福岡市東区の放火事件

2019-03-03

福岡市東区の放火事件

~ケース~
Aは、福岡市東区のマンションにおいて放火事件を起こそうと思い、マンション内のエレベーター内に火のついた新聞紙を投げ入れた。
エレベーターに火のついた新聞紙が投げ入れられた当時、エレベーターの中には人はいなかった。
Aが放火しようとしたマンションのエレベーター内の壁は、火災防止のために不燃性の素材が用いられていたことから、壁が一部炭化したにすぎず、火は自然に鎮火した。
捜査が行われた結果、Aは、福岡県東警察署に逮捕されることになった。
(この事例はフィクションです)

上記の事例において、Aはマンションのエレベーターを放火しようとして、火のついた新聞紙をエレベーターに投げ入れています。
今回は、この行為についてどのような犯罪が成立するのかが問題となります。

放火行為について定めた犯罪は刑法上大きく分けて4種類あり、現住建造物放火罪非現住建造物放火罪建造物等以外放火罪失火罪があります。

上記の類型のうち、現住建造物放火罪の法定刑が最も重く、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役という極めて重い刑に処せられるおそれがあります。
非現住建造物放火罪建造物等以外放火罪については、放火の目的物が自己所有物なのか他人所有物なのかによって、その成立要件及び法定刑が大きく異なります。
失火罪については、他の類型と比べ罰金刑のみが定められており、過失によって物を燃やしてしまった場合に成立する犯罪であるため、意図的に(故意に)放火行為を行ったAに失火罪は成立しません。

本件では、Aはエレベーターを放火しようとしたにすぎないことから、「建造物」を焼損したとはいえないとも思えます。
もっとも、建造物の一体性については、判例上、毀損しなければ取り外すことが出来ない状態かどうかによって判断されます。
マンション内のエレベーターについては、解体等行った上で取り外すことが通常困難であり、マンションの各居室部分とともに、一体として住宅として機能するものといえます。
そのため、エレベーターについてはマンションの一部として「建造物」にあたると考えられ、Aに成立する犯罪は、現住建造物放火罪または非現住建造物放火罪のどちらかになります。

現住建造物放火罪が成立するためには、「現に人が住居に使用し」ているという現住性の要件が必要となります。
本件では、エレベーターがマンションと物理的に接続しており、常時マンション住人による使用が予定されていることから、マンションと一体として現住性が認められます。
そのため、Aには現住建造物放火罪が成立するとも思えます。

もっとも、放火罪における「焼損した」とは、火が媒介物(新聞紙やライターなど)を離れ、独立して燃焼を継続するに至ったといえる状態のことをいいます。
そのため、上記事例のように不燃性の壁が一部炭化したにすぎない場合については、Aの放った火が独立して燃焼を継続するに至ったとはいえません。
このような不燃性または難燃性の物についても放火罪の成立を認めるべきという見解も有力ですが、現在の裁判例においては、客体の燃焼がない以上、「焼損」には当たらないと考えられています。
したがって、Aの行為は建造物を「焼損した」とはいえません。
しかし、現住建造物放火罪及び他人所有非現住建造物放火罪には未遂罪についても処罰する規定があり、Aは放火行為を行ったが、焼損という結果を遂げなかったものとして、Aには現住建造物放火未遂罪が成立することになります。

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