債権回収と恐喝事件

2019-11-23

債権回収と恐喝事件

債権回収恐喝事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

京都府南丹市在住のAさんは、友人のBさんに20万円を貸していたが、約束していた返済期日になってもBさんがお金を返そうとせず、返済が遅れていることについてのBさんからの謝罪などもなかったことから、Bさんに対して怒りを募らせていた。
後日Aさんは、何としてもBさんに20万円を返済させようと考え、Bさんの自宅に行きBさんに強く返済を迫った。
しかし、BさんはAさんの返済要求に対し「もう少し待ってくれ」と言うばかりで具体的な返済計画なども話そうとしなかった。
Bさんの対応に激怒したAさんは、「いい加減にしろ。舐めたことを言っているとお前やお前の家族を殺すぞ。」とBさんに対して怒鳴りつけた。
Bさんは、Aさんが本気だと考えその場で20万円を返済したが、Aさんのことが怖くなり、京都府南丹警察署に通報。
Aさんは恐喝事件の被疑者として取調べを受けることになってしまった。
(上記の事例はフィクションです)

~権利行使と恐喝~

恐喝罪の「恐喝」とは、暴行又は脅迫を手段とし、その反抗を抑圧するに至らない程度に相手方を畏怖させ、財物の交付を要求することをいいます。
今回の事例の場合、AさんがBさんからお金を返してもらうために脅迫を手段とした場合、貸した金銭を返金するように言う行為は正当な行為といえるため、恐喝罪が成立するかが問題になります。

まず、恐喝罪は他人の財産を侵害する財産犯としての性質を有していることから、恐喝罪が成立するためには、被害者に財産上の損害が発生している必要があると考えられています。
上記の事例の場合、被害者であるBさんはAさんに借りていた20万円を返済したに過ぎないことから、Bさんには財産上の損害は何ら発生していないとも思えます。
もっとも、恐喝罪は個別財産に対する犯罪であることから、財産の交付行為があればその交付した財産そのものを損害として観念できると考えられています。
BさんはAさんに20万円を借金の返済として交付していることから、Bさんに20万円の損害が発生していると考えることができます。
そのため、被害者たるBさんに20万円の財産上の損害が生じているといえます。

また、刑法35条は「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」と規定しています。
AさんはBさんに対し20万円を貸しており、民法上AさんはBさんに対し貸金返還請求をなし得る立場にあることから、AさんがBさんから20万円の交付を受けた行為は、法令上正当な行為として、刑法35条より違法性が阻却され恐喝罪が成立しないとも思えます。
もっとも、仮にお金を貸していたとしても、過度な暴行や脅迫を行った上で借金を無理矢理にでも返済させるような行為については、法令上認められた正当な行為とはいえず、恐喝罪が成立することになるといえます。

では、どの程度までなら許され、どの程度からが恐喝となるかということですが、判例では「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内でありかつその方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り、何等問題も生じない」とされています。
上記の事例の場合、AさんはBさんに対し貸していた金の20万円分のみを返済させたにすぎず、Aさんの行為は権利の範囲内であるといえます。
もっとも、AさんはBさんに対してBさんやBさんの家族を殺すと怒鳴りつけ、これによりBさんはAさんは本気だと考えており、Aさんの要求に応じなければBさんやBさんの家族の生命身体に危害が加えられると畏怖したと言えます。
返金を要求した行為及びBさんを怒鳴りつけて脅迫した行為が、社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えており、恐喝罪が成立する可能性があります。

このように、恐喝事件については、その解決のために専門的な法的知識や経験が必要となります。
そのため、恐喝事件の加害者となってしまった場合には刑事事件に強い弁護士に相談し、恐喝事件の詳細な流れや見通しを聞いてみましょう。

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