【虐待】傷害罪の幇助で逮捕・無罪主張

2019-05-17

【虐待】傷害罪の幇助で逮捕・無罪主張

京都市左京区に住んでいるAは、夫Bが自らの子であるV(8歳)に対し、虐待行為をし怪我を負わせていたにも関わらず、これを止めることもせず黙認し続けていた。
近所の人からの通報により、虐待行為が発覚し、京都府下鴨警察署の警察官は、AをVに対する傷害罪の容疑で逮捕した。
これに対し、Aは一貫として犯行を否認している。
Aの家族は、暴力事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~虐待事例と共犯~

本件では、BがVに対して傷害行為をしたことは明らかですが、A自体は何もしていません。
刑法が原則として(明文のない限り)作為による犯罪行為のみを処罰していることからすると、Aは何ら刑事責任を負うことはないとも思えます。
刑法204条に規定されている傷害罪も、「人の身体を傷害した者」は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と、「人の身体を傷害」するという積極的な行為の処罰を前提とした規定となっています。

まず、犯罪を直接的に実行していない者が第1次的な刑事責任を負う場合として(共謀)共同正犯(刑法60条)があります。
もっとも、これが成立するには、共犯者間での共謀のほか、自己の犯罪として何らかの積極的な役割を果たしたことが求められるため、本件のようなケースでは(共謀)共同正犯の責任まで負わせることは難しいと考えられます。

仮に共同正犯としての責任を問うことは難しいとしても、幇助犯(62条1項)として犯罪の成立が考えられます。
幇助犯とは、正犯の犯罪の実行を容易する者をいいます。
これは、不作為による場合でも成立すると考えられており、具体的には本件のように夫(や妻)が子に対する虐待をしている場合に、妻(や夫)がこれを止めない場合に犯罪阻止義務違反として問題になることになります。
すなわち、犯罪を阻止しないことが、正犯の犯罪を容易にしているという点で不作為による幇助行為として刑事責任の対象になってくるのです。
したがって、本件では、AにBの子Vに対する傷害行為(虐待)を阻止する義務があったのか等が争点になってくると考えられます。

~家族内の虐待事件と刑事弁護活動~

まず、弁護士としては、Aのような何ら作為を行っていない者に刑事責任を負わせていいのか、本人の言い分も含めしっかりと検討する必要があるでしょう。
特に虐待事件では、家庭内環境など様々な要因を調査・分析する必要があります。
例えば、虐待事件においては、Aが恒常的にBから暴力(ドメスティック・バイオレンス等)を受けていた等、犯罪被害者である側面を有することも多く、本当に虐待を止めることができたのか具体的な検証が必要になります。
したがって、弁護士としては、Aに幇助犯を含め刑罰を伴う刑事責任を負うべき事案なのかを慎重に判断し、場合によっては無罪主張をしていくことも考えられるでしょう。

こういった虐待事件が報道などで耳目を集めると、どうして子どもを守れなかったのかという批判が世間からなされることも少なくありません。
しかし、そういった感情的批判と、当該行為が刑罰によって処罰されるべきものであるかは、全く別物であるというべきであり、被疑者の言い分に真剣に耳を傾けるのが弁護士としての重要な職務となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、虐待による傷害事件を含む暴力事件に強い刑事事件専門の法律事務所です。
正犯事件のみならず、(従属的な)共犯事件についても経験が豊富な弁護士刑事事件についての弁護活動をうけたまわります。
無罪主張を含め、不起訴や無罪獲得といった被疑者のための弁護活動を行ってまいります。
傷害事件虐待)で逮捕された方のご家族は、24時間365日対応のフリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐお問い合わせください。
京都府下鴨警察署までの初回接見費用:35,000円)