自宅に放火すると
自宅に放火すると
自宅への放火事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~今回のケース~
ケース①
東京都立川市に在住のAさん(55歳)は22歳の息子と一戸建ての住宅に住んでいます。
ある日、Aさんは息子を道連れに焼身自殺しようとして、深夜、自宅に火を放ち全焼させました。
火事に気付いた近所の人の助けによって、2人は逃げ出し怪我はありませんでした。
翌日、Aさんは、放火の疑いがあるとして東京都立川警察署の警察官によって取調べを受けることになりました。(フィクションです。)
ケース②
東京都武蔵野市に在住のAさん(55歳)は1人で一戸建ての住宅に住んでいます。
ある日、Aさんは焼身自殺しようとして、深夜、自宅に火を放ち全焼させました。
火事に気付いた近隣住民の助けによって、Aさんは逃げ出し怪我はありませんでした。
翌日、Aさんは、放火の疑いがあるとして東京都武蔵野警察署の警察官によって取調べを受けることになりました。(フィクションです。)
~現住建造物等放火罪にあたる可能性~
ケース①もケース②も、自宅に放火しています。
このような場合、現住建造物等放火罪が成立する可能性があります。
刑法 第108条 現住建造物等放火罪
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
以下、現住建造物等放火罪が成立するための条件を順に検討していきます。
〇放火
「放火」とは、目的物の焼損を起こさせる行為のことを言います。
目的物に点火する行為、目的物を燃やすために媒介物(たとえば新聞紙など)に点火する行為だけでなく、消火義務があるにもかかわらず消火をしない場合も「放火」に当たる可能性があります。
〇焼損
「焼損」の意味については、争いがありますが、裁判所は一貫して「独立燃焼説」という考え方を採用しています。
「独立燃焼説」とは「火が媒介物を離れて目的物が独立に燃焼を継続しうる状態になったこと」を言います。
新聞紙などの媒介物が無くても建物などが燃える状態になれば「焼損」したと判断されるでしょう。
〇現に人が住居に使用し
「現に人が住居に使用し」ている状態とは、「犯人以外の者が起臥寝食(きがしんしょく)の場所として日常使用している状態」のことをいいます。
その建物で、寝たり起きたり食べたりなど、つまりは生活しているということです。
「犯人以外の者」には、共犯である場合を除き、家族や同居人も含まれます。
また、日常、起臥寝食に使用していれば、放火当時に人が現にいる必要はありません。
たまたま外出中に放火をした場合でも、現住建造物等放火罪に該当します。
〇今回のケースの場合
ケース①では、Aさんが自宅に火を放つ行為は「放火」にあたり、その結果自宅は全焼しているので「焼損」しているといえるでしょう。
また、今回の事件で疑いを掛けられているAさん以外にAさんの息子も日常的にこの住居を使用しているので、「現に人が住居に使用し」ているということが出来ます。
そのため、Aさんには現住建造物等放火罪が成立するでしょう。
一方ケース②では、ケース①と異なり、Aさんは一人暮らしです。
そのため、「現に人が住居に使用し」ているということはできません。
そこで、Aさんには現住建造物等放火罪は成立せず、非現住建造物等放火罪(刑法第109条)が成立することになるでしょう。
刑法 第109条 非現住建造物等放火罪
1 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
自己所有の家なのか、また、公共の危険(不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険)が生じたかによって、刑罰が変わってきますが、現住建造物放火罪よりは軽いものとなります。
~ご相談ください~
このように放火事件では、様々な法律判断がされることになり、今回のケースのように、人が1人いるかいないかによって適用する法律が変わってくる場合があります。
そのため、一度弁護士に状況を整理してもらうことをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談や初回接見サービスを行っております。
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