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【事例解説】悪口を言われてカッとなって熱湯をかけた男を傷害罪で逮捕

2024-07-15

会社の食堂で悪口を言われてカッとなった男が、同僚に熱湯をかけて傷害罪で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

けんか

・事件概要

新宿警察署は、会社の食堂でトラブルになった相手Vに対してカップ麺のお湯をかけて怪我をさせたとして、東京都内に住む会社員の男性Aを逮捕しました。
事件が起きたのは、Aが午後からの出勤の日に会社の食堂で昼食をとっていた時のことでした。
普段から仲が悪い同僚のVが、Aが休みと勘違いした他の同僚と一緒にAの陰口を言っているのを耳にしました。
Aはその内容にカッとなり、持っていたカップ麺のお湯をVの顔面にかけました
Vは顔に火傷を負い、緊急搬送されました。
駆けつけた新宿警察署の警察官によりAはその場で逮捕されました。取調べに対しAは「カッとなってやってしまった。自分も少し悪いが、そもそもあいつが悪口を言わなければ何も起こらなかった。」と容疑を認めています。
(フィクションです)

・傷害罪とは

刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」

傷害罪は、人の身体を「傷害」する犯罪です。判例によれば、傷害とは人の生理的機能に障害を加えることです(大判明治45年6月20日)。
例えば、相手を殴って出血させたり、骨折させたりする行為は、人の生理的機能に障害を加えることにあたり、傷害罪が成立する可能性があります。

本件では、Aは食堂で陰口を言われたことでカッとなり、持っていたカップ麺のお湯をVの顔面にかけて火傷を負わせたようです。
このAの行為が、生理的機能に障害を加えたと評価され傷害罪が成立する可能性があります。

・逮捕後の弁護活動

本件で容疑者は逮捕されています。
逮捕自体は最大72時間ですが、この間に勾留の必要があるかどうかが検察官と裁判官により判断され、検察官が請求をし裁判官が勾留が必要だと判断した場合さらに10日間身柄を拘束されることになります。

本件の容疑者は会社員です。
逮捕後に勾留された場合、Aは長期間出勤することがしばらくできなくなり解雇される可能性があります。
したがって、検察官と裁判官に勾留の必要がないことを説明して勾留を防ぐ必要があります。

刑事事件に詳しいわけではない一般の人にとって、検察官と裁判官に何をどう説明したら勾留の必要がないと判断してもらえるのか、よく分からないのではないでしょうか。
ご家族が逮捕された場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。

加えて、傷害罪のような被害者のいる犯罪では、相手方と示談を締結できるかどうかが重要となります。
早期に示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性がありますし、仮に起訴されたとしても執行猶予がつく可能性があります。
もっとも、A自らVと交渉しようとしても上手くいかない可能性があります。
AとVは元々不仲ということですし、熱湯をかけられたVとしてはAに対して強い処罰感情を有しているでしょうから、交渉決裂となりやすいのではないでしょうか。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害事件をはじめとする豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
早い段階で弁護士に依頼していれば、長期間の身柄拘束を防ぎ、解雇を防ぐことができるかもしれません。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
逮捕された方への弁護士の派遣、無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。

【事例解説】店主を脅し10万円を恐喝したとして逮捕 

2024-06-09

店主を脅して10万円を脅したとして男が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。 

居酒屋

事例

Aさんは、居酒屋で一人で飲んでいたところ酔いが回っていたこともあり、周りの客に対して執拗にからむなどの惑行為をしていました。
居酒屋の店主Vは、他のお客さんの安全を守るために、Aさんに退店を命じたところ、Aさんは逆上して店主Vに対して罵詈雑言を浴びせました。 
次第にAさんはヒートアップしてきて、「お前の店なんて潰そうと思ったらいつでも潰せるんだぞ」といい、反社とのつながりなども示唆してきました。
最終的にAさんは、恐怖を感じた店主Vから解決金として10万円を支払わせ店を後にしました。
Aさんが店を後にして直ぐに店主Vは警察に事件のことを相談し、数時間後にAさんは恐喝の疑いで逮捕されてしまいました。

恐喝罪とは

刑法249条1項(出典/e-GOV法令検索)
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

事例では、Aさんは店主Vから退店を命じられたことに逆上して、反社とのつながりを示唆した上で店を潰すぞと脅迫し店主に10万円を支払わせたようです。
Aさんは、店主Vに対して、10万円という財物を自身に交付させているため、Aの発言が恐喝に当たる場合には、恐喝罪が成立する可能性があります。

恐喝とは、恐喝とは、①財物交付に向けられた、人を畏怖させるに足りる脅迫または暴行であって、②その反抗を抑圧するに至らない程度の行為を言います。
本件では、AはVに対して、反社とのつながりを匂わせた上で、お前の店なんて潰そうと思ったらいつでも潰せるといい解決金として10万円を支払わせています。 
反社とのつながりを示唆した上で店を潰せると発言することは、財物交付に向けられた、人を畏怖させるに足りる脅迫といえそうです。 
また、直接反社の人たちを店につれてきて脅迫したとかではなく、発言をしているだけですから、反抗を抑圧するには至っていないと思われます。
以上より、Aの行為は恐喝に当たり、恐喝罪が成立する可能性があります。

 

早めに弁護士に相談を!

恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役です。
執行猶予がつくためには、量刑が3年以下であることが条件の1つですから、恐喝罪を犯してしまった場合、執行猶予がつかない可能性があります。

量刑を3年以下にしてもらう可能性を高めるためには、被害者との間で示談を成立させることができるかが重要となります。
示談交渉は、逮捕されているかどうかに関わらず、ご自分で行うことは望ましくありません
恐喝の被害者は加害者に脅されて金銭などの財物を無理やり差し出させた相手なわけですから、加害者のことを怖いと思っている可能性があります
したがって、加害者本人が謝罪するために連絡してきたとしても応じてくれない可能性が高いです。

そこで、示談交渉は弁護士に一任することをおすすめします。
加害者本人ではなくその弁護士が相手であれば、被害者が示談交渉に応じてくれることは珍しくありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、恐喝事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成功させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、量刑を軽くしたり執行猶予付判決や不起訴処分を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例解説】コンビニのレジで割り込まれて喧嘩になり逮捕

2024-05-19

コンビニのレジ待ち中に割り込まれて喧嘩になり傷害罪で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

けんか

事件概要

兵庫県姫路警察署は、コンビニ店内でトラブルになった相手Vに対して殴る蹴るの暴行を加えて怪我をさせたとして、姫路市内に住む執行役員の男性Aを逮捕した。
事件が起きたコンビニでは、床にレジ待ちの際の並び場所のシールが貼られていて、加害者であるAはそれにしたがってレジから少し離れた場所でレジ待ちをしていた。
被害者のVは、床のシールに気づかずに会計中の客の真後ろに入り割り込む形となったので、Aが声をかけたが、Vはイヤホンをしていたため気づかず、無視されたと思ったAは後ろから声を荒げながらVに掴み掛かった
いきなり暴行されると思ったVは反撃しようとしたので、Aが追加で殴る蹴るの暴行を加えたためVはあばら骨が折れてしまった。
Aは、駆けつけた姫路警察署の警察官に逮捕された。
取調べに対しAは「カッとなってやってしまった。申し訳ないことをした。」と容疑を認めている。
(フィクションです)

傷害罪とは

刑法204条(出典/e-GOV法令検索)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪は、人の身体を「傷害」する犯罪です。
判例によれば、傷害とは人の生理的機能に障害を加えることです(大判明治45年6月20日)
例えば、相手を殴って出血させたり、骨折させたりする行為は、人の生理的機能に障害を加えることにあたり、傷害罪が成立する可能性があります。
したがって、この場合には、人を傷害した、として傷害罪が成立する可能性があります。
本件では、Aはコンビニでレジ待ち中に割り込まれたと勘違いし、注意したのに無視されたことでカッとなって殴る蹴るの暴行を加えて、Vのあばら骨を折ってしまったようです。

逮捕後の弁護活動

本件で容疑者は逮捕されています。
逮捕自体は最大72時間ですが、この間に勾留の必要があるかどうかが検察官と裁判官により判断され、検察官が請求をし裁判官が勾留が必要だと判断した場合、さらに10日間身柄を拘束されることになります。

本件の容疑者は会社の執行役員をしているようです。
逮捕後に勾留された場合、Aは出勤することがしばらくできなくなりますから、会社にAが犯罪を犯したことが知られてしまい、解雇される可能性があります。
したがって、勾留を防ぐために、検察官と裁判官に勾留の必要がないことを説明するべきです。
刑事事件に詳しいわけではない一般の人にとって、検察官と裁判官に何をどう説明したら勾留の必要がないと判断してもらえるのか、よく分からないと思います。そのため、ご家族が逮捕された場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士は、検察官と裁判官に対し、勾留に対する意見書を提出することができます。
本件のように現行犯逮捕された場合は即座に弁護士を派遣してもらうことをおすすめします。
弁護士に依頼するのが遅くなってしまうと、適切なタイミングで適切な意見書を提出することが難しくなります。

加えて、傷害罪のような被害者のいる犯罪では、相手方と示談を締結できるかどうかが重要となります。
早期に示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性がありますし、仮に起訴されたとしても執行猶予がつく可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害事件をはじめとする豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
早い段階で弁護士に依頼していれば、長期間の身柄拘束を防ぎ、解雇を防ぐことができるかもしれません。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
逮捕された方への弁護士の派遣、無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。

【事例解説】銭湯で他の客に暴行したとして暴行罪の疑いで逮捕

2024-03-04

銭湯で他の客に暴行したとして暴行罪の疑いで逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

銭湯

・事件概要

京都府下鴨警察署は、会社員の男性暴行罪の疑いで逮捕した。
男は、京都市内の銭湯に入浴中に、別の客が体をしっかり洗わずに湯船に入ろうとしたのを見て「体洗わなあかんやろ」と注意したところ、相手が無視してお湯に浸かろうとしたため突き飛ばしたとされている。
周りにいた他の客からトラブルを聞きつけた店舗スタッフが止めに入ろうとするも、男は「お前らスタッフが言わんから俺が言ってるんや」とスタッフも突き飛ばしたので、警察に通報された。
駆けつけた警察官に対し、男は、「カッとなってやってしまった」と容疑を認めている。
(フィクションです)

・暴行罪とは

刑法208条出典:刑法/e-GOV法令検索

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法は、他人を叩いたり物を投げつけたりといったする行為を暴行罪として罰しています。
暴行とは、人の身体に対する不法な有形力の行使であると解されています。
本件では、加害者の男性は、銭湯でマナーを守らなかった他の利用者と、トラブルを止めに入った銭湯のスタッフを突き飛ばしたようです。
人を突き飛ばす行為は、人の身体に対する不法な有形力の行為といえそうですから、暴行罪が成立する可能性があります。

・できるだけ早く弁護士に相談を

暴行罪に当たる行為をしてしまった場合、本件の加害者の男性のように逮捕される可能性があります。
逮捕された場合、検察官が勾留の必要があると判断すれば、検察官から裁判官に勾留請求がされます。

最終的に、裁判官により勾留の決定がされてしまうと、社会人の方には大きな影響があります。

勾留とは、逮捕に続く身体拘束であり、10日間に及ぶ上、場合によってさらに延長されることさえあります
このように身体拘束期間が長引いた場合、社会人の場合には仕事に行くことができなくなってしまいます。
結果、犯罪の嫌疑がかけられていることが知られてしまい、解雇される可能性があります。

したがって、早期に釈放を目指す弁護活動を開始することが重要となります。
逮捕後早い段階で弁護士に依頼することで、釈放を目指すための活動を行うことができます。
例えば、検察官と裁判官が勾留の必要性を判断する際に、弁護士は身体拘束の必要性がない旨の意見書を提出することができます。
意見書を適時に提出するのは、時間との勝負になります。

また、勾留が決定されてしまった場合でも、準抗告という形で、勾留の決定についての異議申し立ても可能です。

勾留に対する意見書の提出は勾留の決定がされる前にする必要がありますし、準抗告についても勾留の決定がされた後直ぐに申立てをすることで早期の釈放が叶う可能性があります。

刑事事件は時間との勝負になりますので、可能な限り早く弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、暴行罪をはじめとする刑事事件・少年事件に精通した法律事務所です。
暴行罪で逮捕されたかたは、なるべく早く一度弁護士法人刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お電話は、0120-631-881で承ります。

【事例解説】15歳の中学生が凶器準備集合罪の疑いで逮捕

2024-01-19

 15歳の中学3年生が凶器準備集合罪の疑いで警察に逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 15歳の中学3年生のAさんは、同じ中学の友人同士でつるんでいたところ、隣町の中学の不良グループのリーダーであるVさんと些細なことからトラブルになりました。
 AさんとVさんは、お互いケンカで決着を付けようという話になり、1週間後に公園でケンカをすることになりました。
 タイマン当日、Aさんは友人たちと一緒に、金属バッドを持って指定された公園で待っていたところ、パトロールのために公園内を巡回していた警察官が来て、Aさんは、逃げ切れずに凶器準備集合罪の疑いで逮捕されたました。
(この事例はフィクションです)

凶器準備集合罪とは

 事例のAさんは、凶器準備集合罪の疑いで警察に逮捕されています。
 凶器準備集合罪は刑法208条の2第1項において、
 「2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」
といった形で規定されています。
 この規定を読んで分かるように、凶器準備集合罪は、実際に相手を殴って怪我をさせていなくても、喧嘩のために凶器を準備して集まっただけで処罰の対象になる可能性がある犯罪になります。

 凶器準備集合罪における「凶器」とは、人を殺傷することができる一切の道具のことをいいますので、鉄砲などの「性質上の凶器」の他にも、釜・斧といった本来の用途としては凶器ではないものの用途次第では人を殺傷するために使用することができる「用法上の凶器」も含まれると考えられています。
 そのため、Aさんが用意した金属バットは性質上の凶器として凶器準備集合罪の「凶器」に該当し、Aさんには凶器準備集合等罪が成立する可能性が高いと考えられます。

15歳の中学生でも逮捕されることがある

 15歳の未成年であっても、刑事罰法規に触れる行為をした疑いがある場合には、警察に逮捕されてしまうことがあります。
 そのため、事例のAさんは15歳の中学3年生ですが、凶器準備集合等罪の疑いで警察に逮捕されています。
 逮捕後は、勾留や勾留に代わる観護措置といった形で、身体の拘束期間が長期間に及ぶ可能性がありますので、中学生のお子さんが警察に逮捕されたことを知ったら、いち早く弁護士に依頼して弁護士によるサポートを受けられることをお勧めします。

中学生のお子さんが凶器準備集合罪の疑いで逮捕されてお困りの方は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件のみならず少年事件にも強い法律事務所です。
 中学生のお子さんが凶器準備集合罪の疑いで逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】配偶者の虐待を黙認した場合に罪に問われる可能性(後編 ※不作為の幇助犯の成立について)

2024-01-12

 前回に引き続き、同居の母に対する虐待の疑いで、傷害の容疑で息子夫婦が逮捕された架空の事件を参考に、配偶者による虐待を黙認した場合に共謀共同正犯や不作為の幇助犯として罪に問われる可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 石川県金沢市在住の会社員男性Aは、妻Bと高齢の母Vと3人で同居していましたが、Bは要介護認定を受け寝たきりのVの在宅介護のストレスから、Vの腕をつねるなどの虐待を行うようになりました。
 AはBからVに対する虐待が行われている様子を目にすることがあっても、Bとの関係悪化を恐れ、見て見ぬふりをしていました。
 Vの娘XがA宅を訪問した際、Vの腕の多数の内出血に気づき、AとBによる虐待を疑い警察に通報したことにより捜査が開始され、AとBはVへの傷害の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

前回の前編では、共謀共同正犯の成立について解説しました。

不作為の幇助犯の成立について

 Aに傷害罪の共謀共同正犯が認められなかった場合でも、BのVに対する暴行を黙認したことが、Aの犯行を手助けしたものとして、なお傷害罪の幇助犯が成立するか問題となります。

 幇助犯の成立には、正犯の犯行を容易にする行為がなされたこと(作為)が通常必要とされるため、具体的な行為を行わなかったこと(不作為)を、作為と同視して処罰するには、(1)正犯の犯行を阻止する義務を有すること、(2)阻止することが可能かつ容易であったこと、が必要とされます。

 本件では、(1)について、Aは実母であるVの扶養義務(民法877条)を負う上、要介護認定を受け寝たきりのVと妻Bの3人で同居していることから、BのVに対する虐待が行われている様子を目にした場合は、それを阻止する義務を有すると認められる可能性があります。
 (2)について、AはBの夫であり、特段の事情がない限り、Vに対する暴行を阻止することが可能かつ容易であったと認められる可能性が高いと考えられます。

 なお、子の虐待死事件において、夫から子への暴行を阻止する行為をとらなかった妻に対し、傷害致死罪の幇助犯を認定した裁判例があります。

虐待を黙認したことで逮捕された場合の弁護活動

 傷害罪の共謀共同正犯の場合、通常の法定刑である15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があり、幇助犯の場合でも、刑の減軽はされますが、なお懲役刑の実刑などの重い処罰を受ける可能性はあります。

 共謀共同正犯や不作為の幇助犯の成立の認定に際し、実行行為者との意思の連絡の有無や犯行への関与の形態などについて、逮捕後の取調べで厳しく追及されることが予想されるため、早めに弁護士と接見し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることが重要です。

 また、捜査機関が押さえている物的証拠や実行行為者の供述内容など、捜査状況を的確に把握した上で対応を検討する必要があるため、刑事事件に強い弁護士に依頼し、適切な弁護活動を早く開始してもらうことをお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において不起訴処分や刑の減軽などを獲得した実績があります。

 配偶者による虐待を黙認したことによる傷害の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例解説】配偶者の虐待を黙認した場合に罪に問われる可能性(前編 ※共謀共同正犯の成立について)

2024-01-05

 同居の母に対する虐待の疑いで、傷害の容疑で息子夫婦が逮捕された架空の事件を参考に、配偶者による虐待を黙認した場合に共謀共同正犯や不作為の幇助犯として罪に問われる可能性について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 石川県金沢市在住の会社員男性Aは、妻Bと恒例の母Vと3人で同居していましたが、Bは要介護認定を受け寝たきりのVの在宅介護のストレスから、Vの腕をつねるなどの虐待を行うようになりました。
 AはBからVに対する虐待が行われている様子を目にすることがあっても、Bとの関係悪化を恐れ、見て見ぬふりをしていました。
 Vの娘XがA宅を訪問した際、Vの腕の多数の内出血に気づき、AとBによる虐待を疑い警察に通報したことにより捜査が開始され、AとBはVへの傷害の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

共謀共同正犯の成立について

 人の身体を傷害した者には、傷害罪が成立します(刑法第204条)。

 本件で、Vの腕をつねる暴行を加え、内出血を負わせたBに同罪が成立することは明らかですが、Bの当該行為を黙認したAにも同罪が成立するか問題となります。

 2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする、と定められています(刑法第60条)。
 「正犯」とは、自ら犯罪を実行する者とされ、原則、法定刑で処罰されるのに対し、正犯を幇助、つまり手助けするに過ぎない者は「従犯」とされ、刑が軽減されます(刑法第62条)。

 2人以上の者がそれぞれ、(1)互いに共同で犯罪を実行するという意思の連絡のもと、(2)犯行の一部を実行した、という(1)及び(2)の要件を充たす場合に正犯と認められるのが通常ですが、(2)の要件を欠く、つまり犯行の一部を実行していない者であっても、実行した者との関係性、犯行に至るまでに果たした役割、犯行による分け前の分与その他の事情を考慮し、正犯と認められることがあります(これを「共謀共同正犯」といいます。)

 本件で、BはVへ暴行を加えていませんが、Vへの暴行についてAとBの間で意思の連絡があったと認められる場合、共謀共同正犯としてBも傷害罪が成立する可能性があります。

 なお、子の虐待死事件において、子に死因となる暴行を加えたのは妻であっても、それをあえて制止せず黙認した夫との間の意思の連絡を認め、夫に傷害致死罪の共謀共同正犯を認定した裁判例があります。

 次回の後編では、不作為の幇助犯の成立について解説していきます。

虐待を黙認したことで逮捕された場合の弁護活動

 傷害罪の共謀共同正犯の場合、通常の法定刑である15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があり、幇助犯の場合でも、刑の減軽はされますが、なお懲役刑の実刑などの重い処罰を受ける可能性はあります。

 共謀共同正犯や不作為の幇助犯の成立の認定に際し、実行行為者との意思の連絡の有無や犯行への関与の形態などについて、逮捕後の取調べで厳しく追及されることが予想されるため、早めに弁護士と接見し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることが重要です。

 また、捜査機関が押さえている物的証拠や実行行為者の供述内容など、捜査状況を的確に把握した上で対応を検討する必要があるため、刑事事件に強い弁護士に依頼し、適切な弁護活動を早く開始してもらうことをお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において不起訴処分や刑の減軽などを獲得した実績があります。

 配偶者による虐待を黙認したことによる傷害の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例解説】お酒に酔って駅員に暴力―弁護士に示談を依頼

2023-12-29

 お酒に酔った状態で駅員に暴力をふるった傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは会社の忘年会でお酒を飲みすぎた影響で、帰りに利用した駅で眠ってしまいました。
 Aさんは終電時間を過ぎた後も駅構内で寝ていたため、駅員のVさんに起こされて駅の外へと運び出されようとしたところ、眠りを邪魔されたことに腹を立てて、Vさんを殴る蹴るといった暴行を加えて、Vさんにケガを負わせました。
 Vさんが警察に通報したことで、Aさんは警察に傷害罪の疑いで現行犯逮捕されましたが、翌日になって釈放されました。
 家に帰ったAさんは今後の対応について刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです)

お酒に酔った状態で起こした傷害事件

 これからの年末年始にかけて、会社の忘年会や久しぶりに集まった親族との新年会などの機会でお酒を飲むことが多くなるかと思いますが、事例のようにお酒を飲みすぎたことが原因で暴力をはたらいてしまうと、警察に逮捕されて刑事事件になってしまうというケースは珍しくありません。

 今回取り上げた事例も忘年会で飲みすぎたAさんが駅員であるVさんに殴る蹴るといった暴行を加えてVさんをケガさせていますので、Aさんには刑法204条の傷害罪が成立すると考えられます。傷害罪の法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。

傷害罪の被害者の方と示談をお考えの方は

 事例のAさんは傷害罪の疑いで現行犯逮捕された翌日に、警察から釈放されて自宅に帰ることができていますが、釈放されたからといってそれで傷害事件が終了したという訳ではありません。
 今後は、在宅捜査といった形で捜査が進められていき、最終的に検察官が傷害罪起訴するかどうかの判断をすることになります。
そのため、傷害罪前科が付くことを回避することを望まれる場合は、刑事事件に強い弁護士に相談して、今後の流れや対応等についてアドバイスを貰われることをお勧めします。
 傷害事件のように被害者の方がいるような事件の場合には、被害者の方との示談交渉が非常に重要になりますので、相談をきっかけに弁護士に示談交渉を依頼して示談の締結を目指していくことになるでしょう。
 検察官が傷害罪起訴の判断を行うまでに被害者の方と示談を締結することができれば、傷害罪起訴されることを回避して傷害罪前科が付くことを避ける可能性を高めることがで期待できます。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害事件をはじめとする刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
 傷害罪の被害者の方と示談をしたいとお考えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】家のベランダに集まるハトを勝手に駆除―鳥獣保護管理法違反事件

2023-12-22

 家のベランダに集まるハトを勝手に駆除した鳥獣保護管理法違反事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、自宅のベランダに集まった野生のハトが残していったフンによってベランダが汚れることに頭を悩ませていました。
 Aさんは、ベランダにハトが寄ってこないように対策を打っていましたが、どのような対策をしても効果がなくベランダにはハトが集まってきてしまいます。
 ある日、我慢の限界を迎えたAさんは怒りに任せて、ベランダに集まったハトに植木鉢を投げつけるなどしてハトを数匹殺しました
 その後、冷静になったAさんは、野生のハトを殺すことは犯罪なのではないかと不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談に行くことにしました。
(この事例はフィクションです)

鳥獣保護管理法について

 つい最近のニュースで、タクシーの運転手がタクシーでハトの群れに突っ込んでハトを1羽ひき殺したとして鳥獣保護管理法違反の疑いで逮捕されたという事件が報道されました。
 このニュースを見て、そんなことで罪に問われるのかと驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、鳥獣保護管理法(正式には「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」と言います。)の第8条では一定の例外を除いて、原則として「鳥獣」を捕獲・殺傷することや「鳥類の卵」を採取・損傷することを禁止しています。
 この捕獲や殺傷が原則として禁止されている「鳥獣」とは、鳥獣保護管理法2条1項によって鳥類又は哺乳類に属する野生動物と定義されています。
 そうすると、事例に登場する野生のハトは鳥類に属する野生動物ですので「鳥獣」に該当することになり、事例のAさんは鳥獣である野生のハトを故意に殺傷したということになり、鳥獣保護管理法8条の規定に違反することになると考えられます。
 鳥獣保護管理法8条の規定に違反すると同法83条1号によって、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。

 なお、「鳥獣」の定義については法律上、鳥類又は哺乳類に属する野生動物としか記載されていませんので、本来であれば日本に生息していない外来種の鳥類・哺乳類であっても、日本で野生動物として生息しているのであれば鳥獣保護管理法の適用の対象になる「鳥獣」に該当することになります。
 ただし、この「鳥獣」に該当したとしても、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護若しくは管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるもの」(鳥獣保護管理法80条1項)については、例外的に鳥獣保護管理法の適用対象外になります。
 「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣」としては、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの家ネズミが当たるとされ、「他の法令により捕獲等について適切な保護若しくは管理がなされている鳥獣」としては、ニホンアシカ、ゼニガタアザラシ、ゴマフアザラシ、ワモンアザラシ、 クラカケアザラシ、アゴヒゲアザラシ、ジュゴン以外の海に生息する哺乳類が当たるとされていますので、これらの鳥獣を殺傷したとしても鳥獣保護管理法は適用されないということになります。

動物を殺傷したことで罪に問われないかとご不安な方は

 動物を故意に殺傷したことで罪に問われないかとご不安に思われている方は、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
 殺傷した動物が「鳥獣」に当たるのであれば鳥獣保護管理法違反になる可能性がありますし、「鳥獣」に該当しない動物を殺傷した場合でも、その動物の種類によって、動物愛護法違反や刑法261条の器物損壊罪が成立する可能性も考えられます。
 そのため、動物を殺傷してしまったという場合は、弁護士に相談することで自身の行為がどのような罪に問われる可能性があるのか、今後どのような対応をとるべきなのかといったことについてアドバイスを貰うことができますので、事件の見通しを立てることができ、現在抱えている不安な気持ちを解消することが期待できます。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
 動物を殺傷したことで罪に問われないかとご不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【事例解説】正当防衛における「侵害の急迫性」について(運転手間でトラブルになり、相手を負傷させた架空の事例に基づく解説)

2023-12-15

 運転手間でトラブルになり、相手を突き飛ばし負傷させた架空の傷害事件を参考に、正当防衛における「侵害の急迫性」の要件などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介:自営業男性Aさんのケース

 福岡市内在住の自営業男性Aは、県道を自動車で走行中、男性Vの運転する自動車の割り込みに腹を立て、クラクションを鳴らしました。
 Aのクラクションに怒ったVが停車し、後続のA車両に駆け寄って来て口論となり、Vが窓からAの手首を掴んできたため、AはVを突き飛ばして転倒させ、車を発進させました。
 Vは転倒の際に全治3週間の手首の捻挫を負い、警察に被害届を提出したことで傷害事件として捜査が開始され、後日、Aは警察から取調べのための呼び出しを受けました。
(事例はフィクションです。)

正当防衛における「侵害の急迫性」の要件

 AがVを突き飛ばし転倒させたことで、全治3週間の怪我を負わせたことから、Aに傷害罪(刑法第204条)が成立すると考えられますが、Aは、手首を掴んできたVの暴行から身を守るために行った正当防衛であると主張することが考えられます。

 正当防衛の要件は、(1)急迫不正の侵害に対して(「侵害の急迫性」)、(2)自己又は他人の権利を防衛するため(「防衛の意思」)、(3)やむを得ずにした行為であること(「防衛行為の必要性・相当性」)、と定められています(刑法第36条第1項)。

 (1)「侵害の急迫性」について、「急迫」とは、相手方からの暴行などの法益侵害の危険が、現存又は切迫していること、とされます。
 侵害を予期できた場合でも急迫性は否定されないとされますが、その機会を利用し積極的に相手方に対して加害行為をする意思(「積極的加害意思」といいます。)で侵害行為を待っていたときなどは、侵害の急迫性の要件を充たさないとされます。

 「積極的加害意思」までなかったとしても、侵害の予期の程度や侵害回避の容易性などの観点から、警察などの公的機関の保護を求めずに反撃行為を行うことは相当でないとして、要件を充たさないとされる可能性があります。

 本件Aは、VがA車両に駆け寄ってきた時点で、Vから何らかの危害を加えられることも予期し得たと考えられるところ、すぐに自動車の窓や鍵を閉め、必要に応じて警察に通報するなどして、Vの暴行を容易に回避し得たともいえることから、この要件を充たさないと判断される可能性もあります。

傷害事件の弁護活動

 傷害罪で起訴され、正当防衛の主張が認められず有罪となれば、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることとなります。

 本件は、先に述べたように、正当防衛の主張が容易に認められない可能性もあるため、被害者の怪我の程度も比較的軽微であることから、被害者との示談を成立させることにより不起訴処分で事件の終了を目指すことも、現実的な選択肢の一つと考えられます。

 弁護士であれば通常、示談交渉のために捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらえると考えられ、刑事事件に強い弁護士であれば、しっかりした内容の示談が成立する可能性が見込まれ、不起訴処分で事件が終了する可能性を高めることが期待できます。

 仮に起訴されたとしても、刑事事件に強い弁護士であれば、現場の状況や目撃証言など被疑者に有利な証拠を収集し、正当防衛の成立が認められなかったとしても、刑の減軽や執行猶予の獲得に繋げる弁護活動を行うことが期待できます。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、傷害事件において、示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。
 傷害罪で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方、正当防衛が成立するのではないかと疑問を持たれる方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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