野次馬で現場助勢罪に

2020-08-16

野次馬で現場助勢罪に

野次馬現場助勢罪に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは兵庫県宝塚市に住んでいる会社員です。
ある日、Aさんが帰路についていたところ、道中でXさんとYさんがお互い怪我をしながら喧嘩をしており、周りにいた人たちがはやし立てていました。
Aさんも野次馬に加わり、スマートフォンで動画を取りながら、「もっとやれ」「派手にやりあえ」「そんなものか」などとXさん・Yさんどちらにも野次を飛ばしていました。
すると、通行人が兵庫県宝塚警察署に「喧嘩が起きていて人だかりができている。野次馬がはやし立てているようだ」と通報。
通報を受けた兵庫県宝塚警察署の警察官が現場に駆け付け、Aさんは現場助勢罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんが現場助勢罪の容疑で逮捕されたことを聞いたのですが、聞きなれない犯罪名に困惑し、ひとまず刑事事件に詳しい弁護士に相談してみることにしました。
兵庫県宝塚警察署弁護士と会ったAさんは、自分が喧嘩をしたわけでもないのになぜ逮捕されることになったのかを弁護士に相談しました。
(※この事例はフィクションです。)

・野次馬が犯罪になる?

今回のAさんは、Aさん自身が喧嘩に参加したわけでもないにも関わらず犯罪の容疑がかけられて逮捕されてしまっています。
このように野次馬になっただけなのに犯罪になってしまうことはあるのでしょうか。

今回のAさんの逮捕容疑である現場助勢罪は、刑法第206条に定められている犯罪です。

刑法第206条
前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
※注:「前二条の犯罪」とは、刑法第204条の傷害罪と刑法第205条の傷害致死罪のことを指します。

現場助勢罪は、犯罪名の通り、現場の勢いを助けた場合に成立する犯罪です。
現場の勢いを助けるということは、簡単に言えば傷害罪や傷害致死罪が行われている現場でその犯罪を煽り立てるような行為をするということを指します。
この現場助勢罪は、扇動行為がなされることによって傷害行為の規模・程度を拡大してしまい、そのせいで本来ならば生じないような重大な傷害結果・傷害致死結果が発生してしまうという危険を防止する目的で定められています。
ですから、現場助勢罪の条文に「自ら人を傷害しなくても」現場助勢罪が成立するとあるように、その人本人が喧嘩の当事者でなくとも現場助勢罪という犯罪をしたことになります。

今回のAさんは野次馬としてXさん・Yさんがお互い怪我を負うほどの喧嘩をはやし立てていますから、傷害罪が行われている現場を煽り立てたといえるでしょう。
こうしたことから、ただの野次馬であるAさんにも現場助勢罪が成立することが考えられるのです。
なお、この時野次馬による野次が喧嘩をしている当事者に聞こえていなくとも、扇動行為をすること自体が現場助勢罪となるため、現場助勢罪の成立を妨げることはありません。

・野次馬で現場助勢罪以外の犯罪も成立する?

喧嘩の野次馬をして刑事事件になった場合、もう1つ気にしなければならない犯罪が、傷害罪等の幇助罪です。
幇助とは、簡単に言えばその犯罪をしやすくする手助けをすることを指し、その手助けは物理的なものも心理的なものも含むとされています。
つまり、心理的にその犯罪をすることを後押しするような手助けにも幇助犯が成立するのです。

今回の事例のような喧嘩の野次馬の場合、例えばどちらか一方を応援し、その応援が応援された者の心理的な後押しとなって影響を及ぼしていた場合、現場助勢罪ではなく傷害幇助罪となるのです。
幇助犯となった場合、刑罰は「従犯」の刑となり(刑法第62条第2項)、「従犯」の刑は「正犯」の刑(=その犯罪を実行した人が科される刑罰の範囲)を「減軽」=有期懲役刑は半分の範囲、罰金は半分の範囲で刑罰を決める(刑法第63条、第68条第3号・第4号)とされています。
すなわち、傷害幇助罪となった場合には、傷害罪の「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(刑法第204条)の半分の範囲、すなわち「7年6月以下の懲役又は25万円以下の罰金」という範囲で罰せられることになるのです。

こうしてみると、現場助勢罪の刑罰とは大きな開きがあるため、現場助勢罪になるのか傷害幇助罪になるのかは非常に大きな問題であることがわかります。
ですから、野次馬として野次を飛ばしていた事実はあれど、実際には現場助勢罪にあたる行為しかしていないのに傷害幇助罪で罰せられてしまうようなことのないように注意しなければなりません。
そういったことを防ぐためにも弁護士の力を借りることをお勧めいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が逮捕から事件収束までフルサポートを行います。
現場助勢罪のような聞きなれない犯罪でも、刑事事件専門だからこそ迅速に対応が可能です。
まずは遠慮なく0120-631-881までお問い合わせください。