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【報道解説】刃物切りつけ傷害事件で逮捕

2023-03-12

【報道解説】刃物切りつけ傷害事件で逮捕

横浜市保土ケ谷区で生じた傷害罪銃刀法違反刑事事件を例に、その刑事責任と刑事手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

横浜市保土ケ谷区のJR保土ケ谷駅近くの路上で、令和5年2月1日午後8時ごろ、被害者男性(28歳)がすれ違いざまに、加害者に刃物のようなもので太ももを切りつけられ、全治1カ月の怪我を負った。
神奈川県警は、令和5年2月4日に、男性(62歳、会社員)を傷害容疑で逮捕した、と発表した。
男性は「刃物で切りつけることもしていないのでわかりません」と容疑を否認しているという。
埼玉県川口市でも、1日午後6時半ごろ、すれ違いざまに何者かに太ももを切りつけられる傷害事件が2件あり、神奈川県警と埼玉県警が関連を調べている。
(令和5年2月4日に配信された「朝日新聞デジタル」より抜粋)

【傷害罪と銃刀法違反の違い】

他人に物理的な力を加えて、怪我をさせた場合には、「傷害罪」に当たるとして、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という法定刑の範囲で、刑事処罰を受けます。

・刑法 204条
「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」

他方で、正当な理由なしに、刃物を持って外を出歩き、他人に刃物を向けたような場合には、「銃刀法違反」に当たるとして、「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」という法定刑の範囲で、刑事処罰を受ける可能性が考えられます。

銃刀法 22条
「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。」

銃刀法では、刃の長さが6cmを超える包丁や、8cmを超えるナイフなどが、取締りの対象とされており、その長さ以下の刃物を、正当な理由なしに持ち歩いた場合には、「軽犯罪法違反」に当たるとして処罰される可能性があります。

【傷害事件で逮捕された場合の刑事弁護活動】

傷害事件逮捕された場合に、容疑者が事件をやっていないと否認しているケースと、事件を起こしたことを認めているケースでは、弁護対応の方針が異なります。

傷害の否認事件の場合には、捜査機関による厳しい取調べ尋問が行われることが予想されるため、弁護士と「やっていない否認主張」につき、綿密に打ち合わせをして、事件当時の状況や容疑者のアリバイなどを、明確に根拠立てて供述していく必要があります。

他方で、傷害の認め事件の場合には、警察取調べの供述方針を弁護士と検討するととともに、被害者に対する謝罪や慰謝料支払いによる示談交渉を行い、被害者側からの許しを得ることが、刑事処罰の軽減のために重要となります。
被害者側とコンタクトを取り、示談交渉を進めていくためには、刑事事件に強い弁護士に依頼して、被害者との間を弁護士が仲介する形を取ることが必要となります。

傷害否認事件でも認め事件であっても、まずは、傷害事件が発生してから、できるだけ早期の段階で、刑事事件に強い弁護士に法律相談することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕当日に、逮捕されている留置場に弁護士を派遣する、弁護士初回接見サービスのご依頼も承っております。

横浜市保土ケ谷区傷害事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。

【報道解説】酒に酔ってタクシー運転手を殴り、料金を踏み倒して逮捕

2023-02-18

【報道解説】酒に酔ってタクシー運転手を殴り、料金を踏み倒して逮捕

酒に酔った状態でタクシー運転手を殴って料金を踏み倒したとして強盗罪の疑いで警察に逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

埼玉県警川越署は7日、タクシー運転手暴行を加え、乗車料金を支払わなかったとして、強盗容疑で、富士見市鶴馬、自称会社員の男(22)を逮捕した。
逮捕容疑は、6日午後8時35分ごろから同40分までの間、川越市岸町3丁目の路上に停車した八潮市のタクシー運転手男性(65)のタクシー脇で、男性の足をけるなどの暴行を加え、乗車料金約1万8千円を支払わなかった疑い。」

(令和5年1月8日に埼玉新聞で配信された報道より一部抜粋して引用)

【利益強盗罪(2項強盗)とは?】

強盗罪」と聞くと、被害者の方を殴った上で金目の物を奪い去るという行為をイメージするかと思いますが、今回取り上げた報道では逮捕された男性はタクシー運転手から売上金を奪い去った訳ではありません。
今回取り上げた報道の男性は、支払うべきタクシーの乗車料金の支払いを免れた疑いがあるとのことですが、実際に金目の物を奪い去らなくとも強盗罪が成立する場合があります。
このような場合に成立する強盗罪を、利益強盗罪または2項強盗罪と表現することがあります。
なぜ、2項強盗罪と表現するかというと、この場合に刑法236条2項に規定する強盗罪が成立することになるからです。

刑法236条には1項と2項の2つの規定があります。
刑法236条1項では、
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する」
と規定しています。
刑法236条2項では、
「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」
と規定しています。
刑法236条2項は、要するに、暴行又は脅迫を用いて財産上の利益を自身が得た場合や、他人に財産上不法な利益を得させた場合も強盗罪が成立するとして、5年以上の有期懲役に処するということが記載されています。
なお、条文上「財産上不法の利益」という言葉となっていますが、これは「財産上の利益」が「不法」なものであるということではないと考えられています。

今回取り上げた報道のようにタクシーの運転料金の支払いを免れたというケースでは、犯人の懐に何かプラスの利益が入ってきた訳ではありませんが、支払う義務がある運転料金の支払いを免れたということで懐から出ていくはずのお金が出ていかなかったという意味で「財産上の利益」を得たということができます。
そのため、被害者の反抗を抑圧するような「暴行」を加えたことでタクシー運転代金の支払い債務を免れるという「財産上の利益」を得た場合には、2項強盗罪が成立することになるでしょう。

【ご家族が強盗罪の疑いで逮捕されてお困りの方は】

強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役刑となっていますから、比較的重い犯罪であるといえます。
ただ、弁護士がいち早く被害者の方と示談を締結することができれば、不起訴になる、すなわち前科が付かずに強盗事件を解決することも可能な場合があります。
そのため、ご家族が強盗罪の疑いで警察に逮捕されたということを知ったら、真っ先に弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族が強盗罪の疑いで逮捕されてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】携帯電話を奪って器物損壊罪で逮捕

2023-01-27

【報道解説】携帯電話を奪って器物損壊罪で逮捕

警察に通報されることを避けるために相手の携帯電話を奪い去ったとして器物損壊罪逮捕されたケースに刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「警察によると、A容疑者は予約していたタクシーが乗り場にいなかったため、受付カウンターで運転手の男性と口論になり、運転手が警察に通報しようとしたところ、スマートフォンを奪ってそのまま立ち去ったということです。」

(令和4年12月20日に関西テレビで配信され報道より一部抜粋して引用)

【相手の携帯電話を奪い去ったのに窃盗罪ではないのか?】

今回取り上げた報道のAさんは器物損壊罪の疑いで逮捕されています。
Aさんはタクシー運転手の方の携帯電話を奪い去っていますが、このように相手の物を勝手に奪い去るというのは窃盗罪が成立するのではないかと思う方がいらっしゃるかもしれません。

窃盗罪は刑法235条に規定されている犯罪で、仮に窃盗罪起訴されて有罪となると、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
このような窃盗罪が成立するためには、相手の物を奪った際の犯人の心の中に「権利者を排除して他人の物を自己の所有物とし、その経済的用法に従って使用し処分する意思」という意思が存在する必要があります。
この意思のことを不法領得の意思といいます。

盗んだ物を転売して利益を得ようとするために相手の物を勝手に持ち去った場合には、不法領得の意思が認められることになりますが、今回のAさんは、奪い去った携帯電話をそのまま使用する目的であったり、転売しようとする目的があった訳ではありません。
Aさんは、あくまで、タクシー運転手の方が警察に通報しないように電話をさせない目的で携帯電話を奪い去っていますので、このような目的は不法領得の意思があるとは言えない可能性が高いです。
そのため、Aさんには窃盗罪が成立する可能性が低いと言えるでしょう。

なお、記事中ではAさんが携帯電話を奪った旨の記載がありますので、強盗罪が成立するのではないかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、強盗罪の成立に当たっても不法領得の意思が要求されますので、不法領得の意思がない場合は強盗罪は成立しません。
また、そもそも強盗罪が成立するためには、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行脅迫を加えたことによって相手の物を奪い去る必要がありますが、このような暴行脅迫を加えたのでければ強盗罪は成立しません。

【相手の携帯電話を奪い去ったのに器物損壊罪?】

それでは、どうして携帯電話を壊した訳でもないのに器物損壊罪の疑いで逮捕されたのでしょうか。
器物損壊罪は刑法261条に規定されている犯罪で、「他人の物を損壊」した場合に成立する犯罪です。

器物損壊罪が成立する典型的なケースは相手の持ち物を物理的に破壊することですが、実は器物損壊罪の成立に当たって必要とされる「損壊」というのは、その物を本来の目的で使用することができない状態にすることを意味します。
そのため、相手の持ち物を物理的に破壊したときはもちろん、相手の持ち物を持ち去って持ち物を使用できなくさせる行為も「損壊」に当たることになります。

連絡手段である携帯電話を奪い去る行為は、携帯電話の本来的な用法である連絡手段としての使い方を害しているといえるでしょうから、Aさんには器物損壊罪が成立する可能性が高いと言えるでしょう。
器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料となっています。

【器物損壊の場合の刑事弁護活動】

器物損壊罪は刑法264条によって親告罪という犯罪に当たりますので、器物損壊罪については、被害者の方の告訴がないと検察官は起訴することができません。
そのため、器物損壊罪の場合の刑事弁護活動としては、弁護士を通して被害者の方との示談をして被害者の方に告訴を取り下げてもらうことが非常に重要になるでしょう。

示談締結によって告訴を取り下げてもらうことができれば、検察官は器物損壊罪について起訴をすることができませんから、器物損壊罪について前科が付くことはありません。
このような示談交渉は、刑事事件弁護活動の経験が豊富な弁護士に依頼されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
器物損壊の疑いで警察の捜査を受けてお困りの方、被害者の方との示談をお考えの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】中学校内の暴力で少年が暴行罪で逮捕

2023-01-16

【報道解説】中学校内の暴力で少年が暴行罪で逮捕

中学校で同学年の生徒を抱きかかえて3階の窓から体を外に出したとして、暴行罪の疑いで14歳の中学生逮捕された刑事事件少年事件の報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「広島県福山市の中学校で、同学年の生徒を抱きかかえたまま、体を校舎3階の窓から外に出す暴行を加えたとして、福山市内に住む14歳の少年が逮捕されました。
警察によりますと男子中学生は10月20日の午前11時50分ごろ、福山市にある中学校で、校舎3階にあるトイレの窓から、同級生の男子中学生(13)を仰向けに抱きかかえたまま、体を外に出す暴行を加えた疑いが持たれています。
窓は地上からの高さがおよそ8メートルでした。
被害を受けた生徒の保護者から相談を受けた警察が、学校や目撃した別の生徒の話を聞くなどして、男子中学生逮捕しました。
調べに対し男子中学生は『窓の外に出したりしていない』と話しているということです。」

(令和4年11月29日にRCC中国放送より配信された報道より引用)

【中学生が暴行罪で逮捕?】

今回取り上げた報道では、学校内で起きた事件で14歳の男子中学生暴行の疑いで逮捕されています。
確かに、人を抱きかかえるという行為は人の身体に対する有形力の行使として刑法208条の暴行罪に当たる可能性がある行為ですが、単に生徒同士でふざけ合っていただけではないのかと思われた方がいるかと思います。

確かに、学校内で生徒同士がふざけ合っていただけなら警察が逮捕に踏み出す可能性は低いですが、今回の事件では人を抱きかかえただけではなく、抱きかかえて地上から8メートルにある3階の窓から身体を外に出した疑いがあるとのことです。
仮に地上8メートルの3階から人が落ちた場合、落ちた人が死亡する可能性がありますので、本当に落とそうとしたのであれば、人を抱きかかえて窓から体を外に出す行為は殺人未遂に当たり得る行為になります。
殺人未遂となれば重大事件になります。

報道では、警察が14歳の男子中学生逮捕する前に学校や事件を目撃した生徒に話を聞いていたとのことですので、警察としてはこうした逮捕前の捜査によって単に中学生がふざけ合ったのではないと判断して、更なる事案の解明のために、まずは逮捕が確実に認められるであろう暴行罪で14歳の男子中学生逮捕したものと考えられます。

【14歳の中学生が逮捕されると今後どうなるのか?】

14歳の中学生が犯罪に当たる行為をしてしまうと少年事件として取り扱われることになります。
少年事件の場合は、通常の刑事事件のように検察官が事件を起訴するかどうかを決定するのではなく、全ての事件が家庭裁判所に送られることになり、家庭裁判所が刑罰の代わりに最終的な少年の処遇を決定することが原則となります。

このように少年事件の場合は通常の刑事事件とは異なる手続きとなりますが、事件が家庭裁判所に送致される前の捜査段階においては14歳の中学生の場合であっても基本的に通常の刑事事件と同じになりますので、逮捕された少年がすぐに帰宅することができない場合があります。

まず、14歳の中学生であっても、検察官は一定の条件のもとに逮捕後72時間以内に勾留請求をすることができます。
検察官の勾留請求が裁判官に認められると、少年の身柄は原則として10日間、延長すると最長20日間にわたって、警察署の留置施設などに拘束されることになります。

これに加えて少年事件の場合は、勾留の代わりに観護措置という手段(「勾留に代わる観護措置」といいます。)によって、逮捕後も少年の身柄が拘束されることがあります。
観護措置」とは、事件が家庭裁判所に送られた後に家庭裁判所が事件や少年について調査するために行うことをいい、①在宅で家庭裁判所調査官の観護に付すものと②少年を都道府県に設置されている少年鑑別所で拘束するものの2つがありますが、②の少年鑑別所少年の身柄を拘束するものが大多数です。

勾留に代わる観護措置」とは、文字通り、この観護措置勾留の代わりに行って、逮捕した少年の身柄を鑑別所で拘束することを言います。
勾留に代わる観護措置の期間は、検察官が勾留に代わる観護措置の請求を出した日から10日間で、勾留の場合と異なって延長することができません。

以上は、事件が家庭裁判所に送致される前の話ですが、事件が家庭裁判所に送致されてからも、さきほども登場した観護措置によって少年の身柄が鑑別所に拘束される場合があります。
この観護措置の期間は原則として2週間ですが、期間を継続する必要があれば1回に限り更新することができますので、4週間にわたって身柄が拘束されることになります。

また、例外として死刑、懲役又は禁錮に当たる事件で、犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実といった非行事実の認定に関して証人尋問・鑑定・検証を行うことを決定したものや、既に証人尋問・鑑定・検証を行ったたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合は、観護措置の期間を更に2回更新することができます。
そのため、例えば少年が自分はやっていないと事件を否認しているときなどは最大で8週間の観護措置が取られる場合があり得ます。

このように14歳の中学生のお子さんが逮捕されたという場合は、長期間にわたって身柄が拘束されるおそれがあります。
長期間身柄が拘束されるとお子さんの学校生活への影響が大きく、将来に不利益となる可能性もあり得ますので、中学生のお子さんが逮捕されたということを知った場合は、いち早く弁護士に依頼されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
お子さんが警察に暴行の疑いで逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】従業員を決闘させて決闘罪で逮捕

2023-01-05

【報道解説】従業員を決闘させて決闘罪で逮捕

従業員決闘をさせたとして決闘罪逮捕された希少な刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「ガールズバーで働く女性従業員と元従業員決闘させたとして大阪府警天満署は17日、大阪市福島区、同店の実質経営者、A容疑者(30)を決闘容疑で逮捕した、と発表した。
同署は認否を明らかにしていない。
発表によると、A容疑者は、8月3日午後11時35分頃、同市北区の歩道で、ガールズバーで働く10歳代の従業員と元従業員の女性2人に対し、『お前らタイマン(決闘)したらええやんけ』と言い、実際に飲食店内で殴り合いをさせた疑い。
1人は顔や頭に打撲のけがを負った。
同署は女性2人も同容疑で調べている。」

(令和4年11月18日に読売新聞オンラインで配信された報道より一部匿名にして引用)

【決闘の処罰根拠】

今回取り上げた報道では、逮捕された男性は女性2人に決闘をさせた疑いがあるとのことです。
決闘については、明治22年に定められた法律である「明治二十二年法律第三十四号(決闘罪ニ関スル件)」という法律が刑事罰を規定しています。
この決闘罪ニ関スル件によれば、決闘については次の4つの場合に罰則が科されることになります。

決闘を挑んだ人、決闘の挑戦に応じた人は6カ月以上2年以下の懲役(1条)
決闘を行った人は2年以上5年以下の懲役(2条)
決闘の立ち合いをした人や決闘の立ち合いを約束した人は1ヶ月以上1年以下の懲役(4条1項)
決闘が行われることを知ったうえで決闘の場所を貸与・提供した人は1ヶ月以上1年以下の懲役(4条2項)

今回取り上げた報道では、女性たちが決闘をした場所が逮捕された男性が経営する飲食店内であったことが読み取れますので、決闘が行われることを知って場所を提供したとして、決闘罪ニ関スル件4条2項に違反した可能性が考えられるでしょう。

【決闘とは】

このように決闘を行った場合や決闘に関与した場合には刑事罰が科されることになるのですが、そもそも「決闘」とはどのような行為を言うのでしょうか。
決闘」の定義について、法律上定めはありませんが、過去の最高裁裁判所の判例において「決闘」を「当事者間の合意により相互に身体又は生命を害すべき暴行をもつて争闘する行為」と定義したものがあります(最高裁判所昭和26年3月16日判決)。

【決闘の結果としての傷害や殺人】

取り上げた報道では、実際に決闘を行った女性2人のうち1人が顔や頭に打撲の怪我を負っているとのことです。
こうして決闘によって相手を怪我させた場合には、別途刑法204条の傷害罪が成立することになりますが、決闘罪ニ関スル件3条によってこの傷害罪決闘に関する罪のうち刑罰が重い方で処罰されることになります。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっていますので、決闘の相手を怪我させた場合はより重い傷害罪で処罰されることになるでしょう。

また、仮に決闘相手を死亡させた場合には、殺意がなければ刑法205条の傷害致死罪が、殺意があれば刑法199条の殺人罪が成立すると考えられます。
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役刑で、殺人罪の法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役刑となっていますので、決闘の相手を死亡させた場合には傷害致死罪殺人罪として処罰されることになると考えられます。

【決闘に関して警察の捜査を受けてお困りの方は】

決闘に関して警察の捜査を受けられている方は、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士に相談することで、そもそも決闘に関してどのような罪が成立するのか、決闘に関する罪以外にも成立する犯罪がないのか、複数の罪の成立が考えられる場合にはどのような罰が科される可能性があるのかといった事件の見通しなどについて説明を受けることができますので、今後に備えてどのような対応を取ればよいのかといったことを知ることができるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
決闘の疑いで警察に捜査を受けてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】いじめ目的で下着を無理やり脱がせて傷害を負わせ強制わいせつ致傷で逮捕

2022-12-25

【報道解説】いじめ目的で下着を無理やり脱がせて傷害を負わせ強制わいせつ致傷で逮捕

男性の同僚の下着を無理やり脱がせた際に傷害を負わせたとして男らが強制わいせつ致傷逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「警視庁葛飾署は9日、『アート引越センター』社員(27)(東京都江戸川区)、同社アルバイト(52)(葛飾区)ら男4人を強制わいせつ致傷容疑で逮捕した。
葛飾署幹部によると、4人は4月30日未明、社員の男の自宅マンションで同僚の20歳代男性の体を押さえつけて無理やり下着を脱がせ、腹部に全治約3週間のけがを負わせた疑い。いずれも容疑を認めている。
酒に酔った男が服を脱ぐよう迫り、スマートフォンでその様子を撮影していたという。男性が5月に葛飾署に相談して発覚した。」

(令和4年11月14日に読売新聞オンラインで配信された報道より引用)

【強制わいせつ致傷罪とは】

刑法176条では、13歳以上の者に対して暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に強制わいせつ罪が成立するとしており、さらに強制わいせつ罪によって人を傷害させた場合には刑法181条1項のわいせつ致傷罪が、死亡させた場合には同じく刑法181条1項の強制わいせつ致死罪(あわせて「強制わいせつ致死傷罪」と言うことがあります)が成立することになります。

今回取り上げた報道では、逮捕された男性らは、日常的ないじめとして、被疑者の男性の身体を押さえつけるという暴行を用いて、下着を無理脱がせるというわいせつな行為をし、この時、被害者の男性に腹部に全治約3週間の傷害を負わせた疑いがあるとのことですので、仮にこれが事実であれば、強制わいせつ致傷罪が成立することになるでしょう。

【いじめ目的で下着を脱がせることも「わいせつ」?】

ところで、強制わいせつ罪が成立するためには、昭和45年1月29日に出された最高裁判所の判例によって、「犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる」という性的意図(わいせつ目的)が必要であるとされてきました。
強制わいせつ罪の成立の要件としてわいせつ目的が必要であるとすると、今回取り上げた報道のように、いじめ目的で自分と同じ性別の被害者の下着を無理やり脱がせたという場合はわいせつ目的が存在しないとして強制わいせつ罪が成立しない可能性が高いといえます。
しかし、わいせつ目的を一律に強制わいせつ罪の成立要件とする昭和45年の最高裁判所の判例は、平成29年11月29日に出された最高裁判所の判例によって変更されました。
この平成29年の判例によると、被害者の下着を無理やり脱がすという行為それ自体が性的な意味合いが強い行為を行った場合には、犯人の意図にかかわらず強制わいせつ罪が成立することになると考えられています。
そのため、この平成29年の判例が出された現在では、わいせつ目的で下着を脱がせた場合はもちろん、いじめ目的で下着を脱がせた場合であっても強制わいせつ罪が成立することになるでしょう。

【ご家族が強制わいせつ(致傷)罪で逮捕されたら】

ご家族が強制わいせつ罪強制わいせつ致傷罪の疑いで逮捕されたことを知った場合は、まずは弁護士に依頼して初回接見にいってもらうことをお勧めします。
この初回接見によって、弁護士が直接逮捕された方から事件について話を聞くことができますので、事件の見通しや今後の手続きの流れなどを知ることができます。

また、強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役刑で、強制わいせつ致傷罪の法定刑は無期又は3年以上の懲役刑となっていて、罰金刑が定められていないことから両者の法定刑は比較的重いといえます。
ただ、このように比較的刑が重い強制わいせつ罪強制わいせつ致傷罪であっても、行ったわいせつ行為の態様や、被害者の方の怪我の程度などによっては、被害者の方と示談を締結することができれば起訴を回避することも可能になる場合があります。
そのためには、弁護士が初回接見をきっかけに事件に早期に関与して、示談を検察官が起訴を決定するまでにまとめることが必須となってくるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族が強制わいせつ罪強制わいせつ致傷罪の疑いで逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】学校内の傷害罪で中学生が逮捕

2022-12-14

【報道解説】学校内の傷害罪で中学生が逮捕

学校内で同級生の顔を殴って鼻やあごの骨を骨折させたとして15歳の男子中学生傷害罪逮捕された刑事事件少年事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「滋賀県長浜市内の中学校の校内で、15歳の同級生の男子中学生の顔を殴り、鼻や顎の骨を折る全治3カ月の大けがをさせた傷害の疑いで15歳の男子中学生を逮捕しました。
警察によりますと、10日午前10時30分頃から40分頃の間に、長浜市内の中学校内の廊下で、15歳の男子中学生が、同じく15歳の男子中学生の顔を数回殴る暴行を加え、鼻や下顎の骨を折る全治3カ月の大けがをさせたということです。
事件の翌日にけがをした男子中学生が父親とともに警察を訪れて事件が発覚、被害届を受けて、捜査した結果、男子中学生を逮捕しました。
調べに対し、逮捕された男子中学生はけがをさせたことは認めた上で、『やりましたが、一発しか殴ってません』と話しているということです。
一方、被害者の男子中学生は『(男子中学生に)因縁をつけられて殴られた』と話しているということです。

(令和4年11月15日に関西テレビで配信された報道より引用)

【学校内で同級生に暴力で怪我させると中学生でも逮捕されることがある】

今回取り上げた報道では、傷害事件が起きたのが中学校の中で、ましてや傷害事件の被疑者が15歳の中学生であるということから、中学生が警察に逮捕されたということに驚かれた方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、傷害は刑法204条に規定されている立派な犯罪で、仮に20歳以上の人が傷害罪として有罪となった場合は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があるものになりますので、たとえ15歳の中学生が学校内で傷害事件を起こした場合は、当然警察による捜査が開始される可能性があります。

今回取り上げた報道の傷害事件では、被害者の方の怪我が全治3カ月の鼻や下顎の骨の骨折ということで、怪我の程度が比較的大きい傷害事件と言えますので、警察は在宅ではなく、15歳の男子中学生の身柄を拘束して捜査を進めるために、逮捕に踏み切ったものと考えられます。

15歳の中学生が傷害事件を起こした場合は少年事件として事件が処理されることになりますが、警察による捜査段階では15歳の中学生であっても大人が刑事事件を起こした場合と基本的には同じ取扱いを受けることになります。
そのため、逮捕後も引き続き15歳の中学生の身柄を引き続き拘束するために勾留という処分がなされる可能性があります。

勾留が決まると原則として10日間身柄が拘束されることになりますし、勾留期間は延長することが可能ですので、10日経過後も延長としてさらに10日間身柄が拘束される可能性があります。

【子供を逮捕したと警察から連絡が来たら?】

このように中学生のお子さんが傷害の疑いで警察に逮捕されたと知った場合は、いち早く弁護士に初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
突然警察に逮捕されて家族や友人と話すこともできない状況に置かれたお子さんにとっては、自分が今後どうなるのかひどく不安な気持ちになっていることが予想されますが、弁護士が初回接見に行くことで、事件の見通しや今後の手続の流れなどを、お子さんにも分かるように説明することができますので、お子さんの不安な気持ちを和らげることできるでしょう。

また、逮捕後72時間や土日祝日は基本的にはご家族の方であってもお子さんと接見することができませんが、弁護士はこうした制約がなく自由にいつでも接見することができますので、接見ができないご家族の代わりに、弁護士がご家族の方からの伝言を逮捕されたお子さんにお伝えすることができますので、こうした伝言を通して、お子さんを支えることも可能になるでしょう。
これに加えて、ご家族の方が逮捕されたお子さんを心配に思う気持ちも解消できるように、ご家族の方に対しましても初回接見に行った弁護士から事件の見通しや今後の流れなどについてご説明させて頂きます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
中学生のお子さんが傷害事件を起こしてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】クロスボウの無許可所持で銃刀法違反で検挙

2022-12-03

【報道解説】クロスボウの無許可所持で銃刀法違反で検挙

クロスボウ無許可所持したとして銃刀法違反の疑いで書類送検された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「自宅でクロスボウボウガン)1丁を違法に所持したとして、岐阜県警岐阜中署は8日、岐阜市の無職男(84)を銃刀法違反所持)容疑で岐阜地検に書類送検した。
今年3月施行の改正銃刀法で、経過措置終了後の9月15日以降、クロスボウ無許可所持が禁止となり、クロスボウ所持容疑での摘発は全国初とみられる。
県警がクロスボウの回収を進めていた今年9月初旬、男はクロスボウ所持について岐阜中署に相談したが、回収に納得いかないとして無許可クロスボウ所持し続けていたという。」

(令和4年11月9日読売新聞オンラインで配信された報道より引用)

【銃刀法が改正されてクロスボウの所持が原則禁止されました】

今年の9月15日から改正された銃刀法(正式には「銃砲刀剣類所持等取締法」と言います)によって、クロスボウボウガン)を許可なく所持することが禁止されましたが、今回取り上げた報道は、クロスボウ所持として摘発された日本初のケースとのことです。

改正された銃刀法3条1項によって、一定の例外を除いて、クロスボウ所持が禁止されました。
例外的にクロスボウ所持が許される場合としては、法令に基づいて職務のため所持する場合(銃刀法3条1項1号)や、銃刀法4条に基づいて公安委員会の許可を受けた人が所持する場合(銃刀法3条1項3号)などがあります。

このクロスボウ所持の禁止については、全てのクロスボウ所持が禁止されているわけではなく、一定の条件が定められています。
具体的には、引いた弦を固定し、これを解放することによつて矢を発射する機構を有する弓のうち、内閣府令で定めるところにより測定した矢の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定めた値である6.0ジュール以上のクロスボウが禁止の対象になっています(銃刀法3条1項1つ目のかっこ書き、銃刀法施行規則第3条の2及び3条の3参照)。
もっとも、警察庁が市販されているクロスボウで実験したところ、実験に用いたクロスボウのなかでおもちゃのクロスボウを除く全てのクロスボウが6.0ジュール以上の数値を示したという実験結果があるとのことですので、多くのクロスボウが規制の対象になると考えられます。
(参考:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/crossbow/crossbowpower.html)

こうした銃刀法の規制の対象になるクロスボウを、例外的に許容される場合がなく所持した場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります(銃刀法31条の16第1項1号)。

【銃刀法の改正を知らずにクロスボウを所持していた場合は?】

今回取り上げた報道では、クロスボウ所持で摘発された男性は、クロスボウ所持が罰則の対象から外されていた期間に警察にクロスボウの相談をしていたという経緯があるとのことですので、男性は銃刀法が改正されてクロスボウ所持が罰則の対象になることは知っていたものと考えられます。

それでは銃刀法の改正について知らずに、うっかりクロスボウ所持していた場合はどうなのでしょうか。
結論からいえば、銃刀法の改正について知らずに、うっかりクロスボウ所持していた場合でも、罪に問われる可能性があると考えられます。
クロスボウ所持したことによって罪に問われるには、クロスボウ所持していた人に「罪を犯す意思」(故意)が必要になります。

この「罪を犯す意思」については刑法38条3項本文という規定があり、「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」と定めていますので、銃刀法の改正について知らなかったということを理由に罪に問われないということにはならないと考えられます。
そのため銃刀法の改正について知らずに、うっかりクロスボウ所持したことで警察に検挙されてしまった場合でも前科が付く可能性があります。

前科がつくことを避けたいとお考えの方は、まずは一度弁護士に相談されることをお勧めします。
具体的な事件の内容によっては、検察から起訴猶予してもらって前科がつくことを回避できる場合がありますので、弁護士に相談してアドバイスを貰うことが有益でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
クロスボウ無許可所持したとして銃刀法違反の疑いで警察に摘発されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。