【事例解説】競合店に脅迫し暴力行為等処罰法違反で逮捕(前編)
自身の店舗のサービス内容をそっくり真似した競合店に対して、集団を装い脅迫した事件について、前編・後編に分けて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例紹介
都内で複数のマッサージ店を経営するAさんは、最近新しくできたマッサージ店Vが自店舗のサービス内容をまるパクリしていることを知りました。
Aさんは、Vに対して電話して抗議したところ、相手が反省の色を見せず開き直って暴言を吐いてきました。
Aさんは、ヒートアップしていまい「店の人間全員が、お前もお前の店もめちゃくちゃにしたるつもりでいるから覚悟しとけ」と言ってしまいました。
Vさんはボクシングを学生時代からしていたので、本当にやってきたら返り討ちにしてやろうと思いながら電話を切った後、電話の内容を録音していたので警察に被害届を提出しました。
後日Aさんは逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
前編では脅迫罪の成否についてを、後編では暴力行為等処罰法の成否について解説します。
脅迫罪(出典/e-GOV法令検索)
刑法221条1項
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
本件では、サービス内容をパクられたAさんはついヒートアップしてVさんに対して、「店の人間全員集めてお前もお前の店もズタボロにしたるから覚悟しとけ」と言ってしまったようなので、脅迫罪が成立する可能性があります。
脅迫罪における脅迫とは、一般人を畏怖させるに足りる害悪を告知することを言います。
Aさんは、VさんとVさんの店舗をズタボロにしてやると言っています。
前者は生命、身体に対する害悪の告知と言え、後者はVさんの財産である店舗に対するが悪の告知と言えます。
一般に自分や自分の財産をズタボロにしてやると言われれば恐怖を感じるでしょうから、本件では脅迫罪が成立する可能性があります。
ところで、Vさんはボクシングを長年していたため、実際にはAさんからの脅迫を受けても怖いと思っていなかった可能性があります。
この場合でも脅迫罪は成立するのでしょうか?
判例によると、脅迫を受けたものが現実に畏怖したことは必ずしも必要ではなく、一般人を畏怖させることができる程度の害悪の告知を、被害者が認識しさえばよいとしています(大判明治43年11月15日)。
したがって、Vさんが実際には怖がっていなかったとしても、そのことを理由に脅迫罪の成立は妨げられません。
弁護士に相談を
本件のように被害者のいる犯罪では、示談を成立させることが非常に重要となります。
早い段階で示談が成立すれば、起訴猶予による不起訴処分となるかもしれません。
仮に起訴されたとしても、量刑が、示談が成立していることを踏まえて軽くなる可能性もあるからです。
ただし、加害者が直接被害者と連絡をとって示談交渉をするのは得策ではありません。
被害者にとっては、加害者は自分や自分の大切の財産に対して危害を加えると言ってきた人物であり、被害者は加害者に対して通常強い処罰感情を有しているため交渉に応じてくれない可能性があるためです。
そこで、示談交渉は交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。