兵庫県尼崎市で強盗・銃刀法違反事件

2019-06-21

兵庫県尼崎市で強盗・銃刀法違反事件

【事件】
Aさんは兵庫県尼崎市にあるV銀行の窓口担当の行員に対して,刃体16センチメートルの包丁を突きつけ,「金を出せ」と脅迫しました。
行員はAさんに現金を渡し,Aさんが逃亡したのを確認したところで兵庫県尼崎北警察署に通報しました。
後日,兵庫県尼崎北警察署の捜査によってAさんは強盗罪銃刀法違反の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)

【強盗罪】

強盗罪は,暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した場合に成立します(刑法第236条第1項)。
強盗罪の法定刑は,5年以上の有期懲役です。

強盗罪における暴行・脅迫は,反抗を抑圧するに足りる程度の強さがなければなりません。
これは,暴行罪(刑法第208条)に規定されている暴行が,端的に人に向けられた有形力(物理力)であればよいとされているのに比べて,それが客観的に見て反抗を抑圧する程度のものであると認められる必要があることを意味します(最判昭和24年2月8日刑集3巻2号75頁)。

強盗罪の成立に必要な暴行・脅迫は,財物を奪うための手段として行われる必要があります。
そのため,暴行・脅迫によって相手の反抗が抑圧された後に財物奪取の意思が生じたような場合には強盗罪とはなりません(大判昭和8年7月17日刑集12巻1314頁)。
ただし,財物奪取の意思を生じた後に新たに反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫があったことが認められれば強盗罪に問われる可能性があります。

そして,強盗罪で用いられる暴行・脅迫の相手方は必ずしも財物の所有者に限られません。
例えば,過去の判例の中には,留守番をしていた10歳の子供に対して暴行・脅迫を加えて財物を奪取したときであっても強盗罪が成立するとされた事例があります(最判昭和22年11月26日刑集1巻1号28頁)。

強盗罪のいう強取とは,暴行・脅迫によって相手方の反抗を抑圧し,財物の占有を移転することを意味します。
ここでの占有とは,財物に対する事実上の支配状況のことで,他者の管理の及んでいる状態(例えば,鍵付きの金庫に保管してある状態やすぐ手の届く場所に置いてある状態にあるなど)があれば占有があると認められる場合が多いです。

また,相手方の反抗が抑圧されなかった場合について,財物を取得することができなかった場合は強盗未遂罪に問われる可能性があります。
暴行・脅迫を行ったものの被害者の反抗は抑圧されてはおらず任意に財物を差し出した場合について,学説上の争いはありますが,判例によれば強盗罪の既遂が認められるようです(最判昭和24年2月8日刑集3巻2号75頁)。

【Aさんのケースと強盗罪】

今回の場合,Aさんは刃体16センチメートルの包丁を突きつけて「金を出せ」と脅迫しています。
一般的に包丁を突き付けられた状態で「金を出せ」と脅迫された場合,お金を差し出さなければ包丁によって危害を加えられると考え,犯人に反抗することはできないでしょう。
よってAさんによる脅迫は行員の反抗を抑圧するに足りる程度のものであったと認められる可能性が高いです。
その脅迫の結果,行員は現金をAさんに差し出しており,Aさんは現金を強取しています。
以上より,起訴されればAさんは強盗罪の罪責を負うことになる可能性が非常に高いです。

【銃刀法違反】

銃刀法(正式名称:銃砲刀剣類所持等取締法)は第22条で「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない」と規定しています。
違反した場合は同法第31条の18第3号の定めにより2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。

ただし例外があって,刃体の長さが8センチメートル以下の刃物で携帯が認められるものとして、施行令第37条に以下のものが挙げられています。

・刃体の先端部が著しく鋭く、かつ、刃が鋭利なはさみ以外のはさみ
・折りたたみ式のナイフであって、刃体の幅が1.5センチメートルを、刃体の厚みが0.25センチメートルをそれぞれ超えず、かつ、開刃した刃体をさやに固定させる装置を有しないもの
・法第22条の内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが8センチメートル以下のくだものナイフであって、刃体の厚みが0.15センチメートルを超えず、かつ、刃体の先端部が丸みを帯びているもの
・法第22条の内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが7センチメートル以下の切出しであって、刃体の幅が2センチメートルを、刃体の厚みが0.2センチメートルをそれぞれ超えないもの

Aさんは刃体16センチメートルの包丁を強盗の手段とするために所持しており,銃刀法第22条に違反していることになります。

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