【事例解説】集団を装っての脅迫 暴力行為等処罰法違反事件

2023-12-01

 

 SNSで気に入らない発信をする相手に対して集団を装った脅迫メッセージを送った暴力行為等処罰法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、SNSで自身の主義主張と反することを常日頃から発信するVさんについて、気に入らないと思っていたところ、ある日の投稿によって怒りの沸点に達してしまい、「俺は元暴走族の総長と親友で、俺が頼めば元メンバー全員動いてくれる」、「お前の家はもう分かっている」、「近いうち、お前んとこにみんなで行ってぶっ殺してやるよ」という内容のDM(ダイレクトメッセージ)をVさんに送りました。
 Vさんから何のリアクションもなかったことから、Aさんは、その後も普通に生活していましたが、ある日の早朝、自宅に警察官が来て、Aさんは暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されました。
(この事例はフィクションです)

集団を装って脅迫メッセージを送ると?

 刑法222条1項では、
「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」
といった形で脅迫罪について規定しています。
 刑法222条に規定されている脅迫罪の法定刑は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金刑となっていますが、暴力行為等処罰法では、一定の場合に行われた脅迫行為を刑法よりも重い刑事罰の対象にしています。

 具体的にどのような脅迫行為が刑法よりも重く処罰される可能性があるかというと、暴力行為処罰法1条では、
団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百八条、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス」
と規定しています。
 漢字とカタカナが交じった形で規定されているので、分かりづらいかと思いますが、要するに、
・実際に団体や多数人で威力を示して行った場合
・本来は違うのに団体や多数人であるかのように装って威力を示して行った場合
・凶器を示して行った場合
・数人で共同して行った場合
といった各場合に暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法222条)、器物損壊罪(刑法261条)にあたる行為を行ってしまうと、暴力行為等処罰法1条に違反することになるということです。

 事例のAさんは、相手に対して「ぶっ殺すぞ」という内容のダイレクトメッセージを送っていますが、これは生命に対して害を加える旨を告知していることになりますので、刑法222条に規定されている脅迫罪にあたる行為をしていると考えられます。
 そして、Aさんは、脅迫メッセージの中で、元暴走族のメンバーを集めて集団でVさんの家に行ってやるとも伝えていますので、これは団体や多数人であるかのように装って威力を示して脅迫行為を行ったとして、暴力行為等処罰法1条違反になる可能性があります。

 暴力行為等処罰法1条に違反した場合の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金刑となっており、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金刑となっている刑法222条の法定刑と比べると、懲役刑の上限が2年から3年に引き上げられています。

暴力行為等処罰法違反の疑いで警察に逮捕されたら

 刑事事件はスピードが命ですので、ご家族が暴力行為等処罰法違反の疑いで警察に逮捕されてしまったら、弁護士に依頼していち早く初回接見に行ってもらうことをお勧めします。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、暴力行為等処罰法違反事件をはじめとする刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
 ご家族が暴力行為等処罰法違反事件で警察に逮捕されてしまってお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。