宅と離れを全焼させました。
その時、眠っていたAさんの妻と息子は火事になっていることに気付かず、一酸化炭素中毒によって死亡してしまいました。
しかし、Aさんは怪我を負ったものの無事であり、通報を受けた京都府亀岡警察署の警察官により、Aさんは現住建造物等放火罪殺人罪の疑いで逮捕されました。
(これはフィクションです)

~現住建造物等放火罪~

今回Aさんが逮捕された際の容疑の1つである現住建造物等放火罪は、刑法108条に規定されています。

刑法108条
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉄鉱を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

〇放火
「放火」(放火行為)とは、目的物の焼損を惹起させる行為のことをいいます。
目的物に点火する行為や、目的物を燃やすために媒介物に点火する行為などが「放火」にあたります。

また、消火義務があるにもかかわらず、消火をしなかった場合も「放火」にあたるとされています。

〇焼損
「焼損」の意味については、争いがありますが、裁判所の判例は昔から一貫して独立燃焼説を採用しています。
独立燃焼説とは、「火が媒介物を離れて目的物が独立に燃焼を継続しうる状態になったこと」をいいます。
新聞紙やガソリンなどの媒介物が無くても建物などが燃える状態が「焼損」にあたります。

〇現に人が住居に使用(現住性)
「現に人が住居に使用し」ている状態とは、犯人以外の者が起臥寝食の場所として日常使用している状態のことをいいます。
犯人以外の者には、家族や同居人も含まれます。(共犯である場合は除きます)

また、日常使用しているのならば、住居の中に、現に人がいる必要性はありません。
たまたま、外出していた時に放火をした場合でも、現住建造物等放火罪に該当します。

今回の事件で言えば、Aさんの自宅に火を放つ行為は「放火」にあたり、その結果自宅と離れは全焼しているため、「焼損」にあたるでしょう。
また、自宅は、Aさんの家族が起臥寝食の場所として日常使用されているため、「現に人が住居に使用し」ていたといえるでしょう。
そのため、Aさんには現住建造物等放火罪が成立する可能性は極めて高いです。

~殺人罪との関係~

放火し、これによって人を殺害した場合は、現住建造物等放火罪殺人罪の両方が成立します。
この時どのような処罰がされるのでしょうか。

刑法第54条1項
1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

1つの行為が数個の罪名に触れる場合を「観念的競合」といいます。
観念的競合になった罪は、「最も重い刑により処断」されます。
例えば、A罪が1月以上15年以下の懲役であり、B罪が3年以上10年以下の懲役である場合にA罪とB罪が観念的競合になる場合は、刑罰は3年以上15年以下の範囲で処断されることになります。

現住建造物等放火罪殺人罪は、同じ1つの行為によるものであるので、観念的競合となります。
現住建造物等放火罪の刑罰は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役であり、殺人罪も同様であるため、刑罰は現住建造物等放火罪殺人罪の刑罰と同じものになります。

放火事件では、様々な法律判断がされることになります。
そのため、1度弁護士に状況を整理してもらうことをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、京都府亀岡市放火事件など、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。