空き巣が強盗事件に?

2021-01-24

空き巣が強盗事件に?

空き巣から強盗事件に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

〜事例〜

Aさんは、東京都台東区に住むVさんが、自宅の金庫に大金を保管しているとの噂を聞きつけ、Vさんの外出している間にVさん宅に空き巣に入ることを計画しました。
Aさんは、計画通りにVさんの不在時にVさん宅に忍び込み、金庫に入っていたお金を用意していたバッグに詰め込みました。
しかし、AさんがVさん宅から立ち去ろうとしたところ、Vさんが帰宅。
Vさんと鉢合わせたAさんは、近くにあった花瓶でVさんを殴りつけると逃走しました。
その後、通報を受けた警視庁浅草警察署が捜査を開始し、Aさんは事後強盗罪の容疑で逮捕されるにいたりました。
Aさんは、空き巣に入って逃げただけなのに強盗事件の犯人として逮捕されたことに驚き、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に、自分に容疑のかかっている犯罪について詳しく聞くことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・空き巣のつもりだったのに強盗事件に?

今回の事例のAさんは、空き巣に入ったはずだったにもかかわらず、逮捕された際にかけられていた容疑は事後強盗罪という強盗罪の一種でした。
最初に想定していた空き巣よりもずいぶん重い犯罪が成立してしまったようですが、このようなことが起こってしまうのでしょうか。

事後強盗罪とは、刑法に以下のように規定されている犯罪です。

刑法第238条(事後強盗罪)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

「強盗として論ずる」ということは、すなわち、強盗罪に当てはまるとして考えるということです。
強盗罪は刑法第236条第1項に定められていますが、この条件に当てはまっていなくとも、刑法第238条の条件に当てはまっていれば、強盗罪と同様「5年以上の有期懲役」という刑罰を科されることになるのです。

刑法第236条第1項(強盗罪)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

では、事後強盗罪になる条件とはどのようなものか、以下で確認していきましょう。
事後強盗罪は「窃盗が」という言葉で始まっていますが、これは「窃盗犯が」ということです。
窃盗罪を犯した人や窃盗未遂罪を犯した人が事後強盗罪成立の対象となるということです。

そして、「財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫」するとは、盗んだものを取り返されることや捕まること、証拠隠滅のために誰かを暴行・脅迫することを指します。
この時、暴行・脅迫の相手は盗まれたものの持ち主でなくても構いません。
例えば、窃盗行為を目撃して捕まえようとした持ち主以外の第三者に暴行・脅迫したような場合でも、事後強盗罪は成立します。
さらに、この暴行・脅迫は強盗罪同様、相手の反抗を抑圧する程度のものである必要があるとされています。

これらを今回のAさんの事例に当てはめてみましょう。
Aさんは、Vさん宅空き巣に入り、金庫にあったお金を自分のバッグに詰めていることから、Aさんは窃盗罪を犯した人=事後強盗罪にいう「窃盗」であると言えるでしょう。
そして、AさんはVさんに空き巣の犯行を目撃され、逃げるため=「財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ」るためにVさんを花瓶で殴りつける=「暴行」をしています。
このことから、Aさんには事後強盗罪が成立すると考えられるのです。

なお、もしもVさんが花瓶で殴られた際に怪我をしていたような場合には、事後強盗罪の犯人であるAさんが(=「強盗が」)、事後強盗の犯行の際にVさんに怪我をさせた(=「人を負傷させ」)ことになるため、強盗致傷罪が成立することになると考えられます。

刑法第240条(強盗致死傷罪)
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

強盗致傷罪となった場合起訴されれば裁判員裁判となることから、たとえ空き巣のつもりであっても事件の詳細な事情次第では裁判員裁判にまで発展するということに注意しながら対応していく必要があります。
逮捕されてからの捜査の進み具合によっては、起訴されるときに罪名が変更される可能性もあるため、逮捕されてから早めに弁護士のサポートを受け、こうした事態にも対応できるように柔軟に弁護活動してもらうことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、空き巣から強盗事件に発展してしまったとお困りの方のご相談・ご依頼も受け付けています。
刑事事件では、時に想定外の犯罪が成立するケースもあります。
専門家の弁護士のフルサポートを受けながら、不安を軽減しつつ対応に臨みましょう。
ご相談については、0120ー631ー881でご予約可能ですから、まずはお気軽にお電話ください。