神奈川県川崎市の公務執行妨害事件

2019-02-06

神奈川県川崎市の公務執行妨害事件

~事件例~
Aさんは神奈川県川崎市幸区内の繁華街で警察官から職務質問を受けました。
Aさんは日頃から警察に不満を抱いていたので、停止の求めを頑なに拒否しました。
Aさんが無視して歩いていってしまうので、警察官がAさんの肩に触れて停止させようとしたところ、Aさんはこれに腹を立て、警察官の顔を殴ってしまったので、その場で公務執行妨害罪の現行犯として逮捕され、神奈川県幸警察署に引致されてしまいました。
(フィクションです)

~公務執行妨害罪~

公務執行妨害罪は、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加え」る犯罪です(刑法第95条1項)。
裁判で有罪が確定すれば、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処されます。
「職務を執行するに当たり」にいうところの職務が適法であることが必要であるか否かについては学説上争いがありますが、判例・通説は必要説に立っています。

~職務質問の適法性~

では、上記の事件例の警察官は職務質問に際して、Aさんの肩に触れて停止させようとしていますが、適法なのでしょうか。

(職務の適法性が認められる要件)
職務の適法性が認められる要件として、一般的に①職務の執行が当該公務員の抽象的職務権限に属すること、②当該公務員が当該職務を行う具体的権限を有すること、③当該職務の執行が公務としての有効要件である法律上の手続き・方式の重要部分を履践していることが挙げられます。
職務質問はあくまでも任意の処分ですから、強制の処分となった場合には②もしくは③の要件が欠けることになり、違法な職務ということになります。

(職務質問に際し、有形力が行使されたケース)
もっとも、判例は、職務質問に関して一切の有形力の行使を許さないという見解をとっておらず、一定程度の有形力の行使を認めています。
交通整理を行っていた警察官に対しつばを吐きかけた者に対して、警察官が職務質問のためその胸元をつかみ歩道上に押し上げた行為(最決平成元年9月26日)、酒気帯び運転が疑われる者が、職務質問に対して急に反抗的態度を示し、エンジンのかかっている車両に乗り込んで発進させようとしたので、警察官が運転席の窓から手を差し入れ、エンジンキーを回転させスイッチを切る行為(最決昭和53年9月22日)につき、いずれも適法な有形力の行使とされています。

(事件例の職務質問は適法か?)
Aさんが職務質問の停止の求めを無視したことから、何か隠していることがあるのではないかということは十分に考えられます。
また、警察官はAさんの肩に手をかけて停止を求めていますが、その態様は行動の自由を抑圧するようなものではなく、上記判例で適法とされたケースにおける有形力の態様と比較しても、穏やかなものであることから、事件例の職務質問における有形力の行使は必要かつ相当な行為として適法とされる可能性が高いでしょう。
したがって、Aさんは警察官の適法な職務質問に対し暴行を行った、ということになりますから、Aさんに公務執行妨害罪が成立する可能性は高いと考えられます。

~逮捕されたAさんはどうするべきか?~

Aさんのように、公務執行妨害罪で現行犯逮捕されてしまった方は、通常身柄の早期釈放を求めるでしょう。
しかし、身体拘束を続けて捜査をする必要がないということを捜査官に納得してもらうには、やはり法律の専門家である弁護士が外部で捜査機関との交渉を通じて行うことが推奨されます。
また、供述調書の一言一句で、Aさんの今後が左右されることもありえないことではありません。
そのため、取調べに臨むにあたり、取調べでどのように供述すればなるべく自分に不利にならないか、供述調書への署名押印はどうすればよいか、という点につき弁護士から助言を受けることをおすすめいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、刑事事件に熟練した弁護士が多数在籍しています。
ご家族を公務執行妨害罪で逮捕されてしまった方は、お気軽に0120-631-881までご相談ください。
神奈川県幸警察署までの初回接見費用:36,700円