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器物損壊事件を起こし取調べ

2019-12-28

器物損壊事件を起こし取調べ

器物損壊事件を起こし取調べを受けるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

Aさんは友人と兵庫県川西市にある居酒屋へ遊びに行っていた際、些細なことで口論となり、居酒屋の店長が仲裁に入りました。
すると、Aさんは店長に対しても怒りをあらわにし、店長にも因縁をつけるなどして暴れてしまいました。
そしてAさんはついカッとなり、テーブルの上にあった注文用の端末を床にたたきつけ、破壊してしまいました。
店長は兵庫県川西警察署に通報して警察官を呼び、Aさんは駆け付けた警察官により、器物損壊罪の容疑で話を聞かれるため、兵庫県川西警察署まで連れてこられてしまいました。
(フィクションです)

~器物損壊事件について~

器物損壊罪とは、他人の物を損壊し、又は傷害する犯罪です。
器物損壊罪の客体となる「物」とは、公用文書等毀棄罪、私用文書等毀棄罪、建造物等損壊罪の客体以外の全ての物をいい、動産だけでなく、不動産も含まれ、さらに、他人の動物も含まれます。

そして器物損壊罪の「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為をいい、物を嫌がらせ目的で隠匿する行為も「損壊」に該当します。
なお、器物損壊罪のいう「傷害」とは、動物に対する損壊行為を指し、他人の動物を殺傷したり、逃がしたりする行為がこれに該当します。
動物に対しては、器物損壊罪とは別に、動物愛護法違反の罪が成立する可能性にも注意しなければなりません。

今回のケースにおける「注文用の端末」は、明らかに居酒屋や店長の「物」であり、床に叩きつけて使用不能にする行為は、「損壊」に該当しますから、Aさんの行為には器物損壊罪が成立することになるでしょう。
器物損壊罪について有罪が確定すると、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処せられます。

~器物損壊事件で在宅捜査を受ける場合~

Aさんは器物損壊事件を起こしたとして話を聞かれるようですが、警察署では犯行に至った経緯、どのように端末を破壊したかなどについて詳しく尋ねられることになるでしょう。
器物損壊事件を起こしてしまったとしても、必ず逮捕されるというわけではありません。
適切な身元引受人を用意し、帰宅できる場合もあります。

逮捕されずに帰宅できた場合は、すぐに弁護士と相談し、事件解決に向けたアドバイスを受けることをおすすめします。
今回のケースの場合は、被害者と示談を行い、先方に生じさせた損害を賠償することが重要です。
器物損壊罪は「親告罪」であり、被害者による告訴がなければ、起訴されません(刑法第264条)。
したがって、告訴されてしまっている場合に、被害者に対して謝罪を行い、損害を賠償することによって、起訴される前に告訴を取り消してもらうことができれば、確実に不起訴処分を獲得することができます。

~器物損壊事件で逮捕されてしまった場合~

警察署で取調べを受けた後、逮捕されてしまう可能性は否定できません。
器物損壊事件を起こして逮捕されてしまった場合においても、上記の示談を行うことが重要です。
ただし、逮捕されてしまった本人は外に出ることができませんので、弁護士が外で活動することが不可欠です。
示談が成立すれば、釈放される場合もありますし、告訴が取り消されれば、釈放される可能性が高くなります。

逮捕されている場合には、身柄解放活動を行う必要もあります。
逮捕・勾留されてしまうと、捜査段階において、最長23日間もの間留置場や拘置所に入らなければなりません。
身体拘束が長引けば長引くほど、Aさんの社会復帰が難しくなります。
そのため、一刻も早く外に出ることができるように、弁護士に活動してもらう必要があります。
上記の示談交渉も身柄解放活動の1つということができますが、他にも、「勾留をさせない活動」、「勾留後の釈放を目指す活動」など、様々な身柄解放活動があります。
特に「勾留をさせない活動」は、なるべく早い段階で弁護士を付けることにより、初めて可能となる身柄解放活動です。

在宅捜査で事件が進行する場合も、逮捕されてしまった場合であっても、Aさんにとってより有利に事件を解決するためには、弁護士のサポートが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件少年事件につき、初回無料で法律相談を受けていただくことができます。
事件を起こしてしまった方が逮捕されている場合には、初回接見(有料)のお申込みにより、弁護士がご本人のもとまで伺い接見を行います。
器物損壊事件に関してお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

傷害罪とDV法違反

2019-12-23

傷害罪とDV法違反

傷害罪DV法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

大阪府豊中市に住むAさんは、妻Vさんに日常的に暴力を繰り返していたとして、裁判所からDV法に基づく保護命令を受けました。
その措置に関して納得のいかなかったAさんは、知人つてでVさんの居場所を特定し、大阪府豊中市の自宅から出てきたVさんを待ち伏せして、Vさんに「なんで保護命令など申し立てたんか。」「話し合おうって言ったじゃないか。」などと言って、Vさんの顔面や腹部等を足蹴にするなどの暴行を加え、Vさんに加療約1か月間を要する傷害を負わせてしまいました。
その後、Aさんは大阪府豊中警察署傷害罪DV法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ 傷害罪 ~

傷害罪は刑法204条に規定されています。

刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪

① 暴行の故意+暴行行為
② 傷害の故意+傷害行為

の2パターンから成立する可能性があります。

暴行の故意とは、要は、怪我させるつもりはなかったという場合です。
この暴行の故意で暴行行為を働き、結果、傷害を発生させた場合でも傷害罪に問われ得ることになります。

他方、傷害の故意とは、傷害させるつもりだったという場合です。
傷害の故意で傷害行為を働き、結果、傷害を発生させた場合は傷害罪に、傷害を発生させなかった場合は暴行罪(刑法208条)に問われ得ることになります。

そして、傷害罪の成立には、暴行行為又は傷害行為と傷害との間に因果関係があることが必要です。
この因果関係の考え方についても諸説ありますが、基本的には「その行為がなかったならばその結果は発生しなかった」という関係が認められれば因果関係を認められるとされています。
よって、例えば、暴行行為により被害者に骨折を負わせたとされても、暴行行為の前に、被害者が別の原因で骨折したということが判明した場合は、「その行為がなくても結果は発生していた」といえますから因果関係は否定されることになり、傷害罪は成立しないことになります。

~ DV法違反 ~

DV法とは、正式名称、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律といいます。
DV法では、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的として、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等に関する規定を設けており、平成26年1月3日から施行されています。

DV法では、配偶者に対する暴力そのものを処罰する規定は設けていません。
しかし、保護命令に違反した場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に処すとの規定は設けています。

保護命令」とは、相手方(Aさん)からの申立人(Vさん)に対する暴力を防ぐため、裁判所が相手方に対して出す

①接近禁止命令
②退去、はいかい禁止命令
③電話等禁止命令
④子への接近禁止命令
⑤親族等への接近禁止命令

の総称をいいます(なお、③から⑤の命令は、必要な場面に応じて被害者本人への接近禁止命令の実効性を確保する付随的な制度ですから、単独で発令されることはなく、申立人に対する接近禁止命令が同時に出る場合か、既に出ている場合のみ発令されます)。

接近禁止命令とは、6か月間、申立人の身辺につきまとったり、申立人の住居(同居する住居は除く。)や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令です。
退去命令とは、申立人と相手方とが同居している場合で、申立人が同居する住居から引越しをする準備等のために、相手方に対して、2か月間家から出ていくことを命じ、かつ同期間その家の付近をうろつくことを禁止する命令です。
子への接近禁止命令とは、子を幼稚園から連れ去られるなど子に関して申立人が相手方に会わざるを得なくなる状態を防ぐため必要があると認められるときに、6か月間、申立人と同居している子の身辺につきまとったり、住居や学校等その通常いる場所の付近をうろつくことを禁止する命令です。
親族等への接近禁止命令とは、相手方が申立人の実家など密接な関係にある親族等の住居に押し掛けて暴れるなどその親族等に関して申立人が相手方に会わざるを得なくなる状態を防ぐため必要があると認められるときに、6か月間、その親族等の身辺につきまとったり、住居(その親族等が相手方と同居する住居は除く。)や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令です。
電話等禁止命令とは、6か月間、相手方から申立人に対する面会の要求、深夜の電話やFAX送信、メール送信など一定の迷惑行為を禁止する命令です。

DV事案では、逮捕される可能性が非常に大きいです。
お困りの方は、お気軽に弁護士へご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

傷害致死罪と嘱託殺人罪との区別

2019-12-18

傷害致死罪と嘱託殺人罪との区別

傷害致死罪嘱託殺人罪との区別について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

埼玉県新座市に住むV女と懇意になったA男は,真実死ぬ意思があることを秘した状態で,Vから気絶するまで水面に顔を沈めてほしい旨を懇請された。
Aは,Vが死んでしまうのではないかと考えたが,Vがこれは「自殺ごっこ」にすぎず,助けを呼べばすぐに警察や救急車等がくるから大丈夫だと説得を繰り返した。
納得したAは,Vが死ぬことはないという認識の下で,Vが気絶するまで水面に顔を沈めた結果,Vは死亡するに至った。
通報を受けて駆け付けた埼玉県新座警察署の警察官は,捜査の結果,Aを傷害致死罪の疑いで逮捕した。
なお,Aに殺意がなかったこと自体には争いはない。
Aの家族は,暴力・粗暴事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~傷害致死罪と嘱託殺人罪~

刑法には,殺人罪(刑法199条)が規定されていることは,誰もが知るところです。
さらに刑法の同じ章(26章)には,続けて「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者」を処罰する自殺関与罪や同意殺人罪等を処罰する規定(202条)が置かれていることは,あまり知られていないかもしれません。
この点,本件Aは,Vとともに「自殺ごっこ」などと称し,客観的にはVの殺人の承諾を得て,Aを死亡させています。
この行為に関しては,上記で紹介した202条のうち「人をその嘱託を受け……殺した者」(同条後段)として,同意殺人の中でも「嘱託殺人罪」が成立するようにも思われます。

では,なぜAは嘱託殺人罪ではなく,傷害致死罪(205条)で逮捕されているのでしょうか。
この点に関しては,近年出された裁判例が参考になります。
札幌高裁平成25年7年11日判決は,まず,殺意こそ認めなかったものの殺意がない場合にも上記「人をその嘱託を受け……殺した者」(202条後段)として嘱託殺人罪が成立するとした1審(地裁)判決を破棄しています。
その上で,高裁判決は,被害者による殺人の承諾を知らないまま,暴行・傷害の故意で行った嘱託に基づく行為にはあくまで傷害致死罪(205条)が成立する旨を判示しています。
加害者に殺意がない以上は,被害者による承諾という形で人を殺害することの認識を前提とする嘱託殺人罪が成立するとの判断には無理があり,傷害致死罪(刑法205条)が成立するとしたのです。

~傷害致死罪における弁護士の弁護活動~

上記地裁判決が嘱託殺人罪を成立させたことには,法定刑の問題が関連しています。
嘱託殺人罪(刑法202条)の法定刑が「6月以上7年以下の懲役又は禁錮」であるのに対し,傷害致死罪(刑法205条)の法定刑は「3年以上の有期懲役」とされており,法定刑が不均衡なのではないかとも思われるからです。

しかし,法定刑だけを考慮するのは妥当ではなく,仮に後者の罪を問われたとしても,裁判所が量刑面で不均衡にならないように考慮するのが通常であると考えられています。
したがって,弁護士としても単純に法定刑の問題のみから嘱託殺人罪が成立するとの主張を行うべきではないとも考えられるところでしょう。

もっとも,殺意こそなかったものの,人を故意行為によって,死亡させている以上は起訴される(刑事裁判になる)ことはやむを得ないとも考えられます。
また,傷害致死罪は,裁判員裁判対象事件であることから,この点も弁護士としては考慮を要するといえます。
起訴された場合,弁護士としては,実刑判決を避け,執行猶予を得るための弁護活動を行うことになると考えられます。
執行猶予を得れば,被疑者・被告人にとって最も不利益ともいえる刑務所等への収監という自体を避けることができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害致死罪を含む暴力事件などを専門に扱う刑事事件専門の法律事務所です。
傷害致死事件で逮捕された方のご家族は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に今すぐにお電話することをおすすめいたします。

タクシー強盗で強盗致傷罪、窃盗罪

2019-12-13

タクシー強盗で強盗致傷罪、窃盗罪

タクシー強盗強盗致傷罪窃盗罪となるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

神奈川県秦野市に住むAさんは、ギャンブルやお酒にお金を使い果たし、自宅へ帰るまでの交通手段に困っていました。
そこで、Aさんはタクシーを無賃乗車して自宅まで帰ろうと考え、Ⅴさんが運転するタクシーを停車させて乗車しました。
Aさんは、タクシーが自宅付近に近づくと、Ⅴさんに対し「ちょっと、小便がしたくなった。」「降ろしてほしい。」と言い、Vさんがタクシーを停車させたことからタクシーから降りました。
Aさんは草むらまで行き、小便をするふりをして後方を振り返るとVさんがタクシーに乗ったままだったことから「逃げるのはいまだ。」と思い、その場から逃走しました。
すると、酔って足取りが悪かったAさんは、逃走に気づいたVさんにあっという間に追いつかれてしまいました。
Aさんは、Vさんから「お客さんお支払いがまだですよ。」などと言われたとたん、Vさんの顔面を右手拳で1回殴りました。
その後も、AさんはVさんの顔面や腹部を拳で殴り、Vさんがひるんだ隙にタクシーに向かい、売上金5万円を奪ってその場から逃走しました。
その後、神奈川県秦野警察署の捜査の結果、Aさんは強盗致傷罪窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

タクシーの無賃乗車、その後のVさんに対する暴行、売上金の盗難につきいかなる罪が成立しうるのか見ていきます。

~ 詐欺利得罪 ~

まず、Aさんが無賃乗車をする意図がありながらその意図を秘しタクシーに乗り込み、Vさんに目的地付近までタクシーを運転させた行為につき詐欺利得罪が成立することが考えられます。

詐欺罪は刑法246条に規定されています。

刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

このうち2項が、いわゆる詐欺利得罪に関する規定です。
詐欺利得罪は、「前項の方法(人を騙すこと)」により、「財産上不法の利益を得」ることで成立します。
具体的には、料金を支払う意図がないにもかかわらず、タクシー内で運転を依頼する言動、目的地を指定する言動が騙す行為に当たるでしょう。

また、「不法の利益」とは利益の不法、ではなく、利益を得るための手段が不法であることを意味します。ここで「利益」とは、タクシーで目的地まで送り届けてくれること、でしょう。
AさんはVさんを騙してタクシーを運転させ、目的地まで送り届けさせていますから「財産上不法の利益を得」たことに当たります。

~ 強盗利得罪 ~

次に、AさんがVさんを殴った行為につき強盗罪が成立する可能性があります。

強盗罪は刑法236条に規定されています。

刑法236条
1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

このうち2項が強盗利得罪に関する規定です。
強盗利得罪は、「前項の方法(暴行又は脅迫)」により、「財産上不法の利益を得」た場合に成立します。
「暴行又は脅迫」の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りるものでなければならないとされています。

・被害者に債務を免除させる
・被害者に一定のサービスを提供させる
・被害者に債務の負担を口頭で約束させる

などがその典型でしょう。
なお、強盗利得罪の場合、詐欺利得罪と異なり、被害者の処分行為は不要とされています。

人に怪我をさせたり、死亡させた場合は、強盗致死傷罪(刑法240条)が適用され同罪で処罰される可能性があります。
同罪の罰則は、怪我(負傷)させた場合は「無期又は6年以上の懲役」、死亡させた場合は「死刑又は無期懲役」です。

~ 窃盗罪 ~

最後に、Aさんが暴行後に売上金5万円を持ち去った行為については、Aに窃盗罪の成立する可能性があります。
AさんはⅤさんを殴った上で売上金を持ち去っていますから強盗罪が成立しそうです。
しかし、この暴行は、売上金を奪うためではなく、あくまでタクシーの料金支払いを免れるためになされたものにすぎません。
よって、強盗罪ではなく窃盗罪が成立します。

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傷害罪で正当防衛を主張

2019-12-03

傷害罪で正当防衛を主張

傷害罪正当防衛を主張するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは、Aさんが所有する東京都中央区の宅地に立ち入り「立入禁止」と記載された看板を設置しにやってきたVさんに対して、Vさんの胸を両手で突き転倒させ、頭部打撲のケガを負わせたとして、警視庁月島警察署の警察官により傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族から依頼を受けた刑事事件に強い弁護士がAさんに初回接見したところ、Aさんは、「Vさんの胸を突きけがをさせてしまったことは間違いないが、これは私が所有する宅地の権利を守るためにやったのだ」と話していました。
そこで、刑事事件に強い弁護士は、正当防衛による無罪主張を検討しています。
(フィクションです。)

~ 傷害罪 ~

傷害罪は刑法204条に規定されています。

刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 

これが傷害罪の規定ですが、暴行罪(刑法208条)の規定をみると傷害罪がどんな罪かより明らかとなります。

刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

つまり、人に暴行を加え、よって、人の身体を傷害させた場合傷害罪が成立します。

ここで「暴行」とは、人の身体に対する不法な有形力の行使をいい、殴る、蹴る、突く、押す、投げ飛ばすなどがその典型といえるでしょう。
「傷害」とは、人の生理的機能の障害をいい、例えば切傷や打撲、火傷などのほか、失神や抑うつ症、睡眠障害などもこれに含まれます。
そして、暴行行為、又は傷害行為と傷害との間に因果関係があることが必要です。
この因果関係の考え方についても諸説ありますが、基本的には「その行為がなかったならばその結果は発生しなかった」という関係が認められれば因果関係を認められるとされています。

なお、傷害罪は、相手を怪我させようとする意図で怪我させた場合はもちろん、相手を怪我させるつもりはなくても結果的に怪我させた場合でも成立することに注意が必要です。

~ 正当防衛 ~

ある行為が犯罪に当たる行為であっても、それが正当防衛の要件を満たす行為であればその行為の違法性はなく犯罪は成立しません。
正当防衛は刑法36条1項に規定されています。

刑法36条1項
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

これからすると、正当防衛は、「急迫性」、「不正の侵害」、「自己又は他人の権利」、「防衛するため」、「やむを得ずにした」という要件が必要であることが分かります。

事例では、Aさんの土地に立ち入るという「急迫不正の侵害」行為をしたVさんに対して、Aさんが自己の土地という「自己の権利」を「防衛するため」に、Vさんの胸を両手で突き倒した行為が「やむを得ずにした」行為がどうかが問題となります。
この点、「やむを得ずにした行為」とは、権利を防衛するための手段として必要最小限度のものであることを意味します。
ここで重要なのは、「手段」として必要最小限度であればよいということであり、「結果」が必要最小限度であることまで要求されていないということです。

上の事案の基となった裁判例においては、被告人と被害者の間には体格差等があることや、被害者が後退して転倒したのは被告人の力のみによるものとは認め難いこと等の事情を踏まえて、「暴行の程度は軽微であったというべき」としたうえで、「そうすると、本件暴行は、被告人らの主として財産的権利を防衛するために被害者の身体の安全を侵害したものであることを考慮しても、いまだ被害者らによる上記侵害に対する防衛手段としての相当性の範囲を超えたものということはできない。」として、「本件暴行については、刑法36条1項の正当防衛が成立して違法性が阻却される」と判断されました。
これからすると、Aさんの行為についても、正当防衛の成立が認められる余地はあると考えられます。
正当防衛が成立すると犯罪は不成立となるため刑罰が科されることはありません。

このような正当防衛の成否については、なかなか自分だけで考えづらい部分がありますから、弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
傷害事件正当防衛の成否についてお悩みの方は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。

居酒屋で暴行事件を起こし逮捕

2019-11-28

居酒屋で暴行事件を起こし逮捕

居酒屋で暴行事件を起こして逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

Aさんは、福岡県田川市の居酒屋でお酒を楽しんでいる最中、隣席の客Vさんが話している内容が気に食わず、口論を持ちかけました。
Vさんは冷静に対応していましたが、Aさんは怒りを抑えることができず、Vさんの左肩を右手の拳で殴打してしまいました。
居酒屋の店員の通報により駆け付けた福岡県田川警察官にも「Vさんが悪いんだよ」「口喧嘩をして何が悪い」などと言い、一向に落ち着く気配がなく、警察官はAさんを暴行罪の現行犯として逮捕しました。
(フィクションです)

~暴行罪について~

暴行罪の「暴行」とは、人の身体に対し不法に有形力を行使することをいいます。
暴行罪につき有罪が確定すると、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処せられます(刑法第208条)。
なお、暴行を行い、被害者に傷害を負わせてしまった場合には、暴行罪ではなく、傷害罪が成立し、有罪判決を受ける場合には15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。

暴行罪が成立するには、人の身体に対し有形力を行使する故意が必要です(傷害するつもりで傷害の結果が発生しなかった場合も含みます)。
したがって、たまたま腕が他人に当たってしまったという場合には、暴行罪が成立することはありません。
なお、暴行を行い、傷害結果が発生した場合には、傷害の故意がなくても傷害罪が成立します。

~暴行に該当する具体例~

人を殴ったり、蹴ったりする行為が暴行罪を構成することはもちろんですが、

・他人の被服をつかんで引っ張り、又は取り囲んで自由を拘束して電車に乗り込むのを妨げる行為(大審院昭和8年4月15日判決)
・顎紐をかけて被っていた巡査の帽子を奪い取る行為(東京高裁昭和26年10月2日判決)
・食塩を他人の顔、胸などに数回振りかける行為(福岡高裁昭和46年10月11日判決)

などについても、裁判例により暴行罪の暴行に該当すると判示されています。

また、他人をくすぐったり、タバコの煙を吹きかける行為などについても、暴行と判断される可能性があります。
以上のように、暴行罪の暴行に該当する行為の範囲はかなり広いということができます。

~暴行罪で逮捕されたAさんの今後は?~

逮捕後は、警察署に引致され、弁解を録取された後、取調べを受けることになります。
釈放されず、留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。

送致を受けた検察官も、Aさんを取調べ、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するか、あるいは起訴するかを決めます。

勾留請求を受けた裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されます。
やむを得ない事由があると認められると、さらに最長10日間勾留されます。

逮捕・勾留されると、捜査段階で最長23日間もの間身体拘束を受けることになります。
反面、暴行事件は、送致される段階、あるいは送致後の検察官の段階で釈放されることも多いです。
より早期に弁護士に依頼し、適切な身柄解放活動を行うことにより、早期の身柄解放を実現できる可能性が高まります。

さらに、Vさんと示談を成立させることも重要です。
勾留が付く前に示談が成立すれば、勾留請求又は勾留決定がなされずに釈放される可能性が高まります。
また、勾留がついてしまった後でも、示談が成立すれば、釈放されることもあります。
そして、示談が成立すれば、ケースの暴行事件に関連してVさんから損害賠償請求を受けるリスクもなくなります。
示談には多くのメリットがあり、刑事事件においては、被疑者・被告人の身体拘束期間を短くし、有利な処分(不起訴処分、より軽い量刑による判決)を獲得できる可能性を高めるための重要な活動と位置付けられています。
接見にやってきた弁護士に、示談交渉、示談の効果についてアドバイスを受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、暴行事件の解決実績も豊富です。
ご家族が暴行事件を起こしてしまい、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

債権回収と恐喝事件

2019-11-23

債権回収と恐喝事件

債権回収恐喝事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

京都府南丹市在住のAさんは、友人のBさんに20万円を貸していたが、約束していた返済期日になってもBさんがお金を返そうとせず、返済が遅れていることについてのBさんからの謝罪などもなかったことから、Bさんに対して怒りを募らせていた。
後日Aさんは、何としてもBさんに20万円を返済させようと考え、Bさんの自宅に行きBさんに強く返済を迫った。
しかし、BさんはAさんの返済要求に対し「もう少し待ってくれ」と言うばかりで具体的な返済計画なども話そうとしなかった。
Bさんの対応に激怒したAさんは、「いい加減にしろ。舐めたことを言っているとお前やお前の家族を殺すぞ。」とBさんに対して怒鳴りつけた。
Bさんは、Aさんが本気だと考えその場で20万円を返済したが、Aさんのことが怖くなり、京都府南丹警察署に通報。
Aさんは恐喝事件の被疑者として取調べを受けることになってしまった。
(上記の事例はフィクションです)

~権利行使と恐喝~

恐喝罪の「恐喝」とは、暴行又は脅迫を手段とし、その反抗を抑圧するに至らない程度に相手方を畏怖させ、財物の交付を要求することをいいます。
今回の事例の場合、AさんがBさんからお金を返してもらうために脅迫を手段とした場合、貸した金銭を返金するように言う行為は正当な行為といえるため、恐喝罪が成立するかが問題になります。

まず、恐喝罪は他人の財産を侵害する財産犯としての性質を有していることから、恐喝罪が成立するためには、被害者に財産上の損害が発生している必要があると考えられています。
上記の事例の場合、被害者であるBさんはAさんに借りていた20万円を返済したに過ぎないことから、Bさんには財産上の損害は何ら発生していないとも思えます。
もっとも、恐喝罪は個別財産に対する犯罪であることから、財産の交付行為があればその交付した財産そのものを損害として観念できると考えられています。
BさんはAさんに20万円を借金の返済として交付していることから、Bさんに20万円の損害が発生していると考えることができます。
そのため、被害者たるBさんに20万円の財産上の損害が生じているといえます。

また、刑法35条は「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」と規定しています。
AさんはBさんに対し20万円を貸しており、民法上AさんはBさんに対し貸金返還請求をなし得る立場にあることから、AさんがBさんから20万円の交付を受けた行為は、法令上正当な行為として、刑法35条より違法性が阻却され恐喝罪が成立しないとも思えます。
もっとも、仮にお金を貸していたとしても、過度な暴行や脅迫を行った上で借金を無理矢理にでも返済させるような行為については、法令上認められた正当な行為とはいえず、恐喝罪が成立することになるといえます。

では、どの程度までなら許され、どの程度からが恐喝となるかということですが、判例では「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内でありかつその方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り、何等問題も生じない」とされています。
上記の事例の場合、AさんはBさんに対し貸していた金の20万円分のみを返済させたにすぎず、Aさんの行為は権利の範囲内であるといえます。
もっとも、AさんはBさんに対してBさんやBさんの家族を殺すと怒鳴りつけ、これによりBさんはAさんは本気だと考えており、Aさんの要求に応じなければBさんやBさんの家族の生命身体に危害が加えられると畏怖したと言えます。
返金を要求した行為及びBさんを怒鳴りつけて脅迫した行為が、社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えており、恐喝罪が成立する可能性があります。

このように、恐喝事件については、その解決のために専門的な法的知識や経験が必要となります。
そのため、恐喝事件の加害者となってしまった場合には刑事事件に強い弁護士に相談し、恐喝事件の詳細な流れや見通しを聞いてみましょう。

恐喝事件などの刑事事件でお困りの方は、まずは弊所の弁護士まで、ご相談ください
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、弁護士による初回無料法律相談のご予約を24時間いつでも受け付けています(0120-631-881)。
まずはお気軽にお電話ください。

児童虐待と刑事罰

2019-11-18

児童虐待と刑事罰

児童虐待刑事罰について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

神戸市垂水区に住む女性Aさんは、旦那、Xちゃん(3歳)と二人暮らしでした。
ところが、Aさんは、ある日、同級生のBさんと偶然街で会ったことをきっかけに交際をはじめたところ、徐々にXちゃんに対する育児を放棄するようになりました。
そして、Aさんが自宅に戻ったところ、床の上でぐったりとしているXちゃんを見つけ、どうしていいかわからず110番通報しました。
Aさんは、駆け付けた兵庫県垂水警察署の警察官に「3日間、食事など与えていなかった。」「交際相手Bから自宅に帰ることを止められていた。」などと話しましたが、Vさんが死亡したとの連絡が入ったことを受けて保護責任者遺棄致死罪で逮捕されてしまいました。
逮捕の通知を受けたAさんの母親は驚き、刑事事件の実績、経験が豊富な弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 児童虐待とは ~

児童虐待による悲惨な事件が後を絶ちません。
児童虐待による痛ましい事件は頻繁に報道されています。

ところで、「児童虐待」の定義については、児童虐待の防止等に関する法律という法律(以下、児童虐待防止法)の2条に規定されています。
それによると、児童虐待とは保護者(略)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。以下同じ)について次に掲げる行為をいうとされています。
そして、「次に掲げる行為」とは、以下の行為です。

1号 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれがある暴行を加えること(身体的虐待)
2号 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること(性的虐待)
3号 児童の心身の発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること(ネグレクト)
4号 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(略)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと(心理的虐待)

以上からすると、Aさんの行為は3号の児童虐待に当たりそうです。

~ 児童虐待防止法で処罰されるの? ~

では、Aさんの行為が「児童虐待」に当たるからといって、Aさんが児童虐待防止法で処罰されるかといえばそうではありません。
同法には、児童虐待そのものを処罰する規定は設けられていないのです。
それは、以下でご紹介するように、「児童虐待」に当たる行為も刑法などのその他の法律に規定されている罪で処罰することが可能だからです。

~ 児童虐待と刑法(刑事罰) ~

では、児童虐待行為がどんな罪に当たり得るのか、前記各号につきそれぞれご紹介いたします。

1号については、暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)で処罰される可能性があります。
暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
なお、傷害させ、児童(人)を死亡させた場合は傷害致死罪(刑法205条)で処罰される可能性があります。
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役です。

2号については、強制わいせつ罪(刑法176条)、強制性交等罪(刑法177条)、監護者わいせつ罪(刑法179条1項)、監護者性交等罪(刑法179条2項)で処罰される可能性があります。
強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」、強制性交等罪は「5年以上の有期懲役」、監護者わいせつ罪は強制わいせつ罪と同様、監護者性交等罪は強制性交等罪と同様です。

3号については、保護責任者遺棄罪(刑法218条)で処罰される可能性があります。
法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。

児童(人)を傷害、死亡させた場合は保護責任者遺棄致傷罪保護責任者遺棄致死罪(刑法218条)で処罰される可能性があります。
前者の法定刑は「3月以上15年以下の懲役」、後者の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。

4号について、行き過ぎた暴言は暴行罪、それによって精神的な障害を患った場合などは傷害罪で処罰される可能性もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、児童虐待に関する刑事事件少年事件も取り扱う、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件でお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談、初回接見サービスのお申し込みを24時間受け付けております。

エアコン室外機放火事件で逮捕

2019-11-13

エアコン室外機放火事件で逮捕

エアコン室外機放火事件での逮捕について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事件】

Aさんは痴情のもつれから大阪市中央区に住むVさんとトラブルになっていました。
AさんはVさんに報復したいと考え,Vさん宅のエアコンの室外機に火を放ちました。
これによって室外機は完全に焼損してしまいましたが,あとは外壁が焦げたのみでした。
Vさんが被害届を提出したことで捜査が開始され,Aさんは大阪府南警察署逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

【現住建造物等放火罪】

人が住居として利用している建造物や人が現在している建物などに放火する行為は現住建造物等放火罪に当たる可能性があります。
現住建造物等放火罪は刑法第108条に規定されています。

刑法第108条
放火して,現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物,汽車,電車,艦船又は鉱坑を焼損した者は,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

現住建造物等放火罪の法定刑は死刑または無期もしくは5年以上の懲役で,殺人罪(刑法第199条)と同じ重いものとなっています。

現住建造物等放火罪の客体は,現に人が住居に使用し,または現に人がいる建造物,汽車,電車,艦船,鉱坑です。
このうち建造物とは,家屋や家屋に類似する建築物で,屋根があって壁または柱により支持されて土地に定着し,少なくともその内部に人が出入りできるものをいいます。

次に,「現に人が住居として使用し」ているとは,犯人以外の人が寝起きし食事をとる(起臥寝食と表現されます)場所として日常使用していることを意味します。
現に人が住居として使用していることを,当該建造物等に現住性があるといいます。
この現住性の理解によれば,その建造物等が居住者の生活の本拠である必要はありません。
また,毎日住居として利用されていなくとも,断続的に住居として使用されていれば現住性が認められ得ることになります。

さらに,大きな建造物の一部に現住部分がある場合は,全体が現住建造物になります。
これに関して,過去の判例では宿直室のある学校校舎,楽屋に人が寝泊まりしている劇場,待合業を営む家の離れ座敷,社務所や守衛詰所に人が寝泊まりする神社社殿などに現住性が認められています。
現住性の判断は,起臥寝食の場所としてそのために必要な家財道具の重要部分が運び出されたかどうか等の客観的事情と,居住者が起臥寝食の場所として使用する可能性を残しているかという意味での居住の意思の有無を併せて考慮してなされます。

今回Aさんが放火したのは,Vさんの住宅(現住建造物)に取り付けてあるエアコンの室外機です。
放火した箇所が現住建造物等の一部であればそれを焼損すると現住建造物等放火罪が成立するのに対し,放火した箇所が現住建造物等の一部でない場合は現住建造物等に延焼させる意図があってもその時点では現住建造物等放火未遂にとどまります。
従来,建造物の一部であるかの判断基準は毀損しなければ取り外すことのできない状態にあるかどうかというものでしたが,現在では,従来の基準では建造物等の一部とされていた設備であっても適切な工具等の使用により毀損せずとも取り外しが可能であるものも多く用いられています。
このような物については建造物等の一部と認めてもよいことから,基準を緩和し,容易には取り外すことのできない状態にある物であれば,建造物等放火罪における建造物等の一部と認められる可能性が高いです。
エアコンの室外機は適切な工具を使えば建造物を壊さなくても取り外すことは可能ですが,一般人が容易に取り外せる物ではないため,建造物の一部といえそうです。

【現住放火事件の弁護活動】

現住建造物等放火罪はその法定刑の重さから被疑者となれば逮捕や勾留されることが考えられます。
逮捕や勾留は被疑者が逃亡したり犯罪の証拠等を隠滅する恐れがある場合になされるものです。
よって依頼を受けた弁護士は依頼者によのような恐れがないことを示すことで逮捕や勾留の阻止を図ることになるでしょう。

また,刑法第25条の規定により,法定刑の下限が5年以上の懲役である現住建造物等放火罪では情状酌量等により刑の減軽がされない限り執行猶予はつきません。
情状酌量の判断基準としては,初犯かどうか,十分に反省しているか,焼損が軽微で人身に被害が及んでいないか,被害者との示談が成立しているかなどがあります。
現住建造物放火罪の場合,裁判員裁判の対象事件ですから,裁判員にもそういった事情が伝わるよう,工夫した公判弁護活動が行われることが求められます。

情状酌量のための事情の1つには,被害者との示談締結の有無があります。
そのため,弁護士が依頼者と被害者との間に入り依頼者の利益のために示談交渉に臨むことが考えられます。
弁護士が間に入ることで,被疑者と直接やり取りするのははばかられるという被害者の方でも示談交渉の場に臨んでくれることが期待できます。

現住建造物等放火罪の疑いをかけられた場合をはじめ,刑事事件では対処スピードがとても重要です。
現住建造物等放火罪の被疑者となってしまった方,ご家族やご友人が現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されて困っている方,大阪府南警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

脅迫事件で逮捕・弁護士の活動

2019-11-03

脅迫事件で逮捕・弁護士の活動

脅迫事件の逮捕と弁護士の活動について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例
Aは,自らの気に入らない政治的集会が神奈川県川崎市で開催されることを知り,「集会当日,参加者の身に何があっても知らない」「俺はやる気だ」などと,集会が開催される自治体の職員に対し,電話で申し向けた。
集会の開催者から相談を受け,捜査を開始した神奈川県中原警察署の警察官は,Aを脅迫罪の疑いで逮捕した。
逮捕を知ったAの家族は,脅迫事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~脅迫罪の成立について~

近年,インターネット等のコミュニケーションツールの発達もあり,安直な動機から脅迫行為に及び,逮捕されてしまうというようなケースが増えています。
本件では,政治的集会およびその開催者に害悪を加えると告知するという行為により,Aは脅迫罪(刑法222条1項)により逮捕されてしまっています。
同条項は,「生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」旨を定めています。
もっとも,本件では,実際には告知内容に該当するような行為は行われていません。
この点については,どのように考えられているのでしょうか。

まず,一般的に我々が想像する犯罪というと,窃盗罪のような財産犯が代表格として挙げられるかと思います。
財産犯は侵害犯に分類され,犯罪(既遂)の成立には財産に対する現実的な侵害が要求されます。

これに対し,本件脅迫罪のような犯罪は,危険犯,それも抽象的危険犯とされています。
危険犯とは,侵害犯とは異なり,刑法が保護の対象とするものに対する危険があることのみによって成立する犯罪です。
そして,その中でも抽象的危険犯とは,そのような危険が現実的なものでなくとも,一般的・類型的な危険さえ認められれば成立する犯罪です。
このような抽象的危険犯は何も特別な犯罪ではなく,現住建造物等放火罪など刑法典にも多く規定されている犯罪なのです。
また,脅迫罪には未遂規定がなく,既遂犯としてのみ処罰されることにも注意が必要でしょう。

本件では,人を畏怖させるに足りる害悪の告知があったそのことだけで,上記のような一般的・類型的な危険が認められるといえ,脅迫罪における「脅迫」という要件を満たすものと考えられます。 
本件のように,「脅迫」内容たる害悪の告知に該当するような行為を,実際には行っていなくても,脅迫罪の成立が認められるのです。

~脅迫事件における弁護活動~

本人が犯罪事実(被疑事実)を否認している場合(いわゆる否認事件)と,そうでない場合(いわゆる自白事件)で,弁護士による弁護活動の方針も変わってきます。
前者(否認事件)であれば,黙秘権の行使等も含め,捜査機関に相対するにあたって被疑者にとって何がベストな対応なのかを,分かりやすくそして時には被疑者を勇気づけるような活動を行うことが考えられます。
今般,誤認逮捕事案が広く報道されたように,逮捕されたからといって犯人であるとは限らないことは改めて言うまでもないことでしょう。
後者(自白事件)であれば,もちろん前科前歴の有無や事件の態様にもよりますが,早期の被害者との示談等を含め,起訴猶予(不起訴)を目指した弁護活動がまずは考えられるところです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,脅迫罪を含む暴力・粗暴事件も多数扱う刑事事件専門の法律事務所です。
上記のように,事件内容や逮捕されてしまった被疑者の言い分などによって,弁護士がなすべき弁護活動もおのずと変わってきます。
脅迫事件で逮捕されてしまった方のご家族は,365日24時間通話可能のフリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐお問い合わせください。

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