【報道解説】従業員を決闘させて決闘罪で逮捕

2023-01-05

【報道解説】従業員を決闘させて決闘罪で逮捕

従業員決闘をさせたとして決闘罪逮捕された希少な刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「ガールズバーで働く女性従業員と元従業員決闘させたとして大阪府警天満署は17日、大阪市福島区、同店の実質経営者、A容疑者(30)を決闘容疑で逮捕した、と発表した。
同署は認否を明らかにしていない。
発表によると、A容疑者は、8月3日午後11時35分頃、同市北区の歩道で、ガールズバーで働く10歳代の従業員と元従業員の女性2人に対し、『お前らタイマン(決闘)したらええやんけ』と言い、実際に飲食店内で殴り合いをさせた疑い。
1人は顔や頭に打撲のけがを負った。
同署は女性2人も同容疑で調べている。」

(令和4年11月18日に読売新聞オンラインで配信された報道より一部匿名にして引用)

【決闘の処罰根拠】

今回取り上げた報道では、逮捕された男性は女性2人に決闘をさせた疑いがあるとのことです。
決闘については、明治22年に定められた法律である「明治二十二年法律第三十四号(決闘罪ニ関スル件)」という法律が刑事罰を規定しています。
この決闘罪ニ関スル件によれば、決闘については次の4つの場合に罰則が科されることになります。

決闘を挑んだ人、決闘の挑戦に応じた人は6カ月以上2年以下の懲役(1条)
決闘を行った人は2年以上5年以下の懲役(2条)
決闘の立ち合いをした人や決闘の立ち合いを約束した人は1ヶ月以上1年以下の懲役(4条1項)
決闘が行われることを知ったうえで決闘の場所を貸与・提供した人は1ヶ月以上1年以下の懲役(4条2項)

今回取り上げた報道では、女性たちが決闘をした場所が逮捕された男性が経営する飲食店内であったことが読み取れますので、決闘が行われることを知って場所を提供したとして、決闘罪ニ関スル件4条2項に違反した可能性が考えられるでしょう。

【決闘とは】

このように決闘を行った場合や決闘に関与した場合には刑事罰が科されることになるのですが、そもそも「決闘」とはどのような行為を言うのでしょうか。
決闘」の定義について、法律上定めはありませんが、過去の最高裁裁判所の判例において「決闘」を「当事者間の合意により相互に身体又は生命を害すべき暴行をもつて争闘する行為」と定義したものがあります(最高裁判所昭和26年3月16日判決)。

【決闘の結果としての傷害や殺人】

取り上げた報道では、実際に決闘を行った女性2人のうち1人が顔や頭に打撲の怪我を負っているとのことです。
こうして決闘によって相手を怪我させた場合には、別途刑法204条の傷害罪が成立することになりますが、決闘罪ニ関スル件3条によってこの傷害罪決闘に関する罪のうち刑罰が重い方で処罰されることになります。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっていますので、決闘の相手を怪我させた場合はより重い傷害罪で処罰されることになるでしょう。

また、仮に決闘相手を死亡させた場合には、殺意がなければ刑法205条の傷害致死罪が、殺意があれば刑法199条の殺人罪が成立すると考えられます。
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役刑で、殺人罪の法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役刑となっていますので、決闘の相手を死亡させた場合には傷害致死罪殺人罪として処罰されることになると考えられます。

【決闘に関して警察の捜査を受けてお困りの方は】

決闘に関して警察の捜査を受けられている方は、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士に相談することで、そもそも決闘に関してどのような罪が成立するのか、決闘に関する罪以外にも成立する犯罪がないのか、複数の罪の成立が考えられる場合にはどのような罰が科される可能性があるのかといった事件の見通しなどについて説明を受けることができますので、今後に備えてどのような対応を取ればよいのかといったことを知ることができるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
決闘の疑いで警察に捜査を受けてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。