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【事例解説】刑務官による特別公務員暴行陵虐事件

2023-09-08

 刑務官による特別公務員暴行陵虐事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 刑務官であるAさんは、詐欺罪の懲役刑で服役中であるVさんの刑務作業中の態度が悪かったことに腹を立てて、Vさんのお腹を手拳で1回殴りました。
 この様子を見ていた他の刑務官が、上司に報告したことから、Aさんは内部で調査を受けることになりました。
 後日、Aさんは、上司から、「今回の件は刑事事件になる」という話を聞きました。
(この事例はフィクションです)

刑務官が受刑者に暴力を振るうとどのような罪に問われる?

 普通の会社員の方が、路上で通行人とトラブルになって、通行人のお腹を1回殴った場合は、刑法208条の暴行罪が成立すると考えられます。
 事例のAさんも、Vさんのお腹を1回殴るという上記の暴行と同じ暴行を加えていますが、Aさんは会社員ではなく刑務官という立場で、仕事中に受刑者を殴っています。
 このような場合には、暴行罪ではなく、暴行罪よりも重い特別公務員暴行陵虐罪が成立する可能性があります。

特別公務員暴行陵虐罪とは

 特別公務員暴行陵虐罪は刑法195条に規定されている犯罪で、一定の立場にある公務員が、仕事をするにあたって、およそ職権の行使とは言えない違法行為を行った場合を処罰の対象にしています。

 職務の行使とは言えない違法行為として、刑法195条では、事例のAさんのような「暴行」「陵辱若しくは加虐」の2つを規定しています。
 ここでの「暴行」は暴行罪の暴行と同じ意味で、人を殴る蹴るといった身体に対する不法な有形力の行使のことです。
 そして、「陵辱若しくは加虐」(陵虐)とは、暴行以外の方法で、精神的・肉体的に苦痛を与える行為を意味しています。

 また、どのような公務員が誰に対して暴行・陵虐行為をした場合に罪に問われるかというと、まず、刑法195条1項では、裁判、検察若しくは警察の職務を行う者や、これらの職務を補助する者が、被告人や被疑者、証人や鑑定人などのその他の者に対して暴行・陵虐行為を行った場合を規定しています。
 次に、刑法195条2項では、法令により拘禁された者を看守し又は護送する者が、その拘禁された者に対して暴行・陵虐行為を行った場合を規定しています。

 取り上げた冒頭の事例では、Vさんは詐欺罪の懲役刑で服役していますので195条2項にいう法令により拘禁された者に当たり、Aさんはそのような法令により拘禁された者である受刑者を看守する刑務官という立場になります。
 そのため、刑務官であるAさんが、受刑者のVさんを仕事中に殴ったという冒頭の事例では、Aさんに刑法195条2項による特別公務員暴行陵虐罪が成立すると考えられます。

 特別公務員暴行陵虐罪の法定刑は、7年以下の懲役又は禁錮となっています。
 暴行罪の法定刑が、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となっていることと比較すると分かるように、特別公務員暴行陵虐罪の法定刑は、暴行罪の法定刑よりも重くなっています。

特別公務員暴行陵虐事件で捜査を受けられている方は

 このように特別公務員暴行陵虐罪は単なる暴行罪と比較して非情に刑が重い犯罪であると言えますので、特別公務員暴行陵虐罪として逮捕、起訴される可能性があるという方は、いち早く弁護士に相談して、事件の見通しや今後の対応等についてアドバイスを貰われることをお勧めします。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 特別公務員暴行陵虐事件で内部の調査を受けて逮捕、起訴される可能性があるという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】包丁を突きつけて脅迫 暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕

2023-09-01

 包丁を突きつけながら脅迫行為をしたことで、暴力行為等処罰法違反の疑いで警察に逮捕された事件ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、自宅で、同居している父親のⅤさんと些細なことから口論になりました。
 Aさんは怒りの余り、Ⅴさんに対して包丁を突きつけながら「殺すぞ」と言い放ちました。
 この様子を見たAさんの母親が、警察に通報したところ、Aさんは、駆け付けた警察官に暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されました。
(この事例はフィクションです)

包丁を突きつけながら「殺すぞ」と言うとどのような罪に問われる?

 事例のAさんは、Vさんに対し包丁を突きつけながら「殺すぞ」と言っています。
 「殺すぞ」という発言は人の生命に害を加える旨を告知していることになりますので、刑法222条が規定する脅迫罪に当たることになります。
 ところが、Aさんは脅迫罪ではなく暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されています。

 暴力行為等処罰法(正式には「暴力行為等処罰に関する法律」といいます)の1条では、一定の場合に行われた脅迫行為を刑法よりも重く処罰しています。
 どのような場合に行われた脅迫行為暴力行為等処罰法1条によって処罰の対象になるかというと、実際に団体や多衆で威力を示して脅迫行為を行った場合や、団体や多衆であるかのうように仮装して威力を示して脅迫行為を行った場合、凶器を示して脅迫行為を行った場合、数人で共同して脅迫行為を行った場合です。
 事例のAさんは、包丁という凶器を示しながら「殺すぞ」という脅迫行為を行ったため、暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されたと考えられます。
 暴力行為等処罰法1条の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金となっています。
 これは、刑法222条が脅迫罪の法定刑を2年以下の懲役又は30万円以下の罰金としていることと比較すると、暴力行為等処罰法1条の法定刑の方が刑法222条の脅迫罪の法定刑よりも重いことが分かると思います。

 なお、暴力行為等処罰法1条は、脅迫罪以外にも、傷害罪(刑法204条)、暴行罪(刑法208条)、器物損壊罪(刑法261条)といった犯罪も適用の対象にしていますので、団体や多衆で威力を示して暴行行為をした場合や、数人で共同して器物損壊をした場合などにも暴力行為等処罰法1条によって罰せられる可能性があります。

暴力行為等処罰法違反の疑いで警察の捜査を受けられている方は

 先ほど簡単に説明した暴力行為等処罰法1条で規定されている場合以外では、たとえば、銃砲や刀剣類を用いて人の身体を傷害した場合には暴力行為等処罰法1条の2第1項によって1年以上15年以下の懲役が科される可能性がありますし、また、常習的に傷害罪、暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪を行った場合には、暴力行為等処罰法1条の3第1項によって3月以上5年以下の懲役が科される可能性もあります。
 この他にも、暴力行為等処罰法では刑罰の対象にしている行為を規定していますので、暴力行為等処罰法違反の疑いで警察の捜査を受けられている方は、いち早く弁護士に相談して、自身がどのような罪に問われる可能性があるのか、弁護活動としてどのような対応をとることができるのかといったことについてアドバイスを貰われることをお勧めします。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所暴力行為等処罰法違反事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 暴力行為等処罰法違反の疑いで警察の捜査を受けてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】救急隊員に暴力をふるって公務執行妨害罪の疑いで逮捕

2023-08-25

 酒に酔って路上で横になっていたところ、駆け付けた救急隊員に暴力をふるって公務執行妨害罪の疑いで逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、学生時代の友人たちとの飲み会で飲み過ぎてしまい、帰り道、路上で横になって休んでいました。
 Aさんが横になっているのを見かけた通行人の誰かが、救急車を呼びました。
 駆け付けた救急隊員Vさんは救護活動のためにAさんに声をかけたところ、Aさんはせっかく横になって休んでいたのを邪魔されたと勘違いして、Vさんを殴ったり、押し倒したりといった暴行を加えてVさんの救護活動を妨害しました。
 Vさんは警察に通報し、Aさんは公務執行妨害罪の疑いで現行犯逮捕されました。
(この事例はフィクションです)

公務執行妨害罪とは

 事例のAさんは、公務執行妨害罪の疑いで逮捕されています。
 公務執行妨害罪は、公務員による職務の円滑な執行を保護するために設けられた犯罪で、刑法95条1項で以下のように規定されています。
公務員職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」

 公務執行妨害罪が成立するための要件のひとつである「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員のことをいいます(刑法7条1項)。
 Vさんは救急隊員ですが、救急隊員は消防士として各自治体に採用されている公務員にあたります。
 そして、Aさんは、救急隊員の職務である救護活動にとりかかっているVさんに対して、殴ったり押し倒したりという暴力を加えていますので、これは「職務を執行する」に当たって「暴行…を加え」ているということになるでしょう。
 そのため、事例のAさんには公務執行妨害罪が成立する可能性が高いといえます。

もし相手に怪我を負わせてしまったら?

 もし、事例のAさんが、119番通報のより駆け付けた救急隊員のVさんに暴力を加えて怪我を負わせてしまった場合は、先ほど説明した公務執行妨害罪に加えて刑法204条が規定する傷害罪が成立することになります。
 このように、ひとつの行為が2つ以上の罪名に触れることを観念的競合(刑法54条1項前段)と言います。
 観念的競合の場合には、成立する犯罪の中で「その最も重い刑により処断する」ことになります。
 公務執行妨害罪傷害罪を比較すると、公務執行妨害罪の法定刑は3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金であり、傷害罪の法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっていますので、傷害罪の刑によって処断されることになります。

ご家族が公務執行妨害罪の疑いで逮捕されたことを知ったら

 警察からの連絡で、ご家族の方が公務執行妨害罪の疑いで逮捕されたことを知ったら、いち早く弁護士に依頼して初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
 公務執行妨害罪の疑いで逮捕されたという連絡を受けたご家族様からすると、警察からは逮捕されたという以上の情報は得られず、事件の詳細や今後どうなるのかといったことについては、問い合わせをしても詳しく答えてもらえず、今後について不安になることが多いかと思います。
 このような場合に、弁護士に初回接見を依頼されると、弁護士が逮捕されたご本人様から事件について直接お話を伺うことができますので、事件の詳細や、今後どのような流れで事件が処理されていくのかといったことについて弁護士からアドバイスをもらうことができます。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、公務執行妨害罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 ご家族が公務執行妨害罪の疑いで逮捕されて今後についてご不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】傷害事件を起こしてしまって弁護士に示談を依頼

2023-08-18

 花火大会で相手を殴ってケガをさせたとして傷害の疑いで逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、友人と一緒に花火大会を見に行きました。
 久しぶりに開催された花火大会ということもあって、花火大会は多くの観客で大混雑の状況でした。
 Aさんは、花火大会で偶然出会った見ず知らずのVさんとトラブルになり、Vさんの顔を殴ってケガを負わせました。
 Aさんは、周囲で交通規制業務を行っていた警察官に傷害の疑いで逮捕されました。
(この事例はフィクションです)

傷害事件の弁護活動

 Aさんは、傷害の疑いで逮捕されています。
 傷害罪は刑法204条に規定されている犯罪で、人の身体の生理的機能を害することによって成立する犯罪になります。
 事例のように、被害者の方の顔を殴ってケガをさせたという場合は、傷害罪が成立する典型的な場合だといえます。
 このように成立した傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。

 傷害事件を起こしてしまって、傷害の事実を認める場合の弁護活動としては、被害者の方との示談が非常に重要になりますが、示談交渉については弁護士に依頼されることをお勧めします。
 今回のように、被害者の方が偶然その場に居合わせた見ず知らずの人であったという場合は、どこに連絡すれば良いのかがわかりませんので、そもそも示談交渉を始めることが出来ません。
 このような場合でも、警察などの捜査機関であれば被害者の方と連絡を取ることができますので、弁護士が捜査機関にお願いをして、示談交渉のためにお名前や連絡先を教えてもらうことがよいかを被害者の方に直接確認してもらうことができます。
 そして、被害者の方の承諾を確認できれば、そこから初めて示談交渉を開始することができます。
 傷害罪の被害者の方に謝罪をし、示談金をお支払いするといったかたちで、被害者の方と示談を締結することができれば、傷害罪の前科の付かない不起訴処分になる可能性を高めることができるでしょう。

傷害罪で示談交渉を依頼したいとお考えの方は

 傷害事件を起こしてしまって、被害者の方との示談交渉をお考えになっているという方は、いち早く弁護士に相談されることをお勧めします。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所傷害罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 傷害事件示談をしたいとお考えの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】飼い犬への虐待によって動物愛護法違反の疑いで書類送検

2023-08-11

 自宅で飼っていた犬を虐待していたとして動物愛護法違反の疑いで書類送検されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、自宅で飼っていた犬が自分の言うことをきかないため、犬を蹴ったり、叩きつけたりといった虐待を加えていました。
 日常的な虐待によって、Aさんの犬はケガを負っています。
 ある日、Aさんが散歩中に犬に対して虐待をしているところを周りにいた目撃者の方に警察に通報されました。
 その後、警察からAさんの元に連絡が届き、Aさんは警察に呼び出されました。
 何度か警察に呼び出された後、Aさんは警察から『書類を検察に送るから』と言われました。
(この事例はフィクションです)

飼い犬に対して虐待を加えるとどのような罪に問われるか?

 Aさんは、動物愛護法違反の疑いで書類送検されています。
 「動物愛護法」とは、正式には「動物の愛護及び管理に関する法律」という法律名で、「動物愛護法」「動物愛護管理法」といった略称であらわされることが多いです。

 この動物愛護法44条1項では、「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。」と規定しています。

 事例のAさんは、自身が飼っている犬に対して蹴ったり、叩きつけたりという虐待を加えて、犬にけがを負わせていますが、犬は「愛護動物」に当たりますので、Aさんは動物愛護法44条1項によって5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科される可能性があるということになります。

 また、愛護動物を殺傷していなくても、愛護動物の身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加えたり、愛護動物に餌や水を与えずに衰弱させたり、愛護動物が病気になってもそのまま放置したり、愛護動物を排せつ物が堆積した場所で飼育していたりといった愛護動物に対する虐待を行っていた場合には、動物愛護法44条2項によって処罰の対象になる可能性が高いです。
 動物愛護法44条2項の法定刑は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっています。

愛護動物にはどのような動物が当たるか

 このように、「愛護動物」に対して虐待を加えると罪に問われる可能性がありますが、「愛護動物」には、犬以外にも、牛、馬、豚、めん羊、山羊、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひるが該当します(動物愛護法44条4項1号参照)。
 また、上記以外の動物で、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものも「愛護動物」に当たることになりますので(動物愛護法44条4項2号参照)、例えば、ペットで飼われているハムスターやインコといった動物も「愛護動物」に当たることになります。

書類送検とは

 事例のAさんは、数回警察に呼ばれた後に、警察から「書類を検察に送るから」と言われていますが、これは、報道でよく使われる「書類送検」をするということです。
 書類送検の後にどうなったかが報じられる機会が少ないことからか、書類送検されるとそれで事件が終わったと思われる方が少なくありませんが、そうではありません。
 書類送検とは、警察で作成した調書といった捜査書類や証拠となる物を警察から検察に送致することを意味していますので、書類送検がなされると、送致されてきた捜査書類等を踏まえて、検察官が被疑者を起訴するかどうかの判断を行うことになります。

動物愛護法違反の前科を付けたくないとお考えの方

 動物愛護法違反の疑いで書類送検された方で、前科を付けたくないとお考えの方は弁護士に相談して、今後の対応等についてアドバイスを受けることをお勧めします。
 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 動物愛護法違反の疑いで警察の捜査を受けている方や、動物愛護法違反の疑いで書類送検された方、動物愛護法違反前科を付けたくないとお考えの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】土下座を強制させて強要罪で逮捕

2023-08-04

 相手に土下座を強制させたとして強要罪の疑いで警察に逮捕されたケースについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、Bさんと交際関係にありますが、ある日、Bさんが別の男性Vさんとデートしている様子を見かけました。
 AさんがBさんを問い詰めると、Bさんは『Vさんに無理やり迫られたので仕方なく応じた』と答えました。
 これを聞いたAさんは、『人の彼女に手を出したのだから土下座をしろ』等と言いながらVさんに対して殴る蹴るなどの暴行を加えて、Vさんに土下座を強制的にさせました
 その後、Vさんは警察に被害届を出したところ、Aさんは強要罪の疑いで警察に逮捕されました。
(この事例はフィクションです)

強要罪とは?

 Aさんは強要罪の疑いで逮捕されています。
 強要罪は刑法223条に規定されている犯罪になります。
 強要罪「脅迫」又は「暴行」を用いることによって、「人に義務のないことを行わせ」たか、又は「権利の行使を妨害した」場合に成立します。
 たとえば、事例のAさんのように、相手に殴る蹴るなどの暴力を用いて土下座をさせたという場合は、「暴行」によって「義務のないことを行わせ」たとして、強要罪が成立することになると考えられます。
 その他にも、刑事告訴の準備をしていた相手に「お前殺すぞ」といって刑事告訴をやめさせたという場合では、「脅迫」によって「権利の行使を妨害した」として、こちらも強要罪が成立することになると考えられます。

 強要罪の法定刑は3年以下の懲役刑となっていますので、仮に強要罪起訴されて有罪となった場合は、この範囲で刑が科されることになります。

ご家族の中に強要罪で警察に逮捕された方がいてお困りの方は

 突然、ご家族の中に強要罪の疑いで警察に逮捕された方がいて、何をどうしたらよいか分からずにお困りの方は、弁護士に初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
 逮捕直後は、たとえご家族様であっても、逮捕された方と面会することは出来ませんが、弁護士であれば、そのような制限なくいつでも自由に逮捕された方と接見(面会)して、逮捕された方とお話をすることができます。
 この初回接見で弁護士が逮捕された方から事件について話を伺うことで、事件の見通しや今後の流れといったことについて知ることができます。

 また、強要罪のような被害者の方がいる犯罪について前科がつくことを回避したいとお考えの場合、被害者の方に謝罪をして示談を締結することが非常に重要になります。
 初回接見をきっかけに弁護士に被害者の方との示談交渉を依頼して、検察官が起訴の決定をする前に、被害者の方と示談を締結することができれば、強要罪前科を回避できる可能性を高めることになるでしょう。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 ご家族の中に強要罪で警察に逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】隣の家の外壁を破壊した建造物等損壊事件

2023-07-28

 ご近所トラブルから隣の家の外壁に穴をあけたことによる建造物損壊事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、隣の家に住むVさんとウマが合わず、常日頃からトラブルになっていました。
 ある日、些細なことからVさんと言い争いになったAさんは、怒りのあまり、Vさんの自宅の外壁に大きな穴を開けました。
 Vさんは、Aさんが外壁に穴を開けたところを目撃していましたので、Aさんに対して、警察に被害届を出す意向があるという話をしました。
(この事例はフィクションです)

建造物損壊罪とは?

 事例のAさんは、Vさんが所有する家の外壁に大きな穴を開けています。
 このように、誰かの物を壊したときは器物損壊罪になると思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、破壊した物が他人の所有する建造物であった場合は器物損壊罪ではなく建造物損壊罪が成立する可能性があります。
 建造物損壊罪は刑法260条で「他人の建造物…を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。」と規定されています。
 この条文を見ての通り、建造物損壊罪が成立するためには、他人が所有する「建造物」「損壊」することが必要になります。

「建造物」とは?

 それぞれの言葉の意味について簡単に説明します。
 まず、「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物のことをいい、屋根があって壁または柱で支えられており、土地に定着して、少なくともその内部に人が出入りできるものを意味しています。
 そのため、事例のAさんが大きな穴を開けた外壁は、「建造物」に当たると考えられます。
 「建造物」に該当するそのほかの例としては、天井板や敷居、屋根瓦、住居の玄関扉といったものがあります。

「損壊」とは?

 また、「損壊」とは、物理的にその全部または一部を破壊する行為に加えて、物理的な破壊がなくても建造物の効用を害する行為までも意味しています。
 事例のAさんが壁に大きな穴をあけるという行為は、建造物を物理的に破壊する行為と言えますので、「損壊」に当たると言えるでしょう。
 それ以外にも、例えば、他人が住む家の外壁にラッカースプレーで大きな落書きをしたというような場合は、外壁を物理的に破壊したというわけではありませんが、落書きによって建物の外観ないし美観じゃ著しく汚損されて、原状回復に相当の困難を生じさせるようなものであるといえますので、建造物の効用を害する行為として「損壊」に当たると考えられます。

建造物損壊罪で前科を付けたくないとお考えの方は

 建造物損壊罪の法定刑は5年以下の懲役となっています。
 これは、刑法261条の器物損壊罪の法定刑が3年以下の懲役または30万円以下の罰金若しくは科料となっていることと比較すると明らかなように、建造物損壊罪の法定刑は器物損壊罪の法定刑よりも重く定められています。
 さらに、建造物損壊罪の法定刑には罰金刑が定められていませんので、不起訴とならなければ、必ず公開の法廷で刑事裁判を受けることになります。

まずは弁護士に相談を

 このような建造物損壊罪について前科を付けたくないとお考えの方は、いちはやく弁護士に今後の対応について相談されることをお勧めします。
 弁護士に依頼して、建造物損壊罪の被害者の方と示談をすることができれば、不起訴となって建造物損壊罪前科がつくことを回避する可能性を高めることができるでしょう。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 建造物損壊罪前科を付けたくないとお考えの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】万引き現場から離れた場所での暴行による事後強盗致傷事件

2023-07-21

 万引き犯が、万引き現場から離れた場所で、追いかけてきた店主を殴って怪我を負わせた事後強盗致傷事件を参考に、事後強盗致傷罪とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

 大阪市在住の自営業男性Aが、同市内の酒店で缶ビール1本を万引き後、酒店から約100m付近の路上で、Aを追いかけてきて捕まえようとした店主男性Vの腕を殴り、Vに全治2週間の打撲を負わせたとして、事後強盗致傷の容疑で逮捕されました。
 警察の調べによると、Aは「怪我を負わせるつもりはなかった」と事後強盗致傷の容疑を一部否認しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

事後強盗罪における「窃盗の機会」とは

 窃盗犯が、財物を取り返されるのを防ぐこと、逮捕を免れること、罪跡を隠滅すること、のいずれかの目的をもって「暴行」を加えた場合、強盗罪が成立する、と定められています(刑法第238条)。
 
 これを事後強盗といいますが、「暴行」「窃盗の機会」に行われる必要があるとされ、「窃盗の機会」といえるためには、窃盗行為と暴行時間的・場所的接着性があり、暴行時において、被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況が継続していたことが必要とされます。

 本件Aは窃盗犯であること、AがVの顔面を殴った行為は、Vから財物を取り返されるのを防ぐこと、又はVに現行犯逮捕されるのを免れる目的をもって加えた「暴行」に該当することは争いがないものと考えられます

 また、「暴行」は、万引きの現場である酒店から100m程度しか離れていない路上において、万引きを現認後、そのまま追跡してきた店主Vに対して行われた暴行であり、「窃盗の機会」が継続中に行われたものと認められる可能性が高いと考えられます。

 よって、Aに事後強盗の成立が認められるほか、Vの致傷について、Aは「怪我を負わせるつもりはなかった」と傷害の故意を否定していますが、故意の暴行により傷害が発生した場合では、例え傷害の故意がなかったとしても、傷害罪が成立することから、事後強盗致傷罪まで成立し得ると考えられます。

事後強盗致傷事件の刑事弁護

 事後強盗致傷罪の法定刑は、無期又は6年以上の懲役のため、事後強盗致傷罪で起訴された場合、情状酌量などによる刑の減軽がない限り、執行猶予が付くことはなく、懲役刑の実刑となる可能性が高いです。

 本件で、Vの怪我が全治2週間と比較的軽傷で済んでいることから、Vに対して真摯な謝罪と被害弁償を行った上、示談が成立することで、不起訴処分や刑の酌量減軽による執行猶予を得られる余地も生じるため、示談交渉は、刑事事件に強く、示談交渉の経験豊富な弁護士への依頼をお勧めします。

 また、事後強盗致傷罪は、法定刑に無期懲役を含むため、事後強盗致傷罪起訴された場合、裁判員裁判の対象となります。
 裁判員裁判では、審理の前に事件の争点や証拠を整理して審理の計画を立てる「公判前整理手続」が必ず開かれる点など、通常の刑事事件の裁判とは異なる点も多いため、起訴される見込みとなった場合は、裁判員裁判の経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

まずは弁護士に相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、事後強盗致傷事件において、示談成立による不起訴処分を獲得した実績があります。
 事後強盗致傷事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

【事件解説】万引き犯が店員を転倒させ逃走した事後強盗事件

2023-07-14

 ドラッグストアで万引き後、店員を転倒させ逃走したとして、事後強盗罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

 静岡市在住の主婦Aが、同市内のドラッグストアで化粧品を万引きして店外に出た直後、呼び止めた店員女性Vの身体に接触し床に転倒させ、逃走したとして、事後強盗の容疑で逮捕されました。
 静岡中央警察署の調べに対し、Aは、「万引きしたことに間違いはないが、逃走の際に店員に接触し転倒させるつもりはなかった。」と供述しています。なお、Vに怪我はないとのことです。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

事後強盗罪における「暴行」

 万引きは、通常、窃盗(刑法第235条)にあたる行為ですが、本件のように、万引き犯が、万引きに気づいた店員や警備員らに捕まらないよう逃走する際に、店員らに「暴行」を加えたりすると、窃盗罪ではなく強盗罪が成立する場合があります。
 これを事後強盗といいますが、具体的には、窃盗犯が、財物を取り返されるのを防ぐこと逮捕を免れること罪跡を隠滅すること、のいずれかの目的をもって「暴行」を加えた場合に成立すると定められています(刑法第238条)。

 本件Aが、呼び止めた店員Vを転倒させ逃走したことは、Vに現行犯逮捕されるのを免れる目的をもった行為といえます。
 また、事後強盗罪における「暴行」とは、「人の反抗を抑圧する程度の有形力の行使」とされ、Aの接触により床に転倒したVは、すぐに立ち上がりAに抵抗することが困難な状態になったといえます。
 よって、窃盗犯であるAが、「逮捕を免れるために暴行」したとして、事後強盗罪が成立する可能性があると考えられます。

事後強盗事件の刑事弁護

 窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですが、事後強盗罪の法定刑は、強盗罪と同じく、5年以上の有期懲役と格段に重くなり、事後強盗罪起訴された場合、原則として執行猶予が付くことはなく、懲役刑の実刑となる可能性が高いです。

 本件で、Aは「店員に接触するつもりはなかった」と供述していることから、事後強盗故意(罪を犯す意思)を争うことも考えられますが、故意は、積極的に結果の発生を意図する場合だけでなく、結果が発生するかもしれない、又は発生してもかまわない、という認識がある程度でも認められるため、本件のような状況で、故意を争うのは容易ではないと思われます。

 他方で、暴行の態様が比較的軽微であり、Vに怪我もないことから、被害者であるVとドラッグストアに対する真摯な謝罪と被害弁償を行った上、示談が成立することで、不起訴処分や刑の酌量減軽による執行猶予を得られる可能性を高めることが期待できます。

 万引きは、常習性があることも多く、被害店舗の経営に大きな打撃を与える行為であることから、被害店舗によっては、被害弁償には応じるが示談交渉には応じない、加害者に厳罰を求める、という強い態度を示す場合も少なくないため、示談交渉は、刑事事件に強く、示談交渉の経験豊富な弁護士への依頼をお勧めします。

まずは弁護士に相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、事後強盗事件において、示談成立による不起訴処分を獲得した実績があります。
 事後強盗事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

【事件解説】いたずら動画のSNSへの投稿 威力業務妨害罪で送検

2023-07-07

 飲食店で撮影したいたずら動画をSNSに投稿し拡散させたことで、威力業務妨害罪の容疑で送検された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

 福岡県北九州市内の飲食店で撮影したいたずら動画をSNSに投稿し拡散させて店の業務を妨害したなどとして、同市内在住の20代の男女が威力業務妨害の容疑で書類送検されました。
 警察の調べによると、男は今年3月、同飲食店で、卓上に置いている漬物を共用トングで直接食べ、女はその様子を動画で撮影し、SNSに投稿しました。
 いたずら動画がSNS上で拡散され、それに気づいた店主が警察に被害届を提出したことにより捜査が開始され、男女の関与が明らかとなったものです。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

威力業務妨害罪とは

 威力を用いて人の業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する、と定められています(刑法第234条)。

 「威力を用い」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すこと、とされています。
 直接的な暴力行為や爆破予告等の脅迫行為が該当することは勿論、判例では、大声の怒号により式典を妨げる行為、食堂で蛇を撒き散らす行為による威力業務妨害罪の成立を認めています。

 「業務」とは、職業その他の社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる事務・事業とされます。

 本件では、事態を収拾するために、店に全ての卓上の漬物の交換や共用トングの消毒作業等の対応を余儀なくさせたいたずら動画のSNS投稿「威力を用い」たものと捉え、威力業務妨害罪で送検したと考えられます。

いたずら動画のSNS投稿による威力業務妨害事件の弁護活動

 飲食店でのいたずら動画のSNS投稿による威力業務妨害罪の場合、被害者が警察に被害届を提出することで、刑事事件として警察の捜査が開始されることが多いです。

 弁護活動としては、被害弁償の見通しを立てた上で示談交渉を行うことが通常でありますが、被害弁償は、消毒作業等の実費の他、営業休止に伴う逸失利益や飲食店のイメージダウンに伴う損害賠償など、高額を請求される可能性があり、示談交渉が難航する恐れがあります。

 そのため、1つの方法として、真摯な謝罪を行った上、被害弁償は民事手続きで別途解決することを留保し、刑事処分については「寛大な処分を求める」旨の宥恕条項を入れた示談に一先ず合意してもらうことで、不起訴処分を得られる可能性を高めることが考えられます。

 飲食店を運営する企業等を相手に加害者個人で示談交渉を行うことは現実的でないため、示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することをお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、被害者との示談の成立により不起訴処分を獲得した実績が多数あります。
 自身やご家族が威力業務妨害罪で警察の捜査を受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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