殺人事件における保釈金はいくら?殺人罪で保釈は認められる?

家族が殺人事件で逮捕されてしまった——。
そんな状況に直面したとき、「いつ釈放されるのか」「保釈は認められるのか」と不安を抱えていませんか? 特に保釈金がいくら必要なのか、見当もつかない方は多いはずです。
殺人事件の保釈には比較的軽い事件とは異なる規定が適用されます。この記事では、保釈制度の基本から殺人事件で保釈が認められるかどうか、保釈金の相場、弁護士に依頼できることまで解説します。
保釈とは
保釈とは勾留中の被告人が一定の条件のもとで釈放される制度です。逮捕・勾留されたからといって、裁判が終わるまでずっと身柄を拘束されるわけではありません。
保釈が認められれば、裁判が続く間も自宅で生活しながら審理に臨むことができます。また、場合によっては出廷以外の時間で仕事や学業に復帰できることがあります。今後実刑が見込まれる場合には、身の回りの整理をする時間ができるでしょう。
よく間違われる釈放と保釈の違いですが、釈放は一般的に身柄解放されること全般を指します。その中でも、起訴後、保釈金を裁判所に納付し身柄解放されることを保釈といいます。
保釈には3つの種類の規定があります。それぞれ認められる条件が異なるため、事件の内容によってどの保釈が適用されるかが変わってきます。以下では、権利保釈・裁量保釈・義務的保釈の3種類を詳しく見ていきましょう。
①権利保釈
権利保釈とは、一定の除外事由がない限り裁判所が必ず保釈を許可しなければならない保釈のことです。
刑事訴訟法89条は「保釈の請求があったときは、次の場合を除いては、これを許可しなければならない」と定めています。
つまり、法律に定められた除外事由に該当しなければ、裁判所は保釈請求を原則として認めなければなりません。この「権利」という言葉は、被告人が保釈を請求する権利を実質的に保障していることを示しています。
ただし、除外事由は1号から6号まで複数あり、それらのいずれかに当てはまる場合は権利保釈が認められません。殺人罪がこれに該当するかどうかについては、次の節で解説します。
②裁量保釈
裁量保釈とは、権利保釈が認められない場合でも裁判所が適切と判断したときに保釈を許可できる制度です。
刑事訴訟法90条は「裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することができる。」と規定しています。
「適当と認めるとき」というのは非常に幅広い裁量です。裁判所は、逃亡・証拠隠滅のおそれ、被告人の健康状態、家族の事情、事件の重大性など様々な事由を総合的に考慮して判断します。
権利保釈とは異なり、裁判所が「認めるかどうか」を裁量的に決める保釈であるため、弁護士による積極的な働きかけが結果を左右します。
③義務的保釈
義務的保釈とは、勾留が長期にわたる場合などに裁判所が保釈を許可しなければならない制度です。
刑事訴訟法91条で「勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、請求により又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許可しなければならない。」と定めています。
「不当に長い」かどうかの判断は事案によりますが、裁判が長引く中で拘禁が過度になった場合に認められる可能性があります。権利保釈・裁量保釈のいずれも認められないケースでも、この義務的保釈が最後の手段となることがあります。
殺人事件で保釈は認められる?
結論から言えば、殺人事件では権利保釈は認められません。ただし、裁量保釈の余地がまったくないわけではありません。
殺人罪は非常に重大な罪であり、刑事訴訟法上も特別な扱いを受けます。保釈を検討する際には、権利保釈と裁量保釈の内容を正確に理解しておくことが欠かせません。以下で詳しく解説します。
殺人罪は権利保釈の対象外
殺人罪は刑事訴訟法89条1号の除外事由に該当するため、権利保釈は認められません。
1号は「死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪」を犯した疑いがある場合を除外事由としています。殺人罪(刑法199条)の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑」であり、短期(最低限の拘禁刑)が1年以上の懲役に当たります。そのため、殺人罪で起訴された被告人は、この除外事由に当然該当します。
権利保釈は「請求すれば原則として認められる」保釈でした。しかし殺人事件では、この原則がそもそも適用されません。保釈を目指すなら、次に述べる裁量保釈による申請が唯一の現実的な道となります。
裁量保釈が認められる可能性はある
権利保釈が認められなくても、裁量保釈(刑事訴訟法90条)の申請は行えます。 ただし、殺人事件で裁量保釈が認められる可能性は低いというのが現実です。
裁判所が裁量保釈を判断する際に、考慮される点の一部を紹介します。
- 逃亡のおそれ :被告人が逃亡する可能性はどの程度か
- 証拠隠滅のおそれ:証人への接触や証拠の改ざんを行う可能性はないか
- 罪の重大性 :事件の内容がどれほど重大か
- 被告人の事情 :健康状態、家族構成、社会的背景など
殺人事件は死刑や無期拘禁刑を含む重罪であり、「罪の重大性」という点では最も厳しい評価を受けます。また逃亡・証拠隠滅のおそれも高いと判断されやすいのが実情です。
それでも、被告人に安定した居住環境がある、重篤な健康問題を抱えている、被害者側との関係が断たれているといった事情があれば、保釈が認められる可能性はゼロではありません。
殺人事件における保釈金はいくら?
殺人事件で保釈が認められた場合の保釈金の金額は、事案の内容や被告人の資力によって大きく異なります。
保釈金(正式には「保釈保証金」)は、被告人が逃亡した場合に没収されるための担保です。金額が高いほど逃亡を思いとどまらせる効果があるという考えに基づいています。
一般的な事件の保釈金の相場は150万〜300万円程度とされていますが、殺人事件のように重大な罪では数百万円から1,000万円を超えるケースもあると言われています。
ただし、これはあくまでも目安です。裁判所は以下のような要素を踏まえて金額を決定します。
- 事件の重大性・社会的影響
- 被告人の収入・資産状況(資力が高ければ金額も高くなる傾向がある)
- 逃亡・証拠隠滅のリスク
被告人やその家族が保釈金を用意できない場合、保釈保証書(保証金に代わる書面)を利用できる場合もあります。詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。
なおこの保釈金は逃亡・証拠隠滅等の禁止事項を守っていれば、裁判終了後に全額返金される事になります。
殺人事件の保釈について弁護士ができること
殺人事件の保釈を実現するためには、弁護士による積極的な弁護活動が欠かせません。
裁量保釈は、裁判所が「適当」と判断した場合にのみ認められます。つまり、裁判所にいかに保釈の必要性・相当性を伝えるかが勝負です。弁護士はその点で以下のような活動に尽力できます。
裁量保釈の申請・主張
弁護士は、身元引受人になるご家族等から丁寧に被告人が逃亡・証拠隠滅のおそれがないこと、健康上や家庭上の事情があること、釈放後の監督体制が整っていることなどをヒアリングし、上申書として弁護人意見書と共に裁判所に提出する場合があります。
単なる保釈申請書だけの提出にとどまらず、裁判官を納得させる、より具体的・論理的な主張が求められます。
裁判官との直接面談(意見申述)
場合によっては、弁護士が裁判官に直接面談を申し入れ、保釈の必要性を口頭で伝えることもあります。書面だけでは伝わりにくい被告人の事情を、弁護士が直接説明することで、裁判所の判断に影響を与える可能性があります。
保釈金額の交渉
保釈が認められる見込みが出てきた段階では、保釈金の金額についても弁護士が裁判所と交渉・意見を述べることができます。被告人の資力を踏まえた現実的な金額を提示し、速やかな釈放を目指します。
殺人事件での保釈は容易ではありませんが、弁護士なしで裁量保釈を勝ち取ることはさらに困難です。できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。
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殺人事件の保釈金は事案によって異なる
この記事で解説してきたことを整理しましょう。
- 保釈には権利保釈・裁量保釈・義務的保釈の3種類がある
- 殺人罪は刑事訴訟法89条1号の除外事由に該当するため、権利保釈は認められない
- 裁量保釈(刑事訴訟法90条)の申請は可能だが、認められる可能性は低い
- 保釈が認められた場合の保釈金は、事案の重大性や被告人の資力によって異なり、数百万円から1000万円以上になることもある
- 弁護士は裁量保釈に向けた主張・裁判官との面談など積極的な活動ができる
殺人事件という極めて重大な局面で、保釈の可否はご家族の生活にも大きく影響します。「難しいかもしれない」と諦める前に、まずは弁護士に状況を相談してみてください。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることが最善の第一歩です。