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【報道解説】強盗罪の共犯で逮捕、勾留、接見禁止

2022-08-04

【報道解説】強盗罪の共犯で逮捕、勾留、接見禁止

強盗共犯事件で逮捕され、勾留が決まった際に接見禁止が付いた事例に関する刑事責任と刑事手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例紹介】

「お金に困っていたAさんは、SNSで募集していた『高額バイト』に応募しました。
そこで、Aさんは、SNSでやり取りしていた人の指示のもと、面識のないBさんと一緒に、東京都でひとり暮らしをしているVさんの家に押し入って、強盗をする計画を立てました。
その計画に基づいて、AさんらはVさん宅に押し入り、AさんがVさんにナイフを突きつけている間に、BさんがVさんの家から現金や貴金属を盗み出しました。
Bさんは、ひと通り金目の物を盗み出した後にAさんを置いてさっさとVさんの家から逃げ出しました。
Bさんが逃げ出したことに気が付かずにVさんの家に留まっていたAさんは、近所の人の通報により駆け付けた警察官に現行犯逮捕されました。
Aさんは逮捕後に勾留が決まりましたが、その際に接見禁止決定が出されました。
Aさんの両親は、勾留期間中にAさんと接見できないことを知り、弁護士に相談しました。」
(この事例はフィクションです)

【強盗の共犯事件】

相手方の反抗を抑圧する程度の暴行脅迫を用いて現金などの財物を奪う行為は、強盗罪に当たります。
事例では、AさんがナイフをVさんに突きつけるという脅迫行為をしている間に、Bさんが財物を奪っていて、それぞれ役割を分担しています。
そうすると、Aさんは脅迫をしただけで財物を奪っていないですし、Bさんは財物を奪っただけで脅迫行為をしていないので、それぞれ強盗罪が成立することにならないのではないかと思われるかもしれません。
しかし、AさんとBさんは事前に強盗罪をすることについて共謀していて、その共謀に基づいて強盗をしています。
このような場合は、「共同して犯罪を実行した」(刑法60条)といえますので、Aさんは自身がやっていない財物を奪った行為について、Bさんは自身がやっていないVさんに対する脅迫行為について、それぞれ自分が行ったものとして責任を負うことになります。
その結果、AさんもBさんも強盗罪(刑法236条1項)が成立することになるでしょう。
強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役となっています。

なお、AさんとBさんには強盗罪の他に住居侵入罪(刑法130条前段)が成立します。
住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。

【接見禁止決定とは】

事例では、Aさんに勾留が決まった際に接見禁止決定が出されています。
勾留期間中は、親族や友人といった弁護人以外の人は、被疑者と法令の範囲内で接見することができます(刑事訴訟法207条1項、80条)が、例外的に被疑者と接見ができなくなる場合があります。
それが、裁判所が、親族や友人などの弁護人以外の者が被疑者と接見することを禁止する決定(接見禁止決定)を出した場合です。
接見禁止決定は、被疑者が「逃亡又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」(刑事訴訟法81条)に出すことができます。
「逃亡又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があるか否かは個別の事件の具体的事情に基づいて判断されることになりますが、殺人などの重大事件や、共犯者がいる事件、薬物事件、組織的な犯行による事件の場合には、比較的接見禁止が認められることが多いと言えます。

【接見禁止を解除してもらうには?】

ただでさえ身柄を拘束されている状態で肉体的・精神的なストレスがかかるなかで、それに加えて家族の人と面会ができないとなることは、勾留中の被疑者にとって非常に苦痛に感じられることになるでしょう。
また、ご家族の方にとっても、勾留中の被疑者の様子が気がかりで不安に思うなかで、逮捕されてから一度も面会できないという事態は早期に解消される必要があります。
このように、勾留されている被疑者と家族との接見を早期に実現するためには、弁護士に依頼されることをお勧めします。

弁護士であれば、裁判所に対して接見禁止決定について不服を申し立てる準抗告という手続をとることができます。
家族との接見を認めても「逃亡又は罪証を隠滅する」おそれがないということを、具体的な事実に基づいて主張し、その言い分が裁判所に認められれば、家族との接見が実現することになるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です
ご家族の方の中に勾留されている方がいて接見禁止決定がついていて接見ができずにお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください

【報道解説】刃物の暴力犯罪で暴力行為等処罰法違反で逮捕

2022-07-24

【報道解説】刃物の暴力犯罪で暴力行為等処罰法違反で逮捕

【報道紹介】

刃物を用いた脅迫暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

「父親に包丁を突きつけ脅迫したとして7月17日、47歳の男が逮捕されました。
暴力行為等処罰に関する法律違反現行犯逮捕されたのは、富山県の自称・内装業の47歳の男です。
警察によりますと、男は7月17日午後11時59分ごろ、同市東区に住む80代の父親が住む自宅で父親に包丁を突きつけ『ぶっ殺すぞ』などと脅迫したということです。
男は仕事で札幌市を訪れていましたが、自ら『これから親父(おやじ)を殺す』と110通報し、それを受けて現場に警察官が駆け付けたところ、男が包丁を手にしていたためその場で逮捕したということです。
調べに対し、男は『包丁を突きつけたのは間違いない』等と容疑を認めているということです。
警察は動機などを詳しく調べることにしています。

(令和4年7月18日に北海道ニュースUHBで配信された報道より引用)

【暴力行為等処罰に関する法律とは?】

暴力行為等処罰に関する法律暴力行為等処罰法)という法律をご存知でしょうか。
人を殴ったり、殴って怪我をさせた場合には、それぞれ刑法が規定する暴行罪傷害罪という犯罪に当たることになります。
暴力行為等処罰法は、多人数の集団で暴行を働いた場合や、拳銃や刃物などを用いて人を怪我させた場合などについて、刑法に定める暴行罪傷害罪よりも重く処罰するための法律で、大きく次の5つの場合について規定しています。

暴力行為等処罰法1条では、暴行罪(刑法208条)、脅迫罪(刑法222条)、器物損壊罪(刑法261条)の罪を、実際に多人数の集団で行った場合や、多人数の集団であるかのように装って行った場合、又は包丁などの凶器を示して行った場合を処罰の対象にしています。
報道では、逮捕された男性は被害者である父親に対して包丁を突きつけて「ぶっ殺すぞ」と脅迫をした疑いがあるとのことですので、この暴力行為等処罰法1条に当たると考えられます。
暴力行為等処罰法1条の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金となっています。

暴力行為等処罰法1条の2第1項では、銃砲刀剣類を用いて人の身体を傷害した場合を規定していて、その法定刑は1年以上15年以下の懲役となっています。
なお、実際に、鉄砲刀剣類を用いて相手に怪我をさせなかったとしても、未遂犯として処罰される可能性があります(同条2項)。

暴力行為等処罰法1条の3では、常習的に傷害罪(刑法204条)、暴行罪(刑法208条)、脅迫罪(刑法222条)、器物損壊罪(刑法261条)を犯した者が、人を傷害したときは1年以上15年以下の懲役を科すと規定しています。
なお、このような者が、人を傷害していない場合は3月以上5年以下の懲役が科せられることになります。

暴力行為等処罰法2条では、財産上不正の利益を得る目的で第1条の方法によって、面会を強請したり、自身の要求に従わせようと強引な主張をして脅す(強談威迫)行為をした者は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金を科すとしています。

暴力行為等処罰法3条1項では、第1条の方法によって、殺人罪(刑法199条)、傷害罪(刑法204条)、暴行罪(刑法208条)、脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)、威力業務妨害罪(刑法234条)、建造物等損壊罪(刑法260条)、器物損壊罪(刑法261条)を犯す目的で、金品などの財産上の利益や職務を供与したり、その申込や約束をしたりする場合や、事情を知った上で供与を受けたり、要求や約束をした者は6月以下の懲役又は10万円以下の罰金を科すとしています。
また、第1条の方法によって、公務執行妨害罪(刑法95条)を犯す目的で、暴力行為等処罰法3条1項の行為をした者は6月以下の懲役若は禁錮又は10万円以下の罰金が科されることになります(暴力行為等処罰法3条2項)。

【暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されてしまったら?】

ご家族の方が暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されてしまったら、まずは弁護士に初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
単なる暴行罪傷害罪だと思っていたら、実は暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されたという場合が考えられますので、一体どのような罪で逮捕されたのか、事件が今後どのような手続で進められるのか、事件の見通しがどのようなものであるかなどといったことについて、初回接見に向かった弁護士から直接説明できることが期待できるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族の方が暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されてしまいお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】部活動の指導による傷害罪で逮捕

2022-07-13

【報道解説】部活動の指導による傷害罪で逮捕

高校の部活動において、指導者による生徒に対する行き過ぎた指導で怪我をさせ、傷害罪の疑いで逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「千葉県内の県立高校でバレーボール部の女子部員にボールを投げつけてけがを負わせたとして、松戸署は29日、男性教諭(50)(東京都港区)を傷害容疑で逮捕した。
発表によると、男性教諭は5月2日午前8時15分頃、高校の体育館で顧問を務めていたバレー部の練習中、女子部員の顔にボールを数回投げつけ、全治1週間のけがを負わせた疑い。
女子部員がプレーでミスしたことに腹を立てたとみられる。
男性教諭は容疑を一部否認しているという。
県教育委員会は、この女子部員の顔などにボールを少なくとも3回投げる体罰があったとして、男性教諭を今月22日付で戒告の懲戒処分にした。」

(6月29日に読売新聞オンラインで配信された報道より引用。)

【部活動の指導が犯罪に?】

一般的に、体罰を伴う等の厳しい指導について「スパルタ指導」や「しごき」と称することがあります。
そして、学校の部活動などにおいても、指導者が生徒達に威圧的な指導をしている場面を目にしたことがある方がいらっしゃるかもしれません。
もちろん、単に厳しい指導であれば刑事罰に問われることはないかもしれませんが、体罰を伴う行き過ぎた指導は、法令に抵触して刑事罰に問われる場合があります。

今回取り上げた報道も、バレーボールの指導中に行った振る舞いが犯罪に当たるとの理由で逮捕されたと考えられるケースです。
バレーボールの練習中に、指導者が生徒の顔にボールを数回投げつけて、全治1週間の怪我を負わせたということであれば、これは刑法204条が定める傷害罪に当たる可能性が高い行為になりますので、今回、警察は指導者の方を逮捕するに至ったのでしょう。

なお、傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。

【傷害を負わせる意図、故意】

報道のような事件において傷害罪が成立するためには、ボールを投げて怪我をさせたという事実に加えて、生徒の顔をめがけてボールを投げつけてやろう、あるいは怪我を負わせてやろうという意思のもとにボールを投げたという場合や、顔に当たっても構わないあるいは怪我をしても構わないという意思のもとでボールを投げたということが必要になります。
仮に、このような意思がなく、生徒に当てるつもりは全くなかったが、誤って顔をボールに当ててしまい、それによって生徒が怪我をしたということであれば、傷害罪ではなく、刑法209条の過失傷害罪が成立する可能性があります。
過失傷害罪の法定刑は、30万円以下の罰金又は科料となっており、傷害罪の法定刑よりも軽くなっています。

【部活動の指導で被害届を出されたら】

学校の中で起きた事件には警察が介入することはないと思われるかもしれませんが、学校内で起きた事件についても、犯罪に当たる可能性があり、事件について被害届を提出するといった方法で警察に報告すれば、警察が動き出して学校内の事件が一気に刑事事件へと発展する可能性は当然ありますし、場合によっては、今回取り上げた報道のように逮捕に至るという可能性は十分にあります。

そのため、部活動で生徒に対して行き過ぎた指導を行ってしまい、生徒に被害届を出されてお困りの方は、まずは、弁護士に相談して、事件の見通しや、今後の対応方法等についてアドバイスをもらうことをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
部活動指導に関して警察に被害届を出されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】18歳の少年らが器物損壊罪や傷害罪で逮捕

2022-07-02

【報道解説】18歳の少年らが器物損壊罪や傷害罪で逮捕

高校生の少年らが器物損壊罪傷害罪の疑いで逮捕された事例とその法的責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「大阪・ミナミにあるグリコの看板の下、いわゆる「グリ下」で出会った少女に暴行を加えたとして大阪府内に住む男子高校生らが逮捕されました。
傷害器物損壊などの疑いで逮捕されたのは大阪府内に住む男子高校生(16)と無職の少年(18)です。
男子高校生らは、今年5月に大阪市中央区の路上で京都府に住む中学3年の女子生徒(当時14)のバッグに火のついたタバコを押し付けたり、女子生徒の頭を踏みつけるなどの疑いが持たれています。

(7月14日にMBSNEWSで配信された報道より引用)

【18歳の人が事件を起してしまうと…?】

他人のバッグに火のついたタバコを押し付ける行為は、刑法261条に定める器物損壊罪に当たり得る行為ですし、人の頭を踏みつける行為は、刑法204条に定める傷害罪に当たり得る行為です。
報道では、16歳と18歳の少年がそのような器物損壊罪傷害罪に当たり得る行為をした疑いがあるため逮捕されたとあります。
このように事件を起こした少年少年法が適用されることになりますので、通常の刑事手続とは異なる手続で事件が進んでいくことになります。

16歳の少年については未成年者ですので少年法が適用されるということに疑問がないかと思いますが、18歳の少年は未成年者ではないことから、少年法が適用されないのではないかと思われる方がいるかもしれません。
たしかに、今年の4月から民法が改正されて成人年齢が18歳に引き下げられましたので、18歳は未成年者ではなく成人として扱われることになりましたが、少年法における「少年」とは、20歳に満たない人のことをいいますので(少年法2条1項)、18歳の人が事件を起こした場合は、これまで通り少年法が適用されることになります。

【少年事件の場合の示談について】

20歳以上の人が器物損壊罪傷害罪にあたる行為をしてしまった場合は、被害者の方との示談をすることが重要になります。

器物損壊罪告訴がなければ事件を起訴することができない親告罪という犯罪ですので(刑法264条)、被害者の方と示談を締結して告訴を取り下げてもらえば、器物損壊罪について起訴されることはありません。

傷害罪親告罪ではありませんが、傷害罪についても示談を締結して被害者の方に事件について許してもらうことができれば、起訴を回避する可能性を高めることができるでしょう。

このように20歳以上の人が事件を起した場合には、示談締結の事実は起訴を回避する可能性を高めて、事件の早期解決へとつながることになりますが、少年事件の場合には、検察官は事件を起訴するかどうかの権限を持たず、家庭裁判所に事件を送致するしかないですので、被害者の方との示談締結を理由に、検察官が事件を家庭裁判所に送致しないという判断をすることはありません。

しかし、だからといって、少年事件において被害者の方との示談が全く意味がないと言う訳ではありません。
事件の送致を受けた家庭裁判所は、自ら事件について調査を開始して、少年審判を開始するかどうか、少年審判を開始した場合の最終的な少年に対する処分をどうするかといったことを判断することになります。
このような中で、被害者の方と示談交渉を行うことで、少年が自身が犯した罪に向き合い、被害者の方の立場に立って真摯に反省して、その態度を家庭裁判所に示すことができれば、少年審判において有利な事情として働き、少年に対する処分を軽くすることにつながります。
そのため、少年事件の場合でも被害者の方との示談は有効なものと言えるでしょう。

【お子さんが傷害事件・器物損壊事件を起して逮捕されてしまったら…】

20歳に満たないお子さんが、傷害事件器物損壊事件を起して警察に逮捕されてしまったら、まずは弁護士に依頼して初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
少年事件は通常の刑事手続とは異なるところがありますし、また少年審判にあたっては保護者の方の協力も必要不可欠となります。
この初回接見を通して、事件の見通しや今後の流れについて接見に向かった弁護士から直接説明してもらうことができますので、保護者としてお子さんが起こした事件についてどのように向き合えばよいか、心構えができるようになるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件のみならず、少年事件も専門に取り扱う法律事務所です
お子さんが傷害事件器物損壊事件を起こしてしまいお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】風俗店案内所のトラブルで傷害罪

2022-06-10

【報道解説】風俗店案内所のトラブルで傷害罪

風俗店案内所で発生したトラブル傷害事件へと発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例】

「東京都在住のAさんは、友人5人と風俗店を利用することになり、東京都町田市の路上で風俗店無料案内所を利用しました。
しかし、希望する条件と合う風俗店を紹介されなかったことに腹を立てたAさんらは、風俗店案内所の店員Vさんに対して、顔を殴るなどの暴行を加えて、重傷を負わせました。
なお、Vさんの怪我は、誰の暴行によって生じたものかはわかりませんでした。
Aさんらは、通報により駆け付けた警視庁町田警察署の警察官に現行犯逮捕されましたが、翌々日には釈放されました。」
(5月26日読売新聞より配信されたニュースを元にしたフィクションです)

【傷害罪の成立要件】

人の顔を殴る、蹴るなどの行為は刑法208条が定める暴行罪に当たります。
そして、暴行の際に相手方に対して怪我を負わせてやろうという意思で相手方に対して怪我を負わせた場合はもちろんのこと、たとえ相手方に怪我を負わせてやろうという意思がなくても、暴行自体を自発的に行い、その結果相手方に対して怪我を負わせた場合は刑法204罪が定める傷害罪が成立することになります。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役刑、又は50万円以下の罰金刑となっています。

【誰が怪我を負わせたかが不明な場合はどうなるのか】

刑法の一般論として、犯罪の結果が誰の行為によって生じたのか明らかではない場合は、通常は罪に問われることはありません。

しかし、今回取り上げた事例のように、複数の者の暴行によって傷害の結果が生じたものの、誰の暴行によって傷害の結果が生じたかが明らかでない場合は、暴行に参加した者について傷害罪が成立することになります。
そのため、Aさんには傷害罪が成立することになるでしょう。
Aさんに傷害罪が成立することになる説明としては、次の2つが考えられます。

【傷害罪が成立する可能性―共謀】

まず、考えられる説明として、Aさんと友人たちに傷害罪共同正犯(刑法60条、204条)が成立している場合があります。
刑法60条には、「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」と規定されています。
これは、2人以上の人が共同して犯罪を実行した場合は、他人が行った行為についても、自分が行ったものとして責任を追うということを意味しています。

取り上げた事例においては、Aさんと友人たちの間で、「一緒に風俗店案内所の店員Vさんを暴行しよう」という、共同して犯罪を行うことを内容とする共謀が成立し、そのような共謀に基づいて暴行に及んでいた場合には、Aさんは、たとえ自身の暴行によってVさんを怪我を負わせていなくても傷害罪共同正犯が成立することになります。
従って、共謀がある場合、Aさんには傷害罪が成立することになります。

【傷害罪が成立する可能性―同時傷害の特例】

それでは、Aさんと友人たちの間で共謀が存在していない場合は、Aさんは傷害罪の責任を負わないと考えられそうですが、傷害罪については、刑法207条の同時傷害の特例が適用されることになりますので、Aさんは傷害罪の責任を負うことになります。
2人以上の複数人で暴行を加えて傷害を負わせた場合には、暴行に参加した者全員の暴行によって傷害の結果が発生しているものの、誰がどの程度の傷害結果を生じさせたのか、その軽重が分からない場合や、そもそも誰の暴行によって傷害結果が生じたのかが分からない場合がよくありますが、このような場合を例外的に共同正犯として取り扱うとするのが刑法207条の同時傷害の特例の規定です。
今回取り上げた事例においては、Aさんを含めた合計6人で、風俗店案内所の店員Vさんを暴行して傷害を負わせていますから、仮に共謀の事実が認められなかったとしても、この刑法207条が適用されることになりますので、Aさんらは、傷害罪共同正犯として扱われることになります。
従って、共謀がない場合でも、Aさんは傷害罪についての責任を負うことになるでしょう。

【傷害事件の場合の刑事弁護活動】

今回取り上げた事例では、Aさんは、逮捕後釈放されていますが、釈放されたからといって事件が終了した訳ではありません。
今後は、検察官がAさんを傷害罪起訴するかどうかの判断を下すまで、Aさんは在宅での捜査が続くことになるでしょう。

傷害事件のように、被害者の方がいる事件の場合、被害者の方との示談交渉が大事になります。
弁護士を通じて、被害者の方に対して謝罪と被害の回復を申し入れることによって、被害者の方の処罰感情を和らげることが出来れば、起訴を回避することも可能になるでしょう。
示談交渉については決まった方法というものがありませんので、これまでの弁護士の経験によるところが大きい弁護活動といえるでしょう。
そのため、示談交渉を依頼する弁護士選びは非常に重要になります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に扱う事務所で、傷害事件の被害者の方と示談を締結し、起訴を回避した経験が豊富な弁護士が在籍しております。
風俗店案内所の店員に怪我を負わせてしまい、傷害罪で警察の捜査を受けている方、傷害罪について起訴を回避したいとお考えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度御相談下さい。

【解決事例】口論による暴行罪で示談成立、検察官送致なしで事件終了

2022-05-19

【解決事例】口論による暴行罪で示談成立、検察官送致なしで事件終了

男性被疑者による口論から生じた暴行被疑事件刑事弁護活動とその結果について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

【被疑事実】

本件は、男性被疑者Aが、埼玉県さいたま市内の道路を歩いていたところ、バイクを駐車していた男性Vと交通マナーをめぐって口論になり、AとVが揉み合った中でVに対して暴行を行ったという暴行罪の事例です。
本件では、Vに対する被害は軽く、AとVの身元が警察によって確認されたものの、すぐに帰宅がゆるされて在宅捜査となった状況で、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へ示談を念頭においた弁護活動の依頼が持ち込まれました。

【刑事弁護の経緯 示談交渉】

本件のように、被害の程度が軽く、在宅捜査で進行する暴行罪刑事事件では、被害者に対して十分な謝罪と被害弁償を済ませて示談が成立すれば、検察官が不起訴処分とすることが十分に期待できます。

そのため、Aから依頼を受けた弁護人は、被害者に対して丁寧に謝罪と被害弁償の意向を伝え、被害者の被害感情や示談に対する意向の程度を探っていきました。

幸い、Vの被害感情はそれほど高くなかったものの、Vのバイクの一部損壊も被害に含まれていたため、合計2回にわたってVとの示談交渉を重ねた結果、VからAに対する刑事処罰を求めない文言(宥恕)を含む示談書締結することに成功し、同時に、Vが警察に提出した被害届を取り下げていただくことに合意しました。

弁護人は、Vと締結した示談書被害届取下書在宅捜査している管轄警察署へ提出しました。

最終的に、警察は本暴行事件検察官送致書類送検)しないという判断を下し、これにて事件は終了しました。

【依頼者からの評価】

本事件は、刑事弁護の依頼を受けてから示談締結による問題解決まで、約1カ月ほどで解決に導くことができました。

本事件は、依頼者である男性被疑者が公務員であったため、どうにかして刑事処罰を回避したいとの意向がありました。
本件では、示談交渉も非常にスムーズに進行し、Vに対する暴行とバイクの損傷に対して合理的な範囲の賠償額の示談金に話をまとめることができたこともあり、とにかく事件が送致されることなく終了して大変安心したと大変高く評価していただきました。

【刑事事件の解決のために】

上記刑事事件のように、暴行罪の事案では、被害者に対する謝罪や被害弁償の話をまとめあげ、被害者による刑事処罰の意向を減じる示談内容をまとめることが刑事弁護活動の核心となります。
このような場合、刑事事件示談交渉を多数経験し、実績をあげた刑事事件に精通した弁護士に法律相談や弁護の依頼をすることが望ましいでしょう。

口論による暴行罪などの暴力犯罪でお悩みの方、またはご家族が刑事事件化の可能性があってお悩みの方は、暴行罪示談成立に実績のある、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所への弁護の依頼をご検討ください。

【解決事例】過失傷害罪で示談成立、刑事事件化を阻止

2022-05-08

【解決事例】過失傷害罪で示談成立、刑事事件化を阻止

成人女性による自転車接触事故による過失傷害被疑事件刑事弁護活動とその結果について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

【被疑事実】

本件は、女性被疑者Aが、自転車を運転している際に過失により接触事故を起こし、被害者Vに対して負傷を負わせたという過失傷害罪の事例です。
本件では、Vの傷害の程度も軽く、Vが警察には被害を申告していない状況で、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へ示談を念頭においた弁護活動の依頼が持ち込まれました。

【刑事弁護の経緯 示談交渉】

本件のように、被害者が警察に被害の申告をしていない状況では、被害者に対して十分な謝罪と被害弁償を済ませて示談が成立すれば、刑事事件化を阻止することが十分に期待できるます。

そのため、A家族から依頼を受けた弁護人は、被害者に対して丁寧に謝罪と被害弁償の意向を伝え、被害者の被害感情や示談に対する意向の程度を探っていきました。

本件では、Vは、Aが事故現場にて、立ち尽くしたまま助けることもなく、謝罪を一度もしなかったこと等について立腹しており、一部損壊したVの乗っていたスポーツ自転車の部品代金として、高めの賠償金額を請求してきました。

弁護人は、Vの主張を丁寧に聞いた上で、Vの被害にあったスポーツ自転車の損壊状況を実況見分させていただき、その市場価格を調査し、また、自己のあった現場へ実況見分し、事故状況下でのAとVの過失の状況について調査を進めました。

最終的に、弁護人は賠償金額を大幅に引き下げてVと示談締結することに成功し、Vから事件化しないとの約束を示談書上で取り交わし、刑事事件化することなく事態は終了しました。

【依頼者からの評価】

本事件は、刑事弁護の依頼を受けてから示談締結による問題解決まで、約1カ月ほどで解決に導くことができました。

当初は被害者から高めの賠償金額の主張なされていたものの、弁護人による粘り強い調査と示談交渉により、最終的には当初の被害者の主張額の十分の一程度の示談金示談で締結に至ったことから、Aおよび契約依頼者のA家族から大変高く評価していただきました。

【刑事事件の解決のために】

上記刑事事件のように、自転車過失運転などによる過失傷害の事案では、被害者に対する謝罪や被害弁償の話をまとめあげ、刑事事件化しないとの示談内容をまとめることが刑事弁護活動の核心となります。
このような場合、刑事事件示談交渉を多数経験し、実績をあげた刑事事件に精通した弁護士に法律相談や弁護の依頼をすることが望ましいでしょう。

自転車事故等による過失傷害罪でお悩みの方、またはご家族が刑事事件化の可能性があってお悩みの方は、過失傷害事件事件化回避に実績のある、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所への弁護の依頼をご検討ください。

【事例紹介】マンションからボウリング球投下の殺人未遂罪

2022-04-16

【事例紹介】マンションからボウリング球投下の殺人未遂罪

殺人罪または殺人未遂罪が成立するための故意の有無について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

兵庫県明石市のマンションの4階から、重さ6キロ余りのボウリングの球を投げ落としたとして、マンション住人の57歳男性が、殺人未遂罪の疑いで逮捕された。
マンションの1階にある飲食店の店員が「ドーン」という大きな音を聞き、その後、近くの側溝に球が落ちているのが見つかった。
警察の調べに対し、男性は「球を投げたことは間違いありませんが、殺意はありません」と殺人罪故意を一部否認している。
(令和4年4月13日に配信された「NHKニュース」より抜粋)

【殺人未遂罪が成立するための故意の有無】

例えば、刃物等の凶器を用いて他人を傷つけた場合に、殺意があれば、殺人故意があるということで、「殺人罪」が成立します。
他方で、「怪我をさせてやろう」という意思で凶器を振るい、殺意が無ければ、「傷害罪」が成立すると考えられます。

殺人罪」(殺人未遂罪)の法定刑は、「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」とされており、「傷害罪」の法定刑は、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
また、傷害未遂罪を、処罰する刑法の規定はありません。

殺人未遂罪の「故意」が認められるケースとは、「殺意がある場合」はもちろんですが、「もしかすると殺してしまうかもしれないけれども、構わない」というように、可能性を認識し、結果が発生しても構わないと認容している場合には、「故意」があったと認められ、殺人未遂罪が成立すると考えられます。

【殺人未遂事件の弁護活動】

殺人未遂事件を起こして、刑事捜査を受けている場合には、できるだけ速やかに弁護士に法律相談をすることで、事件当時の犯行状況や、事件の経緯などの客観的事情や、故意の有無などの容疑者の主観的事情を、どのように警察取調べで供述していくかにつき、刑事事件に強い弁護士とともに、綿密に打合せをすることが重要となります。

容疑者が逮捕されてしまった事件であっても、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご依頼いただければ、逮捕当日の弁護士接見(弁護士面会)のため、警察署の留置場へと弁護士を派遣するサービスも行っております。
弁護士接見後には、事務所にて、ご家族や知人の方への接見報告を行い、事件の見通しを伝えるとともに、今後の早期釈放と刑罰軽減に向けた弁護活動の検討をいたします。

まずは、殺人未遂事件が発生してから、できるだけ早期の段階で、刑事事件に強い弁護士に法律相談することが重要です。
兵庫県明石市の殺人未遂事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。

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