騒音による傷害事件(大阪市此花区)

2019-05-07

騒音による傷害事件(大阪市此花区)

~ケース~
大阪市此花区在住のAさんは,以前よりから確執のあったマンションの隣室のVさんに向けて嫌がらせのためにラジオの音声や目覚まし時計のアラームなどの騒音を大音量で鳴らし続けた。
Aさんは約半年間,Vさんに向かって早朝から深夜までラジオ音声やアラームを鳴らし続けた。
Vさんはその騒音による精神的ストレスで慢性的な頭痛を訴えるようになった。
Vさんが大阪府此花警察署に相談したところ,被害届を提出することとなり,Aさんは傷害罪の疑いで大阪府此花警察署に逮捕された。
(実際にあった事件をもとにしたフィクションです)

~「傷害」の意義~

傷害罪は刑法204条に「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
「人の身体を傷害」するとは人の身体の生理機能を害することを言います。
いわゆる通常の外傷を負わせた場合に限られず,病気をうつした場合や,人を失神させた場合なども「傷害」に含まれます。

「傷害」は通常,暴行,すなわち有形力の行使によって行われます。
しかし,有形力の行使がなくても,無形的な手段によって成立する傷害罪も考えられます。
たとえば,被害者に栄養剤だと騙して下剤を飲ませて下痢を起こさせる,脅迫して精神病に追い込む場合などがこうした傷害罪のケースとなるでしょう。
判例は,嫌がらせの電話で精神に異常をきたした場合にも傷害罪を認めています(東京地判昭和54・8・10)。
無言電話によってPTSDを生じさせた場合も傷害罪となるとされています(福岡高判平12・5・9)。
また,落とし穴に被害者を誘導し自ら落下させたという場合も傷害罪が成立すると考えられます。
今回のケースのように大音量のラジオなどの騒音で慢性頭痛症等に陥らせた場合に傷害罪となるのは上記のような判例を考えると当然だと思われます。

ここで,刑法は故意処罰が原則となっていますので,傷害罪が成立するには傷害発生に関する認識が必要です。
今回のケースでは,早朝から深夜まで大音量の騒音を流すという嫌がらせをしています。
その為,AとしてはこれによってVの身体になんらかの生理的障害が発生してもよいと考えているといえそうです。
このような場合には,未必的な故意があるとされ罰せられます。

~弁護活動~

今回のケースのもととなった事例はニュースでも大きく取り上げられました。
もととなった騒音による傷害事件の事例では「音楽を大音量で鳴らし続ける行為は、被害者に精神的ストレスを与え、身体の生理的機能を害するもので傷害罪にあたる」「傷害の確定的な故意があり犯行は陰湿。」と認定され,最終的に懲役1年8月の実刑判決が下されました。
ただし,もととなった事例では加害者は罪を認めず,被害者に対する謝罪などを一切しておらず「執拗かつ陰湿。反省の態度が感じられず、再犯の可能性も強い」と認定された結果,実刑判決となったと思われます。

傷害罪の場合,傷害の程度や前科などにもよりますが被害者の方へ謝罪をする,治療費や慰謝料を支払うなど,示談を成立させれば実刑判決とならない可能性が高くなります。
ただし,傷害事件をはじめとする刑事事件では,示談交渉をしようとしても被害者の方は直接加害者と会ってくれないという場合も多いです。
そのような場合,弁護士であれば,警察や検察から被害者の情報を教えて頂くことによって被害者の方と示談交渉ができる場合もあります。
示談交渉をすることによって,事案によっては不起訴処分の獲得や略式罰金によって正式裁判を回避することに繋がることも考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
騒音などの嫌がらせ行為によって傷害罪に問われてしまいお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約を24時間受け付けております。
大阪府此花警察署までの初回接見費用:35,300円)