洗濯機の中に子どもを入れて監禁
洗濯機の中に子どもを入れて監禁
千葉県千葉市に住むV君(1歳)の父親のAは、V君を洗濯機の中に入れ、洗濯機を回してV君に怪我を負わせたとして千葉県警千葉東警察署に監禁致傷罪で逮捕されました。
洗濯機の中でぐったりしているV君を見つけたV君の母親がAに問い詰めたところ、Aが「洗濯機の中で遊んだ。」「おもしろいからやった。」などと言ったことから、母親が110番通報し、本件が発覚したようです。
Aは警察の取調べでは、「Vが勝手に洗濯機の中に入り込んだ。」「おれはやってない。」などと言って犯行を否認しているようです。
(フィクションです。)
~ 監禁罪とは ~
監禁罪は刑法220条に規定されています。
刑法220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
「監禁」とは、人が一定の区域内から脱出することが不可能又は著しく困難にすることをいいます。
そして、一応脱出の方法がないわけではないけれども、生命・身体の危険を冒すか、又は常軌を脱した非常手段を講じなければ脱出できないような場合であれば監禁に当たるとされています。
また、監禁罪の監禁は「不法」であることが必要です。
したがって、物理的には監禁に該当するとしても、必ず犯罪となるわけではありません。
「不法」かどうかは、社会通念に従って判断されます。
以前、子どものころ、父親に叱られ反省させる意味で押し入れなどに閉じ込められた、という経験をお持ちの方もおられると思います。
この行為も立派な「監禁」に当たりますが、しつけが「不法」ではなかったことから監禁罪は成立しませんでした。
しかし、社会通念は時代とともに変化していくものですから、以前は許されていたとしても今も許されるとは限りませんから注意が必要です。
~ケガや死亡させた場合は~
さらに、監禁によって人に怪我を負わせたり、死亡させた場合は監禁致死傷罪に問われます。
刑法221条
前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
「前条の罪を犯し」というのは、監禁罪が成立した場合、ということです。
「よって」とは監禁行為と人の負傷、死亡との間に因果関係が必要であることを意味しています。
「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」とは、負傷の場合は傷害罪(刑法204条)、死亡の場合は傷害致死罪(刑法205条)と比較して、上限も下限も重い方を採用する、という意味です。
刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
まず、負傷の場合ですが、刑法9条により、罰金刑は懲役刑よりも軽い罪とされますから、負傷の場合の下限は3か月以上の懲役です。
そして、監禁罪の7年以下の懲役と傷害罪の15年以下の懲役を比べた場合、15年以下の懲役の方が重いことは明らかです。よって、監禁致傷罪の法定刑は
3か月以上15年以下の懲役
です。
次に、死亡の場合ですが、監禁罪の7年以下の懲役(下限は1か月)と、傷害致死罪の3年以上の有期懲役(上限は20年)を比べると、上限も下限も傷害致死罪の方が重いです。
したがって監禁致死罪の法定刑は、傷害致死罪と同様、
3年以上20年以下の懲役
となります。
~ 余罪にも注意 ~
本件のような事案は児童虐待が疑われる事案です。
児童の身体などから日常的な児童虐待が疑われる場合は、傷害罪などでも立件されるおそれがあります。
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