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タクシー料金の踏み倒しで強盗事件に
タクシー料金の踏み倒しで強盗事件になったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
千葉県流山市に住んでいる会社員のAさんは、飲み会から帰ろうとしたところ終電の時間を過ぎていたことから、Vさんの運転するタクシーを利用することにしました。
Aさんの自宅に到着したあたりで、VさんはAさんに料金を伝えて支払いを求めましたが、酔っ払っていたAさんは「そんなに高い料金ぼったくりだ。俺は帰るぞ」などと告げ、料金を踏み倒して帰ろうとしました。
驚いたVさんが「困りますよ」とAさんを追おうとしたところ、AさんはVさんを強く突き飛ば市押し倒すなどしてVさんを振り切って自宅へ帰りました。
Vさんがすぐに千葉県流山警察署に通報したことで、警察官が駆けつけ、最終的にAさんは強盗罪の容疑で逮捕されるに至りました。
まさかタクシー料金の踏み倒しから強盗罪になるとは思わなかったAさんは、驚いて接見に訪れた弁護士に相談しました。
(※この事例はフィクションです。)
・タクシー料金の踏み倒しが強盗罪に?
強盗罪と聞くと、目出し帽を被った犯人が店員や銀行員に凶器を突きつけてお金を奪うというシーンが思い浮かぶかもしれません。
しかし、実は強盗罪は金品を奪う行為のみに成立する犯罪ではないのです。
刑法第236条
第1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
先ほど例にあげたような誰かに凶器を突きつけて脅してお金を奪うという態様の場合には、「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取」していることから、刑法第236条第1項に規定されている強盗罪が成立すると考えられます。
しかし、刑法第236条第2項に規定されている強盗罪の場合、暴行又は脅迫を手段として用いていることは刑法第236条第1項の強盗罪と変わりませんが、「他人の財物を強取」するのではなく「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させ」るという部分が異なってきます。
つまり、刑法第236条第2項の強盗罪は、暴行や脅迫によって物理的に金品を奪うのではなく、何か利益を自分や第三者に受けさせるようにすることによって成立するのです。
こうしたことから刑法第236条第2項の強盗罪は「強盗利得罪」などとも呼ばれますが、その法定刑は刑法第236条第1項にある強盗罪と変わらず「5年以上の有期懲役」であり、強盗利得罪になったから重く処罰される、処分が軽くなるといったことはありません。
では、今回のAさんについて考えてみましょう。
まず、結果としてAさんはタクシー料金を踏み倒しています。
タクシー料金を踏み倒すということは、本来払わなければいけない料金の支払いを不正に免れているという「財産上不法の利益を得」ていることになります。
そして、Aさんはタクシー料金の踏み倒しをするためにVさんを強く突き飛ばし押し倒すなどして振り切っていますから、「暴行」を用いていると言えるでしょう。
ここで、強盗罪にいう「暴行」とは、相手の抵抗を抑圧する程度のものが必要とされていますが、今回Vさんは突き飛ばされ押し倒されていることから、Aさんの「暴行」はVさんの抵抗を抑圧する程度の強さだったと考えられるでしょう。
以上のことから、Aさんのタクシー料金の踏み倒し行為は刑法第236条第2項の強盗罪にあたると考えられるのです。
強盗罪は非常に重い犯罪で、刑罰の下限も5年の懲役刑となっていることから、有罪になると情状酌量による刑罰の減軽等がなければ執行猶予をつけることもできません(執行猶予がつけられるのは、懲役刑の場合、3年以下の懲役が言い渡される場合に限られます。)。
ですから、こうしたタクシー料金の踏み倒しであっても、「料金を踏み倒した程度で大したことはない」と甘く考えず、早期に弁護士に相談・依頼することが得策と言えます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、タクシー料金の踏み倒しによる強盗事件のご相談・ご依頼も受け付けていますので、まずはお気軽にご相談ください。
痴話喧嘩が暴行事件に
痴話喧嘩が暴行事件となってしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
埼玉県小川町在住の男性Aさんは、女性Vさんと交際していました。
ある日、AさんとVさんが自動車で出かけている最中、2人はささいなすれ違いから喧嘩に発展してしまいました。
Vさんは感情の起伏が激しく、興奮すると周りの物に感情をぶつける傾向があったため、AさんはVさんの体を押さえつけて宥めようとしました。
しかし興奮したVさんは、AさんがVさんを止めようと身体を押さえたことから「暴力をふるわれる」と勘違いしてしまい、車内から道路に向かって大声で「殴られる!助けて!」などと悲鳴を上げました。
通行人が2人の様子を見て埼玉県小川警察署に通報したことで、警察官が現場に駆け付け、Aさんは暴行罪の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、Aさんが逮捕されてしまったことをVさんからの連絡で知り、急いで弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・痴話喧嘩から刑事事件・逮捕に発展
今回の事例は、交際相手と喧嘩になってしまういわゆる痴話喧嘩が暴行事件という刑事事件に発展してしまい、逮捕まで至ったという事例です。
たかが痴話喧嘩で刑事事件などという大事になるのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にも、こうした痴話喧嘩から刑事事件へ発展してしまったというご相談が寄せられることもあります。
痴話喧嘩による暴行事件では、痴話喧嘩がヒートアップする中で相手に対する感情が行き過ぎてしまうことが原因となることが多いです。
例えば、今回のAさんのように、カップルが2人だけいる止める人のいない状況(例えば車の中)で感情的になった結果、ついヒートアップしてしまい刑事事件化するというケースも少なくありません。
ここで注意しなければならないのは、痴話喧嘩から発生した暴行事件・傷害事件では、逮捕される可能性が低くないことです。
痴話喧嘩をする関係であるということは、当然被疑者と被害者が交際しているということになります。
となると、被疑者と被害者はお互いが相手の住所や連絡先などを知っているということになり、捜査機関からすれば、被疑者と被害者が接触するリスクがある=証拠隠滅のおそれがあると判断しやすく、逮捕・勾留による身体拘束が必要であると判断しやすいのです。
特に、日常的にお互いの間で暴行が疑われる場合(DVが疑われる場合)、より逮捕・勾留による身体拘束の可能性が高まることになるでしょう。
そのため、痴話喧嘩から暴行事件に発展してしまったケースでは、事件が発生した段階で速やかに刑事事件に詳しい弁護士に相談し、身柄解放活動や逮捕回避活動を迅速に開始してもらうことが大切です。
加えて、暴行事件ということは、当然被害者が存在します。
今回のような痴話喧嘩から発展した暴行事件では、被害者側も大事になるとは思っておらず、処罰を求める意思がないということもあります。
そうした場合には、被害者の意思を適切に主張していくだけでなく、今後同じことが繰り返されないような具体的な対策を立て、それも主張していくことが求められます。
もちろん、被害者対応や再犯防止活動は被害者の方の処罰感情や事件当時の事情、それまでの経緯などの様々な事情によって異なるものですから、まずは弁護士に相談し、具体的にどういった活動が可能か検討していくことが必要でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、痴話喧嘩から発展した暴行事件などの暴力事件にも対応しています。
0120ー631ー881では、専門スタッフがご相談者様の状況に合ったサービスをご案内いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。
職務質問中に警察官を殴打し逮捕
今回は、職務質問中に警察官を殴打してしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
東京都北区に住むAさんは、薬物の常習者です。
薬物常習者に特異な挙動をパトロール中の警視庁赤羽警察署の警察官に見咎められ、停止を求められました。
Aさんはその時覚せい剤を所持していました。
覚せい剤所持が発覚するとまずいと思い、無言で立ち去ったところ、警察官のうち1人がAさんの前に立ち、もう1人がAさんの肩を掴んで止めようとしました。
Aさんは「任意の職務質問を強制する警察官を懲戒する」などと叫び、警察官の額を右こぶしで殴打しました。
Aさんは公務執行妨害罪の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~公務執行妨害罪について解説~
公務執行妨害罪とは、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加える行為」(刑法第95条1項)、及び、「公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加える行為」(刑法第95条2項)をいいます。
実際に公務員の職務執行が妨害されたことは必要ではありません。
ただし、条文上明らかではありませんが、判例通説によると、本罪の職務は適法でなければなりません。
したがって、Aさんの暴行に先立ってなされた職務質問が、刑法第95条における適法性を有していないのであれば、公務執行妨害罪は成立しません(ただし、暴行罪や傷害罪は成立しうるでしょう)。
ケースにおける職務質問は適法だったのでしょうか。
~職務質問の適法性~
警察官職務執行法第2条1項によれば、「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができ」ます。
ただし、同条3項によると、「刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない」とされているので、職務質問は任意処分ということができます。
それでは、警察官がAさんを止めるために行く手を阻んだり、肩を掴んだりする行為は任意処分として許容されるのでしょうか。
判例(最高裁判所第三小法廷昭和51年3月16日決定)は、「任意捜査における有形力の行使は、強制手段、すなわち個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段にわたらない限り許容されるが、状況のいかんを問わず常に許容されるものではなく、必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において、許容される」としています。
Aさんに①薬物常習者に特異な挙動が認められる点、②職務質問を受けたところ、無言でその場を立ち去ろうとした点は、上記の「必要性」、「緊急性」が肯定される可能性を高める行為ということができるでしょう。
なお、上記判例においては、警察官が、酒酔い運転の罪の被疑者を警察署に任意同行し、呼気検査に応じるよう説得を続けていたところ、被疑者が急に退室しようとしたため、その左斜め前に立ち、両手でその左手首を掴んだ点が問題となりました。
これに対し最高裁は、「任意捜査において許容される限度内の有形力の行使である」として適法と判断しました。
ケースの警察官はAさんの行く手を阻んでいますが、そもそもAさんに触れたわけではなく、適法に停止させる行為として認定される可能性が高いと思われます。
また、もう1人の警察官がAさんの肩を掴んだ点についても、程度の強いものとは言えず、Aさんの行動を考慮すれば、相当なものとして、任意処分の範疇に属する有形力の行使と判断されるものと考えられます。
職務質問の対象者をいきなり殴打したり、いきなり組み伏せたりすれば、もはや任意処分とはいえないと思いますが、ケースにおける程度の有形力の行使は、殆どの場合、適法と判断されるのではないでしょうか。
~すぐに弁護士を呼ぶ~
逮捕されてしまった事件を有利に解決するためには、早期に弁護士を依頼することが重要です。
ご家族が公務執行妨害事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
傷害事件の身柄解放活動
今回は、傷害事件を起こしてしまった方の身柄解放活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、東京都府中市の繁華街を歩いていた際、Vのさしていた傘が自身に当たったことをきっかけとしてトラブルとなり、腹に据えかねたAさんは、Vの顔面を右こぶしで殴打してしまいました。
Vは顔面打撲の傷害を負っています。
Aさんの犯行は通行人により警察に通報されてしまい、Aさんは、警視庁府中警察署に傷害の現行犯として逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~傷害罪について解説~
文字通り、人の身体を傷害する犯罪です。
通常、右こぶしで人を殴打するなどしてケガをさせてしまった場合には、傷害罪が成立することになります。
法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
なお、銃砲や刀剣類を用いて人の身体を傷害した場合は、「暴力行為等処罰ニ関スル法律」に違反することとなり、法定刑は1年以上15年以下の懲役となります(暴力行為等処罰ニ関スル法律第1条の2)。
Aさんは素手でVの顔面を殴打し、怪我を負わせているので、通常の傷害罪が成立することになるでしょう。
~早期の身柄解放に着手~
傷害の疑いで現行犯逮捕されてしまうと、どのくらいの間身体拘束を受けることになるのでしょうか。
ケースバイケースではありますが、逮捕・勾留されてしまうと、捜査段階で最長23日間身体拘束を受けることになります。
Aさんが会社に勤務していたり、学校に通うなどしている場合であっても、逮捕・勾留中は外に出ることができないので、その間は、無断欠勤・無断欠席を続けることになります。
無断欠勤・無断欠席が続くと、会社をクビになったり、学校を留年するなどの不利益を受けることになります。
逮捕されてしまった場合は、可能な限り早く留置場や拘置所の外に出ることが重要です。
逮捕直後においては、勾留を阻止する活動が重要です。
逮捕されてしまったケースにおいて、常に勾留決定をすることが許されるわけではありません。
被疑者を勾留するためには、以下の要件を満たす必要があります。
(勾留の要件)
①被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
②(1)被疑者が定まった住居を有しないこと
②(2)被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること
②(3)被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること
③勾留の必要性が認められること
②(1)~(3)は、いずれか1つ充足すれば足ります。
勾留を阻止するためには、検察官や裁判官に対して、以上の要件を満たさないことを説得すればよいのです。
①については、Aさんが現行犯であることから、これを満たさないと主張することは難しいかもしれません。
②③については、「Aさんに定まった住居や職があること」、「被害者とは特に接点がなく、被害者の住所から離れて生活していること」、「信頼できる身元引受人を用意できること」などを主張し、勾留をしないよう働きかけることになるでしょう。
~勾留されてしまった場合~
勾留されてしまった場合であっても、「準抗告」や「勾留取消請求」などの制度を通じ、早期の身柄解放を実現できる可能性があります。
また、Vと示談をすることも重要です。
示談がまとまれば、当事者間で事件が解決したものとして、釈放される可能性があります。
また、検察官がAさんの事件につき、不起訴処分を行う可能性も高まります。
さらに、Vと示談をして、Vに生じさせた損害を賠償することにより、後日、民事事件に巻き込まれるリスクを無くすこともできます。
傷害の疑いで逮捕されてしまった場合は、一刻も早く弁護士を呼ぶことをおすすめします。
接見にやってきた弁護士からアドバイスを受け、有利な事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が傷害事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
神社の社殿の一部に放火
今回は、複数からなる建造物の一部に放火した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
東京都杉並区に住むAは仕事やプライベートでうまくいかず、ストレスを抱えていたことから、放火をしようと考えていました。
そこで、夜間に自宅から3kmほど離れた場所にある神社を目標に定めました。
そこで、社殿の一部の祭具庫に放火し、祭具庫は全焼しました。
その後、付近をパトロールしていた警察官によって、Aは逮捕されました。
祭具庫は当時、人はおらず、住居に使用するものでもありませんでしたが、その神社は複数の建造物からなり、その一部には人の現在、現住する社務所や守衛詰所があり、それらは木造の回廊でつながっていて一周できる構造になっていました。
それら複数の建造物は日夜、神社職員等によって一体として使用されていました。
(フィクションです。)
-放火罪の種類-
主な放火に関する刑法上の条文には以下のものがあります。
108条(現住建造物等放火罪)
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
109条
1項(他人所有非現住建造物等放火罪) 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2項(自己所有非現住建造物等放火罪) 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
110条
1項(他人所有建造物等以外放火罪) 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2項(自己所有建造物等以外放火罪) 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲又は十万円以下の罰金に処する。
放火して焼損させた対象が、現に住居に使用されているか否か、現に人がいるか否か、建造物等か否か、他人所有か自己所有かによって条文が分かれています。
-建造物としての一体性-
本件では、放火し焼損させたのは社殿内の祭具庫で、建造物にあたるので建造物等以外を対象とした110条が適用から外れますし、Aの自己所有でもないので、自己所有を前提とした109条2項も適用されません。
それでは、残るのは108条と109条1項になり、人の現在性・現住性の有無がどちらの条文に当たるかの成否を分けます。
本件でAが放火し焼損させた祭具庫はどうでしょうか。
祭具庫自体には現住性・現在性はないのですが、ここでは、祭具庫が人の現在・現住する社務所や守衛詰所と建造物として一体といえるかどうかがポイントとなります。
建造物として、一体といえるためには「物理的一体性」と「機能的一体性」が重要といえます。
「物理的一体性」とは物理的にみて、構造上一体といえる状態のことです。
ただし、現住性・現在性部分に対する延焼可能性があってはじめて現住・現在建造物としての物理的一体性が認められます。
なぜなら、現住建造物等放火罪が直接人の生命・身体に危険を及ぼすために重く処罰されていることから、現住・現在部分に対する延焼可能性が全くない場合だと人の生命・身体への危険が認められないからです。
そして、「機能的一体性」とは、使用上の一体性を指します。
現住部分と非現住部分が一体として使用されている場合には、非現住部分にも人が存在する可能性があるからです。
-本件で建造物としての一体性があるといえるか-
本件では、祭具庫と社務所や守衛詰所とが木造の回廊で繋がっているところから、構造上一体であり、延焼可能性もあることから、物理的一体性があるといえます。
また、焼損した祭具庫と社務所や守衛詰所は一体として使用されていたことから、機能的一体性があるといえます。
以上により、本件では祭具庫と社務庁や守衛詰所とが「物理的一体性」と「機能的一体性」が認められることによって、建造物の一体性があるといえます。
よって、Aには108条の現住建造物等放火罪が成立する可能性が高いでしょう。
-放火事件の加害者になったら-
以上のように、放火罪は複数の条文にまたがっていますし、適用される条文(刑法108条)によっては死刑もあり得るので、事件を解決するにあたっては弁護士の知識・経験が欠かせません。
もし、あなたやあなたの大事な人が加害者として放火の罪に問われそうになったら、是非、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください。
フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)まで、お気軽にご相談ください。
土下座を強要し逮捕
土下座を強要し逮捕
今回は、飲食店店員に土下座を強要し、逮捕されてしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、京都市下京区内の飲食店で食事をしていたところ、値段に見合った味でないことに腹を立て、責任者を呼び出しました。
Aさんは責任者に対し、「おい、高い金とってこんな料理出すことはないだろ。誠意を見せろ。こういう時やることがあるだろう、土下座だ」などと大声で迫り、イスを蹴り飛ばすなどして土下座を要求しました。
責任者は恐怖を感じ、仕方なく土下座をしましたが、他のお客さんの通報で駆け付けた京都府下京警察署の警察官により、Aさんは強要の疑いで現行犯逮捕されてしまいました(フィクションです)。
~強要罪について解説~
強要罪とは、相手やその親族の生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害する犯罪です(刑法第223条1項・2項)。
上記の脅迫・暴行をしたが、人に義務のないことを行わせたり権利の行使を妨害するに至らなかった場合も、未遂犯として罰せられます(同条3項)。
Aさんは、イスを蹴り飛ばすなどして責任者を怖がらせ、土下座をさせています。
この事実関係によれば、脅迫や暴行を用いて、人に義務のないことを行わせたものということができると考えられるので、Aさんに強要罪が成立する可能性は高いと思われます。
強要罪の法定刑は、3年以下の懲役となっています。
~刑事事件の手続きの流れ~
犯罪をしたとして逮捕されると、最初に最大3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間、勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。
勾留された場合はその期間の最後に、勾留されなかった場合は捜査が終わり次第、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。
起訴されると、刑事裁判が始まることになります。
~早期の身柄解放を実現~
早期の身柄解放を実現するためには、早期に弁護士に依頼することが重要です。
Aさんの身体拘束が長引く要因は勾留されてしまうことにあります。
早期に弁護人を選任すれば、検察官や裁判官に勾留の要件を満たさないことを訴えかけ、勾留をしないように働きかけることができます。
勾留されてしまった場合にも、準抗告と呼ばれる不服申し立てなどを行い、釈放を求めることができます。
さらに、被害者と示談を成立させることにより、勾留前であれば勾留されない可能性、勾留後であっても、釈放される可能性を高めることができます。
釈放されれば、普段通りに会社へ出勤することができるので、無断欠勤を続けてしまった日数、周囲の状況、報道の有無にもよりますが、会社に逮捕されたことを知られずにすむことも考えられます。
~不起訴処分の獲得~
Aさんが単に責任者を土下座させてしまった、というだけであれば、円満な示談を成立させることにより、不起訴処分を獲得できる可能性があります。
不起訴処分を獲得できれば、前科を付けずに事件を解決することができます。
今回は大目に見てもらうということです。
より良い事件解決を目指して、一度弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が強要事件などを起こして逮捕された、取調べを受けたといった場合にはぜひご相談ください。
コンビニで消火器を使用し逮捕
コンビニで消火器を使用し逮捕
今回は、コンビニ店内において、嫌がらせ目的で消火器を使用した場合に成立する犯罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、兵庫県淡路市内のコンビニにおいて、目的の商品が無いことに腹を立て、店員に因縁をつけるなどしていました。
Aさんは店員の態度に立腹し、店内にあった消火器を使用し、店内を粉末だらけにしてしまいました。
Aさんは駆け付けた兵庫県淡路警察署の警察官により、威力業務妨害罪の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~威力業務妨害罪とは?~
文字通り、「威力を用いて人の業務を妨害」する犯罪です(刑法第234条)。
【「威力」とは?】
「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力をいい、暴行や脅迫はもちろん、社会的地位、経済的地位、権勢を利用した威迫、多衆・団体の力の誇示、物の損壊など、およそ人の意思を制圧するに足りる勢力の一切をいいます。
コンビニ店内で消火器の粉末を放射すれば、消火器の噴射自体が人を怖がらせるさせるものである上、粉末が片付くまで営業を中止せざるを得ないと思われるので、「威力」に該当する可能性が高いと思われます。
【「業務」とは?】
「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は事業をいいます。
公務が「業務」に該当するかなど、議論のあるポイントではありますが、コンビニの営業が「業務」に該当することに異論はありません。
【「妨害」に該当するには?】
現実に業務遂行が妨害されることは必要ではなく、これらに対する妨害の結果を発生させるおそれのある行為があれば足りると解されています。
ケースの場合、消火器の粉末が片付くまでコンビニの営業を中止せざるを得ないと考えられるので、「妨害」に該当する可能性が高いでしょう。
以上の事実関係によれば、Aさんは、威力を用いて(消火器をコンビニ店内で放射して)、他人の業務を妨害したものということができると考えられます。
したがって、Aさんに威力業務妨害罪が成立する可能性は高いでしょう。
法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
~逮捕後の手続~
逮捕された段階で最長72時間、身体拘束を受ける可能性があります。
さらに、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可をすれば、さらに最長20日間、勾留と呼ばれる身体拘束を受ける可能性があります。
裁判が始まる前の捜査段階において、最長23日間、外に出られなくなる可能性があるということです。
その後、刑事裁判が始まると、保釈が認められない限り、さらに身体拘束が続いていく可能性もあります。
~早期の身柄解放と軽い処分の実現~
身体拘束が長引くと、①身体的・精神的に重い負担がかかる、②会社や学校に行くことができず、不利益な処分を受けることになってしまうなどの弊害が生じます。
なるべく早く外に出ることが、円滑な社会復帰のために重要です。
【身柄解放活動のポイント】
①勾留を防ぐ、②勾留後の不服申し立て、③被害者との示談が主なポイントになるでしょう。
逮捕されても、勾留されなければ、72時間以内に釈放されます。
勾留された場合であっても、その取消等を求めて不服申し立てを行うことができます。
ただし、一旦裁判官が勾留を許可しているので、勾留に対する不服申し立てはハードルが高いといえます。
そもそも勾留の決定がされないように迅速な弁護活動を受けることが重要となります。
また、被害者と示談が成立すれば、罪証隠滅・逃亡のおそれがないと判断され、釈放される可能性が高まります。
【不起訴処分の獲得】
検察官は、Aさんの有罪を立証できる証拠を有している場合であっても、その裁量により、Aさんを刑事裁判にかけないという判断(不起訴処分)を行うことができます。
今回は大目に見てもらうということです。
適切な弁護活動を通じ、不起訴処分を獲得できれば、前科が付かずに刑事手続きが終了します。
不起訴処分は難しくても、公開の法廷での刑事裁判を受けずに、簡易な手続で罰金刑になる略式裁判で済む可能性もあります。
こういった軽い処分を目指すためにも、示談は重要となってきます。
なんら被害者に謝罪・賠償をしない場合と比べると、印象が良くなるわけです。
~弁護士にご相談を~
とはいえ身柄解放に向けた手続きや示談交渉の方法など、わからないことだらけだと思います。
事件解決に向けたアドバイスを致しますので、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご自身やご家族が偽計業務妨害などで捜査を受けた場合には、ぜひご相談ください。
名誉棄損罪と告訴取消し
名誉棄損罪と告訴取消し
名誉棄損罪と告訴取消しについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
大阪市北区に住むAさんは長年交際していたVさんから突然の分かれを告げられたため、報復するつもりでSNSの掲示板にVさんに対する誹謗中傷する事実を掲載したところ、大阪府曽根崎警察署に名誉棄損罪で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は名誉棄損に詳しい弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです。)
~名誉棄損罪~
近年は、ツイッター、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSで誰でも簡単に、しかも匿名でも書き込みできる時代です。
ですから、自分の投稿が名誉棄損罪にあたり警察沙汰になるなど思わぬ事態に発展する可能性も考えられます。
そこで今回は名誉棄損罪について詳しく見ていきましょう。
名誉棄損とは、文字通り、他人の名誉を傷つけることをいいます。名誉棄損を行うと刑事上の責任と民事上の責任に問われる可能性があります。
刑事上の名誉棄損罪については刑法230条に規定されています。
刑法230条
1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘時することによってした場合でなければ、罰しない。
「名誉」とは、人に対する社会的な評価などをいうと解されています。
「公然」とは、不特定または多数人が認識し得る状態と解されています。
「事実を摘示する」とは、人に対する社会的評価を低下させるおそれのある具体的事実を指摘、表示することをいいます。
似たような犯罪としては侮辱罪があります。
刑法231条
事実を摘示なくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
名誉毀損罪と侮辱罪との違いは「事実を摘示」したかどうかです。
単なる意見や暴言にすぎないときは侮辱罪に問われます。
~告訴を防ぐ~
告訴とは、告訴権を有する者(被害者等)が、捜査機関(警察等)に対し、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示を言います。
犯罪の中にはこの告訴がなければ起訴できない犯罪があります。
これを親告罪と言います。
刑法で定められている例を挙げれば、名誉棄損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)、過失傷害罪(刑法209条)、器物損壊罪(刑法261条)などがあります。
刑法以外の法律でも親告罪とされている犯罪がありますから、ご自身が行った犯罪が告訴が必要な親告罪か否かは弁護士に確認するとよいでしょう。
親告罪では、ご自身が罪を認めているのならば、被害者と話し合いや示談をすることが賢明でしょう。
示談が成立すれば、そもそも被害者が捜査機関に告訴状を提出しないということもありえるでしょう。
また、すでに提出していたとしても告訴を取下げてもらえるかもしれません。
そうすれば有罪となって刑罰を受けたり前科が付く可能性がなくなります。
ただし、示談を何と言ってお願いしたらよいか、示談金はいくらにしたらよいか、示談書はいくらにしたらよいかなど、わからないことが多いと思いますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずは0120-631-881までお電話ください。
無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。
無料相談や初回接見後のご報告では、事件の見通しや、刑事手続の説明の他、弁護士費用などについてご納得いただけるまでご説明させていただきます。
ぜひお気軽にご相談ください。
逮捕時に令状なしで押収
逮捕時に令状なしで押収
今回は、逮捕時の令状なしの押収・差押えについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
千葉県船橋市に住むAさんは、護身用と称して特殊警棒をカバンに隠して携帯していたところ、千葉県船橋警察署の警察官から職務質問を受けました。
Aさんは警察官らの質問に対する回答を拒んだ挙句、「違法な職務質問を行う警察官に対して加害行為を行っても、正当防衛が成立する」などと叫び、特殊警棒で警察官を殴打しました。
殴られた警察官は頭蓋骨を骨折し、入院したことが後にわかりました。
応援にやってきていた警察官5名でAさんを制圧し、公務執行妨害および傷害の疑いで現行犯逮捕しました。
特殊警棒はその際に警察官によって押収されました。
Aさんは「逮捕されたとはいえ、令状なしで警棒を押収したのは、警察権力の横暴である」と考えています。
警棒の押収手続の適法性について、Aさんは弁護士に尋ねてみようと考えています。(フィクションです)
~公務執行妨害および傷害罪について解説~
【公務執行妨害罪】
この犯罪は、公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加える犯罪です(刑法第95条1項)。
公務執行妨害罪の客体は「公務員」です。
よくニュースで見聞きするのは、警察官を殴打するなどして検挙される場合ですが、当然ながら、職務中の市役所職員などに暴行・脅迫をした場合であっても、公務執行妨害罪が成立します。
「暴行」は、公務員に向けられた有形力の行使であれば足りるとされていますが、公務員の身体に対して直接なされる必要はなく、間接的に当該公務員に物理的・心理的に影響を与えるようなものでも構いません。
判例で有罪になったものとしては、
・税務署員が差し押さえた密造酒入りの瓶を割って内容物を流出させる行為(最高裁昭和33年10月14日判決)
・逮捕現場で警察官が押収した覚せい剤注射液入りアンプルを足で踏みつけて破壊する行為(最高裁昭和34年8月27日決定)
などがあります。
公務執行妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金となっています。
【傷害罪】
文字通り、人の身体を傷害する犯罪です(刑法第204条)。
警察官に生じさせた頭蓋骨骨折は、明らかに「傷害」に該当します。
傷害罪の法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
上記に加え、軽犯罪法違反にも問われる可能性も十分あります。
~特殊警棒の押収手続は適法か?~
本来、捜査機関が証拠品等を押収するためには、裁判所の許可が必要です(令状が必要という言い方もします)。
しかし、刑事訴訟法220条に例外規定があります。
刑事訴訟法
第220条1項
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。第二百十条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。
一 人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。
二 逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。
2項 省略
3項 第一項の処分をするには、令状は、これを必要としない。
4項 省略
Aさんは、司法警察職員たる警察官により、現行犯逮捕されています。
このような場合において必要があるときは、刑事訴訟法第220条1項2号により、「逮捕の現場で差押」をすることができ、同条3項により令状は不要です。
したがって、Aさんが特殊警棒で警察官を殴打し、傷害を負わせるなどして現行犯逮捕された場合においては、令状なしで凶器の特殊警棒を押収しても、適法ということになります。
~まずは弁護士を呼ぶ~
Aさんは警察官に比較的重い傷害を負わせており、重い処分がなされることが十分見込まれます。
一刻も早く弁護士を呼び、善後策を立てていく必要があるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が公務執行妨害・傷害事件などを起こし逮捕されてしまった方は、ぜひご相談ください。
会社の同僚に嫌がらせをして取調べ
会社の同僚に嫌がらせをして取調べ
今回は、会社の同僚に対し嫌がらせをした場合に成立する可能性のある犯罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
埼玉県草加市に住むAさんは、会社の同僚Vさんとの関係が悪化しており、電子メールで「会ってこれまでのことにケリをつけようや」などと執拗に迫ったり、Vさん宅に大小便や動物の死骸などを送りつけるなど、悪質な嫌がらせを繰り返していました。
腹に据えかねたVさんは警察に相談しました。
後日、Aさんの自宅に埼玉県草加警察署から連絡があり、「空いている日に出頭して聞かせてほしいことがある」とのことです。
正直、Aさんとしては出頭したくありません。
どうするべきでしょうか。(フィクションです)
~成立しうる犯罪は?~
今回のAさんのようなことをすると、埼玉県迷惑行為等防止条例違反となる可能性が高いと思われます。
関係する条文を抜粋して紹介します。
第10条
何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、不安又は迷惑を覚えさせるような行為であつて、次の各号に掲げるもの…を反復してしてはならない。
3号 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
6号 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
まずAさんの行為は、同僚との関係が悪化した原因が何であれ、真っ当な方法を用いているとは言えませんから、「正当な理由がないのに、特定の者に対し、不安又は迷惑を覚えさせるような行為」に当たる可能性が高いでしょう。
また、電子メールを使い、「会ってこれまでのことにケリをつけようや」などと迫る行為は、3号に該当すると思われます。
また、「V宅に大小便や動物の死骸などを送りつける」行為は、6号に該当すると思われます。
したがって埼玉県迷惑行為等防止条例違反となる可能性が高いわけです。
上記行為に対する法定刑は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となっております(12条1項)。
常習性が認められる場合には、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(12条3項)。
~Aさんはどうするべきか?~
Aさんは出頭したくないとのことです。
しかし警察の出頭要請に応じない場合、Aさんに「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」があると判断されてしまい、逮捕されてしまう可能性を高めてしまうことになるでしょう。
また、犯罪の内容にもよりますが、一般的に、被害者と加害者が鉢合わせをする可能性が低ければ、逮捕しなくてもいいという判断になる可能性も上がることがあります。
なぜなら、被害者を脅して供述を変えさせるなど、証拠隠滅の一種とされる行為をする可能性が低いと判断される傾向にあるからです。
しかし今回は会社の同僚同士であり、毎日顔を合わせる可能性があるので、逮捕されるリスクが高まる事情の1つが元々あるといえます。
したがって、少しでも逮捕の可能性を下げるために出頭には応じた方が賢明といえます。
~まずは弁護士と相談~
まだAさんは逮捕されていないので、いつでもAさんは弁護士と相談することができます。
できれば出頭前に弁護士と会い、取調べの対応方法についてアドバイスを受けることをおすすめします。
また、Vさんと示談をすることにより、不起訴処分などの軽い処分を目指す必要もあります。
まずは、刑事事件に詳しい弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用を、逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用をお待ちしております。