Archive for the ‘未分類’ Category

【事例解説】児童虐待を行ったことで傷害罪の疑いで逮捕

2023-11-17

 

 児童虐待を行ったことで傷害罪の疑いで警察に逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、マンションの一室で妻と2歳になる子供Vちゃんの3人で暮らしています。
 ある日の休日、Aさんの妻が同窓会に出席するために出掛けたので、AさんはVちゃんの面倒を見ることになりました。
 AさんはつきっきりでVちゃんの面倒を見ていましたが、Vちゃんが言うことを聞かないことにカッとなって、近くにあったリモコンでVちゃんの頭を数回叩いてしまいました。
 思った以上に力を入れて叩いてしまったことから、Vちゃんは頭から血を流してしまいました。
 Aさんが慌てて119番に架けてVちゃんを病院に搬送したところ、担当した医師がAさんによる児童虐待を疑い、児童相談所と警察に通報しました。
 事情を聞きに来た警察に、自分が叩いたことを認めたAさんは傷害罪の疑いで警察に逮捕されました。
(この事例はフィクションです)

児童虐待について

 今回取り上げた事例は、実子に対する児童虐待に関するものです。
 児童虐待については、「児童虐待の防止等に関する法律」において、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう)について児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えることを児童虐待のひとつとして定義しています(児童虐待の防止等に関する法律2条1項1号)。
 そうすると、事例のAさんがVちゃんの頭をリモコンで数回殴って怪我を負わせた行為は児童虐待の防止等に関する法律が定義する児童虐待に該当することになりますが、児童虐待の防止等に関する法律では、児童虐待に対して刑事罰を科す規定を定めていません
 そのため、児童虐待に該当することを直接の理由に逮捕されたり、刑事罰が科される訳ではなく、あくまでこのような児童虐待が、刑法208条の暴行罪や刑法204条の傷害罪といった犯罪に該当する疑いがあることを理由に警察が捜査に動き出すことになります。

 事例のAさんはVちゃんに怪我を負わせていますので傷害罪に問われる可能性がありますが、仮に、AさんがVちゃんの頭部をリモコンで数回殴ったことにより負わせた怪我が原因でVちゃんが死亡してしまった場合には、刑法205条の傷害致死罪に問われることになると考えられます。
 傷害罪の法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑ですが、傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役刑のみとなっています。

ご家族が児童虐待事件で警察に逮捕されたら

 警察に逮捕されたご本人様はもちろんですが、残されたご家族様からしても、いきなり家族が警察に逮捕されたことで、何がどうなっているのか分からず今後について心配に思われることかと思います。
 そのため、ご家族が児童虐待を行ったとして暴行罪や傷害罪、傷害致死罪といった犯罪の疑いで警察に逮捕されたら、いち早く弁護士に初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
 初回接見は弁護士が逮捕された方といつでも自由に警察官の立会なく接見(面会)することができますので、事件についてしっかりとお話を伺って、逮捕されたご本人の現在の様子や、今後事件がどのような流れで進んでいくことになるのか、事件の最終的な見通しといったことを知ることができます。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、児童虐待事件をはじめとする刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
 ご家族が児童虐待事件で警察に逮捕されて今後についてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】被害者だと思っていたら加害者にもなってしまった傷害事件

2023-11-10

 被害者だと思っていたら加害者にもなってしまった傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは隣に住むVさんとウマが合わず、常日頃から些細なことでトラブルになっていました。
 ある日、Vさんの家から大音量のテレビの音が聞こえてきたため、AさんはVさんの家まで音量について文句を言いに行ったところ、玄関前で言い争いになり、ヒートアップしたAさんとVさんは、お互いに暴力をふるって相手にケガを負わせてしまいました。
 周囲の人の通報により現場に駆け付けた警察官に、Aさんは傷害の被害者として被害届を出したいと言ったところ、Vさんも傷害の被害者として被害届を出すと言い出し、AさんとVさんは双方ともに傷害事件の被疑者として捜査を受けることになりました。
(この事例はフィクションです)

傷害の被害者だと思ったら加害者に!?

 相手を殴る蹴るなどの暴力をふるってケガを負わせてしまうと刑法204条の傷害罪が成立すると考えられます。
 このとき、ケガを負わせた方を傷害罪の加害者(被疑者)、ケガを負った方を傷害罪の被害者と呼ぶことになりますが、事例のように、2人がお互いに暴力をふるってそれぞれ相手にケガを負わせたという場合は、双方が傷害罪の加害者(被疑者)でもあり被害者でもあるということになります。
 このようにお互いに加害者(被疑者)である事件のことを「相被疑事件」と呼びます。
 相被疑事件の場合、双方が事件の加害者(被疑者)として警察の捜査を受けることになりますので、自身が傷害罪の被害者だと思って被害届を警察に提出したところ、相手も傷害罪被害届を提出していたことで、ご自身が傷害の被害者ではなく加害者(被疑者)として突然、警察からの呼び出しの連絡が来るという事態になってしまう場合もあります。

傷害の相被疑事件で警察の捜査を受けられてお困りの方は

 傷害相被疑事件で警察から突然呼び出しの連絡が来て困惑している、今後について不安だという方は、まずは弁護士に相談して、事件の見通しや今後の手続きの流れといったことについてアドバイスを貰われることをお勧めします。
 また、直近で警察署に行って調書を作成する予定があるという場合には、刑事弁護の経験が豊富な弁護士から取調べの対応についてのアドバイスも受けることができます。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は傷害事件をはじめとする刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
 傷害の被害者だと思っていたら突然加害者にもなってしまってお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】自動車のトランクに閉じ込めて走行 監禁罪で逮捕

2023-11-03

参考事件

 福岡県糟屋郡内の山中でVさんの遺体が発見されたことをきっかけに,福岡県粕屋警察署の警察官が捜査を開始したところ,数日前にAさんがVさんを自動車のトランクに閉じ込めて走行していたという情報が得られたため,Aさんは監禁罪の容疑で逮捕されてしまいました。
 これを知ったAさんの家族は,刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
(事例はフィクションです。)

監禁罪(刑法第220条)

 不法に人を監禁した場合には,監禁罪が成立します。
 監禁罪は,逮捕罪と同じ条文で定められていますが,「逮捕」と「監禁」の区別について,人の身体を直接拘束して身体活動の自由を奪うことを「逮捕」といい,一定区域からの脱出を不可能若しくは著しく困難にすることを「監禁」といいます。
 上の事案のAさんは,自動車のトランクという一定の区域を利用して,Vさんの行動の自由を制限しているとして,「監禁」に当たる可能性があります。

 監禁罪は,移動しようと思ったときに移動する自由を保護していると考えられています。
 そのため,監禁を受けた人について行動能力や行動意思は不要であり,監禁されている認識も不要であると考えられます。
 具体的には,生後1年の幼児や勉強に集中して周囲の状況に気付かない者がいる部屋に鍵をかけるという場合であっても,監禁罪が成立し得るということになります。
 したがって,上の事案においても,Vさんが自動車のトランクに閉じ込められている間に意識があってもなくても監禁罪が成立しうることになります。
 監禁罪が成立した場合,3月以上7年以下の懲役に処せられることがあります。

監禁致死罪(刑法第221条)

 監禁の罪を犯し,よって人を死亡させた場合には,監禁致死罪が成立します。
 監禁致死罪が成立するためには,①監禁行為が存在すること,②監禁の被害者が死亡していること,③監禁行為と死亡結果との間に因果関係が認められることが必要となります。
 上の事案では,Aさんによる監禁行為が存在し,その被害者であるVさんは死亡しているため,Aさんの監禁行為とVさんの死亡結果との間に因果関係が認められるのかが問題となります。

 監禁致死罪における因果関係の有無の判断は,「監禁を維持するために行われた」暴行から死亡結果が生じているか否かを基準として行われ,単に監禁の機会に加えられた暴行によって死亡させたというだけは監禁致死罪は成立しないと考えられています。
 上の事案でいえば,例えば,Vさんの死因がトランク内に閉じ込められたことによる熱中症だったという場合には,監禁致死罪が成立する可能性があります。

 過去の裁判例の中には,トランク内に被害者を監禁した状態で走行し,停車後に別の自動車の運転手が過失運転により追突して,その結果トランク内にいた被害者が死亡したという事案において,被害者の死亡原因が直接的には追突事故を起こした第三者の過失行為にあるとしても,加害者がトランク内に被害者を監禁した行為と被害者の死亡結果との間の因果関係を認めた裁判例もあります。

 このように,トランク内で被害者を監禁し,その被害者が死亡したという場合には,監禁致死罪が成立することもあります。
 監禁致死罪が成立した場合には,傷害の罪と比較して重い刑により処断されることになります。

まずは弁護士にご相談を

 監禁罪で逮捕されたという場合には,その後の捜査が進行する中でより罪の重い監禁致死傷罪に切り替えて捜査がされることもあるため迅速な対応が重要です。
 ここでの迅速な対応により,逮捕・勾留による身体拘束期間の短縮や,不起訴処分の獲得による前科の回避につながることもあります。
 どのような対応をすればよいかは個別の事案によって異なりますので,まずはどのような事案であるのかを把握するために初回接見を依頼することをお勧めします。
 監禁事件で逮捕されたという件で初回接見をお考えの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで初回接見をご依頼ください。

【事例解説】ハロウィンで模造刀を携帯し、銃刀法違反の容疑で任意同行

2023-10-27

 ハロウィンでの模造刀の携帯により、銃刀法違反の容疑で任意同行を求められた架空の事件を参考に、模造刀の携帯が銃刀法違反になり得る場合や銃刀法違反事件における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

 福岡市在住の男性Aは、ハロウィンの仮装として武士に扮し、路上で模造刀を携帯していたところ、巡回中の福岡県中央警察署の警察官に職務質問され、銃刀法違反の容疑で、警察署での取調べのための任意同行を求められました。
(事例はフィクションです。)

模造刀の携帯が銃刀法違反になり得る場合

 銃刀法とは、「銃砲刀剣類所持等取締法」の略称であり、銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めています。

 「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀や刃渡り5.5センチメートル以上の剣などを指します(同法第2条第2項)。
 本件のように、刃のない模造刀(模造刀剣類)の場合であっても、業務その他正当な理由による場合を除き、携帯が禁止されており、違反した場合、20万円以下の罰金が科せられる可能性があります(同法第22条の4、35条)。
 模造刀剣類とは、金属で作られ、刀剣類に著しく類似する形態を有する物と規定されているため、模造刀が金属製の場合は、銃刀法違反が成立する可能性がありますが、アルミニウムやプラスチックなど非金属製の場合は成立しないと考えられます。

 なお、模造刀ではなく本物の刀の場合は、所持できるのは法令に基づき職務のため所持する場合や狩猟や舞台芸術などに用いるために都道府県公安委員会の許可を受けた場合などに限られ、違反した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります(同法第3条、4条、31条の16)。

銃刀法違反事件における弁護活動

 本件のような、模造刀の携帯での銃刀法違反は珍しいケースかもしれませんが、包丁、カッターナイフや鋸など、刃体の長さが6センチメートルを超える刃物を、業務その他正当な理由なく携帯したとして、銃刀法違反の容疑で捜査を受けるようなケースは珍しくありません。なお、この場合の法定刑は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です(同法第22条、31条の18)。

 携帯に「業務その他正当な理由」があれば銃刀法違反は成立しないことから、弁護活動としては、携帯していた刃物の形や種類、携帯した状況・理由などを把握した上、携帯に「業務その他正当な理由」があったと主張し得る事情を取調べの際に被疑者に的確に供述させるなどして、嫌疑不十分等による不起訴処分を目指すことが考えられます。
 どういった事情であれば、「業務その他正当な理由」があったと主張し得るかについては、法律の趣旨や過去の事件例などに基づく専門的な判断を必要とするため、刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。

 なお、携帯していた物が、非金属性の模造刀や刃体の長さが6センチメートル未満の刃物であるなど、銃刀法違反が成立しないことが明からな場合であっても、軽犯罪法違反など別の犯罪が成立する可能性もあるため、その場合でもなお弁護士へ相談することをお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、刃物の携帯による銃刀法違反事件において、不起訴処分を獲得した実績があります。
 自身やご家族が銃刀法違反の容疑で警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

【事例解説】軽微な暴行事件における弁護活動と微罪処分

2023-10-20

 人に故意に水をかけた架空の暴行事件を参考に、軽微な暴行事件における弁護活動と微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

 福岡市在住の会社員男性Aは、知人の女性Vと、市内の飲食店で食事中に口論となり、故意にVの身体にグラスの水をかけました。なお、Vに怪我はありません。
 Vが福岡県博多警察署に被害届を提出したことで捜査が開始され、Aは、暴行の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

※前回の記事で解説したように、人に故意に飲料をかけただけでも、人の身体に対して不法な有形力の行使として、暴行罪(刑法第208条)が成立する可能性があります。

軽微な事件における微罪処分とは

 警察が犯罪を認知して捜査をした場合、その書類や証拠物とともに事件を検察官に送致(報道等では「送検」と呼ばれることもあります。)しなければならないとされています(刑事訴訟法第246条本文)。送致された後、検察官が事件を引き継いで捜査の上、起訴するかを最終的に決定します。

 しかし、この例外として、捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる、とされています(同条但書、犯罪捜査規範第198条)。
このように、軽微な犯罪の場合に、事件を検察官に送致せず終了させる措置のことを「微罪処分」と呼びます。

 微罪処分の場合、被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒める、などの処置をとるものとされています(犯罪捜査規範第200条)。

 なお、微罪処分となった事件は、被疑者の氏名や犯罪事実の要旨などが、1月ごとに一括して検察官に報告されるのみであり、起訴され刑罰を科されたり、それによって前科が付くことはないと考えられます。

暴行事件における微罪処分の要件

 微罪処分の対象となる「検察官が指定した事件」については、犯罪の内容、被害者の処罰感情や犯人の前科前歴の有無などを考慮して、各地方検察庁において、具体的な基準を定めているとされます。

 基準は非公開ですが、暴行事件については、概ね、以下のような基準が定められていると考えられます。

・犯行態様が軽微(共犯事件でない、武器を使用していないなど)であること
・被害者と示談が成立しており、被害者が処罰を望んでいないこと
・素行不良者でない者(粗暴犯の前科、前歴がないなど)の偶発的犯行であって再犯のおそれのないもの

軽微な暴行事件における弁護活動

 暴行事件を起こした場合、被害者との示談を成立させ、示談書の中に宥恕条項(加害者の処罰を求めない旨の条項)を入れてもらうことが、微罪処分を受けるためにも重要となりますが、当事者同士では、被害者の被害感情などから示談交渉がうまくいかず、かえって示談の成立が困難になってしまうおそれがあります。
 また、微罪処分を得るためには、事件が検察官へ送致される前までに示談を成立させ、その結果を警察へ報告する必要があるため、警察の捜査状況も確認しながら、示談交渉の経過を適時報告しつつ、迅速に示談交渉を進めていく必要があります。

 そのため、被害者と知人関係にあるからといって、安易に自ら示談交渉を行おうとすることは避け、刑事事件に強く、示談交渉の経験豊富な弁護士に相談の上、対応を検討することをお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、暴行事件において、検察官不送致(微罪処分)を獲得した実績があります。
 自身やご家族が暴行事件を起こしてしまい、今後のことでご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

【報道解説】コーラをかけたとして暴行罪で逮捕

2023-10-13

 コーラをかけたとして、暴行罪の疑いで警察に逮捕された報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

報道紹介

 トラブルになった相手の足にコーラをかけたとして、兵庫県警尼崎南署は9日、暴行の疑いで、自称住所不定、無職の男(48)を現行犯逮捕した。
 逮捕容疑は9日午後0時半過ぎ、兵庫県尼崎市武庫川町3の路上で、面識のない会社員の男性(30)の片足に500ミリリットルのペットボトル入りのコーラをかけた疑い。「相手の態度に腹が立ったので、半分くらいかけた」と容疑を認めているという。
 同署によると、男性が「急に絡まれた」と110番し、署員が向かっている間に男がコーラをかけたとみられる。男の呼気からはアルコールが検出され、直前に何らかのトラブルがあったとみて調べている。
(10月9日に神戸新聞NEXTで配信された報道 https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/202310/0016900081.shtml より引用)

コーラをかけただけで暴行罪?

 今回取り上げた報道ではペットボトルにはいったコーラをかけたとして暴行罪の疑いで男性が逮捕されています。
 暴行罪というと、殴ったり蹴ったりといった暴力行為を行ったときに成立する犯罪で、コーラをかけただけで暴行罪になるのかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、そのような典型的な暴力行為以外でも暴行罪が成立する場合があります。
 

 暴行罪が成立するために必要な「暴行」とは、人の身体に対して不法に有形力を行使(物理的な攻撃)をすることと考えられていますが、有形力の行使の程度がおよそ相手にケガを負わせるものとはいえない軽微なものであっても暴行罪となっている裁判例があります。
 例えば、福岡高等裁判所昭和46年10月11日判決では、被害者の方の顔や胸などに塩を数回振りかけた行為が、被害者の方に「不快嫌悪の情を催させるに足りる」ものであることを理由に、塩を数回振りかけた行為について暴行罪の成立を認めています。
 また、さいたま地方裁判所平成14年3月18日判決では、6歳の被害者の頭に射精をして精液をかけた行為を暴行罪に当たると判断しました。

 このように暴行罪は、人の身体に対して不法な有形力の行使があれば、その程度が軽微なものであっても成立する場合があることになりますので、コーラや水を相手に向かってかけたという場合でも暴行罪に当たると考えられます。
 なお、暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となっています。

暴行罪の疑いで警察の捜査を受けられている方は

 相手を殴ったり蹴ったりした訳でもないのに暴行罪の疑いで警察の捜査を受けられてお困りの方は、弁護士に相談して、ご自身の行為が本当に暴行罪に当たる可能性があるのか、仮に暴行罪に当たる可能性が高い場合は、今後どのような対応をとればよいのかといったことついて弁護士からアドバイスを貰われることをお勧めします。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、暴行罪をはじめとする刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
 暴行罪の疑いで警察の捜査を受けられてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事件解説】金属バットを持って喧嘩に参加 凶器準備集合罪で逮捕

2023-10-06

 対立する不良グループと喧嘩するために金属バットを持って集合したことで、凶器準備集合罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

 対立する不良グループと喧嘩するために凶器を準備して集合したとして、不良グループに所属する男性A(21歳)ら8名が逮捕されました。
 Aらは、対立する不良グループと喧嘩するために、北九州市内の公園で鉄パイプや金属バットなどの凶器を準備して集合していたとみられ、異変に気付いた近隣住民が警察に通報し、駆け付けた福岡県小倉南警察署の警察官に現行犯逮捕されました。
 Aは、喧嘩に参加するために金属バットを持って集合したとして、凶器準備集合の容疑を認めています。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

凶器準備集合罪とは

 2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する、と定められています(刑法第208条の2第1項)。

 凶器準備集合罪は、他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的(共同加害目的)での集合を処罰の対象とすることで、後に予想される、殺人、傷害、暴行、建造物損壊、器物損壊など、個人の生命・身体・財産に対する危険からの保護とともに、公共的社会生活の平穏を保護するものとされています。

 凶器準備集合罪における「凶器」とは、その性質上、又は使用方法によっては、人を殺傷し得る器具、とされます。
 銃砲刀剣類のように、その器具本来の性質上、人を殺傷する用に供されるもののみならず、ゴルフクラブ等、使用方法によっては、人を殺傷し得る器具も含まれます。

 なお、同罪における「準備」とは、必要に応じていつでも加害行為に使用しうる状態に置くこといい、「集合」とは、2人以上の者が共同の行為をする目的で、一定の時刻、一定の場所に集まることをいいます。

 本件Aは、対立する不良グループとの喧嘩という「共同加害目的」で、身体に殴打すれば人を殺傷し得る「凶器」となる金属バットを準備して「集合」したとして、凶器準備集合罪が成立し得ると考えられます。

凶器準備集合事件で逮捕された場合の刑事弁護

 凶器準備集合罪のように、共犯者や関係者が多数にわたることのある事件では、口裏合わせ等の罪証隠滅のおそれがあるとして、逮捕に引き続き勾留される可能性が高く、さらに、事件の全容解明のための捜査に時間を要することから、勾留が延長されるなど、身体拘束が長期化する可能性もあります。

 弁護活動としては、身体拘束からの早期解放を目指して、検察官や裁判官に対し、勾留の理由(逃亡・罪証隠滅のおそれ等)や勾留の必要性がないことを主張し、勾留請求や勾留決定を行わないよう意見を申述することや、勾留が決定した後でも、その決定に対して不服申し立て(準抗告)を行うことが考えられます。

 また、凶器準備集合事件では、共犯者間の役割等によって刑事責任の重さも変わってくると考えられますが、主導的な役割(凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた)を果たした者には凶器準備結集罪が成立し、3年以下の懲役と刑が加重され得るため、不当に重い責任を負わされることのないよう、弁護士が被疑者との接見に際し、取調べ対応についてアドバイスを行うことも重要になると考えられます。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、凶器準備集合などの暴力事件において、身体拘束からの早期解放不起訴処分や刑の減軽を獲得した実績が多数あります。
 凶器準備集合の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例解説】医学部の大学生が傷害事件 弁護士に示談を依頼

2023-09-29

 医学部の大学生が傷害事件で弁護士に示談を依頼するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 医学部の6年生であるAさんは、行きつけのバーでお酒を飲んだ帰りに、Vさんと些細なことからトラブルになりました。
 Vさんの話し方が気に食わなかったAさんは、Vさんのお腹を殴ったり、太ももあたりを蹴ったりという暴行を加えて、Aさんに怪我を負わせました
 Vさんが路上でうずくまったので、Aさんはその場から離れました。
 それから数カ月後、突然、警察から連絡が来て、Vさんに対する傷害事件について、話を聞きたいからと警察署まで呼び出されました。
 Aさんは家族と相談して、Vさんに対する傷害を認めて、弁護士にVさんとの示談交渉を依頼したいと考えています。
(この事例はフィクションです)

医師が傷害事件を起こすと医師免許はどうなる?

 殴ったり蹴ったりといった暴力を加えて、相手に怪我を負わせると刑法204条の傷害罪が成立することになります。
 傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっていますので、傷害罪で起訴されて有罪となってしまうと、この範囲で刑が科されることになります。

 事例のAさんは医学部の6年生という立場で傷害事件を起こしています。
 医学部の6年生ということは医師を目指して、今後、医師国家試験の受験を控えていることとになると考えられます。
 医師になるためには、医師国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受けなければなりませんが(医師法2条)、この医師免許については、医師法4条3号において、罰金刑以上の刑に処せられた者は、免許を与えられないことがあると規定しています。
 そのため、傷害罪で前科がついてしまうと、医師免許を厚生労働大臣から付与されるかどうかの判断にあたって、審査の対象になってしまい、医師免許の取得に重大な影響が出てしまう可能性があります。

傷害事件で被害者の方と示談交渉をお考えの方は

 医師免許の取得を予定している医学部の大学生が、傷害事件を起こしてしまった場合に、傷害罪で前科が付くことを避けたいという場合は、いち早く弁護士に被害者の方に対する示談交渉を依頼されることをお勧めします。
 検察官が傷害罪で起訴をする前に、被害者の方に真摯に謝罪して、被害者の方との示談を締結することができれば、傷害罪での起訴を回避するという可能性を大きく高めることになります。
 傷害罪で起訴されなかったということは、傷害罪で前科が付くことはありませんので、前科による医師免許の取得の影響はないということになります。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 傷害事件で被害者の方と示談をしたい、傷害罪の前科を付けたくないとお考えの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】介護・リハビリでの場面における暴行事件

2023-09-22

 介護・リハビリでの介助行為が暴行罪に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Vさんは、事故で負った障害が原因により、ひとりでは立った姿勢を維持することができない状態です。
 そのため、Aさんの介助で毎日リハビリをしています。
 ある日のリハビリ中、Aさんは、背後からVさんの両脇を抱えて、Vさんを立った状態にさせたところから、突然手を離して床の上に崩れ落ちさせました。
 さらに、床に崩れ落ちたVさんの身体を持ち上げて、Vさんをクッションの上に放り投げました。
 この様子を見ていた周囲の人が、警察に通報したことで、Aさんは暴行罪の疑いで警察で取調べを受けることになりました。
(この事例は、さいたま地方裁判所平成24年7月17日判決を元にしたフィクションです)

介護・リハビリにおける暴行事件

 刑法208条が規定する暴行罪が成立するためには、相手に対して「暴行」を加える必要があります。
 この「暴行」の意味については、人の身体に対する不法な有形力の行使(物理的な接触)と考えられています。

 介護やリハビリの中でなされる介助行為の多くは、相手の身体との物理的な接触が避けられません。
 そのため、このような介助行為は暴行罪における暴行の意味のうち、「人の身体に対する」という部分と「有形力の行使」という部分については該当することになってしまいますが、介護やリハビリでなされる介助行為それ自体は正当な行為として認められているものですので、相手の身体と物理的な接触が必用な介助行為については、通常は「不法な」ものであるという評価はなされず、介助行為が暴行罪にいう暴行には当たらないと考えられます。
 もっとも、相手の身体に物理的に接触する介助行為が介護やリハビリとして認められる範囲を越えるような場合には「不法な」ものであると判断され、介助行為が人の身体に対する不法な有形力の行使として暴行罪に該当する場合があります。

 冒頭で記載した事例は、さいたま地方裁判所平成24年7月17日判決を元にしたフィクションですが、この判決では、リハビリの場面でなされた行為が暴行罪の暴行に該当するかが争点になりました。
 具体的には、重度の身体障害を持つ9歳の子供のリハビリの際に、被告人である父親が、①後ろから両手で支えて子供を持ち立たせた状態から、その両手を放して子供をお尻から畳の上に崩れ落ちさせた行為と、②子供の右わきとお尻を抱えてクッションの上に放り投げさせた行為がそれぞれ暴行に問われるかが争われました。
 被告人である父親は、①の行為についてはリハビリを行っただけであり、②の行為についてはゴロンと横にさせただけであると主張しましたが、これに対して、裁判所は、①の行為に子供の生命を脅かす客観的な危険性があることを指摘して、①の行為を「リハビリとして許容される範囲を超えており、不法な有形力の行使である暴行に当たる」と述べ、②の行為は子供の身体を放り投げる行為と評価して、「不法な有形力の行使である暴行に当たることは明らか」であると述べました。

 この裁判例からすると、裁判例の被告人と同様の行為をしているAさんには暴行罪が成立する可能性があると言えるでしょう。
 仮に暴行罪で有罪となってしまうと、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料が科される可能性があります。

介護・リハビリ中の介助行為が暴行罪に当たると疑われてしまったら

 介護・リハビリ中の介助行為が暴行罪に当たると警察に疑われてしまったら、いち早く弁護士に相談して今後についてアドバイスを受けることをお勧めします。
 介護やリハビリにおいて介助される人は、体力が低下したお年寄りや重度の障害を持った方が多いことが想定されますが、そうした体が弱い被害者の方に軽度な暴行を加えた場合、被害者の方の体の弱さがが相まって単なる暴行罪に留まらず、より刑が重い傷害罪や傷害致死罪が成立してしまう可能性もあります。
 実際に、先ほどの裁判例でも、被害者となった子供は、暴行によって急性硬膜下血腫の傷害が生じ、これによって亡くなってしまったので、被告人の父親は傷害致死罪として懲役2年の実刑判決となっています。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は暴行事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 介護・リハビリ中の行為が暴行罪に当たると疑われてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】18歳の特定少年による強盗事件

2023-09-15

 18歳の特定少年による強盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 18歳のフリーターのAさんは、お金に困っていたので強盗の闇バイトに応募しました。
 Aさんは、指示役の指示に従って、東京都内にある買取ショップで、店員に包丁を突きつけて「金を出せ」と脅して、現金数百万円を奪い取りました。
 強盗から数日後、店内や近くに設置されていた防犯カメラの映像が決め手になって、Aさんは強盗罪の疑いで警察に逮捕されました。
(この事例はフィクションです)

18歳の少年が強盗事件を起こすとどうなる?

 事例のように、包丁を突きつけながら「金を出せ」と相手を犯行を抑圧するに足りる程度の脅迫を用いて現金を奪い取る行為は刑法236条1項の強盗罪に当たる行為です。
 Aさんの年齢は18歳ですので、普段の生活の中では成人として扱われていますが、少年法は20歳未満の者が犯罪を犯した場合を適用対象にしていますから、18歳のAさんの強盗事件には少年法が適用されることになります。

特定少年の取り扱い

 20歳未満である18歳、19歳の少年が犯罪に当たる行為をした場合にも少年法が適用されますが、少年法では18歳、19歳の少年を「特定少年」として、18歳未満の少年とは異なる取り扱いをしています。
 そのひとつに、特定少年の場合は、原則として逆送の対象となる事件が18歳未満の少年が犯した事件よりも拡大されています。

「逆送」とは

 特定少年の場合は、原則として逆送の対象となる事件が拡大されているということについて理解するためには、そもそも「逆送」とはどのような意味なのかを理解する必要があります。
 少年法が適用される少年事件の場合は、警察官や検察官によって必要な捜査が終了した後は、事件を検察から家庭裁判所に送致して、家庭裁判所が最終的な少年の処遇を決定するという流れで通常は手続きが進められることになります。
 逆送とは、検察から事件の送致を受けた家庭裁判所から、再び検察に事件を送致することです。
 逆送がなされると、通常の刑事手続によって進められることになりますので、検察官によって起訴されて、刑事裁判で有罪となれば刑事罰が科されることになります。

特定少年の場合の原則逆送対象事件について

 少年法上、原則として逆送となる事件については、犯行時に16歳以上の少年が殺人や傷害致死といった故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合だけですが(少年法20条2項参照)、特定少年の場合には、この特則が定められており、原則として逆送となる事件が拡大されています。
 具体的には、少年法62条2項に定められており、
・少年法20条2項の場合と同様に、犯行時に16歳以上の少年が殺人や傷害致死といった故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合(少年法62条2項1号参照)
の他に、
・犯行時に18歳以上の少年が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯した場合(少年法62条2項2号参照)
にも、原則として「逆送」されることになりました。

 強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役となっており、短期1年以上の懲役刑に当たる罪に該当しますので、事例のように18歳の特定少年が強盗事件を起こした場合は、原則として逆送の対象になり、起訴されて、最終的に強盗罪の前科が付く可能性があります。

18歳・19歳のお子さんが強盗罪の疑いで警察に逮捕されたら

 18歳・19歳の特定少年が起こした強盗事件は原則として逆送の対象になりますが、だからといって、特定少年が強盗事件を起こした場合に必ず逆送されるということではありません。
 原則として逆送の対象になる特定少年による強盗事件の場合でも、例外的に「犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるとき」(少年法62条2項但し書き)は逆送されずに通常の少年事件の流れによって手続きが進められることになります。
 このような逆送回避を実現するためには、いち早く弁護士に相談して、弁護士から適切なサポートを受けられることをお勧めします。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、強盗事件といった刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 18歳・19歳のお子様が強盗罪の疑いで警察に逮捕されてしまい、お困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

« Older Entries Newer Entries »