神戸市長田区の恐喝事件

2019-05-12

神戸市長田区の恐喝事件

~ケース~
神戸市長田区在住のAさんは,Vさんとともに合同会社Xを設立した。
しばらくしてAさんとVさんは不仲になり,Aさんは合同会社Xを退職することになった。
その際,Aさんは退職金として100万円受け取ることになり,内金として50万円を受取った。
その後,Vさんが残りの50万円を払わなかったため,Aさんは友人であるBおよびCとVさんの下へ赴いた。
その場でAさんらはVさんに対し「要求に応じないと五体満足でいられなくなるかもしれんぞ」「こんなことまでさせられてる俺たちの顔を立ててもらおうか」などと言いVさんを畏怖させて,退職金の残金50万円をAさんに交付させた。
Vさんは兵庫県長田警察署に被害届を出し,Aさんは恐喝罪の疑いで逮捕された。
(判例をもとにしたフィクションです)

~脅迫と恐喝~

刑法において,相手方を畏怖させる行為を脅迫罪として規定しています。
相手方を畏怖させた上で,権利の行使を妨害し,義務なきことを強制した場合には強要罪が,金銭その他の財物を交付させた場合には恐喝罪が成立し,条文は以下のとおりです。

刑法第222条(脅迫罪)
生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

刑法第223条(強要罪)
生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,3年以下の懲役に処する。

刑法第249条(恐喝罪)
人を恐喝して財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。

法定刑についてみると,脅迫罪には罰金刑が定められていますが,強要罪や恐喝罪の場合には罰金刑が定められていません。
そのため,強要罪や恐喝罪で起訴されてしまうと正式な刑事裁判を受けることになります。

今回のケースでは,AさんがVさんから受け取った50万円は退職金としてAさんが受け取る権利を有する金銭になります。
すなわち,AさんはVさんに50万円の支払いを要求する正当な権利を有していたのですが,Vさんを脅すことによって権利の行使をした場合にも恐喝罪となってしまうのでしょうか。
これについて裁判所は,他人に対して権利を有する者が,その権利を実行することは,その権利の範囲内でありかつその方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を超えない限り,何ら違法の問題を生じないけれども,その範囲程度逸脱するときは違法となり,恐喝罪が成立することがあるとしています(最三小判昭和27・5・20)。

今回のケースでは,Aさんらは「五体満足でいられなくなるかもしれんぞ」等と告知しており,もし要求に応じない場合はVさんに危害を加えるような態度を示しており,Vさんもそれによって畏怖したといえてしまいますので,権利行使の手段として社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を逸脱しているとされる可能性が非常に高くなります。

~恐喝罪と起訴~

恐喝罪として起訴されてしまうと罰金刑がありませんので正式な刑事裁判を受けることになります。
ケースのもととなった事件では,3万円の債権に対し6万円を交付させたという事件で,恐喝罪となるのは本来受け取ることができた金額を超えた部分だけであると争っていましたので正式裁判になりました。
裁判の結果として,本来受け取ることが出来る金額を超えた部分だけでなく,交付させた金額全体に恐喝罪が成立すると判示されました。

司法統計によると,2017年検察庁で扱われた恐喝事件の内起訴されたのは31.7%です。
初犯であったり,被害金額が大きくない,被害者との示談が成立しているといった場合には不起訴となる可能性は高いでしょう。
また,起訴されてしまっても初犯であれば被害金額や犯行態様にもよりますが執行猶予付きの判決となることが多いようです。

今回のケースではAさんはVさんから本来貰える金額しか交付を受けていませんので,恐喝してしまった行為について謝罪などをしVさんから許してもらうことによって不起訴となる可能性もあります。
しかし,脅迫や恐喝などの場合,被害者の方は恐怖心から加害者と会ってくれるということは少ないと思われます。
そういった場合には,弁護士が間に入ることで被害者の方と話し合いができ,謝罪や示談などを円滑に進めることが可能になります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
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兵庫県長田警察署までの初回接見費用:35,200円