ネット上の犯行予告で偽計業務妨害罪

2019-02-11

ネット上の犯行予告で偽計業務妨害罪

埼玉県蓮田市在住のAは、自らのSNS上のアカウント内に、具体的な日時や場所を記載した上で、無差別殺人を行うなどと投稿した。
この投稿を見たSNS利用者からの110番通報があり、これを受けて多数の警察官が警戒に当たったが、実際には上記日時前後には何も起きなかった。
その後の捜査でAを突き止めた埼玉県岩槻警察署の警察官は、Aを偽計業務妨害罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は、暴力事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~偽計業務妨害罪と犯行予告~

本件Aは、ネット上に犯行予告を行ったことにより偽計業務妨害罪の疑いで逮捕されてしまっています。
本件のように、軽い気持ちでインターネット上に投稿した犯行予告(殺人予告や爆破予告等)により、逮捕されてしまうというケースが近年増加しているのです。

まず、本件のような犯行予告は、裁判所の職員や警察等の捜査機関の業務を妨害するものと考えられることから、公務執行妨害罪(刑法95条)の成立が考えられます。
しかし、公務執行妨害罪が成立するのは「暴行又は脅迫」を手段とする行為に限られており、同罪が成立することはありません。

この点、刑法は233条において、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と、偽計等業務妨害罪(および信用毀損罪)を定めています。
そして、本条が規定する「業務」に公務も含まれるとすれば、上記のように公務執行妨害罪によって処罰できなかった類型の行為(「偽計」や「虚偽の風説の流布」による公務の妨害)も処罰することが可能となります。

この点に関し、判例は様々な変遷を経た上で、現在では「強制力を行使する権力的公務」については公務執行妨害罪によって処罰すべきものであり、上記以外の公務については偽計業務妨害罪威力業務妨害罪(234条)の対象になるものと解しています。
このように、強制力を行使する権力的公務が「業務」から除かれているのは、このような公務であれば偽計や威力による業務妨害を自力で排除できると考えられているからです。
本件では、現実に警察官に警戒にあたらせるなどしていることから、強制力を行使する権力的公務に対する妨害行為があるようにも思えます。
しかし、あくまでこれはごく初期の警戒・警ら活動であり、強制力を行使するまでの段階には至っていないといえ、「業務」として保護の対象になると考えられます。
そして、「妨害」行為は具体的な危険を伴う必要のない抽象的危険で足りることから、実行に移す気のないインターネット上の犯行予告等にも、偽計業務妨害罪が成立し得るのです。

~勾留の阻止のための弁護活動~

刑事訴訟法は(刑事訴訟法207条1項本文が準用する)同法60条において、逮捕後における被疑者勾留という身体拘束制度を定めています。
逮捕が身体拘束から原則72時間しか許されないのに対し、被疑者勾留は原則10日(同法208条1項参照)です。
この72時間+10日という身体拘束の精神的・肉体的不利益、そして社会上の不利益は極めて大きいと言わざるを得ません。

このような不利益の大きさから、弁護士としては検察官による勾留請求(刑事訴訟法204条1項)の阻止する活動が重要になってきます。
検察官による勾留請求は、被害者の身柄を受け取った時から24時間以内(同法205条1項)、全体としても上記のように逮捕の時から72時間以内に行わなければなりません(同条2項)。
したがって、弁護士の勾留阻止活動もこの時間的制約の下に行われることになり、このことからも逮捕段階(あるいはそれ以前)の弁護士の選任が極めて重要となってくるのです。
仮に勾留請求されてしまっても、弁護士としては、裁判官に勾留請求却下を求めるなどの折衝活動を粘り強く行っていく必要があるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、偽計業務妨害罪を含む刑事事件専門の法律事務所です。
24時間通話可能のフリーダイヤル(0120-631-881)にて、ご家族によるご相談も承っております。
弁護士が逮捕直後から弁護活動を行えるように、スピーディーな対応をお約束します。
埼玉県岩槻警察署までの初回接見費用:36,800円