傷害罪

傷害罪の概要

傷害罪は,刑法第204条に「人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。

具体例としては,他人をナイフで刺して全治2週間の切り傷を負わせたという場合が挙げられます。

 

1 傷害

「傷害」の意義については,一般に人の生理的機能に障害を与えることといわれています。

裁判例で傷害と認められたものとして皮膚の表皮剥脱,中毒症状・めまい・嘔吐,梅毒の感染,意識障害・筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状,歯根の炎症,皮下結諦織炎,腰部の圧痛,失神,処女膜の裂傷などがあります。

また,PTSD(心的外傷後ストレス障害)については,一時的な精神的苦痛やストレスを感じたという程度にとどまらず,医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現した場合に,「傷害」に当たるとした例があります。

他方,剃刀による毛髪の根元からの切断は,外貌に変化を生じさせるにすぎず,健康状態等に影響を与えるわけではないため,「傷害」には当たらないと判断されたことがあります。

また,「傷害」を生じさせる方法は,通常暴行によることが考えられますが,暴行以外による方法でも傷害罪が成立する場合があります。

具体的には,無言電話などで極度に恐怖させて神経衰弱症に陥らせる行為,睡眠薬を飲ませて数時間にわたり意識障害を生じさせる行為も「傷害」行為にあたります。

 

2 傷害の故意

傷害罪については,故意の点で2つの形態があります。

1つは,傷害罪の故意で暴行又はその他の方法により傷害を生じさせた場合です。

傷害の故意で暴行を加えたものの,傷害の結果が発生しなかった場合は,暴行罪のみが成立します。

もう1つは,暴行の故意で暴行し,その結果として傷害を生じさせた場合です。

この場合には,傷害罪が成立します。

 

具体的な弁護活動

1 因果関係がないことを主張する

暴行態様や暴行を加えた部位に照らして,不当に重すぎる傷害結果が主張されているときは,暴行行為と傷害結果との因果関係がないとの主張をすることで,傷害罪の成立を阻止できる可能性があります。

因果関係とは,行為と結果との間につながりがあることをいいます。

一般に因果関係が認められなければ,犯罪は成立しないことになります。

因果関係がないとの主張をすることで,傷害罪よりも軽い暴行罪の限度での処罰に止める可能性があります。

 

2 正当防衛を主張する

傷害事件において,喧嘩などで相手方から暴力・危害を加えられ又は加えられそうになったので反撃として暴行行為を行ったという事情があれば正当防衛を主張することが考えられます。

正当防衛が成立するかどうかは,具体的な事情を判断する必要があり,弁護士に相談する必要があります。

 

3 示談をする

傷害事件においては,起訴される前に示談をすることによって,不起訴処分により前科がつかなくなる可能性を高めることができます。

傷害事件では,被害弁償や示談の有無及び被害者の処罰感情が被疑者・被告人の処分に大きく影響することになります。

被害弁償・示談をしたこと,被害者の処罰感情がないことを検察官に対して主張することが重要になります。

また,身体拘束から解放するためにも示談を締結し,被害者と示談したという事実は,当事者間で事件が解決しており、被害者も被疑者・容疑者を許しているという点で身体拘束の必要性に影響するため,重要となります。

そのため,早期に身柄解放を得るためにも被害者と迅速な交渉・示談締結が大きな影響を与えます。

起訴された(正式裁判にかけられることになった)場合でも,示談をすることによって,被告人にとって有利な情状として主張することができます。
 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,傷害罪でお困りの方に対して、刑事事件・少年事件と中心に取り扱う弁護士が直接無料相談させていただきます。

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