特殊警棒の携帯で軽犯罪法違反

2020-02-06

特殊警棒の携帯で軽犯罪法違反

今回は、特殊警棒を携帯していた場合に成立する犯罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~
大阪府池田市在住のAさんは、護身用と称して、カバンの中に特殊警棒を入れて外を歩くなどしていました。
ある日、大阪府池田警察署の警察官職務質問を受け、所持品検査を求められたので、カバンを開けてみせると、特殊警棒が発見されてしまいました。
警察官はAさんに、
「特殊警棒の携帯は軽犯罪法違反になるから、警察署で話を聞かせて欲しい」と告げました。
Aさんは罪に問われていることに不服です。
特殊警棒の携帯は罪になるのでしょうか。
(フィクションです)

~軽犯罪法違反の可能性がある~

軽犯罪法第1条2号は、「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯」することを禁じています。
特殊警棒もこれ該当する可能性があります。

ただし、携帯することに「正当な理由」があれば犯罪とはなりません。
「正当な理由」とは、第2号所定の器具を隠して携帯することが、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合をいいます。
この定義だけでは意味が少しわかりづらいので、裁判所判例も見てみましょう。

最高裁平成21年3月26日判決は、

『「正当な理由」があるというのは、本号所定の器具を隠匿携帯することが、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合をいい、これに該当するか否かは、当該器具の用途や形状・性能、隠匿携帯した者の職業や日常生活との関係、隠匿携帯の日時・場所、態様及び周囲の状況等の客観的要素と、隠匿携帯の動機、目的、認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断すべきものと解される』

と判示しています。
結局は総合判断ということですので明確な線引きがあるわけではありませんが、上記のような諸事情をしっかり考慮した上で、判断するということになります。

この判例は、有価証券や多額の現金をアタッシュケースに入れて運搬する仕事をしていた被告人が、サイクリング中に催涙スプレーをズボン左前ポケットに携帯していた事件です。
最高裁判所は結論として、

『職務上の必要から、専門メーカーによって護身用に製造された比較的小型の催涙スプレー1本を入手した被告人が、健康上の理由で行う深夜路上でのサイクリングに際し、専ら防御用としてズボンのポケット内に入れて隠匿携帯したなどの事実関係の下では、同隠匿携帯は、社会通念上、相当な行為であり、上記「正当な理由」によるものであったというべきである』

として、「正当な理由」があると認められました。

この判例に従えば、今回のAさんの場合も、職業、特殊警棒の使用目的等によっては、特殊警棒を携帯していたことに「正当な理由」が認められる可能性があります。
そのため、まずは弁護士と相談し、「正当な理由」の有無について助言を受け、今後の弁護活動の方針を立てて行きましょう。

~より有利な事件解決を目指して行動する~

逮捕されずに、在宅事件として刑事手続が進行する場合は、警察の要請に応じて警察署出頭し、取調べを受けることになります。
警察での捜査が終わると、検察へ事件が送致されます。
検察においても、検察官の取調べを受けることになります。
最終的に、検察官によりAさんが起訴されるか、あるいは不起訴になるかが決められます。

上記のように、「正当な理由」があると認められる場合には、犯罪嫌疑なし、あるいは嫌疑不十分として、不起訴処分となることも考えられます。

不起訴処分を獲得できれば、裁判にかけられることがないので、前科が付かずにすみます。
特殊警棒を携帯してしまい、軽犯罪法違反の疑いをかけられたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
軽犯罪法違反などの嫌疑をかけられてしまった方は、ぜひ無料法律相談をご利用ください。