裁判員裁判と公判前整理手続

2021-01-31

裁判員裁判と公判前整理手続

裁判員裁判公判前整理手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

〜事例〜

東京都府中市に住むAさんは、傷害致死事件を起こして警視庁府中警察署に逮捕されました。
そのまま捜査を受けていたAさんですが、どうやら傷害致死罪で起訴されそうだということを耳にしました。
Aさんの家族は、傷害致死事件は起訴されれば裁判員裁判になるという話を聞き、「裁判員裁判は特殊だと聞いたがどういった部分が特殊なのか。Aさんはどうなるのか」と心配に思い、刑事事件に強い弁護士に相談してみることにしました。
弁護士への相談によって、Aさんの家族は、裁判員裁判には公判前整理手続という手続きがあることを知りました。
(※この事例はフィクションです。)

・裁判員裁判と公判前整理手続

死刑又は無期の懲役・禁錮が刑罰に含まれている犯罪(裁判員法第2条第1項第1号)、又は裁判を合議体で行う犯罪であって、故意の犯罪行為で被害者を死亡させた犯罪(裁判員法第2条第1項第2号)は裁判員裁判の対象となります。
今回のAさんが問われることになる傷害致死罪の刑罰は「3年以上の有期懲役」(刑法第205条)とされているため、死刑や無期の懲役・禁錮は刑罰に含まれていません。
しかし、傷害致死罪は傷害罪に当たる犯罪行為=傷害行為によって被害者を死なせてしまう犯罪ですから、先ほど挙げた後者の条件(裁判員法第2条第1項第2号)に当てはまり、裁判員裁判対象事件となるのです。

裁判員裁判は、通常の刑事裁判と異なり、法律知識のない一般の方が裁判員として参加し、被告人の有罪・無罪や刑罰の重さを決定します。
そのため、裁判員裁判では裁判員の負担を軽減するため、通常の刑事裁判とは違う手続きや日程が取られます。
その1つが、公判前整理手続という手続きが必ず取られるという点です。

公判前整理手続とは、裁判(公判)の前に予定されている主張や証拠を整理して争点を絞り込んでおく手続きのことを指します。
公判前整理手続は、裁判員裁判の導入を見据えて2005年に刑事訴訟法の改正によって導入された手続きです。
裁判員裁判では、先ほど触れたように法律や刑事裁判の専門家ではない裁判員が参加します。
ですから、公判前整理手続によって裁判員が裁判に参加する前に争点を絞り込んでおくことで、専門知識のない裁判員にとっても裁判で何が争われているのか分かりやすくする必要があるのです。

裁判員法第49条
裁判所は、対象事件については、第一回の公判期日前に、これを公判前整理手続に付さなければならない。

なお、この公判前整理手続は、通常の刑事裁判であれば「することができる」手続きであり、必ずしもしなくてよいものです。

刑事訴訟法第316条の2第1項
裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。

裁判員裁判以外の刑事裁判で公判前整理手続が取られる例としては、証拠や共犯者の多い刑事事件や、被告人が容疑を否認しているいわゆる否認事件などが多いです。

・公判前整理手続も重要

公判前整理手続は、あくまで裁判の前の準備段階といえます。
被告人は公判前整理手続に参加しなくてもよいとされていますし、裁判員も公判前整理手続には参加しません。
また、公判前整理手続は裁判(公判)とは異なり、非公開でもよいとされており、多くの場合が非公開で行われます。

こうしたことから、「裁判本番ではないのだから気にしなくてもよいのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、公判前整理手続後には基本的には新しい証拠を出すことができない等、公判前整理手続を蔑ろにしてしまうと、その後の裁判で十分に被告人の主張を主張し切れないということが起こりかねません。
裁判本番でないからと軽く考えず、公判前整理手続の段階から主張や証拠をよく検討・準備しておかなければならないのです。
だからこそ、裁判員裁判では刑事事件に詳しい弁護士のサポートを受け、各種手続きに柔軟かつ迅速に対応してもらうことが必要なのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、裁判員裁判対象事件のご依頼も受け付けています。
刑事事件専門だからこそ、裁判員裁判の複雑な手続きの中でもご依頼者様の不安・負担の軽減のために弁護士がフルサポートいたします。
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