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脅迫罪と強要罪

2019-06-06

脅迫罪と強要罪

神奈川県横須賀市に住むAさんは,スマートフォンを使って,ゲーム仲間Vさんに「最終通告です。大勢を敵に回しており,攻撃される準備が行われている,逃げたまえ」などというメールを送信し,Vさんに引っ越しを余儀なくさせたという強要罪の容疑で,神奈川県田浦警察署から呼び出しを受けています。
Aさんは,脅迫罪強要罪の違いや今後の対応などに暴力事件を含む刑事事件専門弁護士無料相談を申込みました。
(実際に存在した事例を基に作成しています)

~ はじめに ~

上の事例をみて脅迫罪強要罪?と判断に迷われた方おられるのではないでしょうか?
そこで,まずは,脅迫罪強要罪の内容について解説したいと思います。

~ 脅迫罪 ~

脅迫罪は刑法222条に規定されています。

1項 生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も,前項と同様とする。

= 害を加える旨の告知(害悪の告知) =
害悪の告知は,一般に人を畏怖させるに足りる程度のものでなければならないとされています。
人を畏怖させるに足りるものであったか否かは,告知に至るまでの経緯,告知した人(年齢,性別など),告知内容,告知された相手(年齢,性別など)などの状況から判断されます。
したがって,同じ内容でも人,相手などによっては「害悪の告知」と認められることもあれば,認められないこともあります。
過去の判例(昭和35年3月18日)では,「出火御見舞申上げます,火の用心に御注意」が害悪の告知と認定されましたが,これは暴力団組員から同じ暴力組員への脅迫行為に関する事例判断です。

* 「夜道を歩くときは気をつけろよ」 *
例えば,企業のSNSアカウントに「(企業をを運営する)社長さん,夜道を歩くときは気を付けろよ」等書き込みをしたらどうでしょうか。
あくまで企業のSNSアカウントに対しての行為なので,社長に対して「告知した」とは言いづらそうですが,例えば,この文言を社長自身のSNSアカウントに投稿したら脅迫罪となる可能性は高いでしょう。
SNSでの軽率な発言であっても,脅迫罪に当たり得ることは肝に銘じておいた方がよさそうです。

~ 強要罪 ~

強要罪は刑法223条に規定されています。

1項 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,3年以下の懲役に処する。

強要罪でも「害悪の告知」が必要とされています。
ただし,強要罪は,結果として相手方に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害したことが必要ですから,強要罪の「害悪の告知」はその程度のものであることが必要とされています。

~ 脅迫罪と強要罪の違い ~

脅迫罪強要罪は大きく,以下の違いがあります。

= 犯罪の性質,要件の違い =
以上からもお分かりいただけますように,脅迫罪は「害悪の告知」をしただけで成立する罪,強要罪は「害悪の告知」+「人に義務のないことを行わせること」あるいは「権利の行使を妨害したこと」が必要です。
また,脅迫罪の「害悪の告知」は,それによって相手方が畏怖したかどうかは問わないとされているのに対し,強要罪の「害悪の告知」は,結果として相手方に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害するに足りる程度のものである必要があります。

= 法定刑の違い =
脅迫罪2年以下の懲役又は30万円以下の罰金で,強要罪3年以下の懲役です。
両者を比べてみるとよく分かりますが,強要罪には罰金刑がありません。
つまり,強要罪で起訴されると必ず正式裁判を受ける必要が出てきます。
裁判所は,土日は開廷してくれませんから,会社員の方であれば休暇を取る必要があります。
また,慣れない法廷という場は極度に緊張するものです。
判決が出るまでは「刑務所に行かなければならないだろうか」などと不安が続きます。
対して,脅迫罪は選択刑として罰金刑がありますから,そのような不安や緊張に悩まされなくて済む場合もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,脅迫罪強要罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
強要罪については特に,検察官が起訴する前に被害者と示談を成立させ,不起訴処分獲得を目指すことが重要です。
お困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881で,無料相談,初回接見サービスをお申し付けください。

警視庁福生警察署で逮捕~正当防衛

2019-06-01

警視庁福生警察署で逮捕~正当防衛

【事件】
仕事から帰宅途中のAさんは、東京都羽村市にある公園に差し掛かったところで若者に因縁をつけられました。
「睨んだだろう」と言う若者に対して、全く身に覚えのないAさんは「睨んでいない」と主張しましたが、その態度に若者は激高しました。
若者が手に持っていたサバイバルナイフを振りかざし今にも襲い掛かろうとしたので、Aさんは手に提げていた通勤バッグで若者の頭を殴りました。
走って立ち去ろうとしたAさんでしたが、騒ぎを聞きつけた警視庁福生警察署の警察官に暴行罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その時、若者は脳震盪で病院に搬送されていました。
Aさんは、「自分は正当防衛をしただけなのに犯罪になってしまうのか」と不安になり、家族が接見を依頼した弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

【正当防衛】

急迫不正の侵害に対し、自分または他人の生命・権利を防衛するため、やむを得ずにした行為を正当防衛といいます。
正当防衛が認められれば、違法性がないとして仮に起訴されても無罪になります。

以下、少し細かく正当防衛が成立するための要件についてご紹介します。

・急迫不正の侵害があること
自分や他人に危険が今まさに差し迫っており、その危険の発生原因が正当な理由に基づかない場合に、急迫不正の侵害があると言うことができます。

・自己又は他人の権利を防衛するためにとられた行為であること
ここでいう権利とは、広く一般的に法律等で保護されている権利を意味します。
危険が自分自身や、あるいは他人のこれらの権利を脅かそうとしている際に、その権利を守る目的でなされた行為である必要があります。

・やむを得ずにした行為であること
防衛者がその行為を行わなければ、危険にさらされた権利が守れないものであったといえなければなりません。
また、攻撃内容に対して、反撃内容がその強さに応じた相当なものでなくてはなりません。
例えば、素手で殴りかかってきた相手に対してけん銃で反撃したような場合には相当であるとは言えず、そうした場合、過剰防衛であるかどうかが問題となりえます。

・侵害者に向けられた行為であること
防衛行為と認められるためには、反撃が侵害者に向けられていなければなりません。
もし反撃行為が全く関係のない第三者に当たった場合には、その第三者との関係では緊急避難の問題となり、侵害者との関係では、反撃行為が各種未遂罪の行為に該当する場合に正当防衛の問題として扱われる場合があります。

ドラマなどでよく正当防衛という言葉を耳にすると思いますが、これらの細かい条件をそれぞれクリアしないと、法律的には正当防衛と認められるのは難しくなります。
逆に、正当防衛が認められれば、その行為については犯罪が成立しないことになります。

【Aさんの場合】

Aさんは若者を殴って気絶させていますので、客観的にはAさんは暴行罪あるいは傷害罪の容疑で警察の捜査を受けることになります。
ここで、Aさんがバッグで若者を殴って気絶させたことについて正当防衛が成立するかどうかみていきましょう。

まずAさんは若者にナイフで襲われており、侵害の急迫性が認められます。
また、若者のナイフで襲い掛かる行為は正当行為等で正当化されるものではなく、不正性も認められます。

Aさんのバッグによる攻撃(反撃)は、ナイフで襲い掛かろうとしている若者から身を守るためにとられたもので、そうしなければAさんの身体が傷つけられたでしょう。
したがってAさんの反撃は自身の身体ないし生命という自己の権利・利益を守るためにとられた行為であるといえます。

Aさんは逃げる余裕もないまま、他に身を守る方法もなく若者をバッグで殴っています。
殺傷性のあるナイフに対してAさんの武器はバッグであり、反撃手段の強度も相当であると考えられ、そうすると「やむを得ずにした行為」の要件は満たされると考えられます。

また、この反撃はAさんを襲った若者に対してとられた行為で、侵害者に向けられた行為です。

以上より、Aさんがバッグで殴った行為が正当防衛であると認められる可能性は非常に高いといえます。

しかし、警察官の厳しい取調べ等、捜査の過程で自分にかけられた暴行や傷害の容疑内容を認めるような発言をしてしまった場合、起訴されてしまったり、最悪の場合前科がつくことになってしまうかもしれません。
もし身を守るためにとった行為に暴行や傷害の容疑がかけられてしまった場合は、お早めに刑事事件に強い弁護士に相談することをおすすめします。
早い段階で適切な対応をすることにより、不起訴処分や無罪を得られる可能性が高くなります。

正当防衛の状況下でとられた行為について逮捕されてしまった方、ご家族やご友人が警視庁福生警察署に逮捕されてしまった方は、お早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
警視庁福生警察署までの初回接見費用:39,000円

福岡県直方市の落書き事件

2019-05-22

福岡県直方市の落書き事件

~ケース~
福岡県直方市在住のAさんは市民団体に所属しており,熱心な活動家であった。
ある年,福岡県直方市の市長選に所属する市民団体と政治思想を相いれないXが当選した。
AさんはXが市長となったことに抗議するために福岡県直方市内のX氏の後援会事務所の外壁にスプレーで抗議の声明を大書した。
その後,防犯カメラや目撃者の証言などによりAさんは福岡県直方警察署建造物損壊罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)

~落書き~

今回のケースでAさんは建造物損壊罪で逮捕されています。
建造物損壊罪は刑法260条で次のように規定されています。

刑法260条
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

ここで,軽犯罪法1条33号の次のような規定も確認しておきましょう。

軽犯罪法1条33号
みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者

他人の建造物へ落書きする行為は軽犯罪法1条33号の「汚した者」に該当するといえますので,落書き行為は軽犯罪法違反となると考えられます。

ところで,今回のケースではAさんは建造物損壊罪の疑いで逮捕されています。
外壁などに落書きをすることは建造物損壊罪のいう「損壊」に当たるのでしょうか。
損壊とは客体の用法に従って使用することを事実上不可能にする行為をいいます。
物理的に破壊し,またはその形態を変更することは必ずしも必要ではなく,本来の目的に使用することができない状態にする行為も含まれます。

裁判所(東京地判平成16・2・12)は刑法260条の「損壊」について以下のように述べています。

建造物の本来の効用を滅却あるいは減損させる一切の行為をいい,物理的に建造物の全部又は一部を毀損する場合だけではなく,その外観ないし美観を著しく汚損することによっても,建造物の効用を実質的に滅却ないし減損させたと認められる場合があり,このような場合には,たとえその建造物の本質的機能を害するには至らなくても,その行為は「損壊に」当たるとするのが相当である。
軽犯罪法1条33号との関係では,建造物の外観ないし美観を汚損する行為が建造物損壊罪所定の損壊にまで当たるといえるか否かについては,建造物の性質,用途ないし機能との関連において,汚損行為の態様,程度,原状回復の難易度等,諸般の事情を総合考慮して,社会通念に照らし,その汚損によってその建造物の効用が滅却ないし減損するに至ったか否かを基準として判断すべきである。

裁判となった事件は,区立公園の公衆便所の外壁にラッカースプレーで外壁をほとんど埋め尽くすような形で「反戦」「戦争反対」などと書いたものです。
この事件では落書きを洗剤やシンナーなどで消去することが出来ず,壁面の再塗装でしか消去できず,再塗装には7万円の費用がかかるということで,建造物損壊罪のいう「損壊」であると認定されました。

~Aさんの場合~

Aさんの行為が建造物損壊罪となるかどうかはAさんが行った行為が上記の「損壊」の要件に当たるかどうかによります。
たとえば,水で簡単に消せるというような場合には原状回復が容易ですので軽犯罪法違反にとどまるといえます。
しかし,裁判になった事件のように,シンナーなどを使っても消すことが出来ず,再塗装が必要であるような場合には建造物損壊罪が成立してしまうでしょう。

建造物損壊罪の法定刑は5年以下の懲役刑のみですので,起訴されてしまった場合には刑事裁判が開かれることになります。
しかし,建造物損壊罪は危険が生じるような物理的な損壊の場合や今回のケースのような損壊というように事案によって犯行態様が異なります。
今回のケースのような落書きが損壊とされた場合,損壊の認定は原状回復の困難さ等が要件となっています。
そのため,再塗装の費用などを被害弁償として被害者の方に支払うことで検察官が事件を不起訴とする可能性もあります。
被害弁償などをして不起訴を目指す場合または建造物損壊罪となるか軽犯罪法違反となるかを争うような場合には刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に依頼するのをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
建造物に落書きをしてしまい逮捕されてしまった方,警察に呼ばれお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見サービス・無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。
福岡県直方警察署までの初回接見費用:41,400円)

【虐待】傷害罪の幇助で逮捕・無罪主張

2019-05-17

【虐待】傷害罪の幇助で逮捕・無罪主張

京都市左京区に住んでいるAは、夫Bが自らの子であるV(8歳)に対し、虐待行為をし怪我を負わせていたにも関わらず、これを止めることもせず黙認し続けていた。
近所の人からの通報により、虐待行為が発覚し、京都府下鴨警察署の警察官は、AをVに対する傷害罪の容疑で逮捕した。
これに対し、Aは一貫として犯行を否認している。
Aの家族は、暴力事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~虐待事例と共犯~

本件では、BがVに対して傷害行為をしたことは明らかですが、A自体は何もしていません。
刑法が原則として(明文のない限り)作為による犯罪行為のみを処罰していることからすると、Aは何ら刑事責任を負うことはないとも思えます。
刑法204条に規定されている傷害罪も、「人の身体を傷害した者」は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と、「人の身体を傷害」するという積極的な行為の処罰を前提とした規定となっています。

まず、犯罪を直接的に実行していない者が第1次的な刑事責任を負う場合として(共謀)共同正犯(刑法60条)があります。
もっとも、これが成立するには、共犯者間での共謀のほか、自己の犯罪として何らかの積極的な役割を果たしたことが求められるため、本件のようなケースでは(共謀)共同正犯の責任まで負わせることは難しいと考えられます。

仮に共同正犯としての責任を問うことは難しいとしても、幇助犯(62条1項)として犯罪の成立が考えられます。
幇助犯とは、正犯の犯罪の実行を容易する者をいいます。
これは、不作為による場合でも成立すると考えられており、具体的には本件のように夫(や妻)が子に対する虐待をしている場合に、妻(や夫)がこれを止めない場合に犯罪阻止義務違反として問題になることになります。
すなわち、犯罪を阻止しないことが、正犯の犯罪を容易にしているという点で不作為による幇助行為として刑事責任の対象になってくるのです。
したがって、本件では、AにBの子Vに対する傷害行為(虐待)を阻止する義務があったのか等が争点になってくると考えられます。

~家族内の虐待事件と刑事弁護活動~

まず、弁護士としては、Aのような何ら作為を行っていない者に刑事責任を負わせていいのか、本人の言い分も含めしっかりと検討する必要があるでしょう。
特に虐待事件では、家庭内環境など様々な要因を調査・分析する必要があります。
例えば、虐待事件においては、Aが恒常的にBから暴力(ドメスティック・バイオレンス等)を受けていた等、犯罪被害者である側面を有することも多く、本当に虐待を止めることができたのか具体的な検証が必要になります。
したがって、弁護士としては、Aに幇助犯を含め刑罰を伴う刑事責任を負うべき事案なのかを慎重に判断し、場合によっては無罪主張をしていくことも考えられるでしょう。

こういった虐待事件が報道などで耳目を集めると、どうして子どもを守れなかったのかという批判が世間からなされることも少なくありません。
しかし、そういった感情的批判と、当該行為が刑罰によって処罰されるべきものであるかは、全く別物であるというべきであり、被疑者の言い分に真剣に耳を傾けるのが弁護士としての重要な職務となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、虐待による傷害事件を含む暴力事件に強い刑事事件専門の法律事務所です。
正犯事件のみならず、(従属的な)共犯事件についても経験が豊富な弁護士刑事事件についての弁護活動をうけたまわります。
無罪主張を含め、不起訴や無罪獲得といった被疑者のための弁護活動を行ってまいります。
傷害事件虐待)で逮捕された方のご家族は、24時間365日対応のフリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐお問い合わせください。
京都府下鴨警察署までの初回接見費用:35,000円)

神戸市長田区の恐喝事件

2019-05-12

神戸市長田区の恐喝事件

~ケース~
神戸市長田区在住のAさんは,Vさんとともに合同会社Xを設立した。
しばらくしてAさんとVさんは不仲になり,Aさんは合同会社Xを退職することになった。
その際,Aさんは退職金として100万円受け取ることになり,内金として50万円を受取った。
その後,Vさんが残りの50万円を払わなかったため,Aさんは友人であるBおよびCとVさんの下へ赴いた。
その場でAさんらはVさんに対し「要求に応じないと五体満足でいられなくなるかもしれんぞ」「こんなことまでさせられてる俺たちの顔を立ててもらおうか」などと言いVさんを畏怖させて,退職金の残金50万円をAさんに交付させた。
Vさんは兵庫県長田警察署に被害届を出し,Aさんは恐喝罪の疑いで逮捕された。
(判例をもとにしたフィクションです)

~脅迫と恐喝~

刑法において,相手方を畏怖させる行為を脅迫罪として規定しています。
相手方を畏怖させた上で,権利の行使を妨害し,義務なきことを強制した場合には強要罪が,金銭その他の財物を交付させた場合には恐喝罪が成立し,条文は以下のとおりです。

刑法第222条(脅迫罪)
生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

刑法第223条(強要罪)
生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,3年以下の懲役に処する。

刑法第249条(恐喝罪)
人を恐喝して財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。

法定刑についてみると,脅迫罪には罰金刑が定められていますが,強要罪や恐喝罪の場合には罰金刑が定められていません。
そのため,強要罪や恐喝罪で起訴されてしまうと正式な刑事裁判を受けることになります。

今回のケースでは,AさんがVさんから受け取った50万円は退職金としてAさんが受け取る権利を有する金銭になります。
すなわち,AさんはVさんに50万円の支払いを要求する正当な権利を有していたのですが,Vさんを脅すことによって権利の行使をした場合にも恐喝罪となってしまうのでしょうか。
これについて裁判所は,他人に対して権利を有する者が,その権利を実行することは,その権利の範囲内でありかつその方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を超えない限り,何ら違法の問題を生じないけれども,その範囲程度逸脱するときは違法となり,恐喝罪が成立することがあるとしています(最三小判昭和27・5・20)。

今回のケースでは,Aさんらは「五体満足でいられなくなるかもしれんぞ」等と告知しており,もし要求に応じない場合はVさんに危害を加えるような態度を示しており,Vさんもそれによって畏怖したといえてしまいますので,権利行使の手段として社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を逸脱しているとされる可能性が非常に高くなります。

~恐喝罪と起訴~

恐喝罪として起訴されてしまうと罰金刑がありませんので正式な刑事裁判を受けることになります。
ケースのもととなった事件では,3万円の債権に対し6万円を交付させたという事件で,恐喝罪となるのは本来受け取ることができた金額を超えた部分だけであると争っていましたので正式裁判になりました。
裁判の結果として,本来受け取ることが出来る金額を超えた部分だけでなく,交付させた金額全体に恐喝罪が成立すると判示されました。

司法統計によると,2017年検察庁で扱われた恐喝事件の内起訴されたのは31.7%です。
初犯であったり,被害金額が大きくない,被害者との示談が成立しているといった場合には不起訴となる可能性は高いでしょう。
また,起訴されてしまっても初犯であれば被害金額や犯行態様にもよりますが執行猶予付きの判決となることが多いようです。

今回のケースではAさんはVさんから本来貰える金額しか交付を受けていませんので,恐喝してしまった行為について謝罪などをしVさんから許してもらうことによって不起訴となる可能性もあります。
しかし,脅迫や恐喝などの場合,被害者の方は恐怖心から加害者と会ってくれるということは少ないと思われます。
そういった場合には,弁護士が間に入ることで被害者の方と話し合いができ,謝罪や示談などを円滑に進めることが可能になります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
脅迫罪や強要罪,恐喝罪に問われてしまいお困りのかたは0120-631-881までお気軽にお電話下さい。
初回接見サービス・無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。
兵庫県長田警察署までの初回接見費用:35,200円

騒音による傷害事件(大阪市此花区)

2019-05-07

騒音による傷害事件(大阪市此花区)

~ケース~
大阪市此花区在住のAさんは,以前よりから確執のあったマンションの隣室のVさんに向けて嫌がらせのためにラジオの音声や目覚まし時計のアラームなどの騒音を大音量で鳴らし続けた。
Aさんは約半年間,Vさんに向かって早朝から深夜までラジオ音声やアラームを鳴らし続けた。
Vさんはその騒音による精神的ストレスで慢性的な頭痛を訴えるようになった。
Vさんが大阪府此花警察署に相談したところ,被害届を提出することとなり,Aさんは傷害罪の疑いで大阪府此花警察署に逮捕された。
(実際にあった事件をもとにしたフィクションです)

~「傷害」の意義~

傷害罪は刑法204条に「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
「人の身体を傷害」するとは人の身体の生理機能を害することを言います。
いわゆる通常の外傷を負わせた場合に限られず,病気をうつした場合や,人を失神させた場合なども「傷害」に含まれます。

「傷害」は通常,暴行,すなわち有形力の行使によって行われます。
しかし,有形力の行使がなくても,無形的な手段によって成立する傷害罪も考えられます。
たとえば,被害者に栄養剤だと騙して下剤を飲ませて下痢を起こさせる,脅迫して精神病に追い込む場合などがこうした傷害罪のケースとなるでしょう。
判例は,嫌がらせの電話で精神に異常をきたした場合にも傷害罪を認めています(東京地判昭和54・8・10)。
無言電話によってPTSDを生じさせた場合も傷害罪となるとされています(福岡高判平12・5・9)。
また,落とし穴に被害者を誘導し自ら落下させたという場合も傷害罪が成立すると考えられます。
今回のケースのように大音量のラジオなどの騒音で慢性頭痛症等に陥らせた場合に傷害罪となるのは上記のような判例を考えると当然だと思われます。

ここで,刑法は故意処罰が原則となっていますので,傷害罪が成立するには傷害発生に関する認識が必要です。
今回のケースでは,早朝から深夜まで大音量の騒音を流すという嫌がらせをしています。
その為,AとしてはこれによってVの身体になんらかの生理的障害が発生してもよいと考えているといえそうです。
このような場合には,未必的な故意があるとされ罰せられます。

~弁護活動~

今回のケースのもととなった事例はニュースでも大きく取り上げられました。
もととなった騒音による傷害事件の事例では「音楽を大音量で鳴らし続ける行為は、被害者に精神的ストレスを与え、身体の生理的機能を害するもので傷害罪にあたる」「傷害の確定的な故意があり犯行は陰湿。」と認定され,最終的に懲役1年8月の実刑判決が下されました。
ただし,もととなった事例では加害者は罪を認めず,被害者に対する謝罪などを一切しておらず「執拗かつ陰湿。反省の態度が感じられず、再犯の可能性も強い」と認定された結果,実刑判決となったと思われます。

傷害罪の場合,傷害の程度や前科などにもよりますが被害者の方へ謝罪をする,治療費や慰謝料を支払うなど,示談を成立させれば実刑判決とならない可能性が高くなります。
ただし,傷害事件をはじめとする刑事事件では,示談交渉をしようとしても被害者の方は直接加害者と会ってくれないという場合も多いです。
そのような場合,弁護士であれば,警察や検察から被害者の情報を教えて頂くことによって被害者の方と示談交渉ができる場合もあります。
示談交渉をすることによって,事案によっては不起訴処分の獲得や略式罰金によって正式裁判を回避することに繋がることも考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
騒音などの嫌がらせ行為によって傷害罪に問われてしまいお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約を24時間受け付けております。
大阪府此花警察署までの初回接見費用:35,300円)

埼玉県和光市の公務執行妨害事件

2019-05-02

埼玉県和光市の公務執行妨害事件

~ケース~
埼玉県和光市在住のAさんは仕事の帰りに同僚とお酒を飲んでいた。
帰宅途中,Aさんは通りがかりの埼玉県朝霞警察署の警察官Vに職務質問を受けた。
その際,VはAさんの鞄の中身を確認しようとし,Aさんは酔っていたこともあり,「何で鞄の中を見るんだ!お前に何の権限があるんだ!」と言いながらVを突き飛ばした。
Vはその場に転倒したがすぐに立ち上がり,Aさんは公務執行妨害罪の現行犯として逮捕された。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士に初回接見を依頼した。
(フィクションです)

~公務執行妨害罪~

公務執行妨害罪は刑法95条1項に次のように規定されています

「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」

公務執行妨害罪が成立する公務員の職務は適法である必要があるとされていますので,今回のケースでは,まずはVのAさんに対する職務質問が適法な職務であったかが問題となります。

そもそも警察官による職務質問は何を根拠に行われるのでしょうか。
警察官のによる職務質問は警察官職務執行法第2条に基づいて行われています。
条文は次のようになっています。

警察官職務執行法第2条
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
(2項以下略)

お酒を飲んで酔っている人の場合には,前段の異常な挙動が見られるとして職務質問を行うことは許されると考えられます。
そのため,今回のケースのVによる職務質問は警職法2条により適法なものであったといえるでしょう。
ただし,職務質問はあくまでも任意の捜査ですので応じない相手の腕を掴むといった有形力の行使は原則許されておらず,犯罪の予防という目的との兼ね合いで適法であったかが判断されることになります。

さて,今回のケースでは職務質問自体は適法であったと思われますが,鞄の中を確認する所持品検査まで職務質問として許されているのでしょうか。
職務質問の際の所持品検査は条文上に規定はありませんが判例によって,職務質問に不随して所持品検査をすることが認められています。
そうすると,鞄の中身を無理やり確認しようとしたといった有形力の行使があったといえない場合には任意の捜査として鞄の中身を確認するといった所持品検査も適法なものといえるでしょう。

こうしたことから,AさんがVを突き飛ばした行為は適法な公務員の職務の執行に対して行われた暴行といえ,Aさんには公務執行妨害罪が成立すると考えられます。

~弁護活動~

公務執行妨害罪となるケースでは,警察官とのトラブルでカッとなって手を出してしまったというケースが多く見られます。
そのような場合,その場で相手の警察官に現行犯逮捕されてしまうことが多いでしょう。
相手が怪我をしていないなど軽微なものであれば本人の態度や反省などによって微罪処分となる場合もあるようです。

相手が怪我をしてしまったというような場合等は通常の事件として検察に身柄を送致されますが,公務執行妨害罪は性質上,罪証隠滅のおそれが少ないといえます。
そのため,弁護士が勾留の必要がないといった意見書や,ご家族の方による上申書などを提出することによって勾留されずに釈放され在宅事件となる場合も多いです。
万が一勾留されてしまった場合には弁護士は勾留に対する準抗告申立をし,1日でも早い身柄解放を目指します。

公務執行妨害罪の起訴率はおおよそ50%ですが,前科もなく,事件が悪質でなく,本人がきちんと反省しているといったような場合には不起訴処分となる場合もあります。
起訴されてしまった場合でも,公務執行妨害罪では略式起訴となる場合も多いです。
略式起訴となれば,刑事裁判を受ける必要がなく,書面で罰金刑の処罰を受けることになります。
また,刑事裁判となってしまっても,前科ない場合などは執行猶予付きの判決や,罰金刑となる場合が多いです。
しかし,略式起訴や執行猶予付判決であっても前科となってしまいますので,不起訴処分を目指すことが重要になります。
公務執行妨害罪の場合,できるだけ早い段階で弁護士に弁護を依頼することで,入念な準備のもと不起訴を目指していくことが可能となります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
公務執行妨害罪を起こしてしまいお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
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福岡県北九州市内の公務執行妨害事件

2019-04-12

福岡県北九州市内の公務執行妨害事件

~ケース~
Aさんが休日に福岡県北九州市の繁華街を歩いていたところ、パトロール中の福岡県八幡東警察署の警察官に挙動不審者として職務質問を受けました。
Aさんが職務質問を拒否したので、警察官は応じるよう説得を続けましたが、Aさんはこれをしつこく感じ、苛立ちから警察官の顔面を殴打してしまいました。
警察官に怪我はありませんでしたが、Aさんは公務執行妨害罪の現行犯として逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~公務執行妨害罪を解説~

公務執行妨害罪は、公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加える犯罪です。
裁判で公務執行妨害罪の有罪が確定すると、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処せられます。

今回Aさんが警察官からされた職務質問は、警察官職務執行法第2条1項を根拠とする職務行為です。
つまり、警察官が職務質問する際に暴行や脅迫をすれば公務執行妨害罪となりえるということになります。
違法な公務に保護を与える必要はないので、公務執行妨害罪のいう「職務」は適法でなければならないと解されていますが、Aさんのケースの職務質問は適法と判断される可能性が高いと思われます。
適法な職務質問を行う警察官に対し、顔面を殴打する暴行を加えたものと判断されれば、公務執行妨害罪が成立する可能性は極めて高いでしょう。

~逮捕されたAさんはどうなるか~

逮捕されれば警察で取調べを受けることになりますが、取調べ後も釈放せず、身体拘束を続ける必要があると判断された場合、逮捕時から48時間以内に被疑者は検察に送致されます。
検察では、検察官が取調べを行います。
その上で、身柄を受け取ったときから24時間以内にAさんの勾留を請求するか、釈放するか、あるいは起訴するかを決めます。
勾留請求がなされた後は、裁判官がAさんを勾留するかどうかを検討します。
勾留するべきであると判断されれば、勾留決定が出され、最長10日間、勾留延長がなされると、さらに最長10日間身体拘束をされます。
以上を合計すると、捜査段階で最長23日間身体拘束をされることになります。

~Aさんはどうするべきか~

勾留されるとしばらく外に出ることができないので、勤務先から解雇されるなど生活への悪影響が懸念されます。
そのため、なるべく早い段階から、弁護士に相談して身柄解放活動を依頼すべきです。

公務執行妨害事件において、被害者の公務員に怪我がなく、被疑者の身元がはっきりしており、逃亡・罪証隠滅のおそれがなければ、比較的短期間の身体拘束ですむ可能性を期待することもできます。
身柄解放活動を依頼された弁護士は検察官、裁判官に対し、勾留の要件を満たさないことを主張し、勾留をさせないよう働きかけます。

勾留されてしまったとしても、身体拘束の期間はなるべく短い方が被疑者やその周囲にとってよいのは言うまでもないでしょう。
勾留されてしまった場合には、勾留決定に対する不服申し立て(「準抗告」といいます)を行ったり、勾留延長をしないよう働きかけたり、勾留期間を短縮するよう求めたりすることが考えられます。

~不起訴処分の獲得を目指す~

現在の日本では、一旦起訴されると無罪判決を獲得するのは極めて困難です。
有罪判決を受けてしまうと前科がつくことになり、今後の社会生活に悪影響を与えることがあります。
不起訴処分を獲得できれば、そもそも裁判にかけられることがないので、前科がつかずにすみます。
Aさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決めるのは検察官です。
弁護士は、検察官に対し、Aさんに有利な事情を説明し、不起訴処分とするよう働きかけることができます。

~贖罪寄付を検討~

不起訴処分の獲得に向けた活動として、被害者と示談をすることが挙げられますが、公務執行妨害事件においては、被害者が警察官であるため、示談交渉を拒否される場合がほとんどです。
そのため、弁護士会や慈善団体に寄付をする「贖罪寄付」を行うことが考えられます。
被害者の損害を賠償するものではないため、効果は示談に比べて一般的に落ちますが、贖罪の意思を示すことができるので、処分内容が検討される際、Aさんに有利な事情として訴えかけることができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、刑事事件を専門とする弁護士が多数在籍しており、公務執行妨害事件の解決実績も豊富です。
福岡県北九州市内でご家族、ご友人が公務執行妨害事件を起こし、逮捕されてしまった方は、0120-631-881までお問い合わせください。
福岡県八幡東警察署までの初回接見費用:4万1,540円)

京都府京田辺市のペットによる過失傷害事件

2019-04-07

京都府京田辺市のペットによる過失傷害事件

京都府京田辺市在住のAさんは自宅の庭で大型犬を放し飼いにしていた。
ある日,Vさんが愛犬の散歩中にAさん宅前を通りがかったところ,Aさんの大型犬がたまたま開いていた玄関から飛び出しVさんとVさんの飼い犬に噛みついた。
Vさんは全治1週間の怪我を負い,Vさんの飼い犬も怪我をしてしまった。
そして,Aさんはこの件で京都府田辺警察署に呼ばれて話を聞かれることになった。
Aさんは今後どのように対応すればよいか弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用した。
(フィクションです)

~ペットによる傷害事件~

最近では,主に犬や猫といったペットを飼われている方が多いと思われます。
Aさんのケースのように,自分のペットが突然他人に襲いかかって怪我をさせてしまったという事件も多くあります。
自身の飼われているペットが他人に怪我をさせてしまった場合,飼い主は刑事上,どのような責任を負うのでしょうか。

まず考えやすいところでいうと,他人に怪我をさせてしまっているので傷害罪(刑法204条)となってしまうのではないか,というイメージがあるかもしれません。
しかし,刑法は故意犯が原則ですので(刑法38条),ペットに指示して人を襲わせたというような場合でなければ傷害罪とはなりません。
ですが,刑法38条但し書きは,特別な規定がある場合には罰することができる,すなわち過失であっても処罰できると規定しています。
刑法には過失傷害罪(刑法209条1項)が規定されていますので,自分のペットが不注意によって他人に怪我を負わせてしまったようなケースでは,飼い主にはこちらが適用されることになります。
過失傷害罪の法定刑は30万円以下の罰金又は科料となっています。

では,今回のケースではVさんのペットにも怪我をさせてしまっていますが,動物に対する怪我は刑事上どのような扱いになるのでしょうか。
ペットのような他人が占有している動物の場合には,他人の所有物という扱いになり,器物損壊罪(刑法261条)が成立します。
しかし,器物損壊罪には過失処罰規定がありませんので,過失による器物損壊の場合には刑事上の責任は問われません。
ただし,民法718条1項に「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定されていますので民事上の賠償責任は発生してしまいます。

また,ペットが大型犬など力の強い動物であり,小さい子どもに対して襲い掛かってしまったような場合,相手の命を奪ってしまう可能性もあります。
その場合には過失致死罪(刑法210条)となり法定刑は50万円以下の罰金となります。
また,ペットが人に危害を加える性癖を持っているなどの事情を認識しつつ,その管理を怠り他人に怪我をさせてしまったり,命を奪ってしまったというような場合には重過失致死傷罪(刑法211条後段)に問われる可能性があります。
重過失致死傷罪の場合の法定刑は5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金となります。

~示談交渉~

過失致死罪や重過失致死傷罪は親告罪ではありませんが,過失傷害罪の場合は親告罪(刑法204条2項)となっていますので被害者の方の告訴がなければ検察官は公訴を提起することができません。
そのため,被害者の方と示談を成立させ,過失傷害罪で告訴されないようにしていくことが考えられます。
しかし,怪我をしてしまった被害者の方は,被害感情から加害者の方と会ってくれない,連絡を取れないというケースも多くあります。
そのような場合に,弁護士が間に入ることで被害者の方が示談に応じていただけたり,また,適正な示談金額の提示も可能となることも多いです。

また,今回のケースではAさんはペットにも怪我をさせてしまっているので民事上の責任も発生します。
弁護士が示談交渉をすることによって刑事上だけでなく民事上の示談も同時に成立させることも可能です。

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兵庫県尼崎市 立ち小便で器物損壊事件

2019-04-02

兵庫県尼崎市 立ち小便で器物損壊事件

兵庫県尼崎市在住のAはある日の深夜,酒に酔ってV宅の玄関前で立ち小便をした。
その際,玄関前に置いてあった大理石の置物および玄関の塀にAの尿がかかった。
たまたま外に出てきたVにAが立ち小便しているところを発見され,通報によりかけつけた兵庫県尼崎東警察署の警察官にAは逮捕された。
(フィクションです)

今回のケースでAには軽犯罪法違反,器物損壊罪,公然わいせつ罪が成立することが考えられます。
まずはそれぞれの条文を確認しましょう。

軽犯罪法第1条
左の各号の一に該当する者は,これを拘留又は科料に処する。
26号 街路又は公園その他公衆の集合する場所で,たんつばを吐き,又は大小便をし,若しくはこれをさせた者

刑法第261条
(略)他人の物を損壊し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

刑法第174条
公然とわいせつな行為をした者は,6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

今回のAがしてしまったV宅の玄関前での立ち小便ですが,公道からV宅玄関に向かって立ち小便をしたものです。
街路で小便をしていますので軽犯罪法第1条の26号違反となるでしょう。

では,Aに器物損壊罪は成立するのでしょうか。
器物損壊罪のいう「損壊」とは物理的な損壊に限らず,心理的に使用できなくするような行為も含まれると解されています。
そのため,他人の物に自身の尿をかけてしまう行為は,心理的に物を使用できなくする行為となり器物損壊罪となる可能性があります。
判例は,料理店の食器に放尿した行為について、器物損壊罪の適用を認めています。
食器を入念に消毒すれば再使用はできるが、一度尿の付いた食器は誰も使いたがらないので器物損壊罪が適用されました(大判明治42年4月16日刑録15輯452頁)。

さらに,Aに公然わいせつ罪は成立するでしょうか。
今回のケースでは立ち小便をするために陰部を露出していると思われます。
陰部を露出する行為は公然わいせつ罪のいうわいせつな行為に該当します。
しかし,公然わいせつ罪のいう「公然」とは不特定または多数人が認識しうる状態を指します(最決昭和32年5月22日刑集11巻5号1526頁)。
本件では,公道で陰部を露出していることから,不特定又は多数の人が認識する可能性のある状態であったと言えることから,たとえ目撃者がいなくとも,公然わいせつ罪が成立する可能性があります。
ただし,通行人や目撃者等がいなければ,公然わいせつ罪として理論上成立はしたとしても,公然わいせつ事件として立件される可能性は低くなることも考えられます。

今回のケースで,仮にAには軽犯罪法違反および器物損壊罪が成立するとした場合,どういった刑罰を受ける可能性があるのでしょうか。
軽犯罪法に規定されている「拘留」とは1日以上30日未満の身体拘束をいい,軽犯罪法や器物損壊罪に規定のある「科料」とは1000円以上1万円未満の金銭を徴収することをいいます。
また,拘留の判決が出ることは非常に稀で,1年間で数件しかありません。
科料は事案にもよりますが,判決として出されることはあります。

また,軽犯罪法違反の場合,悪質な事案でなければ警察段階で事件を終了させる微罪処分や,送検されてしまっても起訴猶予の不起訴処分となることも多いです。
一方,器物損壊罪の場合は情状次第では起訴されてしまう可能性があります。
ただし,器物損壊罪は刑法264条で「告訴がなければ公訴を提起することができない」と定められています。
すなわち,被害者の方からの告訴がなければ検察官は起訴できないという規定になっています。

今回のケースでは被害弁償をし,Vから告訴を取り下げてもらえれば不起訴となる可能性は非常に高いでしょう。
そのため,弁護士はVと被害弁償や慰謝料の支払いなどを打診し,告訴を取り下げてもらえるように示談交渉を行っていくことになるでしょう。
器物損壊罪などの親告罪の場合,怒りの感情から加害者が被害者の方に直接会って示談するというのは難しい場合が多いです。
また,せっかく被害弁償や慰謝料などを支払っても,有効な示談書が作成できず告訴を取り下げてもらえないという場合も考えられます。
そのような事態を避けるために示談交渉を含む法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
他人の物を壊してしまった器物損壊罪でお悩みの方,示談交渉をお考えの方は0120-631-881までお気軽にお電話下さい。
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兵庫県尼崎東警察署までの初回接見費用:37,000円)

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