傷害致死事件で裁判員裁判
傷害致死事件で裁判員裁判
傷害致死事件で裁判員裁判となった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、大阪府茨木市で居酒屋に客として訪れていたのですが、そこへVさんを含む数名の大学生グループが客として訪れました。
Vさんらはひどく酔って店内で騒ぎ暴れる様子であったため、AさんはVさんらに「他の客の迷惑になるからやめなさい」と注意をしました。
するとVさんが「お前に関係ないだろ」などと言ってきたので、腹を立てたAさんはVさんの顔面を握り拳で殴りつけてしまいました。
Aさんはカッとなってつい殴ってしまっただけであったものの、Vさんは、酔っていたこともあり殴られた拍子に大きく態勢を崩し、近くにあった机の角に頭をぶつけてしまいました。
Vさんは頭から流血して動かなくなってしまい、Aさんは驚いてすぐに救急車を呼びましたが、搬送先の病院でVさんの死亡が確認されました。
救急隊と共に現場に駆け付けた大阪府茨木警察署の警察官により、Aさんは傷害致死罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの妻は、傷害致死罪が裁判員裁判になると知り、今後のことが不安になったため、弁護士に相談して詳しいことを聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・傷害致死罪
今回のAさんには殺意はなかったようですが、Vさんの顔面を殴っているため、少なくとも暴行の故意が認められます。
そしてその暴行によって生じた怪我によってVさんが死亡しているといえるため、Aさんには傷害致死罪が成立することになります。
刑法第205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
・裁判員裁判
裁判員裁判になる事件かどうかは、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律、通称「裁判員法」により決められています。
裁判員法第2条第1項
地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第3条の2の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
第1号 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
第2号 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
傷害致死罪は、このうち裁判員法第2条第1項第2号に当てはまるため、裁判員裁判対象事件となります。
裁判員裁判とは、通常の刑事裁判とは異なり、刑事裁判の第1審に裁判官だけでなく、一般の市民も裁判員として審理や判決の内容を判断する手続きに参加する裁判です。
裁判員裁判は、裁判員として一般の方が参加するため、通常の裁判とは異なった手続きが多数設けられています。
その1つが、公判前整理手続という手続きが必ず行われることです。
公判前整理手続とは、第1回公判の前に検察官や弁護士と裁判官で事前に協議を行い、争点や証拠の整理を行う手続きです。
公判前整理手続はあくまで公判前の準備手続ですが、実際の公判では公判前整理手続で整理された争点と証拠に絞って裁判が進行し、公判前整理手続終了後に新たな証拠を提出することは原則としてできないことになっています。
つまり、裁判員裁判となった場合には、公判前整理手続でどのような争点が考えられ、どのような証拠が必要なのかをしっかりと検討しつくしておく必要があるのです。
・裁判員裁判での弁護活動
前述のように、裁判員裁判では裁判員として一般の方が参加します。
ですから、通常の裁判に比べて裁判員裁判ではわかりやすさが重視されると言えるでしょう。
被告人側の事情をどれだけ説得的にかつ裁判員の方々の胸に響くように裁判で明らかにできるかが、最終的な量刑判断に強く影響します。
また、今回の傷害致死事件のように被害者や遺族が存在するケースでは、被害者や遺族との示談交渉を行い、被害者・遺族の処罰感情が低いことなども併せて主張していくことも考えられます。
しかし、いずれの主張も、先に述べた公判前整理手続で適切に証拠を検討し、必要であれば弁護側からも証拠を提出しておく必要があります。
さらに、裁判員裁判の対象となる事件は重大犯罪に限られている為、逮捕から公判終了まで身体拘束が継続されてしまう可能性も高いです。
そこで、保釈等の身体解放に向けた活動も行っていく必要があります。
早期の身体解放や十分な公判準備のためには、刑事事件に精通した弁護士に依頼することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱っており、裁判員裁判を含めた刑事事件の解決事例もございます。
傷害致死事件などの裁判員裁判対象事件にお困りの際は、弊所弁護士までお気軽にご相談ください。