傷害事件は示談なしでも不起訴になる?傷害事件の起訴率や示談以外の対処法

傷害事件を起こしてしまった—。
示談なしでは必ず起訴されるのか、それとも不起訴になる可能性もあるのか。被害者との示談交渉がうまくいかず、このまま前科がついてしまうのではないかと不安を感じていませんか?
結論から言うと、傷害事件は示談なしでも不起訴になるケースがあります。この記事では、傷害罪の起訴率や示談なしでも不起訴になり得る条件、被害者から示談を拒否された場合の対処法について、具体的に解説していきます。
起訴されるリスクを少しでも減らすために、どのような対応が必要なのか。正しい知識を身につけることで、適切な対応が可能になるでしょう。
傷害罪で問われる刑罰
傷害罪で起訴された場合、どのような刑罰が科されるのでしょうか。刑法第204条では「人の身体を傷害した者は、十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」と規定されています。傷害の程度や状況等によって実際に下される刑の重さは変わりますが、最長で15年の拘禁刑が科される可能性があるという点では、重大な犯罪と言えるでしょう。
なお、令和7年(2025年)6月から刑法が改正され、これまでの懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されます。改正前に起こした傷害事件については、拘禁刑ではなく懲役刑が科せられます。
傷害罪の起訴率
傷害罪で検察庁に送致された事件のうち、実際に起訴される割合はどれくらいなのでしょうか。2023年の検察統計調査によると、傷害罪の起訴率は約30%程度となっているようです。
つまり、10件の傷害事件があれば、そのうち約3件が起訴され、残りの7件は不起訴になっているということ。起訴率30%という数字は、必ずしも「ほとんどが起訴される」わけではないことを示しています。
ただし、これはあくまで全体の統計です。事件の内容や被害の程度、示談の有無などによって、起訴されるかどうかは大きく変わります。示談が成立しているケースでは不起訴率が高まる傾向にありますが、示談なしでも不起訴になる可能性はゼロではありません。
傷害罪で起訴された場合のデメリット
傷害罪で起訴されると、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。起訴されることで生じる具体的なデメリットについて、ここで詳しく見ていきましょう。
前科がつく可能性が高い
起訴されるということは、その後の刑事裁判で無罪判決を勝ち得ない限り法律上は前科がつくことになります。前科とは、刑事裁判で有罪判決を受けた記録のことです。
前科がつくと、以下のような不利益が生じる可能性があります。
- 就職や転職が困難になる:企業によっては採用時に前科の有無を確認するところもあり、前科があることで不採用になるケースがある
- 資格制限を受ける:弁護士、医師、教員など一定の職業では欠格事由となり、資格取得や更新ができなったり、国家資格の取得が困難となる場合がある
- 海外渡航に制限がかかる:国によってはビザ申請時に前科や犯罪歴の申告が必要で、入国を拒否される場合もある
前科は一生消えることがなく、その後の社会生活に長期的な影響を与え続ける可能性があることを認識しておかなければなりません。
実刑になる可能性がある
起訴された場合、公判請求(正式裁判)であれば実刑判決を受ける可能性があります。実刑とは、執行猶予がつかず、直ちに刑務所に収容されることを意味します。
傷害の程度が重い場合や、前科がある場合、反省の態度が見られない場合などは、実刑判決が下されるリスクが高まるでしょう。実刑になれば、数ヶ月から数年間にわたって自由を奪われ、社会生活から完全に切り離されて刑務所で生活しなければなりません。
刑務所に収容されている間は、当然ながら仕事に通うことも、家族と日常的に過ごすこともできません。出所後の社会復帰も困難といわれており、人生設計が大きく狂ってしまうことになります。
職場や学校から処分を受ける可能性がある
傷害事件を起こして起訴されたことが職場や学校に発覚すれば、解雇や退学などの処分を受ける可能性があります。
多くの企業や学校では、就業規則や校則に「犯罪行為を行った場合は懲戒処分の対象とする」といった規定が設けられています。起訴された事実が判明すれば、これらの規定に基づいて処分が下されるケースは少なくありません。
特に公務員や教員、医療従事者など社会的信頼が重視される職業では、起訴されただけで職を失ったり、休職させられる可能性が高くなります。学生の場合も、退学処分を受ければ、その後の進学や就職に大きな支障をきたすでしょう。
傷害事件は示談なしでも不起訴になる?
示談が成立していない場合でも、傷害事件が不起訴になる可能性はあります。検察官は起訴・不起訴を判断する際、示談の有無だけでなく、事件の内容や被害の程度、犯行に至った動機、被疑者の反省状況など、さまざまな要素を総合的に考慮するからです。
ただし、示談なしの場合は起訴される可能性が高まることも事実。示談が成立していれば、被害者が加害者を許したという事実が検察官の判断に大きく影響しますが、示談なしではその材料がありません。そのため、他の事情で不起訴を目指す必要があります。
示談が成立していなくても、被害が軽微である、被害者にも落ち度がある、などの事情が認められる場合、検察官が起訴猶予として不起訴の判断をする可能性があります。
【注意】示談は必ず不起訴になるわけではない
ここで重要な注意点があります。示談が成立したからといって必ず不起訴になるわけではありません。
示談はあくまで不起訴を目指すための重要な材料の一つに過ぎず、最終的な判断は検察官が行います。たとえ示談が成立していても、以下のような場合は起訴される可能性があります。
- 被害が非常に重大で、社会的影響が大きい
- 計画的・悪質な犯行である
- 過去に同様の犯罪を繰り返している
- 真摯な反省が見られない
- 被害者の許しを得ていない(宥恕条項のない示談を行っている)
示談は不起訴を目指す上で非常に有効な手段ですが、それだけで安心できるものではありません。示談の内容をしっかりと精査し、不起訴を得るために有効的な内容になっているのか弁護士に確認しておくことが重要です。
傷害事件で示談なしで不起訴になり得るケース
示談が成立していない場合でも、不起訴処分になる可能性はあります。検察官が起訴するかどうかを判断する際、示談の有無以外にも考慮される要素があるためです。ここでは、示談なしでも不起訴になり得る代表的なケースを見ていきましょう。
被害者が負った怪我がかなり軽微
被害者が負った怪我が非常に軽微である場合、示談なしでも不起訴になる可能性があります。たとえば、軽い擦り傷や打撲程度で通院の必要もないような場合です。
傷害罪は成立していても、その程度が極めて軽く、社会的な影響も小さいと判断されれば、検察官が起訴猶予の処分を下すことがあります。起訴猶予とは、犯罪が成立していても、情状を考慮して起訴しないという判断のことです。
ただし、「軽微」と判断されるかどうかは、あくまで検察官の裁量によります。自分では軽いと思っていても、検察官が重大と判断すれば起訴される可能性もあるため、ご自身で判断するのではなく弁護士に相談するようにしましょう。
被害者にも大きな落ち度がある
被害者側にも大きな落ち度がある場合、示談なしでも不起訴になる可能性があります。たとえば、被害者が先に挑発してきた、暴力を振るってきたため正当防衛の要素がある、といったケースです。
こうした事情があれば、加害者側の責任が相対的に軽いと判断され、起訴猶予になることがあります。ただし、被害者に落ち度があったとしても、それが正当防衛として認められるほどの程度でなければ、傷害罪の成立自体は否定されません。
重要なのは、被害者の落ち度を立証するための証拠です。目撃者の証言や防犯カメラの映像など、客観的な証拠がなければ、主張が認められない可能性もあります。
傷害事件で示談なしだと処分が重くなる?
示談が成立していない場合、処分が重くなる可能性が高くなるでしょう。逆に、起訴前に示談ができなかったとしても、裁判が結審するまでに被害者と何らかの示談を締結することができれば、刑事裁判で言い渡される判決(処分)は示談がない場合よりも軽くなる可能性が高いです。
示談が成立しているということは、被害者が加害者を許したり、民事的な賠償が済んだり、賠償を約束していること等を意味します。検察官や裁判官はこの事実を重視し、「被害者も処罰を望んでいない」「加害者は誠意をもって対応した」と評価する傾向があります。
一方、示談なしの場合、以下のような不利な判断がされる可能性があります。
- 被害者が加害者を許していないと判断される:被害者の処罰感情が強いと見なされる
- 反省や誠意が不十分と評価される:示談交渉すら行っていない場合、被害者に対して謝罪の意思がないと判断されるリスクがある
- 再犯のおそれがあると見なされる:被害者への配慮が見られないことから、反省の意思が乏しく、社会復帰の姿勢に疑問を持たれる
示談なしでも不起訴になるケースはありますが、示談がある場合と比べれば、起訴される確率は明らかに高くなります。そのため、起訴前に示談して不起訴を目指すのがベストですが、起訴までに示談が間に合わない場合でも刑事裁判中に示談できれば、その後の判決(処分)が減軽される可能性が高くなるため、傷害事件の刑事弁護活動で被害者との示談は最も有効的な手段といえるでしょう。
傷害罪で被害者から示談を拒否された場合の対処法
被害者から示談を拒否されたからといって、諦める必要はありません。示談交渉がうまくいかなかった場合でも、取れる対処法はいくつかあります。ここでは、示談を拒否された際の具体的な対応策を見ていきましょう。
弁護士に示談交渉を依頼する
まずご自身で示談しようとして被害者が示談を拒否している場合、弁護士に示談交渉を依頼することで状況が変わる可能性があります。被害者が加害者本人やその家族との直接交渉を拒んでいても、弁護士という第三者が介入することで、交渉のテーブルについてもらえるケースは少なくありません。
被害者が示談を拒否する理由はさまざまです。加害者への怒りや恐怖心から直接会いたくない、提示された示談金の額に納得できない、示談の内容や効果がよく分からず不安、といった事情が考えられます。
弁護士が間に入ることで、以下のようなメリットがあります。
- 被害者の心理的負担が軽減され、冷静に話し合える
- 法的に適切な示談金の額を提示できる
- 示談書の内容を法的に正確に作成できる
- 捜査機関に対して示談交渉の経過を適切に報告できる
一度拒否された示談交渉でも、弁護士を通じて再度アプローチすることで、成立する可能性は十分にあります。
供託・贖罪寄付をして反省を示す
被害者が示談に応じてくれない場合、供託や贖罪寄付という方法で反省の意思を示すことができます。
供託とは法務局に金銭を預ける制度のことです。被害者が示談金の受け取りを拒否している場合でも、供託をすることで「賠償の意思はある」ことを客観的に示せます。供託された金銭は、被害者がいつでも受け取ることができる状態になります。
贖罪寄付とは犯罪被害者支援団体などに寄付を行うことです。被害者本人に直接賠償できない場合でも、社会貢献を通じて反省の気持ちを形にすることができます。
これらの方法は、示談が成立しない場合の次善策となります。検察官や裁判官に対して、「誠意をもって対応しようとした」「反省の態度が見られる」という評価を得られる可能性があるでしょう。ただし、供託や贖罪寄付を行うタイミングや方法については、弁護士に相談することをおすすめします。
示談を拒否された場合に弁護士に依頼するメリット
被害者から示談を拒否されたとき、弁護士に依頼することで得られるメリットは数多くあります。法的な知識と経験を持つ専門家のサポートは、不起訴を目指す上で非常に有効です。ここでは、弁護士に依頼する具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。
代理人弁護士として被害者と改めて示談交渉できる
弁護士が代理人として示談交渉を行うことで、一度拒否された交渉が再開できる可能性があります。被害者が加害者本人との接触を拒んでいても、弁護士という第三者であれば話を聞いてもらえるケースは多いです。
弁護士は法的な知識をもとに、適切な示談金の額や示談条件を提示できます。感情的になりがちな当事者間の交渉と違い、冷静かつ客観的な話し合いが可能になるでしょう。
また、被害者も弁護士を通じて交渉することで、安心して意見を伝えられるようになります。示談の法的効果や内容について専門家から説明を受けられるため、納得した上で合意に至りやすくなるのです。
示談交渉の経過を捜査機関に報告できる
弁護士は警察や検察などの捜査機関に対して、示談交渉の経過や状況を適切に報告できます。この報告は、不起訴処分を得るために非常に重要です。
たとえ示談が成立していなくても、「弁護士を通じて誠実に交渉を続けている」「適切な示談金を提示している」といった事実を捜査機関に伝えることで、反省の態度や誠意が評価される可能性があります。
また、被害者側の事情で示談が難しい場合にも、その経緯を説明することで、加害者側の努力が正当に評価されるでしょう。捜査機関との適切なコミュニケーションは、素人では難しい部分も多く、弁護士の専門性が活きる場面です。
供託・贖罪寄付に関する相談ができる
供託や贖罪寄付を行うべきかどうか、またそのタイミングや方法について、弁護士から専門的なアドバイスを受けられます。
供託や贖罪寄付は示談が成立しない場合の有効な対処法ですが、適切に行わなければ効果が薄れてしまいます。たとえば、供託の手続きを誤ると法的に無効になる可能性もありますし、贖罪寄付の金額や寄付先の選択を誤ると、誠意が伝わらないこともあるでしょう。
弁護士は、事件の内容や被害の程度に応じて、最も効果的な方法を提案してくれます。また、供託や贖罪寄付を行ったことを捜査機関に適切に報告し、不起訴処分につなげるための活動もサポートしてくれるはずです。
捜査機関に処分意見を主張できる
示談が成立しなかった場合でも、弁護士は検察官に対して不起訴を求める意見書を提出できます。これを「終局処分に対する意見」と言います。
終局処分に対する意見書では、以下のような内容を主張します。
- 被害が軽微であること
- 被害者にも落ち度があったこと
- 加害者が深く反省していること
- 示談またはそれに代わる供託や贖罪寄付を行ったこと
- 再犯のおそれがないこと
これらの事情を法的に整理し、説得力のある形で検察官に伝えることで、不起訴処分を得られる可能性が高まります。素人が自分で意見書を作成するのは非常に難しく、弁護士の専門知識が不可欠であることは言うまでもありません。
【事務所紹介】傷害事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件の弁護活動を中心に取り扱う法律事務所です。
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弊所の特徴③:刑事事件に強い弁護士が多数在籍
弊所は開設して10年以上、刑事事件を主に扱っている法律事務所です。
傷害事件のような被害者の存在する事件においては、被害者と示談することができるかどうかが、その後の刑事処分に絶大な影響を及ぼしますが、弊所では、刑事事件における示談の経験が豊富な弁護士による活動をお約束することができます。
刑事事件の弁護活動を熟知した弁護士による、弁護活動を受けることで、きっとご安心していただくことができるでしょう。
弊所の特徴④:安心明確な料金体系
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また、弁護士費用についてお客様が不安を感じないように、契約書に弁護士費用一覧表を添付させていただいております。
料金詳細については弊所HPをご覧ください▼
【解決実績】示談が成立した傷害事件を紹介
ここでは実際に事務所が依頼を受けた傷害事件で、どのような弁護活動を行ったか紹介します。
事例①:同僚に対する傷害事件
職場の人たちが参加した宴席において、酒に酔い、些細なことから口論となった同僚に対して、顔面を殴打する暴行を加え、顔面を骨折させる重傷を負わたというケースです。
同僚が警察に被害届を提出したことから傷害罪で警察に逮捕されてしまいましたが、弁護士が勾留期間中に被害者と示談したことから不起訴処分となりました。
被害者が顔面を骨折するという重傷を負っていることから、示談が成立したとしても起訴を免れない可能性がありましたが、弁護士が作成した終局処分に対する意見書を検察官に提出したことが功を奏し、不起訴処分の獲得に成功しています。
またこの事件では、勾留期間中に示談を締結したことから、勾留満期前に釈放されており拘束期間を短縮することにも成功しました。
事例②:隣人トラブルからの傷害事件
隣人から車の駐車方法について文句を言われたことから口論となり、最終的に隣人に突き飛ばす等の暴行を加え、全治数週間の傷害を負わせてしまったというケースです。
隣人が警察に被害届を提出したことから、隣人に謝罪しようとしましたが、謝罪には一切応じてくれないとのことでした。そこで、担当弁護士が本人に代わって隣人に対して謝罪を申し入れたところ、話を聞いてもらうことができ、最終的には謝罪を受け入れてもらい、宥恕条項のある示談を締結することができました。
その後、本件では不起訴処分の獲得に成功しています。
傷害罪の起訴率は約3割|示談なしだと起訴されることも
傷害罪の起訴率は約30%という統計があります。これは、10件の傷害事件のうち約3件が起訴され、残りの7件は不起訴処分になっていることを意味します。
示談が成立している場合、不起訴になる可能性は大きく高まります。一方、示談なしの場合は起訴される確率が上がることも事実です。検察官は示談の有無を重要な判断材料としており、示談がないことで被害者の処罰感情が強いと判断されたり、反省が不十分と評価されたりするリスクがあることを理解しておかなければなりません。
他方、示談なしでも不起訴になる可能性があることも理解しておかなければなりません。被害が極めて軽微である、被害者にも大きな落ち度がある、といった事情があれば、起訴猶予の処分を受けられる可能性もあるでしょうから、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
最も重要なのは、早い段階で適切な対応を取ることです。被害者との示談交渉を進めること、示談が難しい場合は供託や贖罪寄付を検討すること、弁護士に相談して専門的なサポートを受けること。これらの対応が、不起訴を目指す上での鍵となります。
傷害事件を起こしてしまった場合、一刻も早く弁護士に相談し、最善の対処法を見つけることが大切です。