傷害罪か暴行罪か?
傷害罪か暴行罪か?
京都府木津川市に住むAさんは,職場の同僚であるVさんの胸ぐらをつかみ、右拳でVさんの顔面を1回殴る暴行を加えました。
その際、Vさんの鼻などから出血は確認できず、Vさんも病院には行かなかったようです。
ところが、それから1週間後、Aさんは京都府木津警察署の警察官に呼び出され、取調べで「Vさんから医師の診断書が出た」「診断名は歯牙破折だ」ということを聞かされ、傷害罪の被疑者として捜査すると言われました。
Aさんとすれば、暴行自体は認めているものの、事件当時、Vさんから歯が折れたなどとは聞かされていなかったため、怪我の点については納できずにいます。
そこで、Aさんは、今後どう対応すればいいのか刑事事件に強い弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
Aさんは、Vさんの顔面を1回殴打したこと自体は認めていますから、本件は暴行罪が成立するのか傷害罪が成立するのかの問題です。
そこで、両罪の違いからご紹介いたします。
~ 暴行罪 ~
暴行罪の規定は以下のとおりです。
刑法208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
暴行罪の「暴行」とは、人の身体に向けられた不法な有形力の行使をいうとされています。
もっとも典型なのが、殴る、蹴る、突く、押す、投げ飛ばすなど、直接人の身体に触れる行為が挙げられます。
もっとも、暴行罪の「暴行」は直接人の身体に触れる行為に限らず、
・着衣を強く引っ張る行為
・胸ぐらをつかむ行為
・人に向かって石やガラスコップを投げる行為,棒を振りかざす行為
・毛髪等を切断する行為
・室内で太鼓等を連打する行為
・耳元で拡声器を通じて大声で怒鳴りつける行為
・狭い室内で日本刀を振り回す行為
など、直接人の身体に触れない行為も「暴行」とされることがあります。
~ 傷害罪、暴行罪との違い ~
傷害罪の規定は以下のとおりです。
刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
傷害罪は上記の「暴行」の他に「傷害(怪我など)」という結果と「暴行」と「傷害」との間の「因果関係」があってはじめて成立する罪です。
したがって、
・「暴行」を加えたものの「傷害」(結果)が発生しなかった場合
・「暴行」と「傷害」との間に「因果関係」が認められない場合
は傷害罪は成立しません。
ただし、「暴行」の事実自体は存在しますから暴行罪は成立します。
この点が、暴行罪と傷害罪の違いの一つといっていいでしょう。
~ 本件の刑事弁護 ~
本件で、Aさんは、「暴行」の事実自体は認めているものの、「暴行」と「傷害」との因果関係について疑問を持たれているようですから、まずは「暴行罪」での処分を主張していかなければなりません。
具体的には、Aさんはもちろん、周囲に直接の目撃者あるいはVさんの様子を知る人がいなかったかどうか調べ、その方たちからもお話を聴く必要があるでしょう。
そして、その聴取した結果を意見書という形にまとめ、処分を決める検察官に提出するといったことが考えられます。
それと同時に、「暴行」の事実に限っての示談交渉を進めていく必要があります。
仮に、傷害罪で起訴され裁判になった場合は、裁判で診察をした医師を尋問するなどして作成した診断書の証明力を減退させる必要も出てくる可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、暴行罪、傷害罪等の刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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