保護責任者遺棄致死罪で逮捕・弁護士の役割

2020-02-26

保護責任者遺棄致死罪で逮捕・弁護士の役割

保護責任者遺棄致死罪で逮捕されてしまった事例における,弁護士の役割などについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

【事例】
福岡県宗像市に住むAは,実の子であるV(3歳)が言うことを聞かないことにいら立ち,Vを真冬のベランダに放り出した。
数十分後,AがVの様子を見ると全く動かなくなっており,慌てて119番通報するも,のちに病院でVの死亡が確認された。
福岡県宗像警察署の警察官は,Aを保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕した。
Aの家族は,刑事事件に強いと言われる弁護士に相談することにした。
(本件は事実をもとにしたフィクションです)

~保護責任者遺棄致死罪とは~

Aは,我が子であるVが言うことをきかないという理由で,真冬のベランダに放置してVを死亡させてしまっています。

刑法218条は、「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。」と規定しています。

さらに,刑法219条は「前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者」保護責任者遺棄致死(致傷)罪とすることを定めています。
この罪は、死亡させるつもりがなかったとしても成立します。
もし死亡させるつもりがあったり、死亡するかもしれないと思っていた場合、つまり殺人の故意がある場合には、殺人罪が成立する可能性があります。

もっとも,ちょっとベランダに出したくらいで死亡や負傷はしないと考えていたなど、危険な状態に置くことの認識すらなかった場合には,より軽い過失致傷罪(刑法210条)や重過失致死罪(211条後段)にとどまる可能性もあります。

したがって,死亡させるつもりだったか、危険な状態に置く認識があったかなどの故意の有無が、保護責任者遺棄致死罪の成立にとって一つの争点となりうるものと考えられます。

なお,殺人罪や保護責任者遺棄致死罪は、裁判員裁判の対象事件となります。

~人質司法の問題点・弁護士の役割~

日産のゴーン元会長の国外逃亡などを受け,現在わが国でも改めて「人質司法」の問題について議論を呼んでいます。
人質司法とは,取調べにかたよった捜査と逮捕・勾留による身体拘束期間の長期化という,わが国の刑事司法・捜査実務の問題を表した言葉です。

戦前において(治安維持法などの下に置いて)被疑者や被告人に対して,厳しい取調べなどが行われていました。
しかし戦後も、諸外国に比べると被疑者・被告人の権利が弱いままであるのが実情です。

弁護士が従うべきものとして、弁護士会が自ら定めている弁護士職務基本規程は,47条において「弁護士は、身体の拘束を受けている被疑者及び被告人について、必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努める」ものとし,また48条では「弁護士は、被疑者及び被告人に対し、黙秘権その他の防御権について適切な説明及び助言を行い、防御権及び弁護権に対する違法又は不当な制限に対し、必要な対抗措置をとるように努める」ことを定めています。

これらの規定は,まさに人質司法によって被疑者・被告人が被る不利益を,弁護士ができるだけ軽減しその改善に向けて努力していくことを刑事弁護士の倫理・役割として定めたものといえます。

弁護士はこの役割を全うし、被疑者・被告人の権利を守るすべく活動しておりますので、あなたやご家族が犯罪をした、あるいはしたと疑われている場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,保護責任者遺棄致死を含む刑事事件専門の法律事務所です。
保護責任者遺棄致死事件などで逮捕された方のご家族は,年中無休のフリーダイヤル
0120-631-881
まで、お電話お待ちしております。