被害者の同意ある傷害

2020-01-12

被害者の同意ある傷害

被害者の同意を得て傷害行為をした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例】
東京都世田谷区に住むAは,友人のBに協力してもらい,交通事故を装って自動車保険金をだまし取ろうと考えた。
A,Bらは相談の結果,だまし取った保険金を半分ずつ分け合うことにし,この計画を実行に移すことにした。
AはBに対し,Aの運転する車の後部から、Bの運転する車を追突させるよう指示した。
またAは軽度の頸部捻挫を負うことも承諾していた。
結果的にAは加療約2週間を要する頸部捻挫の傷害を負った。
AはBから傷害を受けることに同意していたのだが,こういう場合にも傷害罪として罰せられるのか。
 (この事例はフィクションです。)

被害者の同意~傷害罪の成否~

まず,BがAの車に追突させた行為は法律上,傷害罪に該当しうるものといえます。
条文を確認してみましょう。

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

しかし,Aは怪我をさせられることや、車を損壊させることについて同意しています。
このような場合,実質的には被害者がいないとして、加害者を処罰する必要はないという考え方もありえます。

しかし刑法などの法律には、社会的相当性を欠く行為を罰しようとする目的があります。
そこで、被害者の同意が社会的相当性を有していなければ違法となる可能性があります。
社会的相当性の有無は、承諾を得た動機,目的,身体傷害の手段,方法,損傷の部位,程度等,諸般の事情を照らし合わせて決せられます。

今回の事例はどうでしょうか。

まず,BがAからの承諾を得た目的,動機保険金詐欺という、それ自体詐欺罪が成立する違法なものです。
また、身体傷害の手段・方法を見ると、車を使って後部から追突するというのは予期せぬ大きな事故にも発展しかねない危険な行為です。
たしかに損傷の程度を見ると、加療約2週間程度のものであり重症とまでは言いづらく、また、軽度の頸部捻挫を負うことを承諾していたAの予想の範囲内でもあります。
しかし、損傷の部位は頸部という神経の多く通う部位であり多少の損傷によっても身体麻痺等の重大な後遺症を与えかねない危険な部分です。

これらの事情をふまえると,Aが承諾していたとしても,この承諾は社会的に相当なものとは言えず,Bには傷害罪が成立することになるでしょう。
被害者が同意していても,犯罪は成立しうるということなので注意しましょう。

~詐欺罪も~

当然ではありますが、AとBは、保険金を請求した時点で詐欺未遂罪が、その後、保険金を受け取ることに成功してしまった時点では詐欺罪が成立することになります。

第246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
第250条
この章の罪の未遂は、罰する。

~弁護士にご相談を~

傷害罪詐欺罪などで逮捕されたり、取調べを受けると、ご本人やご家族は、いつ釈放されるのか、どのくらいの罰則を受けるのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか等々、不安点が多いと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、事件の内容を聴き取った上で、今後の見通しなどをご説明致します。
接見後には、接見の内容などをご家族にお伝え致しますので、それを聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。

また、逮捕されていない場合やすでに釈放されている場合は、事務所での法律相談を初回無料を行っております。

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