タクシー強盗で強盗致傷罪、窃盗罪

2019-12-13

タクシー強盗で強盗致傷罪、窃盗罪

タクシー強盗強盗致傷罪窃盗罪となるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

神奈川県秦野市に住むAさんは、ギャンブルやお酒にお金を使い果たし、自宅へ帰るまでの交通手段に困っていました。
そこで、Aさんはタクシーを無賃乗車して自宅まで帰ろうと考え、Ⅴさんが運転するタクシーを停車させて乗車しました。
Aさんは、タクシーが自宅付近に近づくと、Ⅴさんに対し「ちょっと、小便がしたくなった。」「降ろしてほしい。」と言い、Vさんがタクシーを停車させたことからタクシーから降りました。
Aさんは草むらまで行き、小便をするふりをして後方を振り返るとVさんがタクシーに乗ったままだったことから「逃げるのはいまだ。」と思い、その場から逃走しました。
すると、酔って足取りが悪かったAさんは、逃走に気づいたVさんにあっという間に追いつかれてしまいました。
Aさんは、Vさんから「お客さんお支払いがまだですよ。」などと言われたとたん、Vさんの顔面を右手拳で1回殴りました。
その後も、AさんはVさんの顔面や腹部を拳で殴り、Vさんがひるんだ隙にタクシーに向かい、売上金5万円を奪ってその場から逃走しました。
その後、神奈川県秦野警察署の捜査の結果、Aさんは強盗致傷罪窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

タクシーの無賃乗車、その後のVさんに対する暴行、売上金の盗難につきいかなる罪が成立しうるのか見ていきます。

~ 詐欺利得罪 ~

まず、Aさんが無賃乗車をする意図がありながらその意図を秘しタクシーに乗り込み、Vさんに目的地付近までタクシーを運転させた行為につき詐欺利得罪が成立することが考えられます。

詐欺罪は刑法246条に規定されています。

刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

このうち2項が、いわゆる詐欺利得罪に関する規定です。
詐欺利得罪は、「前項の方法(人を騙すこと)」により、「財産上不法の利益を得」ることで成立します。
具体的には、料金を支払う意図がないにもかかわらず、タクシー内で運転を依頼する言動、目的地を指定する言動が騙す行為に当たるでしょう。

また、「不法の利益」とは利益の不法、ではなく、利益を得るための手段が不法であることを意味します。ここで「利益」とは、タクシーで目的地まで送り届けてくれること、でしょう。
AさんはVさんを騙してタクシーを運転させ、目的地まで送り届けさせていますから「財産上不法の利益を得」たことに当たります。

~ 強盗利得罪 ~

次に、AさんがVさんを殴った行為につき強盗罪が成立する可能性があります。

強盗罪は刑法236条に規定されています。

刑法236条
1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

このうち2項が強盗利得罪に関する規定です。
強盗利得罪は、「前項の方法(暴行又は脅迫)」により、「財産上不法の利益を得」た場合に成立します。
「暴行又は脅迫」の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りるものでなければならないとされています。

・被害者に債務を免除させる
・被害者に一定のサービスを提供させる
・被害者に債務の負担を口頭で約束させる

などがその典型でしょう。
なお、強盗利得罪の場合、詐欺利得罪と異なり、被害者の処分行為は不要とされています。

人に怪我をさせたり、死亡させた場合は、強盗致死傷罪(刑法240条)が適用され同罪で処罰される可能性があります。
同罪の罰則は、怪我(負傷)させた場合は「無期又は6年以上の懲役」、死亡させた場合は「死刑又は無期懲役」です。

~ 窃盗罪 ~

最後に、Aさんが暴行後に売上金5万円を持ち去った行為については、Aに窃盗罪の成立する可能性があります。
AさんはⅤさんを殴った上で売上金を持ち去っていますから強盗罪が成立しそうです。
しかし、この暴行は、売上金を奪うためではなく、あくまでタクシーの料金支払いを免れるためになされたものにすぎません。
よって、強盗罪ではなく窃盗罪が成立します。

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