タクシーで凶器を示して暴力行為等処罰に関する法律違反

2020-01-02

タクシーで凶器を示して暴力行為等処罰に関する法律違反

タクシーで凶器を示して暴力行為等処罰に関する法律違反に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

京都市右京区に住むAさんは、夜間、タクシーを利用して帰宅しました。
しかし、Aさんは、タクシーが自宅付近に到着し、運転手Vさんからタクシー料金の支払いを求められるとその額に不満で、ポケットに入れていたアイスピックをVさんに示しながら、「お前俺をなめるとんのか。」と言いながらVさんを脅しました。
この怒号を聞きつけたAさんの妻がVさんにタクシー代金を支払い何とかことは収まりましたが、Aさんは後日、京都府右京警察署から暴力行為等処罰に関する法律違反の被疑者として呼び出しを受けてしまいました。
Aさんは、今後どう対応していけばよいか困り、弁護士との無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)

~ 暴力行為等処罰に関する法律 ~

人を脅す行為というのは、一般に、刑法の脅迫罪(刑法222条)を思い浮かべる方も多いかと思います。

刑法222条
1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

しかし、Aさんのように「兇器(凶器)」を示して脅迫すると暴力行為等処罰に関する法律に規定される罪に問われる可能性もあります。

~ 暴力行為等処罰に関する法律とは? ~

では、暴力行為等処罰に関する法律とはどんな法律なのでしょうか?

暴力行為等処罰に関する法律(以下、法律)は、集団的、常習的あるいは兇器を用いて行われる暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪、傷害罪(刑法204条)について刑法の刑を加重する(法律1条関係(2条関係の説明は省略します)などした法律です。
大正15年4月に制定された古い法律で、第一次世界大戦後の社会的、経済的不満がまん延する大正末期に続発した集団的・常習的な暴力行為、面会強請、強談威迫などに対処するために制定されたと言われています。

法律1条【集団的にまたは兇器を示して行う暴行、脅迫、器物損壊罪】には、

団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百八条、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス

と規定されています。
この規定を分解すると、

(手段)           (方法)
①団体の威力を示し      
②多衆の威力を示し      ア 暴行
③団体を仮装して威力を示し  イ 脅迫
④多衆を仮装して威力を示し  ウ 器物損壊
⑤凶器を示し
⑥数人共同し

となり、いずれかが組み合わされば法律1条の罪に問われる可能性があります。
本件は、このうち「⑤・イ」の組み合わせに当たります。

なお、「凶器」とは、人の生命・身体に害を加えるのに使用されるような器具をいいます。
鉄砲、刀剣のように本来の性質上人を殺傷するために作られた器具はもちろん、鉄棒、こん棒のように本来用途においては人を殺傷すべきものではありませんが、使い方によっては殺傷のために使いえる道具も含まれます。
ただし、使い方によっては人を殺傷しえる道具であっても、社会通念上、人をしてただちに殺傷のために使いえると感じさせないもの(たとえば、縄、手ぬぐいなど)は「兇器」には含まれません。
なお、本件のアイスピックは「兇器」に当たると判示した裁判例があります(大高判昭和39年9月4日など)。

~ 常習犯の場合はさらに重い罪にも! ~

法律1条の3は、常習として傷害罪、暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪を犯した場合に関する規定です。

法律第1条の3
常習トシテ刑法第二百四条、第二百八条、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者人ヲ傷害シタルモノナルトキハ一年以上十五年以下ノ懲役ニ処シ其ノ他ノ場合ニ在リテハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス

常習として傷害罪、暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪を犯した者が人を傷害した場合は「1年以上15年以下の懲役」、その他の場合は「3月以上5年以下の懲役」とするとしており、法律1条より刑が重くなっています。

~ 示談交渉は弁護士に依頼 ~

この種事件においても示談交渉が、今後の刑事処分や量刑を決める上で大切になってきます。
お困りの方は弁護士へご相談ください。

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