ナイフで脅迫したら暴力行為処罰法違反?
ナイフで脅迫したら暴力行為処罰法違反?
ナイフで脅迫したら暴力行為処罰法違反になった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
さいたま市岩槻区に住むAさんは、隣人のVさんとささいなことからトラブルになり、路上でVさんにナイフを向け、「それ以上口ごたえをするようなら痛い目にあわせるぞ」などと脅しました。
現場近くに居合わせた通行人が埼玉県岩槻警察署に通報したことで警察官が駆け付け、Aさんは暴力行為処罰法違反の容疑で現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんの家族が帰宅しないAさんを心配して警察署に連絡したところ、どうやらAさんが現行犯逮捕されて警察署に留置されているようだということが分かり、急いで弁護士に相談しました。
そこでAさんの家族は、Aさんの逮捕容疑が暴力行為処罰法違反という耳慣れない犯罪であることを知りました。
(※この事例はフィクションです。)
・暴力行為処罰法とは?
上記事例のAさんの逮捕容疑は「暴力行為処罰法違反」という犯罪です。
しかし、Aさんの家族がそうであったように、この法律・犯罪名はなかなか聞き馴染みのないものでしょう。
通常、人を脅迫したら成立する犯罪といえば脅迫罪という刑法に定められている犯罪です。
刑法第222条第1項(脅迫罪)
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
上記事例のAさんは、Vさんに対してナイフを向け、「痛い目にあわせるぞ」などといったVさんの身体を傷つける脅し文句を口にしていますから、「身体(中略)に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」と言えるでしょう。
ですが、実は、犯行形態によって、人を脅迫した場合に脅迫罪ではなく暴力行為処罰法違反が成立する場合があるのです。
暴力行為処罰法とは、正式名称「暴力行為等処罰ニ関スル法律」という法律で、「暴処法」「暴力行為法」「暴力行為処罰法」などと略されます。
この暴力行為処罰法には、以下のような条文があります。
暴力行為処罰法第1条
団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法(明治40年法律第45号)第208条、第222条又ハ第261条ノ罪ヲ犯シタル者ハ3年以下ノ懲役又ハ30万円以下ノ罰金ニ処ス
大正時代の法律であるため、少し読みにくい部分があるかもしれませんが、簡単に言えば、大勢で威力を示したり、凶器を示したり、数人で共同したりして刑法の特定の犯罪を行った場合、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金というより重い処罰としようということなのです。
今回のAさんが使用していたナイフや包丁といった刃物は「兇器」と判断されうるものですから、これを利用して刑法222条の罪=脅迫罪に当たる行為をすれば、暴力行為処罰法のこの規定に該当する犯罪とされるのです。
なお、脅迫罪の法定刑は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金ですから、暴力行為処罰法違反の方が重い刑罰となることが分かります。
刑事事件では、一般になかなか知られていない犯罪の容疑がかかってしまうこともあります。
逮捕容疑が知らない犯罪名であれば、動揺してしまうこともあるでしょう。
だからこそ、まずは刑事事件の専門知識・経験に富んだ弁護士に相談し、容疑をかけられている犯罪のこと、今後の見通しや手続きのことをきちんと把握しておきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、在宅事件にも逮捕されてしまっている身柄事件にも迅速に対応できるように弁護士が様々なサービスをご用意しています。
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