脅迫罪と強要罪

2019-06-06

脅迫罪と強要罪

神奈川県横須賀市に住むAさんは,スマートフォンを使って,ゲーム仲間Vさんに「最終通告です。大勢を敵に回しており,攻撃される準備が行われている,逃げたまえ」などというメールを送信し,Vさんに引っ越しを余儀なくさせたという強要罪の容疑で,神奈川県田浦警察署から呼び出しを受けています。
Aさんは,脅迫罪強要罪の違いや今後の対応などに暴力事件を含む刑事事件専門弁護士無料相談を申込みました。
(実際に存在した事例を基に作成しています)

~ はじめに ~

上の事例をみて脅迫罪強要罪?と判断に迷われた方おられるのではないでしょうか?
そこで,まずは,脅迫罪強要罪の内容について解説したいと思います。

~ 脅迫罪 ~

脅迫罪は刑法222条に規定されています。

1項 生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も,前項と同様とする。

= 害を加える旨の告知(害悪の告知) =
害悪の告知は,一般に人を畏怖させるに足りる程度のものでなければならないとされています。
人を畏怖させるに足りるものであったか否かは,告知に至るまでの経緯,告知した人(年齢,性別など),告知内容,告知された相手(年齢,性別など)などの状況から判断されます。
したがって,同じ内容でも人,相手などによっては「害悪の告知」と認められることもあれば,認められないこともあります。
過去の判例(昭和35年3月18日)では,「出火御見舞申上げます,火の用心に御注意」が害悪の告知と認定されましたが,これは暴力団組員から同じ暴力組員への脅迫行為に関する事例判断です。

* 「夜道を歩くときは気をつけろよ」 *
例えば,企業のSNSアカウントに「(企業をを運営する)社長さん,夜道を歩くときは気を付けろよ」等書き込みをしたらどうでしょうか。
あくまで企業のSNSアカウントに対しての行為なので,社長に対して「告知した」とは言いづらそうですが,例えば,この文言を社長自身のSNSアカウントに投稿したら脅迫罪となる可能性は高いでしょう。
SNSでの軽率な発言であっても,脅迫罪に当たり得ることは肝に銘じておいた方がよさそうです。

~ 強要罪 ~

強要罪は刑法223条に規定されています。

1項 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,3年以下の懲役に処する。

強要罪でも「害悪の告知」が必要とされています。
ただし,強要罪は,結果として相手方に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害したことが必要ですから,強要罪の「害悪の告知」はその程度のものであることが必要とされています。

~ 脅迫罪と強要罪の違い ~

脅迫罪強要罪は大きく,以下の違いがあります。

= 犯罪の性質,要件の違い =
以上からもお分かりいただけますように,脅迫罪は「害悪の告知」をしただけで成立する罪,強要罪は「害悪の告知」+「人に義務のないことを行わせること」あるいは「権利の行使を妨害したこと」が必要です。
また,脅迫罪の「害悪の告知」は,それによって相手方が畏怖したかどうかは問わないとされているのに対し,強要罪の「害悪の告知」は,結果として相手方に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害するに足りる程度のものである必要があります。

= 法定刑の違い =
脅迫罪2年以下の懲役又は30万円以下の罰金で,強要罪3年以下の懲役です。
両者を比べてみるとよく分かりますが,強要罪には罰金刑がありません。
つまり,強要罪で起訴されると必ず正式裁判を受ける必要が出てきます。
裁判所は,土日は開廷してくれませんから,会社員の方であれば休暇を取る必要があります。
また,慣れない法廷という場は極度に緊張するものです。
判決が出るまでは「刑務所に行かなければならないだろうか」などと不安が続きます。
対して,脅迫罪は選択刑として罰金刑がありますから,そのような不安や緊張に悩まされなくて済む場合もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,脅迫罪強要罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
強要罪については特に,検察官が起訴する前に被害者と示談を成立させ,不起訴処分獲得を目指すことが重要です。
お困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881で,無料相談,初回接見サービスをお申し付けください。