埼玉県八潮市の傷害事件で正当防衛

2019-03-23

埼玉県八潮市の傷害事件で正当防衛

~ケース~

Aはある日の夜,埼玉県八潮市の路上で,すれ違いざまにVと軽く肩がぶつかった。
Vは酔っており肩がぶつかったことに腹を立て,Aの胸ぐらを掴んだ。
Aはそれに抵抗し,Vを突き飛ばした。
Vは酔っていたため,足元がふらつき転倒し,全治1週間の怪我を負った。
周りにいた人の通報によりかけつけた埼玉県草加警察署の警察官により,Aは傷害事件の被疑者として事情を聞かれることになってしまった。
(フィクションです)

~正当防衛~

今回のケースで,VさんはAさんに突き飛ばされて怪我をしてしまったのですから,Aさんには傷害罪が成立するでしょう。
しかし,元はといえばVさんがAさんの胸ぐらを掴んだのであり,Aさんはそれに抵抗してVさんを突き飛ばしただけです。
結果としてVさんが怪我をしてしまったからといって,Aさんが傷害罪で罰を受けることになってしまうのでしょうか。
Aさんは自分の身を守るためにやむを得ずVさんを突き飛ばしたのですから,正当防衛とならないでしょうか。

◇正当防衛とは◇

正当防衛は,「急迫不正の侵害に対して,自己又は他人の権利を防衛するため,やむを得ずにした行為は,罰しない。」と刑法36条1項に定められています。
正当防衛という言葉を耳にすることは多いと思いますが,本来罰せられる行為が罰せられなくなるのですから,容易に適用できるものではありません。
以下では,どのような場合に正当防衛が認められるのかを説明します。

◇急迫不正の侵害◇

まず,正当防衛における防衛行為は「急迫不正の侵害」に対するものでなければいけません。
侵害とは他人の権利や利益を侵し,損害を与えることをいいます。
急迫とは法益の侵害が差し迫っていることをいいます。
そのため,過去の法益侵害や将来の法益侵害に対する予防的防衛行為は正当防衛とはなりません。
不正とは違法であることをいい,強制執行などの適法な侵害行為に対しては正当防衛は成立しません。

◇自己又は他人の権利を防衛するため◇

ここでいう権利とは,法律で「〇〇権」と明文化されているものに限らず,広く法律上保護されている権利(法益)をいいます。
今回のケースで防衛される法益は,Aの身体の安全となります。
正当防衛は「防衛するため」ですので,行為に防衛の意思が必要とされています。
防衛の意思とは「急迫不正の侵害を認識しつつ,これを避けようとする単純な心理状態」をいいます。

◇やむを得ずにした行為◇

そして,正当防衛の成立には,その行為が必要やむを得ずにした行為である必要があります。
防衛行為としての反撃行為は,侵害行為の強さに応じた相当なものでなければいけません。
反撃行為が相当かどうかは具体的事情の下で社会的・一般的見地から見て必要かつ相当の行為である必要があります。
たとえば今回のケースでは胸倉を掴まれていますが,これに対して持っていた護身用ナイフで刺した場合は反撃行為として相当ではないでしょう。
そして,防衛行為は侵害者に対して反撃したものでなければいけません。

防衛行為によって侵害者以外に対して何らかの法益侵害が発生した場合には緊急避難の問題となります。
例えば,迫ってくる相手に落ちていた石を投げたところ,避けられて後ろにいた人に当たった場合などは緊急避難の成立の問題となります。

~正当防衛の主張~

今回のケースではAさんは正当防衛を主張することになると思われます。
しかし,正当防衛は先に説明した通り,「正当防衛だった」と主張するだけでは認められません。
具体的な状況説明とともに行為が正当防衛の要件の一つ一つに当てはまることを主張していかなければいけません。
正当防衛を正しく主張するには刑事事件の経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
起こされてしまった事件で正当防衛の主張をお考えの場合は0120-631-881までお気軽にお電話下さい。
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埼玉県草加警察署までの初回接見費用:4万600円