【事例解説】市道上に障害物を置いて往来妨害罪で逮捕(市道上にコンクリート片を置いた架空の事例に基づく解説)

2023-12-08

参考事件

 Aさんは,仙台市の市道上に円筒状のコンクリート片を二個置いて車の往来を妨害し,その直後にVさんの車がコンクリート片に乗り上げてパンクする被害が発生しました。
 この件でAさんは,往来妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。Aさんの家族は刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
(事例はフィクションです。)

往来妨害罪とは

 陸路,水路又は橋を損壊し,又は閉塞して往来の妨害を生じさせた場合には往来妨害罪が成立します。
 往来妨害罪と似た犯罪として往来危険罪(刑法第125条)という犯罪があります。
 往来危険罪は,鉄道若しくはその標識を損壊し又はその他の方法により汽車又は電車の往来の危険を生じさせた場合,灯台若しくは浮標を損壊し又はその他の方法により艦船の往来の危険を生じさせた場合に成立します。

 往来妨害罪と往来危険罪との大きな違いは妨害の対象物にあり,汽車や艦船など一般的に大多数の人が乗る乗り物の往来を妨害したという場合には往来危険罪となり,そうではない往来を妨害した倍には往来妨害罪となります。
 上の事案のAさんは,仙台市の市道における車の往来を妨害していますが,市道という一般公衆の往来に用いられる道路は,往来妨害罪における「陸路」に当たると考えられます。
そうすると,Aさんの行為につき往来危険罪ではなく往来妨害罪の成立が考えられるということになります。

 次に,往来妨害罪が対象とする行為について,「損壊」と「閉塞」があります。
 「損壊」とは,道路や橋を爆破するなどして物理的に損壊することをいいます。
 他方,「閉塞」とは,障害物を設置することによって道路などを遮断することをいいます。
 ここでの遮断は,完全な遮断でなく部分的な遮断であったとしても道路の効用を阻害して往来の危険を生じさせた場合には「閉塞」に当たる場合があります。
 上の事案のAさんは,市道上にコンクリート片を2個置いたに過ぎないのですが,コンクリート片の大きさや形状によってはその場所を車が通行できず,部分的に遮断さえるということも十分あり得ます。
 そうすると,Aさんの行為は「閉塞」に当たる可能性があります。

 そして,Aさんの行為によって仙台市の市道が部分的に遮断されたことにより,通行が不可能又は著しく困難になったとして,「往来の妨害」を生じさせたといえます。
 上の事案ではAさんが置いたコンクリート片にVさんの車が乗りあげてパンクしていますが,往来妨害罪は実際に往来妨害の危険が生じたことで犯罪が成立するという具体的危険犯ですので,このような実質的な損害が生じなかった場合でも「往来の妨害」を生じさせたといえます。

 そうすると,上の事案のAさんには往来妨害罪が成立する可能性があります。
 この場合,2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられることがあります。

 なお,往来妨害罪に該当する行為を行った結果,これにより人を死傷させてしまったという場合には往来妨害致死傷罪が成立しますので,上の事案のVさんがケガをしたという場合には往来妨害致傷罪が成立する可能性があります。
 この場合,傷害の罪(刑法第204条)と比較して,重い刑により処断されることになります。

車の損害について

 Vさんの車をパンクさせてしまったことにつき,Aさんは何らかの刑事責任を負うでしょうか。
 刑法上の犯罪としては,車という「財物」をパンクさせて「損壊」していますので,器物損壊罪(刑法第261条)の成立が考えられます。

 器物損壊罪が成立するためには,その故意があることが必要となります。
 つまり,AさんがVさんの車をパンクさせようと考えてコンクリート片を置いたという場合には,器物損壊罪が成立する可能性があります。
 他方,そのようなつもりはなく,コンクリート片を置いた結果誤ってVさんの車をパンクさせてしまったというだけであれば器物損壊罪は成立せず,器物損壊罪には過失犯の処罰規定がないため,車をパンクさせたことについて刑事責任は負いません(ただし,民事上の不法行為責任を負う可能性があります)。
 仮に器物損壊罪が成立した場合には,3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処せられることがあります。

まずは弁護士にご相談を

 往来妨害罪で逮捕された場合には,早い段階で刑事事件に強い弁護士逮捕段階で初回接見を依頼することをお勧めします。
 初回接見により刑事事件に強い弁護士が直接逮捕された方からお話を聞くことで,今後の処分の流れや弁護活動方針などの見通しを立てることができます。
 往来妨害事件で逮捕されてお困りの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお電話ください。