神奈川県逗子市の事後強盗事件

2019-03-18

神奈川県逗子市の事後強盗事件

~ケース~

神奈川県逗子市在住のAは自宅近所の家電量販店X店内において腕時計など数点(5万円相当)を万引きをした。
その際,店舗内にいた万引き監視員Vに発見され,商品を持って店外に出たところで声をかけられた。
Aはその場から逃走したが,VはAを追いかけた。
追いつかれたAはVを突き飛ばし,Vは転倒した。
パトロール中にたまたま現場付近を通りがかった神奈川県逗子警察署の警察官にAは現行犯逮捕された。
Vは全治1週間の怪我を負っていた。
(フィクションです)

~窃盗と強盗~

窃盗罪と強盗罪はどちらも他人の財物を盗むという点で共通しています。
窃盗は窃かに(他人に知られないように)盗む行為です。
一方,強盗は暴行・脅迫を用いて他人の財物を強取する行為です。

今回のケースの万引き行為自体は窃盗罪にあたります。
しかし,AはVによって追いかけられており,Vを突き飛ばして怪我をさせてしまっています。
刑法238条では「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる」(事後強盗罪)と規定しています。
AがVに対して行った突き飛ばすという暴行は逃げるため,すなわち逮捕を免れるためであったといえますので,Aは事後強盗罪として扱われることになります。
そしてVは怪我をしてしまっており,刑法240条では「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し(以下略)」(強盗致傷罪)と規定されています。
つまり,今回のケースでは,Aは事後強盗であり,そのAが事後強盗の際に人を負傷させてしまっていることから,強盗致傷罪が成立してしまいます。

~不起訴処分と執行猶予獲得に向けて~

今回のケースでAが行った行為は家電量販店Xから5万円相当の万引き(窃盗)をし,追いかけてきたVを突き飛ばし全治1週間の怪我を負わせた(傷害罪)というものです。
これらの行為を単独で行った場合,起訴猶予(不起訴処分)や起訴されても罰金刑や執行猶予付判決,また被害弁償などの情状によっては微罪処分となる可能性もあります。
しかしこれらの行為を同時に行っただけで強盗致傷罪として起訴されてしまった場合,無期または6年以上の懲役となるのは過酷すぎるでしょう。

そこで弁護士は,まず強盗致傷罪として起訴されないように弁護活動をすることが考えられます。
事案によってはそもそも強盗致傷罪とならないと主張する場合もありますが,今回のケースではそのように主張するのは難しいでしょう。
そのため,まずは被害店舗であるXへの被害弁償,被害者であるVへ治療費の支払いなどをし,示談書の作成に努めることになるでしょう。
示談書の中に「Aを許す・厳罰は望みません」といった宥恕条項を盛り込んでもらうことや,本人の反省文・再発防止に向けた取り組みなどを文書化し,示談書とともに検察官に提出する活動が考えられます。
それらを見た検察官が厳罰に処する必要がない,起訴する必要がないと判断した場合には不起訴処分となります。

しかし,被害弁償などを一切しない,被害者が厳罰を望んでいる等の事情がある場合には起訴されてしまう可能性もあります。
起訴されてしまった場合,今度は弁護士は実刑判決とならないように弁護活動をしていくことになるでしょう。
執行猶予判決は,3年以下の懲役の場合にしか付けることが出来ません。
強盗致傷罪は6年以上の懲役ですので執行猶予となるのは不可能かと思われるかもしれませんが,刑法66条は「犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。」と定め,続けて67条で「法律上刑を加重し、または減軽する場合であっても、酌量減軽をすることができる。」と定めています。
刑の減刑は最大で2分の1となりますので,66条による減刑で6年の2分の1すなわち3年まで減刑することができます。
3年まで減刑されれば執行猶予を付けることが可能となります。

また,強盗致傷罪裁判員裁判の対象事件となっています。
裁判員裁判の場合,一般市民である裁判員の方々にも刑の減刑をすべきであること,執行猶予を付すのが相当であることなどを納得してもらう必要があります。
裁判員裁判は一般の刑事裁判と異なる点が多く,刑事事件の経験が豊富な弁護士による弁護が不可欠です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
裁判員裁判対象事件を含む刑事事件の経験豊富な弁護士が多数所属しております。
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神奈川県逗子警察署までの初回接見費用:38,700円