【事例解説】自動車のトランクに閉じ込めて走行 監禁罪で逮捕

2023-11-03

参考事件

 福岡県糟屋郡内の山中でVさんの遺体が発見されたことをきっかけに,福岡県粕屋警察署の警察官が捜査を開始したところ,数日前にAさんがVさんを自動車のトランクに閉じ込めて走行していたという情報が得られたため,Aさんは監禁罪の容疑で逮捕されてしまいました。
 これを知ったAさんの家族は,刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
(事例はフィクションです。)

監禁罪(刑法第220条)

 不法に人を監禁した場合には,監禁罪が成立します。
 監禁罪は,逮捕罪と同じ条文で定められていますが,「逮捕」と「監禁」の区別について,人の身体を直接拘束して身体活動の自由を奪うことを「逮捕」といい,一定区域からの脱出を不可能若しくは著しく困難にすることを「監禁」といいます。
 上の事案のAさんは,自動車のトランクという一定の区域を利用して,Vさんの行動の自由を制限しているとして,「監禁」に当たる可能性があります。

 監禁罪は,移動しようと思ったときに移動する自由を保護していると考えられています。
 そのため,監禁を受けた人について行動能力や行動意思は不要であり,監禁されている認識も不要であると考えられます。
 具体的には,生後1年の幼児や勉強に集中して周囲の状況に気付かない者がいる部屋に鍵をかけるという場合であっても,監禁罪が成立し得るということになります。
 したがって,上の事案においても,Vさんが自動車のトランクに閉じ込められている間に意識があってもなくても監禁罪が成立しうることになります。
 監禁罪が成立した場合,3月以上7年以下の懲役に処せられることがあります。

監禁致死罪(刑法第221条)

 監禁の罪を犯し,よって人を死亡させた場合には,監禁致死罪が成立します。
 監禁致死罪が成立するためには,①監禁行為が存在すること,②監禁の被害者が死亡していること,③監禁行為と死亡結果との間に因果関係が認められることが必要となります。
 上の事案では,Aさんによる監禁行為が存在し,その被害者であるVさんは死亡しているため,Aさんの監禁行為とVさんの死亡結果との間に因果関係が認められるのかが問題となります。

 監禁致死罪における因果関係の有無の判断は,「監禁を維持するために行われた」暴行から死亡結果が生じているか否かを基準として行われ,単に監禁の機会に加えられた暴行によって死亡させたというだけは監禁致死罪は成立しないと考えられています。
 上の事案でいえば,例えば,Vさんの死因がトランク内に閉じ込められたことによる熱中症だったという場合には,監禁致死罪が成立する可能性があります。

 過去の裁判例の中には,トランク内に被害者を監禁した状態で走行し,停車後に別の自動車の運転手が過失運転により追突して,その結果トランク内にいた被害者が死亡したという事案において,被害者の死亡原因が直接的には追突事故を起こした第三者の過失行為にあるとしても,加害者がトランク内に被害者を監禁した行為と被害者の死亡結果との間の因果関係を認めた裁判例もあります。

 このように,トランク内で被害者を監禁し,その被害者が死亡したという場合には,監禁致死罪が成立することもあります。
 監禁致死罪が成立した場合には,傷害の罪と比較して重い刑により処断されることになります。

まずは弁護士にご相談を

 監禁罪で逮捕されたという場合には,その後の捜査が進行する中でより罪の重い監禁致死傷罪に切り替えて捜査がされることもあるため迅速な対応が重要です。
 ここでの迅速な対応により,逮捕・勾留による身体拘束期間の短縮や,不起訴処分の獲得による前科の回避につながることもあります。
 どのような対応をすればよいかは個別の事案によって異なりますので,まずはどのような事案であるのかを把握するために初回接見を依頼することをお勧めします。
 監禁事件で逮捕されたという件で初回接見をお考えの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで初回接見をご依頼ください。