【事例解説】車に傷がついたと言いがかりをつけて恐喝

2024-06-23

車に傷がついたと言いがかりをつけて、金銭を脅し取ったとして恐喝罪の疑いで男が逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

けんか

事例

仙台警察署は、仙台市に住む自営業の男性Aを恐喝罪の容疑で逮捕した。
ある日、仙台市内のショッピングモールの駐車場で、主婦のBが駐車をする際に誤って隣に停めてあったAの高級車にドアをぶつけ、目立つ傷をつけてしまった。

その場に居合わせたAは、愛車の損傷に激怒し、Bに対して「おい!今当たったぞ!ほら傷ついとるやないか!」「いくらするとおもとんねん!修理代100万いますぐ払え!払わんならお前を同じ目に遭わすぞ」などと大声で怒鳴った
Bは恐怖のあまり、その場で所持していた現金10万円と、翌日までに残りの90万円を支払うことを約束させられた

その後、Bは恐喝されたことを家族に相談し、家族の勧めで警察に通報。仙台警察署は調査の末、Aを逮捕した。取り調べに対し、Aは「車の修理代を取りたかった」と容疑を認めている。
(フィクションです)

恐喝罪とは

刑法249条(出典/e-GOV法令検索)

人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する

本件で、Aは大切にしていた高級車が、ショッピングモールの駐車場でBの不注意によって傷ついてしまったため、修理代としてBに対して100万円を要求し、10万円を差し出させたようです。
Aは、Bに対して10万円という財物を自身に交付させていますから、Aの発言が恐喝に当たるとされた場合、恐喝罪が成立する可能性があります。

恐喝とは、①財物交付に向けられた人を畏怖させるに足りる脅迫または暴行であって、②その反抗を抑圧するに至らない程度の行為を言います。

まず①について検討すると、本件Aは、Bに対して弁償と称して100万円を要求し、支払わないのであればBを愛車と同じ目に遭わすと脅したようです。
Bを、傷つけられた愛車と同じ目に遭わすというAの発言は、Vの身体に暴行を加えると脅迫していると言えます。
したがって、Aの発言は、財物交付に向けられた、人を畏怖させるに足りる脅迫に該当しそうです(①)。

次に、Aの発言がBの反抗を抑圧するに至らない程度かどうかが問題となります(②)。
反抗を抑圧する程度の脅迫というのは、例えば、拳銃の銃口を突きつけながら「財布の中身を全て寄越せ」などと脅すような場合です。
この場合、殺されないためには言われた通りお金などを差し出すほかないでしょうから、反抗を抑圧する程度の脅迫と言えます。

本件Aは、Bに対し、高級車と同じように傷つける(=Bの身体に暴行を加える)と脅しているので、Bとしては恐怖を感じたと思われますが、Aはナイフのような凶器を持っていた訳ではなく口頭で怒鳴っているだけですので、Bにとって反抗をすることが困難であったとまでは言えない可能性があります(②)。

以上より、Aの発言は、恐喝に当たり、Aには恐喝罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役となっているため、執行猶予がつかない可能性があります。
というのは、執行猶予がつくためには、下される量刑が3年以下であることが条件の1つだからです。
仮に執行猶予がつかなかった場合、刑務所の中で服役することなり大学に通ったり会社に出勤したりすることはできず、解雇や退学処分となることが珍しくありません
したがって、刑務所での拘束を避けるためには、科される量刑を3年以内に抑えて執行猶予付判決を獲得する必要があり、そのためには被害者との間で示談を締結できるかが非常に重要となります。

本件被害者であるBにも落ち度はあったとはいえ、BからするとAにいきなり怒鳴られ、暴行を加えると脅され、現金10万円を脅し取られてたわけですから、BはAに対して強い処罰感情を有している可能性があります。
この場合、A自らBに接触して示談交渉を進めようとしてもうまくいかない可能性が高く、連絡を取ること自体拒絶されるかもしれません。

そこで、交渉のプロである弁護士に第三者的立場から示談交渉をしてもらうことをおすすめします。
加害者と直接連絡を取ることに強い抵抗を示す被害者であっても、弁護士を通じてであれば示談交渉に応じてくれることは珍しくありません

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は恐喝事件をはじめとする刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
恐喝事件を起こしてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。
逮捕された方への弁護士の派遣、無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。